sins of the journalist
罪の始まりは何処からか・・・始まりはほんの小さく純粋な願い。その小さな願いを叶える為に罪は生まれる。そしてそこから罪は繋がる。願いを授かり、罪は継承され、後世へと永遠に続いていく。人知れず、自らが罪である事なぞ知る由もない。
罪なき者たちが積み重ねた罪の連鎖、それを終わらせるには、お前は何を選ぶ?
第六局面 SINS OF THE UNKNOWN
天正市 某テレビ放送局支社
「やはり納得できません!!この事実は報じるべきです!!」
増子味 報道は自身の出ているニュース番組のプロデューサーに直談判を行っていた。
「またそれか増子味君、いいか?赤い空に関する事は我々も把握している。そして政府も、アメリカも、更には国連もだ。そこら辺全てから通達が来ているのだ。赤い空に関する事は一切報じるなとな」
プロデューサーは椅子にもたれかかって少し気怠けに対応した。
「でも実際に何の関係もない人たちが既に襲われています!警告だけでも伝えるべきです!」
そんなプロデューサーに増子味は突っかかった。
「あのね、君の言いたい事はよく分かる。赤い空から怪物が現れ人々を襲っている、とても撮れ高のありそうなニュースだ。だが物事とは天秤かける必要があるんだよ。その事を報じたらどうなる?世間は大騒ぎになり、憶測が憶測を呼び、最悪内乱にまで発展しかねない。我々の報道一つで国が崩壊しかねないんだよ。
増子味君、巻き込まれた恐怖は解るが君はフリージャーナリストか?いやアナウンサーだ。ディレクターでもプロデューサーでもAD等でもないんだ。ニュースは私が作る。君はそれを報じる。それ以上の事はせんでいい」
プロデューサーは少し前のめりになって増子味に迫った。
「・・・あの時、あの子たちは何も分からない筈なのに武器を握った。損得なんて関係なく、ただ友達の為に武器を取った・・・けど、私たちだけは逃げた。あなたが言うように天秤にかけたからよ。その結果、私の中に後悔が渦巻いてる。今はまだこの町で被害を食い止められてる・・・けど、敵はそんなのお構いなし。いつか全世界に向けて攻め込んで来るんですよ?平和な時代が終わりを告げようとしてるんです。そんなの損得の天秤で量れる事じゃないでしょ!?」
増子味は声を荒げて迫り返した。そのバチバチとした雰囲気に周囲は静まり返った。
「あーわかったわかった、そう熱くなるな。君がそこまで言うのならやろう」
「ほ、本当ですか!?」
増子味は自身の主張が通り喜々とした。
「ただし、君がさっき言ったように物事を天秤にかけずにいられるのならな」
「・・・」
増子味は不穏な空気を察して息を呑んだ。
「丁度、私の知り合いにとある映像作品の監督をしている人がいてね、いつか君に出演してもらえたらなとこの間、酒の席で話していたんだ」
プロデューサーは一冊の冊子を増子味に差し出した。
「『美人地方局アナウンサー、生まれて初めての・・・』って、これAVじゃないですか!!?何考えてるんです!?」
「そうだ、君の望む報道をするんだ。私のキャリアを危険に晒してもな。だったら君もそれ相応の対応をしなければならないのは当然だろう。むしろ安いくらいだ・・・どうだ?君の天秤はどっちに傾いている?」
「っ・・・!!!!」
増子味は思っても見なかった仕打ちに声が出せなくなった。
「嫌なら嫌と言えば終わるんだ、どうせ酒の席での話だからな。ま、個人的に言えば興味はあるがな」
プロデューサーはニヤリといやらしく笑う。一方増子味は羞恥心を抉られて今にも泣きそうな顔になっていた。
「・・・・・・・っ!!少し!!時間下さい!!」
増子味は大声を張り上げた。
