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私の親友

 意識が・・・遠のく・・・いや、死ぬな!!


 「・・・っ!!!ぐっ!!!ぬぅあああ!!!!大ぁぁぁいぃぃぃぃ佐ぁぁぁあああああっ!!!!」


 「アラ?」


 私は大佐を呼び出して貫かれた胸から刀を抜かせて、治させた。


 「はぁ・・・はぁ・・・」


 私の目の前・・・ネーちゃんがいる。いつもと同じ笑顔。けど、手元には私の血が滴り落ちる刀が握られている。


 「え?え?な、なんなの?これ・・・」

  

 状況が追いつかない東郷がキョロキョロしてる。


 「おかしいネー、殺し損なっちゃったヨ。なんで防げタ?」


 「狙われるとしたら今だって分かってたから。心が幸福感で満たされた瞬間、それはイコールセカンダビリティを奪える時の条件と同じになるって考えたの。だから私はランウェイ歩いてる時に小声で大佐を呼び出す詠唱を行ってた。それで・・・やっと犯人は見つかったね」


 どういう顔を見せれば良いんだろう。どういう顔でネーちゃんを見れば良いんだろう。けど私は眉間に皺を寄せてネーちゃんを睨んだ。


 「ちょちょ!!ミツキ!?あんたがチャンの潔白を証明したいって言ってたじゃん!!それにチャンさんも!!い、意味がわからない!!これも何かの芝居!?」


 東郷は頭を抱えている。私もそうしたい、けど今現実は目の前にいる。


 「私は今もそう信じてるよ。ネーちゃんは今誰かに操られてこんな小芝居をやらされてるって・・・私はずっとネーちゃんの潔白の証明を探してた。けど、いくら探しても三日月を襲ったのはネーちゃんしかいない。だって、他に犯人が全くと言って良いほど浮かばなかったんだもん。それで出した答えはネーちゃん、あなたを試す事だった」


 私は銃を抜いた。


 「アイヤー・・・ミッちゃんは私を信じてくれてたって言ったのに、1番疑ってたのはミッちゃんだったなんてサ、酷い人ヨ」


 「御託はいい。早くネーちゃんを返して」


 聞くに耐えない。その声で、その姿で、その顔で私の大切な親友を語るな。


 「返ス?何言ってるネ?ワタシはワタシ、誰にも操られてなんかないヨ?これが本当のワタシなんだかラ」


 んな訳あるか、私から見ても明らかに違う。さっき私の後ろに立った瞬間、まるで別人の殺気に変わったの知ってるから。


 「へえ〜、じゃあ君は第三帝国のネー・チャンさんって事で良いんだ。けどさ、第三帝国は今しがた滅んだよ?仕える主もいないのに君は何のために任務を遂行するの?」


 三上君は凄まじい殺気を放ちながらにこやかに質問する。


 「んー?三上君、今の見てなかったネ?ワタシはミッちゃん刺し殺した。復活しちゃったケドサ・・・手に入れたヨ。ミッちゃんの能力はやっぱりセカンダビリティと同じ理論ダ。そしてミッちゃんの能力を応用すれバ・・・」


 この感じ・・・ネーちゃんが、消えた。


 「死者をも生き返らせられるのだよ・・・」


 奪われた・・・今、目の前にいるネーちゃんは、さっきのあの男!黒星に乗っ取られた!!


 「自己紹介し直しておこう、私は黒星・・・第三帝国の」

 「おいっ!!!!」


 私はブチ切れて叫んだ。


 「なに?」


 「さっきも言ったよね。さっさと・・・私の親友を返せ」


 今ならガチで殺気を向けられる。待っててネーちゃん。今こいつぶっ殺してあなたを取り戻すから。


 「返す?ふはは!!まだ勘違いしているのか!!この女はお前の為だけに生み出した存在だ。それ以上でもそれ以下でもないぞ?」


 「どういう意味?」


 私は聞き返した。


 「知りたければ教えてやる。そうだ、彼女自身から聞くと良い。話せ」


 この感じ、戻ってきた。


 「ネーちゃん!!戻ってきて!!」


 今やれる事を!出来る限りの事を!!


