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文化祭 表裏 一体

 オーストラリア西部の荒野。


 「中々綺麗だろ?ここら辺は人間の手も足も入ってねぇ自然が多くてな、たまーに1人でぼけーってしてぇ時とかに来るんだよ。あんたのデータにこの景色はあるか?ねぇんだったら今のうちにインプットしとけよ?これからちとこの景色消し飛ばす事になるからな」


 「了解、半径100キロの地形データを入れた。戦闘終了次第、元に戻しておくです」


 「あ、どーも。最近俺ばっかが直してたからよ。つか、やれんのならあんたやれよ。疲れるんだから」


 「我々の目的は人類の抹殺ですよ、修繕は後回しです」


 「あーらら、そうでしたね・・・んじゃ、やるか・・・」


 一兆の目がギラリと光り、カードを数枚取り出した。


 「珍しい、あなたのデータでは基本イカサマを仕掛けると出ているのに」


 アレクシアも刀を抜いた。


 「3対1だぜ?十分ズルしてんだろ。けどま、正直に話すとだな、俺はルイの真の力に賭けた。あんたとどっちが強ぇんだろうなぁ?」


 「私なの!?」


 突然の一兆の発言に何も聞いてないルイは一兆に突っかかった。


 「だって、神崎の鬼型は実際に見て実力レベルは大体分かるけど、あんたのは見てねーもん。三上から聞いた情報しかねーのよ?んで、それ聞く限りだとあんたの『セグンド・エスタードマキシマ』は、永零にすら有効かもって話しだったじゃん。だからよルイ、とりま1人でアレクシアとやってみ?」


 一兆から更に注文を受けてしまった。


 「な゛ーっ!!?みんなしてもー私を買い被ってぇ!!一応はそこら辺のJKに世界最強AIの相手させるかなぁ!!ねぇ!?神崎さん!!」


 「・・・いや、あんたを普通の女子高生と呼ぶには趣向が・・・」


 神崎は目線を逸らした。


 「食べなきゃ禁断症状出るほどじゃないですよもう!!とりあえず1人でやるんですね!!分かりました!!全く、一兆君バリバリ戦う構え取っておいてからの私に全投げって・・・」


 ぶつぶつ言いながらもルイは一兆の前に出た。


 「やはり彼は人間の中でも発想の想定が難しいですね。では、私は彼と違いイカサマはしない、正々堂々と勝負するですから・・・行くですよ!!」


 「タイプ・モスキートマキシマ!!」


 先に仕掛けたのはアレクシアだ、素早い一撃をルイにぶつける。ルイは一瞬のうちにタイプ・モスキートへと変身し、背中の羽を羽ばたかせ攻撃を防いだ。


 「あらゆる攻撃を防ぐ羽か・・・頑丈だな」


 「でしょ?それは私の防御の力。そして、これが私の攻撃の力・・・」


 ルイの手元に短剣サイズ程の針が握られた。


 「それでもって・・・これが、速さ!!」


 「っ!!」


 ガギィィィンッ!!!


 アレクシアは辛うじて首元に突きつけられた針を防いだ。


 「予想以上に早いですね・・・それとどうやら、この程度の(なまくら)では歯が立たないらしい。刀が朽ちたです」


 ルイが防いだ刀はボロボロと崩れ始めた。


 「そうじゃないよアレクシア、その刀は麻痺したの。私のこの針は触れた物全てを麻痺させる。どんな業物でもこの針が触れれば針の成分が物質の構築を麻痺させ、その構築は崩壊する。まぁ、完全物質には効果薄だけど」


 「だろうですね。貴女と相対するにはコイツじゃ役不足だ・・・」


 アレクシアは刀を捨てて、何もない空中で何かを掴んだ。そしてそれを引き抜くと真っ白な刀身の日本刀が姿を現す。


 「やっぱり持ってたか・・・」


 「ニヒル・アダムスの刀『異世輝國』を基準に新たに製作された天石の日本刀・・・名はその刀の名にちなんで、『異世守國行(いよのかみくにゆき)と呼ぶ」


 「こっからが正念場ってとこか・・・」


 アレクシアは刀を、ルイは針を構えた。




 「「行くよ!!」」



 

