出発
12月23日
今日は天正第二中学二学期終業式、その日の朝。私は珍しくセットした目覚ましの通りに起きた。
「あら、珍しいわねミツキ」
「たまにはこう言うこともある」
母が珍しそうに私を見る。父は既にスイスにいる。似合わないスーツ着てファーストクラスに無理やり押し込まれてこの間飛んでった。
「バカ姉が早起きするとか、明日は槍でも振るんじゃねーの?」
これは毒舌と受け取っておくべきか?
ーーー続いてはエンタメのコーナーです。クリスマスのイルミネーションにアイドルグループの・・・ーーー
テレビからはよく見る情報番組が流れてる。今日この日、人類の命運を決めふ決戦が始まると言うのに、私たち以外の世界はいつもの日常が送られているらしい。いつものように朝起きて、いつものように顔を洗って、いつものように朝ごはんを食べ、いつものように出掛ける・・・
私も昨日まではそうしてた。期末テスト受けて赤点ギリギリ回避、部活やってどひーってなって、ネーちゃんたちと一緒に帰る。そんな日常だ。明日もそうしたい、冬休みに入っても寝坊しながら起きて東郷にどやされるそんな日々、そうする為に私は今日戦い、そして勝つ。
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「えー、明日から冬休みに入るわけでありますけれども、冬はとても日が短いのです。日が短いと言いますとですね、えー・・・」
やはり長い校長の話。永零が勝つ未来だと来年これが聞けなくなるかもしれないのか・・・ん、それはむしろありがたいな。永零よ、校長のここだけ無駄のない完璧にして下さい。なんて、思ってみたけど、なったらなったでこのクソ長い話を懐かしむのかもなぁ、人間って身勝手だ。
終業式が終わった、そろそろ帰宅だ。
「ミツキちゃーん」
「ほぎっ!!こ、この触り方カラスちゃん!?」
教室に戻ると何故か早速カラスちゃんのセクハラくらった。軽音ほど頻度はないにせよ、定期的に来る。しかもなんかこう、手つきが軽音と違っておっさんくさい。分かるかなこの違い・・・
「今日、ニヒルちん最後の話をするけど・・・聞いてく?」
セクハラな手つきとは裏腹に、口から出た言葉はかなり真面目な事だった。
「え、最後?あれってあの異世界を建国するまでのお話じゃ・・・」
私がカラスちゃんから聞かされたニヒルさんの話は異世界の建国の話。それから三上君たちの物語を聞かされた・・・
「のんのん、これまで異世界の出来事を大方話して来たよね、三上君の事も話した・・・けど、ニヒルちんが死んじゃうお話はまだしてないよ」
「そう言えば・・・何でいなくなったのか聞いてない」
「さて、ここでまた選択。このニヒルちんの最後のお話、今日聞くか、戦いが終わってから聞くか。ミツキちゃんはどっちを選ぶ?」
「え・・・急に言われても、それって何か大事な選択なの?」
私は聞き返した。前の選択は私が目撃者になるのかどうかの選択、今回はなんだ?
