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sins of the gods その2

 現れたのは1人の女の子。キャロラインよりもまだ背は低く、幼さの残るワンピース姿の女の子だ。しかし、その子を人間と呼ぶには少し言い難い。


 尾骶骨付近からは鱗のある尻尾が伸び、背中には翼、頭のこめかみからは角が生え、その瞳は爬虫類を思わせるような縦に細長い瞳孔を持っていた。


 「サラちゃん?何故ここに・・・四精霊は異世界の守護を任されていたと聞きましたわ?」


 「お母さんがね!行っていいって言ってくれたの!わたしはよんせーれーじゃないから大丈夫なんだって!だからパパを止めてこいって!!」


 サラは元気に説明した。


 「どうりで四精霊が見つけられねぇなと思ったら・・・前の轍は踏まねぇってか」


 ルシフェルが何かを知ったような口ぶりで呟いた。


 「どう言う意味ですの?」


 「キャロラインちゃんは知らねーよな。俺とニヒルちゃんとの戦い。そん時俺は四神を素体に黙示録の四騎士を呼び出した。あいつらは強ぇが、それに耐えられる器はかなり限られるんだよ。今、四神は溢れんばかりの悪魔どもの素体だ。だからレイの奴は同じ位を持つ四精霊を素体にさせない為に俺から遠ざけたってとこだろ。考えてるねぇあいつは相変わらず」


 ルシフェルは腕を組んでほくそ笑んだ。


 「で、サラ。お前は何しにここに来た?」


 「もちろん、パパを止めに来たんだよ」


 サラは少し背伸びをした後、指を鉄砲の形にして桜蘭へと向ける。向けると同時に桜蘭も一丁の銃を取り出してサラに向けた。


 「・・・ダメだな。帰ろう父さん」


 「え、あ、おい!!」


 桜蘭はしばらく考えた後、銃をしまう。そしてスタスタと外へ向かって歩き出した。


 「ちょ待てって、ミカエルぶっ倒すチャンスなのによ!」


 ルシフェルは桜蘭の横に立って直談判する。


 「サラが俺の予測以上に成長してる、だから駄目だ」


 「今帰るのなら俺は追わないぞ?」


 ミカエルも剣を鞘に納めた。


 「ちっ、仕方ねーな、ここまでにしておくか・・・ミカエル。最後に言っておくがお前に俺は倒せないぜ?俺は別の意味でもかつての俺じゃねぇからな!あばよ!!」


 ルシフェルは見事なまでに捨て台詞を吐いた。


 「行かせないよ!どこに行くつもりなのパパ!!」


 しかし、ルシフェルと桜蘭の前にサラが手を横に広げて立ち塞がった。


 「無論永零のとこだサラ。あと、そのパパって言うの、やめてくれないか?」


 桜蘭はサラに少し諭して言い聞かせるように言う。


 「やだ!パパはパパだもん!」


 しかしサラは言うことを聞くつもりはないらしい。


 「まぁ、どちらにせよ今お前とぶつかり合うつもりはない。サラ、お前はもっと大きく強くなれる。俺を止めるならその時だ」


 バチチッ!!


 桜蘭は放電を放って姿を消した。


 「今のは・・・」


 「すぃーゆー兄弟ちゃん!」

 

 そしてルシフェルも同じく放電を放ち消えた。


 「いなくなった・・・」


 ダカールが真っ先に間抜けな声で呟いた。


 「一体なんだったんですの?いきなり諦めて・・・あ、それよりサラ?何故ここに来れたのです?」


 キャロラインも我に返ってサラに質問した。


 「ヴォイドおじちゃんがここだって言ってた」


 「あ〜」


 キャロラインはすぐに納得した。


 「まさかな・・・」


 しかし1人だけ、より険しい表情となった者が1人、ミカエルだ。


 「どうされまして?」


 「ルシフェルの力・・・奴の消える時のあの電撃は、奴の力ではない・・・」


 ミカエルの言葉に周りは一斉に固まる。その次の瞬間、ミカエルの空間は元に戻り再び人がごった返す聖堂に戻った。


 「どういう意味ですの?彼の力ではないとは」


 キャロラインはミカエルに聞き返した。


 「奴の力は本来光だ。明けの明星、それがルシフェルと言う天使に与えられた使命。雷光の光ではない・・・そしてあの力は見たことがある。全知全能を司る者・・・ゼウスの雷だ」


 「ぜ、ゼウスですって!?」


 そして思いもよらない名前を出され、キャロラインは更に聞き返した。


 「そうだ。奴の言う通り、あのまま戦っていれば流石の俺でも勝ちは見えなかったな・・・ここ最近、日本を中心に悪魔の空が現れていたのは感じていた。キャロライン、日本にいる神は無事か?」


 「え、えぇ・・・三上様のおかげで皆無事ですわ」


 「そうか。しかし、こっちはそうでもないらしい。あらゆる神の気配がここ最近になって更に消えた。僅かな力を持っていた神も、人間たちの信仰度の低下で更に力を失っていたんだ。それが今、完全に力を感じられなくなった・・・原因は信仰度の更なる低下が招いた結果だと思っていたが、あの空とルシフェル。そしてゼウスの力・・・どうやら、あいつらは世界各地の神々の力を手にして周っているようだ」