「ああ構わんよ。だが、既に天秤にかけたな・・・答えは今日中だ。答えがなけれ報道もしないし君はAVに転向する事になると思えよ?」
増子味はプロデューサーの言葉を無視して外へと飛び出した。ひたすらに走り、気がつけば河川敷にいた。
「はぁ・・・はぁ・・・疲れた・・・」
彼女は堤防の階段に腰掛けた、そして俯きながらぼやく。
「結局、天秤にかけた・・・あの子たちなら、こんな時どうしたんだろ・・・私は、間違った事なんかしたつもりはないのに・・・どうしてこうなったの?」
増子味はしばらく太陽光の反射する川の流れをじーっと見つめていた。そんな事をしていても答えは見つからないと分かっていても彼女はただひたすらに憂いていた。
「おや?随分と浮かない顔をしてらっしゃいますね。それではせっかくの綺麗なその顔も台無しですよ?どうされました?」
「へ?あ、あなたは?」
階段上にある堤防道路、そこにこんな河川敷が似合わない格好の青年?がいた。まだ少し暑さの残る季節であるにも関わらず燕尾服姿で、青緑色の髪と頭から生えた2本の角、そして尾てい骨付近から大きな鱗に覆われた尻尾が覗いてる。
「あぁ、これは失礼しました。僕は青龍です。以後お見知りおきを」
青龍は増子味の下まで降りて深々と頭を下げて挨拶した。
「あ、これはどうも・・・」
増子味は少し慌てながらも挨拶を返した。
「えっと・・・その風貌は・・・」
そして増子味はこの異様な風貌について質問した。
「これですか?僕は元々龍ですから。この姿は人間社会に適合するためにこの姿になっているだけです。まぁ、本来の姿に比べて疲れるんですけどね。それに完全な人間にはなれない」
「あ、この感じはもしかして、ミツキちゃんの知り合い?」
「おや、貴女もそうでしたか。どうりで順応が早いわけですね。とても嬉しいです」
青龍はにっこりと笑った。その爽やかな笑顔に増子味は少し顔を赤らめた。
「それよりも、こんな所で何をなされていたのです?人間はこの時間帯誰もが仕事をしていると聞いているのですが」
「ちょっと、逃げちゃって・・・あなたこそこんな時間に何を?」
増子味は逃げた理由を話せなかった。代わりに同じ質問を青龍へと返す。
「僕は天正第二中学に編入出来ないか直談判に向かったんです。あそこの方々は本当に素晴らしかった。僕は近くで見てみたかったんですよ。何事にも縛られず、動けるあの子たちを近くで見てみたかった。しかし、流石にいきなりは断られましてね。今はその帰りです」
青龍は自身の失敗談をにっこりと語った。
「・・・私は、あの子たちの勇姿を伝えたかった。そしてこの世界に迫っている危機を伝えたかった・・・けど、それが出来なかった・・・」
「それは何故?」
青龍はキョトンとした顔で増子味に聞き返す。
「天秤にかけたの。私の人生か、みんなの人生か・・・私は前者を選んでしまった。ねぇ、なんであの時あの子達は武器を取れたのかな?」
「それは僕にも分からない。僕はずっと悪夢の中にいましたから・・・けど、輝夜 ミツキさんはそんな僕を救ってくれました。まだ出会った事も、いや、なんなら敵となっていた僕に手を差し伸べた。彼女にとっては親友を助けるついでだったのかもしれませんがね。けど、それが彼らが武器を取った理由に繋がるのかもしれませんね。あの子たちは天秤にかけるくらいなら両方取る、僕の目にはそう見えました」
「両方・・・」
「つまり、自分の人生もみんなの人生も、自分の納得する答えを得るまでもがき続ける。今はダメでも、いつか必ず・・・」
青龍は少し噛み締めるように呟いた。
「あー!青龍いたー!!」
「おや?白虎じゃないですか。相変わらず元気そうで嬉しいですよ」
