再集結
八咫烏の書回廊。
「そー言えば三上くん帰って来るの今日だね」
私はカラスちゃんの部屋で過去の話を聞きながらついでに宿題をここで終わらせていた。
「あ、今日か・・・」
この1週間で私は多くの事を知った。ここ最近はぶっ通しで話を聞いてる。だから後もう少しでニヒルさんの話が終わる。そして今日、そのニヒルさんを連れて三上君がフランスから帰ってくる。
ニヒルさんって、キツイ人なのかなぁ・・・
「さて、んじゃ今日はここらで切り上げて三上君迎えに行こっか!」
「だね」
私とカラスちゃんは立ち上がって外へ出た。
「で、何処に迎えに行こう?三上君の家?」
「成田行かないのー?」
カラスちゃん、しれっと言うけどそもそも成田も結構遠いよ?てか、何時頃来るんだっけ。確か夕方到着だったと思うけど・・・因みに今は昼過ぎ。
プップーッ!!!
「ほぎゃっ!?」
道歩いてたら突然のクラクション!!びっくりさせないでよ!って、何なんだ?変な煽り運転でもいた?
プーーーッ!!
「え、私?」
なんか明らかに私に向かって鳴らされた。邪魔なとこ歩いてた?ってかうげー、外車だー。えー・・・ろるっすろいちぇ?読めぬ。
「え、あれ?」
この車乗ってる人・・・その人は運転席の窓を開けた。
「あなた、なんでこんなとこほっつき歩いてるの?」
「荻山母!?」
軽音の母親、荻山 響煌だった。
「何その呼び方・・・それよりも、今日あなたのクラスみんな成田空港に行ってるんじゃなかったかしら?あの神の子と学級委員長がフランスから帰ってくるんでしょ?」
「そうですけど・・・え、みんな成田行ってるの?」
どゆこと?
「ミツキちゃんよ、今日は成田に迎えに行って歓迎会やるってこの間ホームルームで言ってたよ?現地集合だから今日は昼までにしよーって話だったんだけどなぁ?」
・・・また、授業聞いてませんでした・・・すみません。
「ちゃんとしない子は嫌いよ。仕方ないわね乗りなさい、送ってあげるわ。私も丁度成田に用事があるからね」
「え、良いんですか!?」
「構わないわ、電車だと運賃もかかるでしょ?ただでさえ貧乏なあなたの父親の懐を寂しくさせちゃダメよ」
グサッ・・・言い方・・・にしても、この高そうな車に乗れと?ほんとこの人普段何して生計立ててんだ?
「おー!それならあっしも乗せてくれーい!」
「ほぎゃ!?どっから来た!?てかいきなり厚かましい!!」
何処からともなく父が現れて一緒に車に乗せろとか言ってきた。なんなん?
「いいわよ、そろそろ私に乗り換える気にでもなった?」
あー、軽音母まだ諦めてないんか。
「いや、三上君に用がね」
「ふーん、まぁいいわ。束の間の浮気デートと行きましょ?ミツキちゃんとそのお友達は後ろに乗りなさい。あなたは私の助手席よ」
軽音と似たとこあるなこの母親・・・
「おう!旧友との久しぶりのドライブと行こうぜ!」
だーめだこの父、ノリノリで助手席乗り込んだぞ。
「で、お父さんが三上君に用事って何?」
「おぉ、例の世界環境大軍団の就任の日付がな?12月24日クリスマスイブなのよ、こりゃ完全に罠臭いなぁっと思ってな?」
「成る程、てか世界環境機関ね。それの局長なんだからちゃんと名前くらい覚えてよ」
「へーへー、ミツキも大概手厳しいなー。そうは思わねーか響煌?」
「さぁ、名前なんか気にして本筋をちゃんと出来ないのなら意味はない。あなたならそんな名前とか肩書きに囚われなくてもちゃんとやれるでしょ?」
「だってさーミツキー」
この父親は・・・
「それより、このカラスちゃんとは何してたのかしら?」
質問はカラスちゃんに移った。けど、
「ぐがー」
当の本人はもう寝てる。どいつもこいつも厚かましいなぁ・・・
「不思議な子。まるで聞くなと言わんばかりね」
確かにカラスちゃんは不思議な子だ。ちゃらんぽらんに見えるけど常に何処か俯瞰的に物事を眺めてる。実際カラスちゃんが私たちの問題に何か口出しする事はない。やるとすればセクハラしてくるくらいか。
「あら?」
車を運転していた軽音母がある事に気がついた。私も気がついた・・・車はその子の横に止まった。
「いーつのーことーだかー、おーもーいーだーしーてごーらーんー」
能天気でヘッタクソな歌歌いながらクソ上手いリフティングをかまして歩く少年が1人で歩いてる。キョウ君の弟の霧矢君だ・・・そして、軽音母の隠し子。
それはまぁいいとして大体分かった。これ、また迷子になってんな・・・
「霧矢?また迷子?」
「んー?あ、響煌おばさんだー、それと三日月の姉ちゃんも。うん、今迷子になってたとこー。なぁなぁ、一緒にサッカーやるー?」
どれだけ脳みそサッカーに侵食されてんだ?
