作戦会議
対指宿永零特別作戦室。
「さて、話は大方聞かせて貰ったよ。というわけで、迎える戦いの作戦会議を始めようか」
三上君司会の元、かつての円卓で作戦会議が始まった。
「作戦開始の日付は新月さんの事務局長就任の日、12月24日とする。向こう多分そのタイミングをきっかけに攻撃を開始すると思う。
それを踏まえて僕らの作戦は攻撃陣営と防御陣営の2つのみの大隊に分けて作戦を遂行する。まず1つ目の攻撃陣営、一兆君の情報により永零のいる基地は異世界の南、オーシャナ海域にある最南端のオキザキ島よりさらに南へ1500キロ程離れた場所に位置する島にいると思われる。
そこで現在マーシャル諸島沖にて停泊中の空母ヘリオストロープスを母艦とする艦隊を転移装置にて艦隊ごと永零の基地近海へ転移させ、奇襲作戦を決行、奇襲後の作戦についてはまた後で詳しく説明するよ。
次に防御陣営の作戦はこう、日本時間12月24日の午前0時に輝夜 新月さんの事務局長就任の記者会見がスイスのジュネーブで開かれる。そこには各国の首脳陣や著名な人たちが一手に集まる事になってるんだ。お偉いさん方にはちょっと脅しかけたから多分主要国のみんなは参加してくれると思うよ」
脅したって・・・何したんだ?みんなの表情から成る程こいつならやるなって顔してる。
「な、なにさ・・・僕が脅したんじゃないよ!?エルメスさんたちが主要国回って色々と取引したの!!」
あぁ、それでこの人たち今帰国したんだ。
「おほん。まぁ、それはさておいて、重鎮たちが揃い踏みな上に僕はそこにほぼ全ての戦力を結集させるつもりだ。永零が狙うのは力ある者から順に攻める筈。自身の圧倒的な力を見せしめるのが永零にとって最も重要なことだからね。そこんとこでズルはしてこないと思う。
そして永零がその力を見せる為に寄越してくるのはビーンさん、そして桜蘭君は確実にこっち側に送ってくるだろう」
今度は桜蘭さんが攻めて来る番か、今度会う時は敵同士・・・止めなきゃならないのは、私だ。
「そこで戦力の分配についてだけど、攻撃陣営の先陣を切るのはエアクイーン隊だ、エルメスさんの初撃が肝になる」
「任せておきなさい」
エルメスさんは腕を組んでサムズアップした。
「その後艦隊からの援護射撃の元上陸作戦を行う。攻撃の指揮はシャルたち爆破部隊で連携を」
「おけー!」
シャルロットはきらっとあざとピースサイン。
「そして上陸作戦は既に待機済みのニヒルさんに加えて、僕、飯綱、リリアさんと零羅さん、一兆君の6人の少数で攻め入る」
「え、おいら!?グレイシアじゃないのぉ!?」
飯綱が上陸作戦のメンバーに選ばれた事にすんごい驚いてる。
「グレイシアについてはこれから話すけど、防御陣営の方に回ってもらおうと思ってる。ミツキさんたちの担任だからね、天正第二中の2年3組のクラスメイトと宮ノ下小5年2組のみんなは防衛陣営として会見会場を守るんだ。飯綱は僕と一緒に来て」
「ふ、ふふふふ!!!やっほー!おいら礼兄ちゃんと一緒だーい!!」
相当嬉しかったのか飯綱は飛び跳ねて喜んでる。ニヒルさんの話を聞いていた時の飯綱はまだ確かに幼かった。だから戦いに巻き込まれる事はほとんど無かったからな。けど飯綱自身はニヒルさんの役に立ちたいとずっと思っていた。それがようやく三上君に認められる形で叶った、そりゃ嬉しいか。
「すまないけどグレイシア、クラスの引率を任せたよ」
「わかったから・・・だからレイは、必ず帰って来て」
グレイシア先生と三上君は軽くハグをした。
「それは良いが三上、上陸は6人つったな?たったそれだけで良いのか?もっとこう、人海戦術で攻め入るのも有りだと俺は思うぜ?せっかくこれだけの仲間集まったんだしよ」
一兆君は三上君に物申した。
「それも一つの手だけど、一兆君の場合敵味方関係なしに巻き込むでしょ?」
「うん勿論巻き込む」
「即答!?ま、まぁ・・・君は良いけど、他の零羅さんの場合は破壊力を重視するからあまりにも大人数にすると本領が発揮出来なくなっちゃうんだ。それに、永零自身防御はあまり考えてない筈。攻め入る事を重点に置いてる永零は大半の戦力を攻撃に回してくるだろう。それと、永零はこの戦争をゲームと言い張ってる。だからこの人数で行くんだ・・・」