 「だから無駄だってバ」

  

 「なんで!?」


 私が叫んだ時、答えが来た。






 「ワタシはネ、もうとっくに()()()()()ってコト」




 

 ネーちゃんの口から直接伝えられた真実。


 「嘘だ」


 私の口から出たのは勿論否定だった。


 「殺されてるって・・・チャンさん、ちょっと流石にそんな冗談はやめてよ・・・」


 軽音が震えた声になっている。


 「冗談じゃないネ軽音ちゃん。この身体は死体、この子は今年の3月30日に殺されてるネ。あの日の天気は曇り、ワタシの家に空き巣が入ったヨ。両親は出かけててサ、ワタシは1人お留守番してたネ。その時、犯人さんと偶然鉢合わせちゃむたワタシを黙らせる為にワタシを押し倒して頭ぶつけたネ。それから慌ててた犯人は無理矢理ワタシのと口と鼻を押さえられたから窒息死しちゃったヨ。


 にゃふふ、そっからは死体としての記憶だけド、その犯人ったらワタシをどうしたと思ウ?まさかの死姦ヨ!強盗に入っテ、金品漁るだけじゃ飽き足らズ、たまたまいたワタシを殺して犯した!にゃはは!!こんなゴミ野郎も!この世界じゃ一般ヨ!!」


 っっ・・・なんて、事を!!


 「そんでサ、その時第三帝国は天正第二中に三上が潜入するって情報聞きつけててサ、第三帝国はワタシの死体に目を付けワケネ。犯人さんはそこで抹殺シテ、身分も戸籍も全て洗い出して消去シタ。それで私だけ一旦連れて行かれたヨ。その時使われたのがアウロのプロジェクトマキシマとサクリファイス2のデータ。帝国はそれを更に応用したのネ。


 記憶はかつてのまんマ。セカンダビリティを留めておく器としてワタシは生み出された。そしてワタシに下された命令は、三上にひっそりと近づくコト。次の日になって、たまたまミッちゃんを見つけたネ、ボロボロで街中を歩いてたよネ。その時丁度三上君も見つけてネ、服屋に入って行くとこ見たからワタシは、ミッちゃんを利用してファーストコンタクトを試みたんだヨ。利用されてるとも知らないデヘラヘラとワタシに服着せられてサ、バカみたいで可愛かったヨ」


 「だとしたら、その時で三上君が気が付かない訳がない!デタラメ言わないでよ!!」


 私は矛盾を探した。三上君の洞察力ならあの時点で疑いの目を向けていた筈だ。けど、三上君が疑いを持ったのは京都の一件を知ってから。あの時で三上君を騙すなんて無理だ。


 「そりゃそうヨ。だってあの時のワタシは殺された記憶も何もなかったもんネ。ただ頭の中の感覚に輝夜 ミツキと接触して友達になれって、そういう導があったダケネ。ミッちゃんは利用するのに丁度良かったんだろうネ」


 「なら、なんで三日月を狙ったの?」


 「あぁ、アレは帝国のポカネ。初めは三日月君の能力を狙ってたヨ。三上君に近過ぎず遠すぎない関係、それでいて超強力な時間支配。それをまず手に入れる事が私の最初の命令だったネ。そこでも丁度良いのがミッちゃんだっただけヨ。同じクラスメイトの弟、近づき易いデショ?


 で、セカンダビリティを手に入れる方法は身体を重ねる事は知ってるネ?ワタシあの時頑張って三日月惚れさせようとしたんだけどネ?能力を得るのに1番重要な要素である恋愛感情なんテ、作られた精神のワタシは持てなかったヨ。それと案外堅物な三日月君だったお陰デ任務は失敗。なんならそんなタイミングでユルグがワタシたちを止めに入ってきちゃったヨ。アレはほんと間抜けだったネー」


 「それがあったから・・・今度は私にシフトチェンジしたって事?」


 「そそ!ミッちゃん達と連んでるうちにサ、セカンダビリティの仕組みがどんどん解明されてっテ、ただ手に入れるだけなら対象の頭の中が幸福で満たされてる状態になれば良い。その際に出される心臓の血液を他者が取り込めば、それで手に入れる事も可能だって分かったんだヨ。


 それでワタシはミッちゃんとこれでもかと言う程親交を深めろって命令に変わったのネ。ミッちゃんが1番心を許せる存在になれ、って、私の中の導がそう命令したのヨ。ホラ、もう分かったでしょ?ミッちゃん、ワタシはあんたの為に生み出された存在なの・・・だから、邪魔しないでくれる?」


 っ!!


