帰還
殲滅が完了した。これが四神の力・・・数えきれない程の悪魔たちをあの4人だけで全て倒してしまった。
「すご・・・」
私は思わずぼやいた。
「この程度の連中にてめぇらはぎゃーぎゃー騒いでたのか?相変わらず人間はカスばっかりか」
あの朱雀って人はすんごい眉間に皺を寄せてこっちを睨んだ。こういうタイプかぁ・・・
「こら!ミツキをいじめんなよ朱雀ぅ!」
「んごっ!!」
白虎君が凄まじい勢いで朱雀に頭突きをかました。あの無双してた朱雀がダメージ受けたって、一般人あれ食らったら粉々にならない?
「白虎てめぇ・・・いい度胸してるじゃねぇか」
度胸はいつもある気がする。なんでもかんでも気分で動いてるもんな。
「俺は朱雀の胸んとこ好きだよー!いつもふわふわであったかくて気持ちいいんだよね!」
「ちっ・・・」
白虎君が朱雀の胸元をもふりだした。あ、朱雀の胸にあるあの赤い羽根の飾りみたいの羽毛なのか・・・鳥っぽいなとは思ったけど、ふむ・・・触ってみたいかも。てか、朱雀は普通に受け入れんな。
「アレ?殲滅終わったのニ、まだ元に戻らないネ。どなってるヨ?」
ネーちゃんか真っ赤な光が注ぐ窓ガラスを見て呟いた。それに対して青龍が答えた。
「それはそうですよ、永零の管理から外れてしまった悪魔たちの本来の姿は、人の心にある罪の意識を餌とする異形の怪物。永零はその特性を活かし、我々を楔にする事で罪を罰する存在に変えましたが、本来はただ単に人をこの世界に閉じ込め惨たらしく殺してしまう危険な存在なのです。故にこの世界の空は元に戻らない」
どうりで悪魔って気色悪い訳だ。最初見た時トラウマになりかけたからな。いや、実際トラウマになった。
「だったらサ、いつもみたいニこの空間ぶち破るのはどうネ?」
ネーちゃんの言う通り、これだけの人数揃ってるのならこの空間に穴を開けるのは簡単だよね。
「悪魔が全て倒された・・・ここには悪魔の憎悪がひしめき合っている・・・まだ終わりはしない」
玄武が哀しげに告げた。終わらない・・・憎悪に向かい来る者・・・
カシャ・・・
「奴だ!!アバドンの騎士が来る!!」
この感覚間違いない!!私は銃を抜いた。そして騎士は現れた。
カシャ・・・
「アレがアバドンの騎士ねぇ・・・みんな、構えようか」
シャルロットも一目見てこの騎士はヤバいと判断したみたい。頬に汗が流れてる。敵は1体だけだけど、油断したらダメだ。
騎士は立ち止まり、焼き殺された悪魔を拾い上げた。そして・・・
「げぇっ!?」
騎士はあの牙だらけの口をガバッと開けて悪魔の頭を丸齧りにしてしまった。
「ちょっ!!なにヨ!?」
「きっしょ!!」
「悪魔がアイツらのエサって事?」
「そうですよ軽音さん。この異空間は悪魔が罪を喰らい、その罪を喰った悪魔を騎士が喰らう。それがこの世界の秩序です・・・」
青龍は優しい声で解説してくれたどーも。さて、そんなきしょい奴が来るぞ!!
『ギガガゴガガガッッ!!!』
いきなり私か!!
「ライトニング・ソード!!」
バヂヂヂッッ!!!
まずは一太刀を防いだ。けど、衝撃で後ろに飛んでいく。
「貫通型気化式ダートボム!!」
ほんの僅かの隙を見つけてシャルロットが爆弾を打ち込んだ。しかし、その全てを騎士は腕の剣で切り落としてしまった。
「マジ!?」
騎士の周囲で大爆発が連続した。
「っ!?三日月!!」
次のターゲットは三日月だ。私は叫んだ、けど待て。コイツ早すぎる!!ダメだ!
「っ!!時よ!!くそっ!!間に合わな!!!」
私たちの動きの予測を遥かに上回り、騎士は剣を三日月に向かって振り下ろした。真っ赤な飛沫が私に向かって飛んできた。
「大佐!!!三日月を!!」
私は即座に大佐を呼び出した。まだ、まだ間に合う!!僅かに意識さえあれば時を戻してなんとかなる筈!!
「ん?いや、マスター。どうやらその必要はないな。見ろ、切られたのは奴の方だ」
「え?」
いや、あり得ない。どう考えても誰であっても三上君とかじゃない限り間に合わなかった筈。私は恐る恐る視線を三日月に向けた。
「おうおうおう!!みかつきに手ぇ出すたぁやってくれんなぁヨロイのあんちゃんよぅ!!」
「飯綱?」
三日月の前に立っていたのは飯綱だ・・・言ってた割には何か特段変わったとこは無さそうだけど。けどなんだ?この違和感。
「だいじょぶか?みかつき〜?」
「あぁ、三日月な?俺は大丈夫だが・・・今のは、なんだ?」
そうだそれだ、三日月の言う通りだ。今の攻撃はなんだったんだ?鋭利な刃物で切断されたかのように騎士の腕が無くなってる。いや、まずその前に飯綱は何処から現れた?
