sins of the past その1
「じゃ、そろそろ行くよ。2人とも留守は任せたよ」
三上は荷物を背負って玄関に立った。
「あいさね!!」
「多分大丈夫だから」
そして飯綱とグレイシアが見送る。
「決戦は近いよ。けど永零が何も仕掛けてこないとは限らないから、くれぐれも気をつけて・・・そして、今度こそ全部終わらせよう」
三上は2人をじっと見つめて新たに意気込んだ。
「分かってるから」
「おいらもさ!」
「うん。あ、そうだ、2人ともちゃんと寝る前には歯を磨くんだよ?」
「うん」
「分かってるよぅ!」
「フォックス、ちゃんとグレイシア毎日お風呂に入れるんだよ」
「おうともさ!」
「む・・・」
「グレイシア、毎日フォックスの宿題チェックしてね」
「いぎ!?」
「おけー」
「帰ったらちゃんと手を洗ってうがいをする。靴は揃えて、ドアを開けっぱなしにしない、部屋は散らかしたらちゃんと片付けること。出かける時は元栓と鍵をちゃんと閉めて。燃えるゴミは水曜日と土曜日、燃えないゴミは月曜日。分別してちゃんと捨てること。好き嫌いは絶対ダメ、それから・・・」
その後も三上はまるでどこかのお母さんのごとく、2人に言い聞かせた。
「あーはいはい、もー分かったよぅ!おいらちゃんとするから!!」
「むー」
痺れを切らした2人は三上を玄関の外へと押し出した。
「ちょっと!ちゃんと分かってる!?」
「分かってるさね!それよりも礼兄ちゃんはもう時間でしょうが!キャロラインも外で待ってるよ!?」
「あ、げっ!もうこんな時間!!あ、ちょっと待って!!荷物確認・・・パスポートと、あ!ボールペン忘れてた!!それと、そうだ!!ハンドクリーム!最近乾燥するから要るんだった!」
三上は玄関と自分の部屋を往復を繰り返す。
「レイ・・・どんどん女の子になってく・・・別にいいけど」
「てか母ちゃんだねぇ〜・・・おいらもこのノリ慣れてるから別にいいけど」
三上のこのお母さんムーブは割としょっちゅう起こってた。
「・・・・・三上様!!!遅いですわっっ!!!!」
「「ほら怒られた」」
外で待っていたキャロラインがそろそろ痺れを切らした。
「ごめん!!海外の経験これまでないからさ!!えーっと、モバイルバッテリーは手荷物だよね?化粧水とかは預け入れで・・・」
「全く、神の転生者が聞いて呆れますわね。そんなの気にしなくて構いませんことよ?このわたくしが何故庶民と同じルールで飛行機に乗らなければならないのです?プライベートジェット用意しておりますわ」
「え?僕航空券買っちゃってるんだけど・・・」
「キャンセルなさいなそんな紙切れ、しかもエコノミーですわよね?そんなものにこのわたくしが乗る筈ありませんわ。そもそも、わたくしが移動するイコール国賓待遇必須なのですよ?そしてあなたは立場上このわたくしよりも上なのです。堂々となさい」
玄関前にリムジンが横付けされた。
「ひー!近所に変な噂広まっちゃう!!」
「すでに広まってるから・・・」
「んおー!かっくいい!!おいら今度乗りたい!!」
「構いませんことよ飯綱!!おーほっほっほ!!では行きますわよ!!さぁ出すのです運転手!!」
三上とキャロラインを乗せたリムジンは成田空港へ向けて発進した。
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成田国際空港、プレミアゲート。
「ひぇ、なんだここ・・・こんな専用窓口あるの?」
三上は普段見る空港の税関の雰囲気とはまるで違う空間に戸惑った。
「あるに決まってますわ。でなきゃどうやって国賓を迎えるとお思いですの?さ、こちらですわ。全く、このわたくしがエスコートするだなんてなんたる事でしょう!」
「ごめん。全然ここら辺の事詳しくなくて・・・」
キャロラインは慣れた動きで気がつけば駐機場にある格納庫に辿り着いていた。
「お待ちしておりましたキャロラインお嬢様、三上様。既に準備は出来ております」
「よろしくてよパイロット。さ、三上様さっさとお乗りなさい」
「はぇ〜・・・」
三上は口をポカンと開けながら乗り込む。
「ほぇ〜・・・」
そして飛行機とは思えない程のラグジュアリーな空間の機内にまた口をぽかーんと開ける。
「なにをぼんやりなされているのです。早くお座りなさい」
「あ、はい!」
三上はキャロラインの言われるがまま、座席に座り気がつけば飛行機は離陸していた。
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「さてと、ウーネア アダムスと言えばこの世界の屈指の高級アクセサリーブランド『アダムス』の創業者ですわね。直接お会いした事はありませんが、一度遠目に見た事はありますわ。その際はかなりご高齢に見えましたが、そんな方をどのようにしてお使いになり、ニヒル アダムスを蘇らせるのです?」