「霧矢君、三日月たちは何処?」
私はスルーして質問する。
「三日月たちと成田空港行こうとしたらはぐれたー。だから成田にいると思うよー。俺ももうちょっとしたら行くー」
「響煌さん」
「ええ、ミツキちゃん、乗せなさい」
こんな一言だけで連携取れるとはな。
「わっ、わー!!」
私は半ば誘拐犯のごとく霧矢君を車に押し込んだ。
「私たちも今から成田行くから。それに1人でほっつき歩くのはやっぱり危ないよ?」
「大丈夫だけどなー・・・まいっか、楽に行けるし。それよりも響煌おばさんの車乗り心地良いなー、寝よ。すぴぴー」
寝よった!!
「ほんとこの子が因果律支配なんてのを持っているのかしらね?まぁむしろ、単純過ぎる性格だから能力をフルに使えるのかもしれないわね」
確かに。
成田国際空港。
「あっ!ミッちゃん見っけ!!」
「ミッキー見っけー!!」
あ、早速いた。わかりやすいなぁネーちゃんとメグが早速私たちを見つけた。
「あん!?あたしが先に見つけたんだっての!邪魔すんじゃねー!」
「なにヲー!ワタシが先ヨ!!」
こっちは相変わらずだなぁ。
「それよりミツキちゃん、なんでママと来たの?」
軽音が早速この事を聞いて来た。
「街中ほっつき歩いてたから連れて来たのよ。ついでに霧矢君も迷ってたから連れて来たわ。京也君はいるかしら?」
「ここにいるぜ。てか霧矢お前、三日月と一緒に来るんじゃなかったのかよ」
キョウ君は半ば諦めみたいな顔して霧矢君に聞き返した。
「途中で迷った!!」
元気に言う事じゃないだろ・・・
「軽音、そろそろ行くわね。北海道行ってくるけどお土産欲しいものあったかしら?」
軽音母、北海道行くのか・・・ほんと普段何の仕事してんの?
「じゃジンギスカン、ラム肉食べてみたいのよね」
あー、ジンギスカン有名なのは北海道なのか。
「ラム肉って、またなんでよ?」
「だってー、ミツキちゃんが前から食べたいって言ってたもん」
軽音が後ろから私の肩を抱く。
・・・一つ言おう。私は軽音にそんな事言った覚えはないぞ?言ったのは京都の時と熊野の時だ。しかもただ単に名物が分からんかったから適当に言っただけだ。何処から情報漏れた?確かに食べた事ないから食べてみたいけど、そもそもジンギスカンって・・・何?
「成る程ね、じゃあ今度家にいらっしゃい。ご馳走様してあげるわ。けど、新月も一緒よ?」
「お!あっしもでっか!!ごちになりまーす!」
遠慮を覚えろこの父!!
軽音母は特に何も言わず出発ロビーへと向かった。
「で、三上君ってどの便で来るの?」
私は特に誰かにと言うわけではないが、到着案内の掲示板を見て聞いてみた。
「レイとキャロラインさんはプライベートジェットだから。この掲示板には載ってない」
「あ、グレイシア先生。1週間ぶりで・・・ん?」
答えたのはグレイシア先生だ。横に三日月の担任の純恋先生もいる。けど、なんだろ・・・見た目は変わらないのに、何かが大きく変わってる気がする。グレイシア先生からは前まで無かった何かがあるように感じる。
そして変わったのは純恋先生もだ。こっちは何かが無くなった・・・そうだ、毒気がない。前までの純恋先生はきちっとしていても何処か毒気を感じてた。なのに、今はそれを感じない。
「どうしたの?ミツキさん」
「いえ・・・」
「???レイの到着場所は違うけど多分ここには来るはずだから。ここで待ってれば良い」
けどまぁ、天然そうな所は変わらないな。このなんとも言えない感じでよく首を傾げるとこは変わってない・・・ほんと何が変わったんだろ?