この空間を外から破って入る時は何かが砕けるような音がしてたのに、なんの脈絡もなく突然飯綱は現れた。
「おいらの新技〜。っしゃね!!ここはおいらがビシッとこいつをぶっ倒してやるさね!!みかつきは大船に行ったつもりで見ててよ!!」
「だから三日月な?あと大船に乗ったな?」
「・・・んな事どうでもいいさ!」
「飯綱ちゃん!!」
飯綱がよそ見してしまった瞬間、騎士は腕を元通りに直して今度は飯綱めがけて切り掛かった。
「なにっ!?」
飯綱はもろに攻撃を受けた。けど、全く無傷だ。後ろの三日月も同様にまるで攻撃がすり抜けたみたいだ。その光景を目の当たりにした朱雀が真っ先に反応した、私はもはやポカンだ。
「こんなもんおいらにゃつーよーしないぜ!!どや!」
飯綱は鼻を伸ばして腕を組んで威張った。
「そんでもって、こっからが反撃だぁ!!」
飯綱は右手を前にかざした。小さな青い炎が手のひらの上で踊り出した。そしてその炎は一気に剣のような形に姿を変えた。
「狐火の術!五月雨!!」
そして飯綱が炎の剣を空に掲げ振り下ろすと無数の雨のような炎の粒が降り注ぎ、鎧を蜂の巣にしてしまった。
「これが・・・フォックス?」
グレイシア先生が固まるレベルで驚いてる。私もそうだ、私自身がこれまで特に飯綱が戦ったとこを見たが無いのもあるが、これほどまでにあの炎を自在に扱うのはかなり困難なのは分かる。
「んあ?このあんちゃん、かなりしぶとい奴だねぇ」
『ギギギギィィィィィガゴガガガガガガァァァッ!!!』
騎士は雄叫びを上げるとその身に纏っていた鎧の一部が剥がれ落ち、大暴れを始めた。
「な、なんじゃこりゃ!?」
私の目で追いきれない。これまでの動きとはまるで違う。鎧で制限されていた可動部が吹き飛んだ事で凄まじい機動力を得たみたいだ。
「よっととと!!ほいほい!!」
けど、飯綱はぴょんぴょん跳ねながら全ての攻撃を難なく躱す。
「飯綱!!援護に回るぜ!!」
タイミングを見計らって三日月が自身の懐中時計の剣を構えた。
「いんや、おいらだけで十分さね!!この戦いは多分永零兄ちゃんも見てんでしょ?だったらおいらの今の実力を見せつけてやるさ!!みんな強くなったのは分かってる!けど今は隠しとけ!!見せてやんのはおいらの力だけだ!」
飯綱は両手を胸の前に持って来て忍者がやるみたいな印を組んだ。
「飯綱、何を・・・」
「みかつき、なんとなくだけどさおいらはこの姿を一番に見せたいって思ったのは三日月なんだよなぁ、なんでかは分からないけど、いの一番に見せたかった。礼兄ちゃんでも、グレイシアでも、零羅やリリア、ニヒルお姉ちゃんでもない。みかつきに見せてみたかったんだよ。これが、今のおいらさ!!」
飯綱はいつも被っていたキャスケット帽を取った。飯綱は人間に化けるのが苦手でいつもはあの帽子の下に狐の耳をしまっていた。けど、今その耳はなくなって完全な人間の姿になっている。
そしてその帽子を取った直後だ、飯綱の姿が変化を始めた。もふっとしていた茶髪が、つむじの部分から肩の付近まであるサラサラの黒髪に変化し、身長や体格も少し丸い子供の体系からスタイルの良い大人びた女性の体系に変化した。
これは、もはや別人と言っても良いほどにまでの変化だ。表情も仕草も大人っぽい。
「飯綱、お前・・・」
「こいつが今のおいらさ・・・さて、鎧のあんちゃん、おいらのこの姿を見せんのはほんの少しだけだ。まだおいらにも扱いが難しくてな、だから一撃で終わらせてやっから、かかってきな?」
飯綱は左手を前に出してくいくいと何処かの映画で見たポーズをして騎士を煽った。
騎士はまたすんごい速さで飯綱に迫る。
「黒火斉焼」
消えた・・・騎士が、一瞬のうちに跡形もなく燃え尽きた。けどみんな見た筈だ。これまで見たことの無い力を。飯綱の手元にある青い炎・・・それが一瞬黒く染まった。
私の聞いた限り魔法は通常の私たちが使える自然の力を持つ魔法、狐火やグレイシア先生も使うより高威力の青い力を持つ上級魔法、そしてセカンダビリティの譲渡の他、戦いではニヒルさんくらいしか碌に扱えなかった赤い力の最上級魔法。
けど今、飯綱が使ったのはそのどれでもない、黒い炎だ。漫画でしかこんなの見たことないぞ・・・しかも、察するからにこの黒い炎は漫画同様、最強威力の魔法だ。炎に軽く触れただけで騎士の身体は一瞬で焼き尽くされて灰も残さずに消えた。
ぽんっ!!