キャロラインはスパークリングワインではなく、グラスに入った白ブドウジュースを片手に質問する。
「アウロの文献で知った事だけど、通常の覚醒者はこの世界に戻ると徐々に身体は普通の人間に戻っていくらしい。だから今のウーネアさんは過去の記憶を失い、完全なる人間となっている筈だ。まずは彼女と接触し、記憶を蘇らせ、そのまま直接転移で異世界に一度飛ぶ。そして再度覚醒の後、マキシマムビーストの素体を使ってニヒルさんを生き返らせる」
「そんなの、そう上手く行くとは思えませんわ、それを1週間でなど・・・」
キャロラインは三上の計画が無謀に感じ物申す。
「確かに、かなり厳しいよ。けど、確信がある」
「確信?」
「うん、前に神崎さんを生き返らせた時は1年かかった。それは僕と神崎さんとの繋がりはあまりなかったからだ。けど、僕自信が彼を殺したから僕と彼は通じ、この世界へ呼び戻せた。そして神崎さんはより近いあの3人を生き返らせる為に戦った。かかった期間は3人で1年・・・キャロラインさん、仏教の教えには、人は2度死ぬってのがあるけど、知ってる?」
三上は突然キャロラインに質問した。
「なんですの急に?仏教は知りませんわ。そもそも信仰も何も、わたくしたちは全ての神の始まりのような存在なのですよ?」
「確かに、でもこの教えは僕にとって教訓になったんだ。肉体の死と忘却による死。人は肉体が死ぬ以外に、忘れ去られる事で完全なる死を迎えるんだってさ。つまりは、その人を忘れない限り、その人が死ぬ事は無いって教えだね。それで前に桜蘭君に聞いた事があるんだ、ウーネアさんはニヒルさんの記憶を失ったしまったにも関わらず、自身には姉がいたとずっと周りに言って事あるごとに日本に行こうとしていたとか。セカンダビリティの記憶支配すら潜り抜ける程の思いを持った人。そんな人が記憶を取り戻し、姉を取り戻すのだとしたら・・・」
「下手すれば1日で成し遂げると・・・」
三上の語りにキャロラインが答える。
「うん、フォックスもウーネアさんはいつもビーンさん、レイノルドとニヒルさんの事で喧嘩してたらしいからね。彼女相当な人だと思うよ」
「あの温和そうなおばあさまがねぇ・・・そうだ三上様、ワイン飲まれますこと?」
「ん?いいの?」
「一応あなた、本来の年齢は成人してらっしゃるのでしょ?一応シャンパン等も用意しましたわ」
「はは、君は用意が良いね。けど、今はいいや。ここ何年も飲んでないし、飲むのなら全て終わらせてからにしたいな。あ、そうそう、お酒と言えばグレイシアってめちゃくちゃ酒癖悪くてさ、一回水飲もうとして間違えて飲んじゃって、一口で笑い上戸になってね、人の顔じっとみたと思ったら大笑い。そんでもって身ぐるみ剥がしたり大暴れしちゃうんだ」
「・・・ぎ、逆に見てみたいですわね。それ・・・」
そんな雑談を交えながら飛行機はフランスを目指した。
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そして場所はフランス ストラスブール中央駅。
三上はシャルル・ド・ゴール空港から鉄道を乗り継ぎ、フランスの地に足を踏み入れた。
「ふふん、ご覧なさいな三上様。日本の駅の作りとはまるで違いますことよ。基本的にフランスはあらゆる部分で芸術を感じられますわね。こんな景色初めてではなくて?」
そしてキャロラインは自慢げに駅舎を紹介する。
「いや、見覚えあるよ。この景色・・・懐かしいな。異世界は僕たちのこの世界の技術があの世界を発展させたんだ。そしてここは僕が最初に異世界で降り立った場所ボーダー地区、そこの景色とそっくりなんだ。なるほど、あの街はここをベースに作られたのか・・・」
「・・・そうでしたの。このわたくしはまだ、あの世界を知らなさすぎますわね。でしたらおそらくあなたのその最初の街を作ったのはウーネア様ですわ。あの方はここで育ったと聞いておりますから」
「らしいね。そして彼女はここの外れの村、観光地としても有名なリクヴィールに住んでるみたい。さぁ行こう、アポは君の名前を出せば簡単に取れた。やっぱり、ガイアの名前って凄いね」
「おーほっほほほ!!もっと褒めてもよろしくてよ!!!」
キャロラインは褒められるとすぐに調子良く笑う。
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リクヴィールから少し離れた丘の上にある木組みの小さな家。
「ここが・・・思ってたよりすごく質素だ」
「ウーネア様本人の意向らしいですわ。本人が自身を飾るのを嫌う性格らしいのです。以前見た時もアクセサリーの類はほとんどつけておられませんでしたわね。せいぜい1つでしたわ」
「誰かに送るために・・・って感じか」
