絶頂と絶望のランウェイ
体育館、壇上横のスペース。
・・・・・・さっきの勢いのまま行ければ良かったんだけど、待機時間のせいでやっぱり緊張が勝ってきた!!
他のクラスの子たちのレベルが高いのよ!それでいて私と京也は今ジャージ姿だ!本当に大丈夫なのか心配!!
「ひっひっふー!!ふっふっひー!?どっどっひー!!ほっぎゃっぎょー!」
おかげさまで後半訳の分からない息遣いになった。
「落ち着いてーナミッちゃん!周りは野菜ネ!!」
ネーちゃんが私を落ち着かせようと試みる。
「とは言っても緊張するー!!あー!まだ戦闘の方が楽!!」
「だったら戦闘に行く構えで臨めば良いだろ」
京也も私の肩を叩いて落ち着かせようとした。あんたは良いねぇ、普段から壇上上がるの慣れてるもんねぇ。
「うーん・・・あ、ミツキちゃん!!プリキ◯ア好き!?」
「はい?」
突然軽音が私の趣味を言い当てた、何故分かった?因みに日曜の朝はその為に早起きしている、部活の日は配信で見てる。1週間に一回は見ないと整わないんだ。
「京也君は見てるよね?」
ほぎゃ?コイツが?プリキ◯ア?ぶふぅっ!!!くくく!!受けるー!!
「あぁ、霧矢が毎週日曜日、特撮モノと一緒に見てるからな。軽音、それがどうかしたのか?」
あぁ、霧矢君ね。確かにあの子なら恥ずかしいとかそう言うのなくて普通におもしろーとか言って見てそう。けど、この顔であのキラキラ見てると思うと笑える。
「いやね?ミツキちゃん戦いなら大丈夫って言うから、それならさっき京也君が言ったみたいにそうさせちゃおうってね。ミツキちゃん、あなたはこれから戦うの。この学校の為に戦う変身ヒーロー、それがあなた。
ミツキちゃんにこの数週間でランウェイの歩き方と京也君との絡み方のみ徹底して教えてきたのはね、誰かがいてもいなくても同じ動きが出来るようにって思ってあえて衣装とか着せずにやらせてきた。
その練習の仕方を提案したのはららちゃん、ミツキちゃんは本番になると緊張するから、やるなら基礎の動きをコピペみたいに動かせってさ。そのおかげでフィールドでも周りに人がいるにも関わらず動けるでしょ?」
た、確かに・・・とにかく基礎を徹底して周りを的だと思って動いたら、勝てた事が何回かある。
「それが出来るのなら今回も大丈夫。ミツキちゃんはランウェイを指示通りに動いて端まで行って戻ってくる。それが今回の任務、そうやって考えれば楽でしょ?」
「う、うん」
「けどそれだけだと顔が強張るから、そこでプリキ◯アの出番」
「あぁ、成る程な・・・ミツキ、プリキ◯アになりきれ」
京也が何かを察したように私に伝えてきた。
「え、私がプリキ◯アに?」
「そうだ、クラークとの戦いを思い出せ。お前なんの恥じらいもなく恥ずかしいセリフをバンバン吐いたろ、あの感覚だ。プリキ◯アに恥ずかしがって変身したり、浄化技使ったりする奴いねぇだろ?正直あん時のクラークと戦ってるあんたはかっこいいと思えた。
仮にそれを馬鹿にするような奴がいたら俺はぶん殴る。逆に中途半端に恥ずかしがる方がこっちが恥ずかしい。そうしたら俺はお前を殴る。だから堂々とやれ」
「それな!!もし変な風にもじもじしてみやがれ!退部させてやるからな!そんな豆腐メンタルはうちの部にはいらねぇ!」
東郷がささっと京也の横に出てきた。
でもそうだな、後で後悔するより今やれ。馬鹿にされるかもとか、痛い奴だとか考えるな。やれ。全力のまま、勢いのままに、この間もそうやってきたじゃないか。
もう既に一年の発表は終わってる、続いて2年の番だ。壇上の端でシャルロットたちが何やら演奏してるのが見える。
「では!2年3組!!輝夜 ミツキさんと霧島 京也さんどうぞ!!」
ザンッ!!
「え?」
「は?ジャージ?」
「そ、それで行くの?」
分かってた。私たちのこの格好に体育館に集まったみんなは困惑した。くけけ、こっから・・・余計にポカンとさせてやる。
「キョウ君」
「あぁ」
カツンッ!
私が踵で地面を強く踏み鳴らすとシャルロットの演奏が一気にロックに変わる。それと同時に私と京也は変身した。
バァンッ!!!