「さぁね〜、それを決めるのも君次第」
相変わらず適当なのかなんなのか・・・
「だったら・・・終わってから聞く。せっかく本人もいるんだし、答え合わせって意味も含めて。あ!カラスちゃんの話し方が悪い訳じゃないよ!?カラスちゃんの話し方、なんかこう、まるで自分がその時を実体験した感じになるからさ!!」
私は少し失礼な事言ったんじゃないかと思って慌てて訂正した。
「ぶーくくく!!たーいじょーぶだよ!あたしはあたしの話し方に自信と誇りを持ってるし!!それよりも、終わってから聞くんだね、りょーかい。それがミツキちゃんの選択ね」
カラスちゃんは立ち去った。何で今そんな事聞いたんだろ・・・
「おいミツキ」
「あ、霧島君?なに?」
「軽音が今日の作戦の決起集会やるってよ。三上の家の例のホールに集合だ」
「分かった」
「・・・一緒に行くか?」
「やだ」
私は即答した。こんな時に何青春しようとしてるんだ全く・・・まぁ、キョウ君なりに覚悟があったのかもな。
「霧島君、今日が最後みたいに考えないで。こんなとこで勇気振り絞るくらいなら別のとこでやって。万が一、億が一負けるなんてネガティブな事考えるべきじゃない・・・そうだね、この戦いが終わったらみんなで一緒に帰ろう。それなら良い?」
「・・・そうだな、今のは俺が悪い。じゃぁまた後でな」
「うん」
さて、帰ろう。私が一緒に帰るのはネーちゃんとだ。そして三上君の家に向かうのもネーちゃんとが良い。
ってな訳で、私たちは強い眼差しをしながら三上君の家へ向かった。
と、思ったら。
「「「「かんぱーい!!」」」」
「ほげ?」
三上君の家の地下、異世界を繋ぐゲートのあるホール。ここでは既に決起集会と言う名のパーティが開かれていた。
「あ、ミツキ遅ぇ!!もう始まってんぞ!!にしてもこれ美味ぇ!!」
東郷が何か貪り食べながら手招きしてる。
「え、何これ・・・決起集会言うから、神妙な雰囲気かと思ってたけど・・・」
「私もネー・・・え、今日決戦だよネ?」
私もネーちゃんもポカンだ。
「そうよ。けど、その前に親睦会をやろうってね。エルメスさんたちに相談したのよ」
軽音も皿の上に何やらお菓子のような物を乗せて食べてる。
「それで、私たちの提案は文化交流をしようじゃないのって事になったの。ほら、なんだかんだ私たちってキチンとした文化交流的な事してないじゃない?」
「あ、エルメスさん・・・って、その格好・・・」
エルメスさんもお菓子食ってる。けどあれはただのポッ◯ーだな。それよりもエルメスさんの服装がいつもと違う。アースカラーのツナギ服みたいのを着てる。これってパイロットスーツ?
「あ、ミツキちゃんにこの格好見せるのは初めてだったわね。この作戦の斬り込み隊は私たちエアクイーン隊だからね、もう既に準備は万端って事。そう言えばうちのキャンディとは一度会ってるんだっけ?」
「キャンディ・・・え、どなたでした?」
いたっけ・・・
「おー、クマノで大活躍したねーちゃんじゃん。久しぶりじゃねーか」
その時大量の駄菓子を抱えたダウナーな雰囲気の女性に話しかけられた。熊野、熊野・・・えー、あん時戦ったのはクラークだよな。そん時・・・あ!
「あの戦闘機の人!?」
顔なんて見てないよ。ってか、あの音速で飛んできてたのに私の顔覚えたの!?
「おー、覚えてた?甘海 光留。キャンディって呼んでくれ。これもなんかの縁だな、これうちの世界の菓子だ。行きつけの駄菓子屋のばあちゃんとこで買って来た。美味ぇぞ?」
ドシンプルな海苔巻き煎餅・・・なんか懐かしい味。なんか他にも色々あるなぁ・・・ラムネとか、あのゼリーみたいなやつとか、変なモナカノ中に入った餅みたいなやつとか、山積みに渡された。
「にしても、こっちの菓子はバリエーション多いし変わったのもあるが、いかんせん小さくねぇか?いまやったそいつ、その量でワンコインたぜ?それによ、あの半生クッキーみてぇなやつもこっちのは倍の量入ってるし一口じゃ食えないくらいデカいぜ?そっちの人間口小せぇのか?」
あ、それは昨今の値上げのせいでございます。
「それ仕方ないわよぉキャンディちゃん。だって〜、こっちの世界わ今色々値上がりして大変なんだって〜」
たる〜んとした口調の女の人、ザ、ぶりっ子。この時代にここまで突き詰めた人初めて見る。けど、この人もパイロットスーツ。エアクイーン隊の人なんだ。
「あ、そなのダック?そりゃすまねーな。けど、なんで小さくすんだ?材料費高ぇんならそのまま高くなるもんじゃねぇの?」
「安い方がみんな買うんだよねぇ〜。けどわたしわぁ、どんなに高くてもスゥイーツわ断然こっちの方が美味しいから高くても買っちゃう〜❤️❤️」
ショートケーキ食べ始めた・・・あ、これ近所のケーキ屋さんのだ。
「ね〜、ミツキちゃんたちも一緒に食べよ〜。あ、わたしの名前わぁ、グァテマラ グァンデーラって言うのぉ。ダックちゃんって呼んでね❤️はいあーん❤️」
「ふぉごっ!!」
無理やりケーキねじ込まれた。
「こらこらダック、ケーキはもう少し上品に食べさせなさい」
「それ・・・下手すると、息詰まる・・・よ?」
パイロットスーツの人か更に2人、そういえばエアクイーン隊って何人だっけ?ってか、なんかこのメンツ結構濃いなぁ・・・1人は何故かパイロットスーツなのに燕尾服来た雰囲気の佇まいだし、もう1人のゴーグル被った子・・・一応私より年上だよね?なんか、こう・・・私と同じ匂いを感じるのは気のせいか?あ、目が合った。
「ど、ども・・・ウージー グリーンです・・・」
「え、あ、はい、輝夜 ミツキです・・・」
うん、会話が進まない。同じタイプの人種だ。
「僕はティーバック アップァッサム。以後お見知りおきを、お嬢様」
「え・・・」
何故この人は立て膝ついて手の甲にキスしたのか・・・それにしてもエアクイーン隊ってこの5人なのか?
