sins of the time
文化祭から数日後・・・
ここはミツキの天正第二中学へ向かう道と、三日月の宮ノ下小学校へと別れる道。そこに2人の女性教師が立っていた。
1人はミツキのクラス担任、グレイシア ダスト。そしてもう1人は三日月の担任、黒乃 純恋。
2人はここで登校途中の生徒の挨拶運動をしていた。
「グレイシア先生!!おはようございまっす!!」
「うん、おはよー・・・だから」
「ね、眠そうですね先生・・・」
「さー・・・むにゃ」
グレイシアは普段のキリッとした印象とは裏腹に朝は弱い。特に挨拶運動のある週は普段より早起きしなくてはならず、寝ぼけた顔でふわふわしている。天正第二中の生徒は少し心配そうに見ていた。
一方。
「せんせー、おはよーございまーす!」
「はいおはようございます!朝から100点の挨拶ね。素晴らしいです」
宮ノ下小の生徒は純恋に挨拶すると、元気な挨拶が返ってきた。
しばらくして、生徒の流れは止まった。
「・・・グレイシア先生?朝からそんな風では生徒に示しがつきませんよ?」
純恋は隣にいたグレイシアに問いかけた。
「そうなの?」
頭が回ってないアンドど天然なグレイシアは、首をかしげて大あくび。
「一日の始まりは挨拶から。ずっとその感じだと、いつか三上君に愛想尽かされるわよ?」
「え・・・やだね、それ」
「だったらシャキッとしなさい。三上君、今フランスに向かってるんでしょ?今あの家はあなたと飯綱の2人、あなたがしっかりしないと」
「う、うん・・・レイにも出かける前に言われた・・・から」
グレイシアは少し申し訳なさそうにした。
「流石は三上君ね。あなた、彼の奥さんなら彼に見合うようになりなさい。でなければ、私が寝取るわよ?」
「・・・?一緒に寝たいの?」
グレイシアは寝取るの意味が分からなかったらしい。
「三上君をあなたから奪って私だけのものにするって意味よ」
「・・・それ、無理だから」
グレイシアはようやくむっとした表情に変わった。
「えぇ無理ね・・・けど、あなたを倒せば彼は私に振り向いてくれるかもしれないわ」
「それも無理だから。純恋先生、何が言いたい?」
「私は、三上君が産まれた時から彼を知ってるのよ。最初は助産師として彼を取り上げ、近所のお姉さんとして彼を見守り、教師として彼を導いてきた・・・私が、彼を作った・・・」
「なんで、そんな事を?」
グレイシアは少し毒気のある純恋の言い草に少し引いた。
「時の流れには感覚ってのがあるの。彼が新たな転生者として産まれるのは知っていた。けど、私はその時感じたの・・・次の転生者はこれまでと明らかに違う存在になるってね。そして産まれたあの顔を見て私は実感した・・・私は、彼に尽くす為にこの世界に存在するのだと・・・神を超える存在なのがすぐに分かったわ。
私は彼を育て、そして彼を異世界へと導いた。そう、三上君を異世界へと導いたのはこの私。あなたと出会わせたのもこの私よ。そして、彼は私の求めた答えの全てを上を行く答えを示してくれたわ。だからこそ、これまでは彼の妻があなたである事に異議を唱えるつまりはなかった・・・けど、今のあなたでは迎える最後の決戦で、彼の隣に立つのは相応しくない。邪神の子、氷の女王、グレイシア ダスト」
純恋はじっと殺気をグレイシアに放つ。
「・・・確かに今の私はレイの隣に立てるのか分からない。だったらそれを証明する方法は簡単。あなたに示せば良いから・・・」
グレイシアは氷の剣を純恋に向けた。
「そう来なくてはね・・・やっと、やっと殺せるわ。ずっとあなたを殺したかった・・・死になさい、グレイシア!!」
「っ!?」
クロノスが眼前に手をかざすと、3本の時計針が一つになったような大型の剣が現れた。
「これが、クロノスの剣の本来の姿。時よ・・・囲め!!」
クロノスは剣を天に掲げると一気に別空間へと転移した。
グレイシアは一瞬動揺したが、やる事は変わらない。氷の剣を構えた。
「あなたが、レイの事が大好きなのは分かったから。けど、気持ちの大きさなんて見えないものを示されても私には分からない。私だってあなた以上にレイの事、愛してるから」
クロノスも剣を構える。互いに睨み合い、次の瞬間には剣を合わせていた。