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俺の日常、その中で

 ーーー到達点 (グラウンド ゼロ)


 「めない・・・僕はまだ、諦められないんだ」


 赤く染まる空、目の前には誰かがいる。


 「・・・そうなんだ。ここまで来ても君は・・・いや、君らしい答えだね、礼。こんなに『死』を目の当たりにしても君は自分を曲げない・・・昔、ニヒルさんは言ってたね。勝負の最後は互いに分かりあって仲直りって。だけど、まだ僕たちは分かり合えてない。君を、完全に屈服させるまではこの勝負は終われない。


 ならさ、勝負をしようよ。正真正銘、この世界の総てを懸けた、最後のゲームを」


 白い髪を持ち、赤い目をしている少年は語りかけた。


 「今の()()()なら変えられる・・・行くよ、桜蘭」


 そして白髪の少年は空へと舞い上がり、大きく手を広げた。


 「平和を願いし者たちよ、この世界で闘う者たちよ!」


 そこに見えたのは、白い髪を持ち、赤い目をした1人の・・・


 ・ 


 ・


 ・


 「はっ!?」


 俺の部屋だ・・・今のって、三上?昨日あんなもん見ちまったせいか・・・変な夢見た。


 俺の名は輝夜 三日月、小学5年生、バカ姉ことミツキの弟だ。どうにも、あのバカ姉、なんか変な事に巻き込まれてるっぽい。


 俺はベッドから起きた。あんな事件に巻き込まれても、俺の学校生活は普通に続くらしい。無論当事者のバカ姉もなんだが・・・


 寝てやがる、昨日までガチガチで酷い顔してたのによ。


 「おら!起きろ!!」

   

 「はぎゎ!?っ、三日月・・・だから私の部屋に勝手に入らないでって何度も・・・」


 「知るか、お前が起きないのが悪ぃんだろうが。遅刻するぜ?」


 「・・・・・っ」

  

 バカ姉がのそのそと準備してる。俺はさっさと下降りて朝ご飯食べよ。


 「おー三日月〜、お前は相変わらず早起きだな〜」


 父ちゃんが相変わらずのんびりとソファにくつろいで寝転がってる。ほんと仕事何してんだ?昨日のあのいかにも偉い人ですみたいな奴と知り合いっぽかったけどよ。まいいか、ちゃんと仕事してんなら。


 さてと、準備は終わった、そろそろ学校行くか。





 「くぁぁ〜・・・・むにゃむにゃ」

 「あーあー!ちょっと飯綱!!服後ろ前反対!!」


 「んおー?」


 ありゃ三上と飯綱だ。飯綱の奴相変わらず眠そうにしてんな・・・で、服が逆だから三上がせかせかと追いかけてきた感じか。昨日のあれが嘘みたいに普通だ。


 「あ、三日月君おはよう」

 