炸裂音が鳴り響き、私はこの間メグに貰った特攻服を身に纏った。京也はそれに合わせて長ランを纏った。
「あっ!!あたしの特服!!」
「うおおっ!?」
「な、なんじゃこりゃ!?」
「へんしーん!?」
ふっふっふっ・・・みんな驚いたな、私はこれ見よがしにポーズをとった。そして壇上横の実況席でキャロラインが解説を始める。
『おーほっほっほっ!!我が2年3組のテーマはズバリ!!七変化変身物語ですわ!!これより様々な協力者の元作製された数々の衣装を物語形式で紹介いたしますわ!さぁ!民衆たちよ!2人の最高の演出に慄き酔いしれなさいな!!』
こっから先は実況席のマイクが軽音に移った。さぁ、私はやるべき事をしよう。
『その昔、それはそれはどーしよーもなーいヤンキーの2人が居ました。その2人はケンカを求めて!渡米したのです!!というわけで七変化第一弾は道山 恵プレゼンツ!特攻服と長ランでした!』
コツンッ!!
私は右足をタップダンスのように鳴らすと、また変身。因みにストーリーはめっちゃくちゃになるっぽいから宜しく。
『そしてその2人はなんと!!ケンカするかと思ったら町の平和を守るカウボーイとカウガールになったのです!!」
私と京也はその瞬間、カウガールとカウボーイに変身した。
「「おおっ!!」」
ついでにちょっとだけガンプレイ、私の愛銃だ。クソ重バカデカマグナムでもここまでやれるようになった。
パァン!!
空砲だ。
『この衣装はサバイバルゲーム部部長!東郷 ららプレゼンツ!カウガール&カウボーイでした!!さて次は!?西部に平和をもたらした2人は海を渡り!東洋の魔鏡!上海の土地へと踏み入れた!』
引き金を引くとまた変身。今度はチャイナドレスと長袍。完全中国スタイルだ。
『この衣装は、今回我がクラスの服飾リーダー、ネー・チャンさんが担当しました。さてさてお次は?2人は我が国日本へと赴きなんと!!変身ヒーローと魔法少女になってしまったのです!!』
なんじゃそりゃ!?どうりでここでウインクしろって指示があったわけだ!!京也の方はなんか構えから入るし。拳を顔の横でグググってするやつ。
さて、私もやろう。片足あげて、胸の前で手でハートマーク作って、さぁ変身!!時間ないのでバンクは無し!
「かっけぇ!!マジで変身した!!」
「可愛い!!マジで変身した!!」
『天正高校3年の麗沢 弾君と一般女性、静也丸 峰子さんのタッグでの発案でした!さてさて?次からもっと凄くなるよー?みんな!もっと盛り上げて行こー!!」
「「「うおーーーっっ!!!!」」」
会場がヒートアップして来た。なら、客席に向かって投げキッスで更に変身!
「はぐぅあっ♡♡!!」
「きゅぅぅぅ・・・♡」
あ、ごめん何人か死んだ、まぁ京也が投げキッスするなんてイベント普通無いからな。
『さーてさて?天正市に舞い降りたスーパーヒーローは更なる美しさと強さを手に入れる事になるのです!!さぁ!ご覧あれ!!カラスちゃんのお母さんがプレゼンツ!!和洋折衷神話!!月の女神セレーネと月の神、月読命をイメージしたこの衣装!!』
今度は緩やかな動きで、雅な足運びを意識しろ・・・
シーン・・・今度は静まり返った。ふははは!!見たか!!こんな変身を私はあと2回も残している。この意味が分かるな?さぁ、見せてやろう。更に変身だ!!
『さーて、そろそろ大詰め近づいて参りました!!女神ような美しさと強さを持った2人は異世界へと飛び!!なんと!2人は別々の国の王女と王子になってしまうのです!!あぁなんたる悲劇!!その二国間で戦争が勃発!2人の運命やいかに!?』
軽音、そこの下りもうちょい詳しく聞かせてください。たまにはそう言うシンプルな異世界恋愛モノも見たいとです。
そんでもって私の衣装・・・ふふふ、やってくれましたね。流石にドヤ顔にもなりますわよ。一応こう見えて私女の子ですから、プリンセスは憧れますよね。ふわっふわのドレスとキラッキラのティアラ。しかも変身の衝撃でついでに化粧をも一瞬でやってのけた。すげーなこの技術。忙しい朝のOLもこれなら一瞬で外出れるじゃん。
一方の京也はすらっとした王子、つまりはプリンスだ。
私は京也に銃を向け、京也は私に刀を向ける。因みに余談だが、弾が入っていなくても人に銃を向けるのはダメなので多少斜めにして構えてる。
『因みにこの衣装は私がチョイスしました!!ミツキちゃん似合いすぎて私!鼻血出てます!!さぁ、さぁ次が最後の変身!!』
私は後ろに置かれたカカシに電撃弾を撃ち、京也は居合道の動きで綺麗に切って見せた。私が銃をホルスターにしまい、京也が納刀した瞬間、最後の変身が起こる。
ぽーい・・・コロコロ・・・
シャルロットの方から何かが転がって来た。手のひらサイズの円柱のような物体に金具が付いてる。
(耳塞いでねー!!)