 今・・・なんて言った?邪魔をするな?私を、殺す気は無いって?


 「わかった・・・もういい、もう喋らなくていい。あんたは黙ってて。後は私が助けるから」


 「は?何言ってるネ。耳付いて無イ?あんたの知ってるネーちゃんなんていない。だってワタシは・・・」


 「死んでるんでしょ?知ってる・・・ネーちゃん、実はと言うと前々から知ってたんだ。この文化祭が始まる前には、もう、ね」


 「は?」


 「円卓メンバーに嘘は禁止・・・あらゆる可能性はシェアされる。ネーちゃんの潔白を証明しようとする中で見つかった1%にも満たない1つの可能性。それが既にネーちゃんは殺されてるかもしれないって事」


 教えてくれたのはシャルロットだった。三上君は必死に潔白証明しようとしてるから話せないけど、万が一、億が一の可能性を話しておくと・・・流石に最初聞いた時はショックだった。けど、シャルロットは教えてくれた。だったらどうなんだって・・・


 「あー・・・流石ネ。けど、その1%が真実だった訳ダ」


 「うん、けど認めない・・・あなたは確かに殺されちゃったのかもしれない。けど・・・ぐずっ、私が出会ったネーちゃんは確かに存在する・・・ずずっ、この半年を生きた私の親友がいる。例えそれが、作られた人格だとしても!!お前らごときが!!私の親友を乗っ取れると思うなよ!?


 私は知ってる!どんなモノにも心は宿る!!第三帝国!!ネーちゃんは殺されてなんかいない!!私の親友はここでちゃんと生きてる!!奪われてたまるか!!行かせてたまるか!!私は必ず取り戻す!!!」


 私は涙ながらに叫んだ。そして銃を構えて走り出した。


 「はぁ、感動的な所悪いけど、なんの感情も沸かないヨ」


 パチンッ!


 赤い空、そんなのは今は関係ない。私は突っ切る。他の事はみんなに任せるよ。私はネーちゃんを取り戻すから。


 分かってるから、中にいるって・・・今はまだその心が囚われてるだけなんでしょ?今、助け出してあげる。


 目の前に悪魔が現れた。最初に出会った悪魔、あのニヤケ面・・・!!


 「『崩壊の槍』!!」


 目の前でバラバラと悪魔が砕けた。


 「ミツキちゃんを行かせて!!一度死んだくらいが何よ!それを言うなら私も同じ!!一度サクラに殺されてるわ!!けど!今私はここにいる!!」


 ルイ先生だ。道を開いてくれたのは・・・まず1歩、後何歩走れば届く・・・


 「その道はミツキさんの道ですわ!ゲス共!そこをおどきなさい!!わたくしもルイ先生と同じ!!わたくしなんて2度も殺されてるようなものですわ!生まれた時!そして永零に殺された時!!たかだか1回殺された程度がなんですの!?


 生徒たち!立ち上がるのです!!!戦える者は戦いなさい!!戦えない者は下がりなさい!!この学校の生徒たちは皆!!自分は関係ない存在だ等と思う輩はいなくてよ!」

 

 キャロラインさんがサーベル片手に加勢してくれた。


 「・・・っ!!!おらぁ!!今は何も考えるな!!一年!!あんたらぼさっとしてんな!!近接戦闘叩き込んだだろうが!あんたらが先導切って進まねーとどうする!?とりあえずパールでも鉄パイプでもいい!!武器を取れ!!そして進めぇぇぇっ!!!」

  

 東郷が突撃ラッパを吹き鳴らし、生徒のみんな立ち向かった。


 「シャル!!」


 三上君が叫んだ。


 「武器転送!!なんでも良いから大量にこっちに送って!!剣でも銃でも!!とにかくなんでも!!」




 「「「ぅぅぅおおおおおおおおおおおっ!!!」」」




 そして生徒たちは武器を持って悪魔たちと戦いを始めた。まだ私は進まなきゃ・・・まだ届かない!!