 「おーす!!みかつき〜!!」


 「だからみか『づ』きだってば、『つ』じゃねー」


 いい加減覚えてくれ。


 「よし、これで大丈夫。もー、ちゃんと服は着なさいよね?」


 「服なんて大体同じじゃーん」


 三上はやれやれと首を振ってる。にしても、前見た時も思ったけど三上って、母ちゃんっぽい性格してんな。


 「じゃ、僕はこっちだから、飯綱の事宜しくね」


 「あいよー」

 「んじゃねー礼にーちゃーん」


 俺は飯綱と一緒に学校に向かった。最近ちょくちょく通学中に鉢合わせるからよく一緒に向かってる。


 「なぁ飯綱、お前もあのバケモノって奴と戦ってんの?」


 俺は何となく聞いてみた。


 「んお?そりゃおいらその為に来てんだも・・・って、みかつきしってんのーっ!?」


 「まぁ、昨日バカ姉が原因で巻き込まれてな。てか三日月な?」


 「へー、礼兄ちゃんにはあんま喋っちゃだめーって言われてんのさね。なら改めてましてだねぇ。おいらの事はこれからマイケル・◯・フォックスと呼んでくれ!!」


 「ピー音入ってんぞ?つーかなげーよ、ならフォックスって呼ぼうか?」


 「それで良いよー!」


 三上と違って適当な奴だな。けど、確かに言われてみればキツネみたいな性格してんな飯綱のやつ。


 「それより三上のあの力、一体なんなんだ?お前もあれくらい強いの?」


 「んお?礼兄ちゃんは、めっちゃ強いよぉ!!こう!ズバババァッて!!敵をバッサバッサさね!!」


 飯綱は手刀でわちゃわちゃして見せた。


 「けどまぁ?魔法に関しちゃおいらの方が上かなぁ?あ、殴る蹴るなら零羅の右に出るものはいないよぉ?こう、ばっこーんってぶっ飛ばすのさ!!」


 今度はボクシングみたいな動きを始めた。にしても、あいつ・・・そんなにやべーの?俺は俺の知ってる零羅を想像した。


 「ちょっと飯綱さん!人聞きの悪い事言わないで下さいよぅ!!」


 噂をすれば何とやら、お上品な服、お上品な言葉遣い。とても暴力に結びつく見た目してない。まぁそれを言うのなら三上も大概か・・・


 「ご機嫌よう三日月さん、今日も良いお天気ですね」


 そしてこのにっこり笑顔。


 「みかつきさぁ!昨日バケモノと出会っちゃったんだって!それを礼兄ちゃんが倒したから良いんだけどさ!」


 「まぁ、そう言う事でしたか。だとしたら仕方ありませんね、わたくしの正体を明かす時が来たと言う事です!わたくしはROD先遣隊一員にして、神破聖拳を継ぎし者!神和住 零羅です!!」


 「お、おぅ・・・」


 うん、なんか今ので見方が180度変わった。こいつ多分バカ姉とウマ合うぞ?


 「ま!おいらたちがいればあんなバケモノなんてやっつけてやるさね!」

 「ですからご安心ください」


 「・・・あのさ、なんでお前たちはそんな強さ持ってんだ?」


 アニメか漫画みたいなデタラメな強さ。フォックスもこの零羅も、適当な感じなのにめちゃくちゃ強い。俺はその理由が知りたくなった。


 「んお?おいらはただ単に礼兄ちゃんと一緒にいたいだけさね」


 「わたくしも似たようなものですね、みなさんと一緒にいたい。それだけの思いがあれば十分です。多分、世の中のみんなそんなものですよ。それを行動するかしないか、それぐらいの違いしかないのです」


 するかしないかか・・・俺はそこが知りたい。何故すると言う選択が出来るのか・・・


 「コラあなたたち、いつまでも道の真ん中で話していたら迷惑でしょ?早く学校に行きなさい、遅刻しますよ?」


 「あ、スミレ先生」


 黒乃(くろの) 純恋(スミレ)、俺たちの担任教師だ。真面目な性格だけど、割と気さくで話しやすい人だ。何でこんなとこに?


 「それから・・・学校はそっちではありませんよ霧矢君?」


 霧矢?何処にって・・・あ、


 「なははー!!また間違えちった!!」


 霧矢は俺のダチでサッカー仲間だ。ただ、極度の方向音痴で時折遅刻する。


 「はぁ、集団登下校を学校に進言した方が良いかしら」


 一理ある。とは言っても集団で登下校か。なんかダサいな・・・


 「んじゃ行くぜ?遅刻しちまう」


 俺は一歩歩き出そうとした、その時だった。




 『止まりなさい』




 急にスミレ先生に止められた、俺は振り返った。


 「は?」


 なんだこれ・・・みんな固まっちまって。まるで時が止まったようにみんなが止まってる。


 けど、その中で俺に向かって歩いてくる人が1人いた。スミレ先生だ。


 「三日月君、ちょっといいかしら?」


 「先生?これは、何が・・・」


 「あなたは、強くなりたい?この子たちみたいに」


 まさか、あんたもなのかよ・・・俺はこの時初めて先生の顔をじっくり見た気がする。なんか、異様な感じだ・・・なんて言ったら良いんだ?普段は優しい笑顔だけども、なんか、重てぇ。


 「さぁな。けど、そんなん聞かれて強くなりたくねーって奴いんの?」


 「少なくとも三上君は、力は無くともただこの世界で生きたいと願ったわ」


 「それ、漫画でよく聞くセリフだな。けど、そんなもん力を手にした奴だから言える事だろ?だから欲しいに決まってんだろ、あんなのに巻き込まれたからには・・・余計に・・・」


 「そう、大切なのね。お姉ちゃんの事が」

 「ばっ!!そんなんじゃ!!?」


 何で咄嗟に取り繕おうとするんだろ。バカだとは思うけど同じ家族だろ?それを大切に思う事がなんで恥ずかしいって感じるんだ・・・


 「ふふ、若いわね。自分に正直になれないのは今は仕方ない事よ。子供は親に反発する反抗期を経験して成長するものですから。今はそのままで良いです」


 「あんた・・・何者なんだ?」


 俺は聞いた。先生は、飯綱たちとはまた違う感じがしたからだ。


 「私はクロノス、聞いた事ある?ギリシャ神話ってお話に出てくる時間の神様なの。今も、周りの時を止めて君と話してる」


 神様・・・突拍子もなさ過ぎてどう反応すれば良いのやら。


 「俺に・・・何をさせたいんだ?」


 「私はこれまで誰の味方になるつもりは無かった。彼と出会うまでは・・・三上 礼君。あの子は特別、あの子なら全てを変えられるって、私は確信してる。だから私はあの子の為なら何でもする事にしたの・・・私は時間は操れても運命は操れない、けど、あの子の特異点なら運命をも捻じ曲げる。私は三上君が勝つ事に全てを捧げる。その為にならあなたを巻き込む事は厭わない。