するとそこへ白虎がやってきた。見たところ所々泥が付いている。どうやら友達と遊んできたらしい。白虎は人間体であるにも関わらず四足で駆け抜け、青龍の足元に飛んできた。
「わ!ね、猫耳・・・と、尻尾」
増子味は白虎の白い虎柄模様の耳と尻尾に驚いている様子だ。
「ん?あ、お天気のお姉ちゃんだ!!俺毎日見てるよ!あのさ、なんでお天気コーナーってあんなに面白いの!?」
次の瞬間には白虎の興味は増子味に向いて、質問責めしていた。
「あ、いつも見てくれてありがとう。お天気コーナーは私も好きかな。あれだけは・・・私が正しいと思える事を伝えられるし・・・はっ!?ごめん!いきなり変な話しちゃった!?」
増子味はふと自身の愚痴を漏らしていた。
「なはは!!お姉ちゃん面白ーい!!けど俺はいつもの元気なお姉ちゃん好きだなー。所で青龍と何してたのー?もしかして付き合ってる?」
「え、いや!たまたま会っただけで!!」
増子味は突然の白虎のいじりに慌てふためいた。
「やっぱり面白ーい!!」
「こらこら白虎、あまり人を困らせてはいけませんよ。さて、そろそろ行きましょう。丁度、中学への編入も叶わなかった訳ですから、救出にでも向かいましょうか」
「あ、行くの?」
青龍は突然何かを思い立ったように呟いた。
「救出?何かあったんですか?」
増子味はその事が気になって質問した。
「僕たち四神の残る二人、玄武と朱雀・・・彼らは今も尚悪魔の礎にされています。あの2人を救い出すのは白虎1人では荷が重い。けど、四神2人ならば、取り戻せるかもしれません・・・」
「えー、めんどーくさー。寝よ」
白虎は酷くめんどくさそうにして、増子味の膝を勝手に使って寝だした。
「救出しないといつまで経っても朱雀の羽毛で遊べませんよ?あなた好きだったでしょ、朱雀の羽」
「うん、もっふもふだからね。やり過ぎると拳骨飛んでくるけどさ。うーん、やっぱりアレで遊びたいなぁ。行こ」
「決断理由適当か!」
増子味は白虎の自由な理由にツッコミを入れた。
「俺はテキトーに、毎日楽しければそれで良いもん♪」
白虎は屈託のない笑顔で言い放った。
「僕は皆の喜ぶ顔が見たい。それは僕の喜びになるのですから・・・それに、悪魔は我ら四神の持つ感情を利用して動いています。つまり、あの2人を取り戻せば悪魔をコントロールする術を敵は失う・・・永零攻略に大きな助けになると思うのです。そうだ、貴女もついてきますか?我々の救出作戦に」
突然何を思い立ったのか、青龍は増子味に同行をお願いした。
「え、私!?」
「えぇ、僕の尊敬した人間は思い立ったら即行動する方でした。僕は彼女のような生き方にひどく感銘を受けましてね、今実践しようとしてる所です。貴女はどうですか?危険を顧みず僕と来るか、それとも再び天秤にかけますか?」
増子味は少し戸惑った。しかし、決断は割とすぐだった。
「行くわ」
「おや、早い決断だ」
「ちょっと良い事思いついてね。今度はあのクソPに天秤使わせてやる。政府連中の言いなりになるのか、はたまた喉から手が出るほどの記事を捨てる事になるのかをね。誰がAVなんかに出るもんですか。実力でねじ伏せてあげるわ。
あの赤い空の世界に行くんでしょ?あの世界は電子機器が使えない。だからカメラは回せない。けど、フィルムカメラなら写る。前は失敗したけど、今回はあなたたちがいるから大丈夫。バッチリ写して、確固たる証拠を抑えてあいつに送りつけてやるわ」
増子味は自前のフィルムカメラを取り出した。
「ふふ、いい笑顔ですね。その笑顔、惚れてしまいそうな程綺麗です、では参りましょう。白虎、増子味さん」
3人は救出に向けて歩き出した。