「んお、戻っちった・・・完全人間体は出来るけど、やっぱりあれは難しいや」
戻った。性格もあの姿の時はかなり大人びたと言うか、なんかこう、西部劇にいそうなワイルドな感じの雰囲気だったのが、元のぽやんとキツネに戻った。
「飯綱・・・」
三日月が名前を呟いた。
「んお?どしたみかつき?」
「お前・・・だったんだな・・・あの時見た、あいつは・・・」
何の事だ?
「んあ?何の話?」
飯綱自身も知らないらしい。
「いや、何でもない・・・忘れてくれ」
三日月は飯綱に背を向けて頭を掻いた。ほんと何なんだ?
その後空は元に戻り、また大勢の人間が賑わうターミナルになった。
「あれ?どうやら僕の出番は必要無かったみたいだね。終わってるや」
聞き慣れた声、爽やかで明るい少年・・・今は少女か。その声が聞こえてきた。
「礼兄ちゃん!!」
飯綱は真っ先に三上君の元に駆け寄った。
「わたくしを差し置くとはなんたる事ですか飯綱!!もっと盛大に祝いなさい!このわたくしの帰還を!!」
あぁ、いつものキャロラインだ。
「きゃーるるー!!」
そのキャロラインを迎えにあがったのはキャロットだ。
「おや?まぁ!!キャロット!!遂に人間化が出来るようになられたのですわね!!」
「きゅふふふふふ!!」
「ふむ、やはりこのわたくしと似てますわね」
キャロラインはしばらくキャロットと遊んでる。
「うん、どうやらみんなパワーアップは上手くいったみたいだね」
三上君は少し満足気に頷いた。
「で、あんたの方の収穫は?」
その三上君に一兆君は少し挑発的に質問した。
「そうだね、じゃぁまず彼から紹介しよう」
彼?ニヒルさんを生き返らせる為にフランスに行ったんじゃ・・・別の目的もあったの?
「え、桜蘭さん!?」
三上君の後ろから現れたのは、桜蘭さんだ・・・いや、ちょっとちがう。もうちょい身長が高いし顔も大人っぽい・・・つまり、めっちゃ私の癖。
「ミカエルだ。俺の兄弟が悪さしてると聞いてな。君らの助っ人として来た」
ミカエル、ミカエル、ミカエルねぇ・・・ん、なんだったっけ。ん?あ、
「え、大天使の?」
しばらくこの名前が何だったのか思い出せなかった。けど、ふと思い出して呟いた。
「あぁそうだ。詳しいな君、確か輝夜 ミツキさんだったかな?三上君から色々話は聞いてるよ」
ミカエルは私に手を差し出した。
「あーあー!どーも!!ミツキちゃんのクラスの学級副委員長の荻山 軽音です!!」
私は握手しようかと思ったが、軽音がぐいっと横から私の女に手を出すなと言わんばかりに入って来た。
「そう構えなくても君の彼女を取ったりしないよ、君のその生き方も一つの在り方だ。難しいが、それを貫く生き方は素晴らしいものだと思う」
「なっ!!!そ、そう来たか・・・」
軽音・・・なんかすごい嬉しそうだな。まぁ、あの大天使様に多様性を認められたらね。
「そして次は知ってる人もいるだろうけど、サラマンダーさんの娘のサラちゃん」
三上君の紹介は次に行く・・・な、何この天使みたいな子。ちょっと角が生えてて長い尻尾。トカゲかな?それ以上にあのまるほっぺ、触りたい・・・
「みなさん!はじめまして!!サラっていいます!!」
サラちゃんはゆっくりとみんなにお辞儀して挨拶した。
「ぐはっ!!」
あ、東郷が可愛さのあまりに吐血してぶっ倒れた。
「そして彼女がウーネア アダムス。覚醒者たちのアクセサリーを手掛けてるアダムスブランドの創始者だね」
ブランド品の企業の創始者って言うからパリコレみたいな人が来るかと思ったらかなりラフだなこの女の人。にしても、身長たっかー・・・
「よろしくー」
そんでかなりズボラっぽいというか、ギャルっぽい。そもそもウーネアさんって大分高齢じゃなかった?
「そんでもって、あと1人・・・」
ニヒル アダムス・・・
「ニヒルさんなんだけどね?ちょーいと作戦の先行をしたくて日本に来られなかった!!」
ズッコー!!!!!
私は盛大にこけた。どんな人なのか気になってたのに・・・お預けか。勿体ぶるのは三上君の専売特許だね。
「まぁ気になる人もいただろうけど、彼女の力はここぞという時に取っておきたい。作戦開始までは彼女の所在を秘密にしておくつもりなんだけど、良いかな?」
「隠し事は無しじゃなかったのか?」
ごもっともな意見、神崎さんが腕を組んで三上君に問う。
「隠してはいないじゃないか、ちゃんとどこかにいるって伝えたよ」
屁理屈〜・・・
「はぁ、で、先行してる作戦ってのは?」
「それについてこれから話し合おうと思ってるんだ。だからみんなここに来たんでしょ?」