 三日月君、これは言ってしまえば取引、私の力をあなたに分けてあげる。その代わりに三上君の為に動いて」


 心酔・・・俺の目にはそうとしか見えなかった。三上がいなかったらおそらく、先生は敵だっただろう。三上の存在のお陰で先生はここにいる。つまり、先生はかなりヤバい奴だ。俺の心はそう告げた。


 「三上は言ってた、巻き込ませてもらうって。だから俺は関係ねーだろとかもう言えない。それに、俺は力を手に入れてみんなを守れるんなら、断る理由なんかねぇだろ」


 本心はどうなのか・・・欲しいに決まってる。だが、心の何処かに不安があるのは事実。俺は今、正しい判断が出来たのか?


 「とても良い返事ですね、85点で合格。ただ、少しだけ迷いがあるみたいね。そこがマイナスポイントです。が、この程度は構いません、仕方ない事ですから」


 先生は俺の目線に合わせてしゃがんだ。


 「で、力ってのは何なんだ?」


 「まずはこれをあげるわ」


 先生は首から下げていた懐中時計を俺の首に付けた。そして


 「うわっ!?」


 時計が急に輝き出し、俺の手元には淡い色で輝くクソ長い時計の針が握られていた。


 「これがあればあのバケモノや悪魔とも戦える筈です」


 武器・・・しかも剣。銃ならともかく剣だと護身用がせいぜいだ。俺は三上みたいに動ける訳じゃない。


 「この時計はあなたが念じればその思いに応えてくれる筈です。時計の学校への持ち込みは私が許可しますから。あなたはこれを肌身離さず持ってなさい」


 この長い針は時計に吸い込まれるように消え、普通の懐中時計になった。


 「嬉しいですけど、俺、ケンカはした事あるけど剣なんて握った事ねぇぞ?」


 「なので、もう一つ君に力を差し上げます。これは私の力の一部。全部差し上げても良いのですが、それでは君が壊れてしまいますね。ですから力の一部を差し上げましょう」


 先生から突然真っ赤なオーラみたいなが溢れ出た。


 「せ、先生?」


 「難しいでしょうが、怖がらないで下さいね?あなたが怖がれば失敗してしまい、力が上手く渡せないのです」


 とは言ってもよ、取り繕う事は出来ても心の底から怖がるなは無理だろ・・・


 「仕方ありませんね、三日月君?目を瞑って・・・そう、その感じです。そして楽しい事を想像しましょう。例えば好きなサッカーの事とか・・・そう、良い感じで落ち着いてきましたね」


 俺は言われるがまま想像した。


 「では、好きな女の子の事を考えましょう・・・あ、好きな子はいたかしら?」


 好きな子?分かんねぇよ・・・


 「あら、そこはまだ子供だったのね。けど素晴らしい事よ?今の子に比べると凄く純粋なのですから・・・けど、あなたにも好きな子はいるわ」


 っ!?何だ今の・・・あれは、誰だ?黒い髪の・・・女の子。


 その時だった、急に口元があったかくて柔らかい何かに包まれた。俺は驚いて目を開けた。すると先生が俺の目の前まで迫って唇を俺の口に押し当てているのが分かった。


 俺は慌てて引きはなそうとしたが、頭を掴まれてより強く押し当てられた。


 「っ!!!ぷぁっ!!!せ、先生!!な、何すんだよ!!」


 「驚かせてごめんなさい、力の譲渡にはこれが一番手っ取り早いのよ。それで君に与えた力は時を止める力、今私がやってるコレの事よ。ただ、あなたの場合はこんなふうに何十分、何時間と止めるのは不可能、30秒でおそらく限界を迎えるわ。次の体育で使ってみる?最速タイム出せるわよ?」


 時を止める能力・・・しかも30秒。


 「そんなホイホイ使って良いのかよ」


 「構いませんよ?ただ、五十メートル走るのであれば、普通に走った方が疲れません。私の知り合いが言ってました、使い方はあなた次第。私から言えるのはそれだけです。さて、時間を戻しますよ。あ、キスの事は秘密にね?儀式とは言え、教師が生徒に手を出すのは0点の行為ですから」





 「んおー?みかつき何してんのー?遅刻しちゃうぞー?」


 戻った。先生も平然とした顔でいる。


 「霧矢、そっちは家だっつーの?」

 「あり?」


 「ふふふ、それではみなさまで学校行きましょう」


 俺は横目に先生を見ながら歩いた。先生は小さく俺に小指を見せて指切りの合図を送っていた、俺もそれに合わせた。そして瞬きした瞬間、先生が消えた。

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