「おっと!!俺を忘れてんじゃぁねぇか!?幻の六番機!!ガルデロ サンフラ!!満を辞して登場!!」
うーん・・・なんか1人増えたけど、なんだろ。この5人と比べたらなんか、失礼だけどインパクトに劣る・・・
「お、全員揃ったな!こいつらが奇襲作戦決行するエアクイーン隊!!まーインパクト強いでしょ!!」
エルメスさんは腰に手を当ててドヤった。
「因みに私は改造早期警戒管制機、ラプターオウルのパイロット。スカイフォース1こと静也丸 峰子ちゃんでーす!」
え、このコスプレ衣装担当の人・・・パイロットだったの!?ってか、相変わらず何処から急に現れた!?
「シィズもよろしく頼むわよ!さて、エアクイーン隊の紹介も終わった事だし、行こっか!!」
「え?何処に?」
エルメスさんは突然何処かに行こうとか言い出した。
「い、せ、か、い、に!」
「らほぎゃ!」
耳元で軽音が囁いた。
「少しばかりだが、こいつらが俺たちに異世界紹介してくれるんだとよ。つーか、さっきそこで話してたの聞いてなかったのか?」
キョウ君、私は聞いてませんよ?
「まーた人の話聞いてなかったネ?さっきミッちゃんが煎餅貪り食べてる時話してたヨ」
そのタイミングかい!!そりゃ聞いてないわ!!ってか、久しぶりの観光パート今からやるんか!そろそろ展開をクライマックスに向けるんじゃないの!?
「まーせっかくだし見てこーネ!!ワタシは見てみたいヨ?」
そりゃそうだけど、カラスちゃんの話しで大分イメージ付いてるんだよな。けど実際には見てないなそう言えば・・・
「異世界だぁ?あそこなんて古臭いのがあるくらいで大差そんなねぇっての。今更行ってどうするって・・・って!!おい!!何あたし掴んでんだっての!!離せー!!」
メグが文句垂れてたらニコニコ笑顔のさっきのエアクイーン隊の人、ダックに運ばれてゲートの向こうに持って行かれてる。
「わたしさぁ、結構自分の国には誇りあるんだよぉ?そいつを馬鹿にしちょるんはちと許せんけぇのぉ・・・」
え、今のなに?空耳?なんかめっちゃドス効いた声があのぶりっ子の口から聞こえたような・・・いや、メグが怯えた引き笑いな顔して固まってる。どうやら私からは背中しか見えてないが、おそらくすんごい事になってるんだろうな・・・
「イセカイッテ、ナニガアルノカナー、タノシミダナー」
怖くてカタコトになった。変な事言ったら殺されるかも・・・
「んー?景色も綺麗なとこもいーっぱいだよぉ?一緒に連れてってあげるね❤️」
あ、ぶりっ子戻って来た。
で、このゲートの先か・・・なんだかんだこの先には入った事がない。この先にはゲームに出てくるようなファンタジーな世界が広がってるのか・・・そう思うと今日これから起こる事よりも、楽しみが生まれた。