シャルロット?耳塞げって・・・これ!閃光手榴弾!?
ぺっかー!!!
音は多少やかましいが、それ以上に体育館を包み込む光。
『そしてその2人の運命は・・・』
ばぁぁん!!!
最後の衣装はこれか・・・いや、練習の時点でなんとなく察したよ。最後に京也が私をお姫様抱っこするシチュエーション・・・これはクラス全員で考えた合作衣装。
『互いに結婚する事で!異世界に平和をもたらしたのでっす!!!』
ウェディングドレスとタキシード。こんなものよく1から作ったなぁ・・・しかも装飾がめっちゃ細かい。普通に数百万とか行くだろこれ。衣装合計いくらだ?
『以上!2年3組の発表でした!!因みに予算はあちこち周って要らない端切れなどを使用!また親御さんのご協力もあり!合計15万で完成しました!ありがとうございます!!』
やっす!!このクオリティを七着も用意して15万!?
私は驚きながらも最後にブーケトスをして体育館裏に帰った。あー・・・ブーケがめちゃくちゃにされとる。
「はぁぁぁ・・・・・疲れた・・・」
「俺も」
私と京也はジャージ姿に戻ってぶっ倒れた。あっつ・・・照明も熱かったから緊張と合わせて余計に汗が吹き出した。
「お疲れちゃんネー!!」
ネーちゃんがスポドリを差し入れた。
「素晴らしかったですわお二人とも!あの他のクラスの生徒の間抜け面ご覧になられましたこと?なんとも滑稽でしたわね!!特にミツキさん!練習以上の成果でしたわ!」
珍しく私個人をキャロラインは褒めてくれた。
「そ、そう?」
「ほんとそうね、特に魔法少女の時何よアレ?ミツキあんた、あんな風に笑顔作れたのなら普段からやりなさいよ。ウッキウキ笑顔だったじゃない。正直あんたを可愛いなんて思っちゃったじゃない!」
口悪いけど東郷、褒めてくれてるよね。
「しっかも満足げに京也君にお姫様抱っこされちゃってぇ!!私もされたいよー!!あ!そうだ京也君!ミツキにお姫様抱っこしたんなら!お礼にファーストキッスくらい奪っても良いよね!?はぁはぁ・・・」
おいおい東郷!?ノリに任せてとんでもない事をここでやろうとすな!!
「ちょっ!!らら!!止めろ!」
京也は逃げた、頑張れー。
ふぅ、にしても・・・練習以上に満足感があった。正直途中から本当に緊張が消えて、楽しむって事に全力になれたよ。
だからこそ今、より思った・・・早く、この戦いも終わらせて、目撃者の役割を果たしたい。そしてまた来年も、みんなと一緒に・・・だから今のうちに言っておこう。
「よっと・・・」
私は立ち上がった。
「ネーちゃん。ちょっと良い?」
「はいナ?」
「今年の始め、私の人生の転機になったのはネーちゃんとの出会いだった。アレがなければ私は、下手したらこの世にいなかったかもしれない。生きてても地味で楽しくない人生だった。いじめられて、周りを睨んで、自分は何もしない・・・それが変わるきっかけになったのは、やっぱりあの時の出会い。だから今言わせて、ネーちゃん。ありがとう」
やっと・・・やっと言えた。あの時のお礼をずっと言ってなかった。
「い、いきなり言われるとて、照れるネ・・・あの時はたまたまデ・・・ウン、偶然出会っただけダヨ・・・あ、あぁ・・・ソッカ。ワタシ・・・これを望んで・・・た」
ドガァァァァァンッッッ!!!
な、なに!?
「きゃぁぁっ!!!」
「た、体育館が!!」
何が起きた!?体育館の天井が消し飛んでる!?
2つの人影・・・1人は三上君、そしてもう1人は一兆だ・・・一体何が。
「おー!ニヒルちゃん戻ってくるの早いなぁ!」
そしてあいつはレイノルド?
「第三帝国が滅んだ。馬喰 一兆との賭けに負けた。だから戻ってきた」
アイツらを倒したのか。けど、なんだこの雰囲気。この感覚は・・・三上君も、一兆も武器を構えてる。しかも、私の方に向けて・・・
「ちょっと!?三上君!?何してるの!?」
軽音があまりにも唐突なこの状況に理解が追いつかず2人を止めようとした。
「っ!?ミツキ!!!」
この異様さの原因に気が付いたのは京也だ。そりゃそうか、いきなりアイツの刀。奪われてたんだから・・・そうだ、三上君たちの敵意の先は私の後ろ。
グサッ!!!!
振り返りたくなかった・・・私は今、思いっきり心臓を貫かれた。私の親友、ネーちゃんの手によって・・・