「あー!霧矢てめ!何処行ってた!?」
「探したのですよ!?」
そろそろだと思ったら三日月たちも到着だ。わざわざ電車で来たの?駅の方から来た。流石に子供たちだけではダメだから引率としてルイ先生が一緒にいる。
「おー!三日月ー!!ごめん!迷子になっちった!!」
「ったく!リリアもなんか言ってくれよ!!」
「わたくしは大丈夫ですよ。これは霧矢さんの個性だと思いますので」
相変わらず凄まじく寛容だなリリアちゃん。それより1つ気になるのは・・・
「あのさ三日月、その子・・・誰?」
「きゅふ!」
なに?今のは挨拶?いや待てなんかこの感じ知ってるぞ?けど、このロップイヤーウサ耳持った美少女は知らん。けど、誰かに似てるような・・・あ、あれだ。高飛車が消えたキャロラインだ。って事は・・・
「察したか?」
「うん、キャロットだよね・・・多分」
「きゅふふふふ!!」
キャロットは両手を口元に合わせて笑った。可愛い。うさぎの姿も可愛いけど、この姿も可愛い。ケモナーになってまうー。
「けど、なんでこの姿?」
「セグンドエスタードマキシマよ」
私のこの質問に答えたのはルイ先生だった。あぁ、先生と同じ力使えるようになったんだ。
「へー、じゃぁ改めてよろしくね?」
「きゃふ!!」
私はキャロットと握手した。
「あれ?ところで飯綱ちゃんは?」
「あいつは別に修行してる。あいつもまるっと1週間休んでたな。けど今日来るとは言ってたぜ?なんか、めっちゃ変わったから見せつけてやるってメール送ってきてた」
変わったって・・・メールの内容的に特にキャラは変わってなさそうだけど・・・え?あの子メールなんか送れるの?
「あと来てないのは・・・一兆君か。まぁあの人こういうの来ないよね?」
「いや来てるけど?」
「ほぎゃっ!?」
真後ろにいた!!!
「あなた、1人?」
何かを察した純恋先生が一兆君に質問した。
「あぁ、1人だ」
「そう、彼は先に行ってしまったのね」
「そういうこった」
なんの話だろ?
それにしても、2人迎えに行くのに凄い大所帯になったな・・・まぁ仕方ないんだけど。この1週間でみんなかなり変わった気がする。そして、三上君が帰って来たタイミングでいよいよ戦いが始まると言っても過言じゃないんだ。だから多分、まだ来るぞ。
「そのとーり!!シャルロットちゃん含めたRODメンバーとうちゃーく!!」
シャルロットたちRODメンバー。
「HAHAHA!拙者らも合流するでござる!!キリッ!」
麗沢君とびっじょ美女2名。
「うわぁ!何この人だかり!!」
「何これサプライズ!?」
あれ?エルメスさんとアレックスさんだ。国際線から来たって事は、この人たちも何処か行ってたの?
「三上君も今日帰国らしいね、どうやら我々はタイミングが被ったみたいだ」
あの人も写真で見たな。確か、イーサンって人だ。
「あれ?奇遇ねー、私も今帰国したとこよイーサン」
それからシィズさん。この人もどっか海外行ってたみたい。
「三上に用事あるから来てみれば・・・全員か・・・」
「ひゃーこりゃすげぇ。お、メグもいるのか!」
「あ、じじい!」
そんでもってヤクザさん2人、神崎 零さんと道山 隆二さん。
大体のメンバー揃ったな。後は飯綱だけだけど・・・まぁあの子も大概呑気だしな。
パチィンッ!!!