 「三上、あんたミツキに教えてたのか?あの女が死体かもしれないってよ。お陰で慌てて戻ったのに損した気分だぜ」


 一兆が三上に語りかけた。


 「僕は言ってないよ?いくら僕でも彼女の友達が実は死んでるかもなんて言えないよ、失礼過ぎるでしょ?多分伝えたのはシャルだ。彼女なら僕より説明上手いしね」


 「成る程あいつか、にしても、俺もあり得ないって思ってたぜ。人間何処まで腐ればそんな発想出来んだろうな。死んでも尚誰かの懐の為にこき使われる・・・腹が立つなんてレベルじゃねーだろ」


 「そうだね。僕もそうだ・・・だからぶっ殺すよ。第三帝国を、この世から全て!!ビーンさん!グレイシア!フォックス!!行くよ!!斬絶剣・六刃!」


 「俺もやるか、ミツキ。俺はあんたに賭けるぜ!」


 分かってる。そして、その賭けは絶対に勝たなきゃいけない・・・


 「ライトニング・・・」


 私は銃を斜め下に構えた。そして、そのまま一気に突進し続ける。


 「その技は坂上 桜蘭ノ?」


 「ソード!!」


 私の銃口から電撃を纏った輝く刀身が伸びる。それを思いっきり振った。


 「ふう、ちょっと驚いたけどネ、全く剣術をやってないミッちゃんがこんな付け焼き刃の技使った所で無意味ヨ」


 案の定、簡単に防がれた。けど・・・


 「本当に無意味?」


 「え、あれ?」


 ネーちゃんは突然地面に膝をついた。


 「私のこの剣に詠唱の力を付加して放った。私の知るネーちゃんよ戻ってこいってね。この意味分かる?今、あんたの身体は拒絶反応を示した。それって中にいるって事でしょ?心の中に私の知るネーちゃんは囚われてる・・・今のあんたはネーちゃんじゃない。言うなれば、自分の事をネー・チャンと思い込んでる木偶の坊。魂は無い、心なんて以ての外!」


 「・・・ふーん。ナルホドネ。心のない器にも心は宿るっテ?確かニ、長い事この身体はただの人間として使われタ。そんな人形に心が宿る可能性もあるにはあるんだネ。だったラ、その心を殺せば良いジャンネ」


 「っ!?」


 この野郎!!なんて事を!!


 「サ、悪魔チャン、ワタシに力を頂戴ナ!マキシマムビーストと悪魔の力が合わさっテ!ワタシの中のワタシを殺しテ!そして新たな千年帝国へとワタシを導いてヨ!!」


 これは!私の詠唱!?しかも、自分で自分を殺すつもり!?


 「やめてぇぇぇっ!!!」


 私はもう一度剣を構えて攻撃に移る。


 「タイプ・・・デビル・マキシマ」


 「ほぎっ!!!くっ!!!」


 目の前で爆発が起こった。背中には巨大な蝙蝠翼と頭上に羊のような角。目も黄色く輝き瞳孔が縦長になっている。


 『カーンリョーネ!』


 ・・・ふざけるなよ。


 『どう?この姿、かっこいいデショ!!ミッちゃんこういうの好きだったもんネー!!で、いい加減もう分かったでしょ?ワタシはもう戻らない、ワタシは死体。第三帝国のただの駒。お前が何回語っても無意味なんだヨ。


 さて、この状況を1人で切り開くのは難しいネ。ただ、生憎第三帝国はマキシマムビーストの素体の増産に成功してル。舞い戻れ、黒星・・・クラーク』


 ネーちゃんが更に指を鳴らすと2人の人影が現れた。2人とも知ってる顔だ。けど、確実に倒した2人。クラークと黒星・・・


 「・・・ネーちゃん。私はもう決めてる・・・私は目撃者。そして記録者、全てを見てきた存在、全てを記録する存在。私はあなたが死んだ所は見てないし記録してない。いいか?よく聞けよクズ共。お前らが何度私の親友を殺したとぬかしたとしても!!この私がいる限り!!殺させやしない!!!」


 あと!もう一歩!!

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