sins of the past その3
ウーネアが戦いに向かい、三上とキャロラインは再び工房へと向かう。
「調べたい事とは、一体なんですの?」
キャロラインは不思議そうな顔で三上に問う。
「彼女の家系図だよ。さて、ダカールさんでしたっけ。今度こそ通して下さいよ?」
門の前まで来た三上はダカールに尋ねる。
「ウーネア様から許可は得た。構わん、通れ」
ダカールは今度こそ三上を通した。
「それにしても、家系図なんて調べてなんだと言うのです?何か腑に落ちない事でもありまして?」
「うん、もう一つのアダムスの血統、異世界側のアダムス。これまであの世界の王族の始まりはニヒルさんで、その子孫が王位を継いできた事になってたけど、実際のニヒルさんの本当の子孫は桜蘭君とサナちゃんとルナちゃんだけだ」
「それは変ですわね・・・」
「でしょ?ならエルメスさんたちは一体誰の子孫なのか。それを調べに来たんだ。前にエルメスさんとアウロが保管してたニヒルさんの血液サンプルを比較したんだけど、遺伝子配列なんかはほぼ同じだった。少なくとも血縁が近い存在なのは間違いないんだ。だからウーネアさんの子孫の可能性があると思ってここに来たんだ。この工房にはアダムスブランド創業当初からの年表資料なんかも揃ってるって聞いてね。一体何処でどのようにして異世界のアダムスの血統は生まれたのか・・・ここに答えは無くてもヒントはあると思うんだ」
「なるほど・・・しかし三上様?それを調べてどうするのです?それが、この先の戦いの役に立つと思えませんが」
キャロラインは納得しながらも今コレを調べる必要性について疑問を感じた。
「仮にウーネアさんの子孫なら問題はないんだ。問題は、あの姉妹2人のどちらでも無かった場合・・・」
「違う・・・場合?」
「僕が考えるにその正体を突き止めた時、僕たちにとっての大きな武器になる。今の戦争はより多くの情報を得た方が勝つんだよ」
三上は工房の扉を開けた。そして腕時計デバイスも起動し、連絡を取り始めた。
「シャル、こっちは無事にたどり着いたよ。そっちはどんな感じ?」
通話の相手はシャルロットだ。
『みんなそれぞれ修行に入ったよ。シャンデラの話じゃ、ミツキちゃんなんて部活もやりながら、霧島君に剣術教えて貰ってるんだって。しかもその部活も更にハードにして例の大佐とミツキちゃん2人とシャンデラのチームでやり合うなんて事もしてるんだってさ。あの子ほんと恐れ入るよ・・・それより、みかみんは?何か分かった?』
「予想通り、異世界のアダムスの祖先はウーネアさんでもニヒルさんでもなさそうっぽい・・・これからデータ送るから、解析の方頼むよ」
『了解』
三上は通話を切る。
「さて、このわたくしは何をすればよろしくて?まさかただ単にわたくしの名を使いたかった訳ではないのでしょ?」
キャロラインは三上はまだ何か考えてると思い質問する。
「無論だよ。キャロラインさんにはちょっと特別な任務に向かって欲しい。フランスは詳しいでしょ?」
「勿論ですわ」
「ここに向かって、ある人に会ってほしいんだ。そして、出来る事なら僕たちへの協力を煽ってくれないかな?」
「モンサンミッシェル?あんな観光地に誰が・・・しかも、わたくし1人で?」
「そこに、暇になった門番さんがいるでしょ?彼らを使えばいいよ」
「は?俺?」
ダカールはぽやんとした顔で自身を指差した。
「そうですわね・・・ふむ、性格に難ありではありますが、腕はそこそこ立つようですわね。よろしくてよ、あなたをこのわたくしのボディーガードに任命しますわ」
「ちょっ!!俺は!!」
「主人のいない家など1人いれば問題ありませんわ。しかも、三上様がいると言うこの上ないセキュリティがあるのですよ?それならただ単に立ってるカカシの方がまだ役に立ちますわ。あなた、そこで給料を貰ってるのなら少しは考えなさいな。と言うわけで、三上様。具体的には誰を探せばよろしくて?」
キャロラインはダカールを完全スルーして話を進めた。
「この世界にはまだまだ神の存在がいる。天照さんもそうだったみたいに、力を持った神はまだいるはずなんだ。その人を探して欲しい」
「モンサンミッシェルの神と言えば・・・まさか、大天使ミカエル!?」
「僕の予測が正しければ、彼は今そこにいる・・・フランスに到着した時からあの場所に天照さんと似た雰囲気を感じた。ミカエルは今、あそこにいる」
「なんでまたそんな方を・・・」
「敵にはビーンさんもいる、あの人の正体はルシファーだ。神は基本人類への手出しは出来ないけど、兄弟のような存在ならあのとんでもパワーへの対抗馬となれるかもしれない。それと、永零は今率先して神を狙ってるから、その力を向こうに渡したくないってのもある」
「ミカエルなんて存在が敵に回れば確かに厄介ですわね・・・ん、ならば三上様?他の神々や天使はどうなっているのです?」
キャロラインは口にすると同時に浮かんだ事を質問する。