え、おいおいまさか・・・このタイミングで!?周囲から人の気配が消えた。私たちだけだ、ここにいるのは・・・
「あーらら?敵さんもうやる気満々ちゃん?」
シャルロットは一瞬にして臨戦体勢に入る。
『アハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!』
『ゔらぁぁぁ゛ぁ゛!!!!!!』
『うぉぉぉぉぉぉぅあああああっ!!』
「ちょっ!!何この数!?」
東郷がドン引きする。
今まで見たあらゆる悪魔たちが次々と湧いて出て来た。ちょっとどんだけいるの!?前までせいぜい数十だった。今のこれはここにいた全ての人間が悪魔になってしまったのかってレベルだ。
味方がこんなにいても多勢に無勢に思える。けど、やるしかないな・・・
「『心無き人形・物言わぬ屍・踏まれる大地よ・・・』」
私は詠唱を開始した。多人数相手には大佐が一番だ・・・
「待ちなよミツキちゃん」
その時、カラスちゃんが私の詠唱を止めた。
「なんで?」
「戦う必要なんてないんだもん、この悪魔たちは最後の暴走。繋ぎ止めていた楔が無くなったみたいだね」
「くさび?」
って、なんだ?
「よーするに、敵さんは悪魔を掌握する術を失ったってこと!!」
私は気がついた。それって・・・それの意味が成す事は一つ。来る!!
「みんな!!!伏せて!!!」
私は叫んだ。みんな反応が早い、私の言葉で一瞬のうちにみんな頭を下げた。その直後だ、
「消え失せやがれ、このカス共が」
渋くて威圧感のある男の一声と共に私たちの頭上を熱波が通り過ぎた。ひー!怖っ!?
「朱雀、巻き込んではいけませんよ?」
この声、これは青龍だ・・・相変わらず爽やかで落ち着く。
「こいつらがどうなろうと俺の知った事じゃねぇ」
「一体何が・・・この悪魔たち、焼き殺された?」
軽音が顔を上げると周りを取り囲んでいた悪魔たちは一気に焼却されていた。
「すげぇ、なんつーパワー・・・」
新庄もこの火力に口をポカンと開けた。
「褒めてもらってありがとうございます・・・ですが、僕たちの力はこんなものじゃないですよ」
籠もったような泣きそうな声の男・・・
「うん!俺たちもっと強いよ!だからさ!俺頑張ったから後よろしく。俺は寝るね!」
「わっ!白虎!?」
そして突然虎の姿の白虎が正座みたいな体制だった私を膝枕にしてゴロンと寝転がって来た。相変わらずデカい猫だ・・・
「それにしても、これは一体なに?まさかこの人たちは・・・四神?」
「そうよ」
独り言で呟いたつもりだったけど、答える人がいた。
「あ、ニュースのお姉さんだ・・・」
東郷はちゃんと毎朝ニュース見てるからか彼女を知っていた。増子味 報道、完全にこの事件に巻き込まれた地元のニュースキャスター。そんな人がなんで四神と一緒に・・・
「あの文化祭の後、私はあの事件の事を世間に知らせるように上司に直談判した。けど、返ってきた答えはノーだった・・・私は、あなたたちみたいに心に正直になれなかった。大切な人たちが危ないってのに、今を守る事を考えてしまってた。そんな私が情けなくてね・・・その時青龍君と白虎君に出会ってね、四神と悪魔の事について知ったの」
「彼女は燻っているようでしたからね。そこで僕は彼女を連れて朱雀と玄武を救出に向かったのです。彼女は戦う力こそ無けれどその心意気はとても綺麗でした。何としてでも真実を届けたい。その強い意志が僕たちに力をくれた。そして僕たちはあの2人を取り戻せたのです」
青龍君がうっとり気味で語った。増子味さん、私の知らないとこでそんな事を・・・
「いや、私はただ単にカメラ回してただけよ?そんな大層な感じな事してないからね?」
青龍君って、惚れっぽいの?
「おい、青龍、白虎、遊んでんじゃねぇよ。てめぇらもコイツらには因縁があるだろうが、てめぇの悪魔の始末はてめぇで付けな」
朱雀は威圧的に青龍と白虎を立ち上がらせた。
「無論戦いますよ」
「えー、俺の悪魔はいないだけどなー。俺ばっかり頑張ってるよ」
「まぁまぁ、終わったらお菓子でも一緒に食べましょう」
「え!?ほんと!?わーい!!」
白虎はぴょんと私から飛び出して人間体になった。
私の目の前に四神が揃う・・・今、悪魔と四神の戦いが始まろうとしていた。
第七局面 THE LAST GAME