2人は歩き続けると門の手前で2人の男は止められた。
「おい、この先は立ち入り禁止だ」
「・・・えっと、キャロラインさん。この人なんだって?」
フランス語が分からない三上はキャロラインに尋ねる。
「立ち入り禁止ですって。失礼しますわね、あなた方。このわたくしをどなたと心得るのです?キャロライン ガイア。ここにいるウーネア アダムスに会いたいのです。既に話は通してある筈ですが?」
キャロラインが少し睨み気味に言うと2人の男はそそくさと敬礼した。
「これは失礼しました!キャロライン様!!どうぞお通り下さい!!」
そして道を開ける、2人は通ろうとした。しかし、
「お前はダメだ!!」
どう言うわけか三上は止められた。
「ん?」
「あなた方、このわたくしを通して何故付き添いの彼を通せないのです?訳をお聞かせ願おうかしら?」
「その衣服では身分不相応だ。ウーネア様は我が国の誇るブランドのトップ。その様な格好でお会いするなどと」
男の1人は三上を少し軽蔑な目つきで見下した。
「・・・今の発言、差別と捉えてよろしくて?」
「差別ではありません、区別です。通りたいのであればそれ相応の身だしなみでなければ」
「うーん、何言ってるのか分からないけど、なんとなく僕は通せないって事?」
「そうだ」
「この者たち、なんて恥知らずなのでしょう・・・あなた方、いいですこと?このわたくしが、この者を通せと言っているのです!!さっさと通しなさい!!」
「いくらガイアの命でも聞けません。そもそも、あなたは本当にガイアのお嬢様なのですか?」
「なぁんですってぇ!?きーっ!!無礼にも程がありますわ!!」
キャロラインはヒステリック気味にキレた。けど、
「そうお怒らなくてもいいよキャロラインさん。仕方ないよ、彼はそう言う人みたいだからね。キャロラインさん、とりあえずパスポート出してあげて」
「・・・わ、わかりましたわ」
キャロラインは三上がニコニコ笑顔になってる事に気がついた。この顔はブチ切れ寸前である。キャロラインは大人しくパスポートを見せる。
「このパスポート、この特殊な刻印はやはり・・・ならばなんなんだ?こいつ」
「・・・君がもし、僕を差別対象として見ているのなら、それは別に構わないよ」
「?」
パスポートを見ていた男は突然三上が語り出し顔を上げた。
「何を言っているんだ?」
「産まれた地、育った環境、教えられた教育で人は人格を形成する。君はどんな風に育って僕をどんな風に見えてるのかはわからないけど、別にそれは間違ってない。それは君なりの正義があっての事だ。けどそれは僕も同じだ。僕は君を平等の存在として見てる。僕は確実にちゃんとした手続きをしてウーネア アダムスに会いに来た。それを君が拒む理由があるとしたら、僕を人間として見ていないからだ・・・だったらどうするかな?」
「まずいですわ・・・あなた!!さっさと道を開けなさい!!」
三上が殺気を醸し出し始めた。
「ダメですね。尚更こんな奴を中に入れる訳にはいかない・・・」
男はアサルトライフルを取り出した。
「え、あなた・・・まさか言葉通じてますの?」
「うん、通じてる筈だよ。だってさっき僕がここに到着した時、遠くから聞こえたんだ。変なアジア人がいるなとかなんとかってね・・・」
「お前のような奴が、あの方に会おうなど100年早いぞ」
「100年・・・待ってあげてもいいけどあいにく時間が無いんだ。それに、100年経った所で今の君が成長しない限り、何も変わりはしないよ・・・」
「言わせておけば!」
そして男は銃を三上に向けて構える。
「おい!流石にここで撃つなよ!?」
やばいと感じたもう1人が抑えようとする。
「殺す覚悟は出来てるの?ならば撃てば良いよ。あはっ!さぁ、撃ってよ!!」
三上は緊張感に当てられて爽やかに笑う。
「気色悪いメスチビ猿が!!」
男は引くに引けず、本当に引き金を引いた。だが、弾は出なかった。
「やれやれですわ・・・」
キャロラインは大きくため息を吐く。その時三上は刀を手に持ち、男の銃を真っ二つにしていた。
「なに・・・!?」
「今・・・僕の事、なんて言ったのかな?メス・・・だって?」
三上はにっこりしたまま男の首元に刀を突きつける。
「その白い刀は・・・貴様、それを何処で!?」
男は質問の内容よりも突きつけられた刀に意識が向いた。
「これは僕のだよ。僕が天石を打って鍛えた・・・そうだ、君は僕に服装を指摘したね。だったら・・・特異点制御限定解除」
「なっ!?」
三上の持つ刀が突然真っ黒に焦げた。そして一気に三上の姿は光に包まれ、天女の羽衣を纏った巫女のような衣装に変わった。
「これなら、文句無いよね?」
「き、貴様は・・・一体!?」
「お姉・・・さま?」
その時だ、この門の奥から女性の声が聞こえた。