「・・・はいはい、お前も律儀だな。俺ならあいつがゲームってんならイカサマしてやるとこだが、これはあんたの戦いだからな。俺はルールの上で遊ぶとすっか」
「どーも」
作戦会議は続く、そして、作戦は決まった・・・
三上君の家の庭
私は例の約束の木の下にあるブランコに座った。大分日が翳ってくるのが早くなって来た。まだ暑いがもう少ししたら冬が来る・・・そして、その冬に私たちの未来が決まる・・・
「にゃっふー!」
「ほぎゃ!?」
私が物思いに耽っているとネーちゃんが私の背中をぼんっと押してきた。ブランコが跳ねて飛んでいく。
「なーに思い詰めてるネ」
「いや、あと3ヶ月くらいで本当に決戦なんだなって・・・」
「アイヤー・・・確かにサ、いよいよって空気にはなって来たヨ。けど周りを見るネ、来年があるかどうか分からないのにサ、世間はフツーの日常を繰り返してるヨ。ほら、一兆君見てミ?」
私は言われるがまま一兆君の方を見た。どうやらあの小さい子、えっと・・・男鹿 特急ってまた名前のインパクトある子だ。その子と一緒に帰るらしい。
「にしても久しぶりじゃねーのイッチー、なのにあんま変わったねーな!」
「そりゃ成長期終わってるもん。けどアホトクよ、あんた・・・ちょっと伸びたか?」
「え!?珍しく俺褒められた!?」
「前歯が」
「ひっでー!相変わらずの毒舌!!ちゃうわい!!むしろちょっと異世界の方でこの出っ歯整形して来たわ!!」
「あぁ、成る程つまりは縮んだのか。身長ごと」
「ぐぬっ!!」
他愛のないコントみたいな会話を繰り広げてる。
「誰も来年がないなんて思っちゃいないヨ。この変に不完全な世の中はまだまだ続くネ。何もかもが完璧な世界なんテ、ワタシはそんなの望んじゃいないヨ。たまにはミッちゃんとケンカしたりしてサ、そんでもって仲直りしテ、一緒に悩んデ、そうやって友情って育つとワタシ思うネ」
深い事言うなぁ・・・
「そうよね、ミツキちゃんはポンコツでほぎゃってるのが1番可愛いんじゃない。完璧なミツキちゃんはミツキちゃんじゃないわ」
「あ、荻山さ・・・ふぁ!?ほぎゃぎゃっ!!?」
軽音が来たと思ったら、ブランコをガッシャンガッシャンやって私をめちゃくちゃにした。
「あぁ、相変わらず可愛い反応・・・そう思わない?京也君?」
「何で俺に振る・・・」
軽音はイタズラな笑みでキョウ君を弄った。キョウ君は渋い抹茶飲んだみたいな顔で引いてる。
「んー?別にー、巧君はどう思う?」
「おっぱい揺れてたから良いと思います!!」
新庄よ、いくら思春期でもそろそろわきまえてくれ。
「え?揺れてた?くそ!!後ろからじゃ見えなかったわ!!巧君!!ミツキちゃん揺らして!!前から観察する!!」
「了解だぁ!!」
「ほぎゃぎゃぎゃぎゃー!!!ブランコこわれるー!!」
「あははは!!ミツキの奴笑えるー!!」
遠くで東郷が指差しながら大笑いしてるのが辛うじて見えた。
「なんだぁ!?面白ぇ事やってんじゃん!!あたしも混ぜろっての!!」
「あんぎゃー!!」
この騒ぎを嗅ぎつけたメグも参加して来ててんやわんやだ。このままカタパルトみたいに飛んできそう・・・
「うん〜・・・良い揺れ具合。はぁはぁ、また一段と胸大きくなったんじゃないの?ぇえ?いや眼福〜・・・」
荻山はなんかハートマークをぽわぽわ出し、荒い鼻息を出しながら私のアトラクションを見て楽しんでいた。
「にゃふふ!!来年また来年またこうして遊ぼうネ!!」
ネーちゃーん!!良い感じで締めてるとこ悪いけど、助けてー!!!
これから割とガチな戦争が起きようとしてるのにこの空気よ・・・けどまぁ良いか。こうして笑っていられる、この瞬間が大事なんだって最近つくづく思う。この瞬間があるから私は生まれて良かったって思えるようになった。この町に、この学校に、そして私が輝夜 ミツキとして生まれて良かったって思えるようになった。だから、私は私に誇りを持ってこの戦い勝つ。