 「世界各地の神々の力を!?」


 キャロラインはあまりにも壮大な敵事情を知る。


 「日本の神々と世界の神々・・・多勢に無勢だ。この戦い、勝てる見込みは・・・」


 「あるよ」


 半ば諦めの境地に達していたミカエルを止めたのはサラだ。


 「ミカエルおじちゃん。味方はかみさまだけじゃないんだよ?みんないる、かみさまの力を持ってなくても、みんなそれぞれ頑張ってたもん。だからわたしたちは負けないの!」


 サラは自身たっぷりに言い放った。


 「・・・人間の底力か、俺たちには見えない底知れぬ力・・・神はよく言っていたな・・・・・・そうだ、君なら耐えられるな」


 ミカエルは何かを閃いたようだ。ミカエルは姿勢を比較してサラの背に目線を合わせた。


 「わたし?」


 「そうだ。俺の力を君に託そう、サラマンダーが娘よ。君ならば俺のこの力に耐えうる。継承の儀のやり方は知ってるな?」


 「え、ミカエル様まさかあなた・・・」


 キャロラインはミカエルを少し引き気味で見下ろした。


 「うん!わたしミカエルおじさん好きだからいいよ!!」


 「まぁっ!!」


 そして儀式はすぐに終わった。サラ自らミカエルの唇に向かって軽くキスをする。キャロラインはその姿を見て顔を赤く染めた。


 「ん?キャロライン、何故顔を赤くしているんだ?四精霊と我々天使は言わば兄弟、家族のようなものだ。その家族同士の口付けなど別に大した事ではないが・・・あ、日本に大分染まったせいか」


 ミカエルにとってこのキスは普通に家族同士のスキンシップのような感覚だった。


 「な、なるほど・・・わたくしとした事が。確かに、力の譲渡に必要な条件は愛する心。それは兄弟愛、家族愛の感情でも良いということですわね」


 「俺はあのルシフェルと違って誰かを愛した事はない。だが、家族への愛情はしっかりと持っている。さて、これで契約は成立出来た。我がの力、この山を抜け、彼の地にて決着を付けよう・・・」


 「・・・何はともあれ、あの大天使ミカエルを味方に付ける事には成功しましたわ。三上様もそろそろ調べは終わっている事でしょう。再びリクヴィールに向かいましょう」


 キャロラインはミカエルとサラ、そして神話を目の当たりにしてぽけーっとしてるダカールを連れてウーネアの工房へ戻った。


 ・


 ・


 ・


 フランス リクヴィール ウーネアの工房


 「あれ、出てった時より人増えてる」

 

 1人残されていた門番は相変わらず退屈そうな感じで戻ってきた人たちの数を数えた。


 「ミカエルだ」

 「サラだよ!」


 「あ、ああどうも」


 男は生返事で挨拶した。


 「それより、三上様の様子はどうですの?あと、ウーネア様方は」


 「僕はここだよ、ん〜んん!!!」


 珍しく眼鏡姿で現れた三上はとても疲れた様子で背筋を伸ばしながら出て来た。


 「あら、眼鏡なんてかけてらしたのですね」


 「ブルーライトカット用だよ、度は入ってない。パソコン使う時によく付けてる。とりあえず、真の家系図見つけたし、アダムスの祖先の正体は突き止めたからなんとかなりそうだ。ふぁぁ〜・・・」


 そして眠そうに大きくあくびをする。


 「これがあの神の分身の1人か、アイツとは似ても似つかない、随分と幼く可憐な子なんだな」


 「女の子扱いはやめて下さいよミカエルさん」

 

 三上はちょっと不貞腐れた。


 「すまないね。君からは何処となく懐かしい雰囲気をかんじるのでつい冗談を。それで、君のここでやっていたもう一つの策はどうなった?」


 「だーいせーこー・・・ばたんきゅ」


 門の方からフラフラとウーネアだけが歩いて来て、バタンと倒れた」


 「上手くいったみたいだね」


 「お姉様、強すぎよ・・・三上君、難易度調整バグってない?」


 「僕はギリギリでやるのが好きなの。それに、中途半端な状態なら中途半端な復活しかしない。最早それはニヒルさんと呼ばないでしょ?」


 「ま、そうね。お姉様は身体を万全に戻すってまだ1人修行中よ。今度こそレイノルドの馬鹿を引っ叩いて、はっ倒して、鼻フック入れてぶん投げてやるんだって」


 「・・・先代の転生者も相当な奴だな」


 ミカエルは苦笑いした。


 「だね・・・僕も話にしか聞いてなかったけど、彼女昔から相当やんちゃな性格みたいで・・・」


 三上も同じく引き気味に笑う。


 「そうね、お姉様はやんちゃと言うよりガキ大将ね。一見するとクールで真面目に見えるけど、負けず嫌いで喧嘩っ早くて、口も結構悪いわ。けど、私はそんなお姉様大好きよー!!もっと罵ってもいいわー!!」


 途中からウーネアは自身の性癖を暴露しただけだった。


 「さてと、なにはともあれ・・・これで全ての戦力が整った。他のみんなもそろそろ力を付けて来る頃・・・ようやく最終フェーズに移行出来るよ・・・作戦を、考えて行く事にしよう」


 第六局面 SINS OF THE UNKNOWN 完

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