「基本的にかつてのルシフェルとヤハウェの戦いで多くの神々はその力を失っているらしい。天照さんみたいに力を持ってる神はもうほとんどいないんだ。そしてその力のほとんどは、今のビーンさんの元にあるんだってさ」
「永零の目的は神の力を消す事。そして、あのビーンとか言う男の目的も神を殺す事・・・利害の一致だったわけですわね」
「そう言う事、向こうも向こうで着実に準備は始められてる。ヨーロッパ支部の調べによるとミカエル意外の四天使も既にこの世界にいない。他にもギリシャ、北欧、エジプト、アジア、アステカ、マヤ、あらゆる神話を調べたけど、やはりほとんどが力を持たない存在。日本だけが唯一力をあまり失わずに済んでるみたいなんだ」
「これも全て、永零の策略と言うわけ・・・ですわね」
「うん、あえて日本にだけ力を持つものたちを残した。けどその中で唯一ミカエルだけは力を失わずに残ってるみたいなんだ」
「・・・分かりましたわ。善は急げの言葉の通り、早速参ります」
「ありがとう、気をつけてね」
「このわたくしをどなたと心得ておいでですの?気をつけるのは周りのほうですわ!おーほっほっほ!!ほら!参りますわよダカール!!」
キャロラインはダカールを連れてモンサンミッシェルに旅立った。
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一方、ウーネアは異世界の地へ足を踏み入れる。
「ここ、成る程。ここはお姉様たちが最後に戦った地・・・フロンティアクレーターの上か・・・にしてもアウロ、あんなでっかい基地なんか作っちゃってさ。お姉様、見える?レイノルドの馬鹿との夫婦喧嘩の痕跡よこれ」
「・・・」
ウーネアは崖の上から下を見下ろして少し物思いに耽る。一方ニヒルは何も言わずにただ単に立っているだけだ。
「何も感じてないのね・・・じゃ、叩き起こすのがベストかな。三上君曰く、戦いこそが目覚めの鍵。この世界の在り方は戦いと共にあったからなんだってさ。さぁ、お姉様・・・構えて。全てはこの時の為・・・私とお姉様じゃ、力の差があった。けど、今はどうかしら。私が汗水垂らしてアクセサリー作り続けてたのは、趣味だけじゃないのよ。集中力、精神力、そして体力。それを鍛える為でもあった。全てはお姉様を取り戻す為に・・・」
ウーネアは流血光刃を構える。
「・・・」
そしてニヒルは異世輝國を抜いた。
「あれ・・・三上君いつのまにお姉様にそれ渡してたのよ・・・いくらお姉様の為でも、刀握ったお姉様とやるの、結構骨折れるんだけど!!」
ウーネアは大きく飛び上がる。
「っ!?」
「うぉおおおおらああああぁぁぁっっ!!!」
そして輝きを放つ刃が、ニヒルへと襲いかかる。ニヒルも刀を輝かせてそれを受け止めた。
「この程度が、お姉様な訳ないでしょうが!!だりゃぁぁぁっ!!」
ウーネアは攻撃の勢いを増し、前後左右、その高身長から繰り出されるリーチの長い攻撃が凄まじい速度でニヒルを攻め立てた。
「・・・やれやれ、相変わらずしつこい奴です」
「えっ!?」
次の瞬間、形勢は一気に覆った。ニヒルの一振りでウーネアごと遠くに吹き飛ばした。
「ぐっ・・・お姉・・・様?いや、まだ・・・これは記憶。心が無い・・・けど、僅かに戻ってきてる!!ふふ!!行くわよお姉様!!」
「来いです」
両者共に一歩も引かない攻防が始まった。通常ならば会話なんて出来ない。けどウーネアはニヒルに語りかける事にした。
「お姉様、あの後大変だったのよ?私は記憶を無くして、お姉様は存在そのものがなかった事になってた。それでみんなして私に姉妹なんていないなんて言うのよ?失礼しちゃうわよね。人をボケ老人扱いしちゃってさ。それでもって、結局お姉様の死体が見つかった時、それまでの扱いはなんなその、実はいました〜とか言って葬儀を行ったの。私に対してなんの謝罪もなっし!!酷いと思わない?」
「・・・」
無反応、ウーネアは話題を変える。
「・・・私は桜蘭のおばあちゃんとして生きてきたの。あの子は、たまにしか会わなかったけど、凄く優しくて元気な子に育ってくれたよ。お姉様に似て物事ははっきり言うタイプでね、けど、お姉様と違って言葉は選ぶ子なのよ。けどあの子も異世界に再び触れ、私たちの能力を継いだ。今の彼は命の王・・・なんだってさ。
そして桜蘭は今、永零と共にいる。お姉様・・・今のこの世界はお姉様の思い描いた世界とは全然違う。人間はまだまだ何も変わらない・・・また同じ事を繰り返そうとしてる。あの時の戦い、お姉様は未来に私たちの罪を預けた。その結果がこれ・・・結局は私たちが罪を償わないといけない。
これまではそれが出来なかった。けど、今なら出来る。人間は変わらないけど時代は変わった。過去の罪は償えるようになった。一緒に償いましょう。そして迎えに行こ?みんなあなたを待ってるの。レイノルドに桜蘭、全部終わらせて、今度こそみんなで平和に暮らすの。よく飯綱に言ってたじゃない。喧嘩の後は仲直りって。今がその時よ、お姉様。この何百年と続いた喧嘩を終わらせるの。その為には、あなたが戻ってこないと始まらないのよ!!」
「・・・ふっ」
2人の戦いは続く・・・