 ・


 ・


 ・

 

 天正第二中学 校舎裏


 私の目の前で1人の男が真っ二つにされた。しかし、その男はすぐさま体を元に戻した。


 「あれ?この状態の輝國は魂ごと切る筈なんだけどな」


 「あー、そりゃ無理だぜレイ。黒星の奴ぁ永零の技術盗んで自身の身体を改造、悪魔の力を自身に取り込んでる。いわゆる、悪魔に魂を売ったってやつだ」


 「成る程、魂を切っても大元の魂は悪魔の元にあるから無意味と・・・なら、かつての方法。廃人になるまで殺しまくれば良いって事か」


 「ひゅー!さっすがレイ!!順応早ぇな!!」


 この人がレイノルド兼、ビリー兼、ビーンって人か。レイノルドが呼びやすいからそう呼ぼう。にしてもこいつ、敵の割にずいぶんと三上君と親しげだな。まるで子どもみたいにはしゃいでる。


 「そりゃ似たようなのずっと相手してたからね、けど、もう一つ方法があるとすれば大元の悪魔を元に戻せば良いんじゃない?奴はすばしっこいと言うより、流れるように攻撃をかわしてたね・・・つまり、青龍の力を奪ってる感じか・・・」


 「あいっかわらずの鋭さうざー」


 「仕方ないでしょ?僕だし」


 はしゃいでるのは三上君もだ。この2人、後ろから見るとただの親友どうしが悪口言い合ってる風にしか見えないな・・・けど、そんな事してるうちに、さっきの黒髪立ち上がって・・・


 「っ!?」


 コイツ!!一気に迫って!!


 バギィンッ!!


 目の前が突然凍った。


 「お前、何生徒にいきなり手を出してる?そういう人、文化祭出禁だから」


 この魔法はグレイシア先生、流石の威力だ・・・


 「っ!!!」

 

 「おーおー、あんたも相変わらずだなグレイシアちゃんよ。んにしても、往生際悪ぃなぁ。そうは思わねぇか?フォックスよ?」


 「んだねぇ。ミツキ姉ちゃんに何も言わずに襲いかかるなんざ百年早いぞ!みんな!ここはおいらたちがこの黒かっぱぶちのめすから!みんなは体育館裏行っといでよ!ここは良いから先に行けぇっ!!って奴さね!!」


 私の前に立ったこの4人なんとも言えない安心感がある。例えるなら家族、それぞれ立場は持っていてもそれを超えた繋がりがあるって、そんな風に感じた。


 「大丈夫なの?三上君?」


 軽音が心配そうに尋ねた。


 「大丈夫だよ、この4人なら・・・全部まとめて一気に潰せる!」


 「・・・分かった。信じるよ三上君!!みんな!私たちは文化祭を楽しもうよ!!まぁ、めちゃ緊張するけど・・・私も頑張るから!」


 私たちは最後のイベントの為に体育館裏に向かった。


 ・


 ・


 ・


 オーストラリア西部の荒野


 ガギギギギギィィィッッッ!!!!!


 だだっ広い荒野の上空に凄まじい斬撃音が鳴り響く。


 「この刀でも砕けない・・・その針、金属でないですね?」


 アレクシアは鍔迫り合いとなった際にルイに問いかける。


 「えぇそうよ。この針は半分魔法で半分実体。これは私の血液を凝固させて複数の魔法を同時に発動したもの。天石の武器ともやりあえる頑丈さを持ってるわ。ふんっ!!」


 ルイは間合いを取って針を前に構える。


 「成る程・・・ルイ・マイヴェス。先程言っていたセグンド・エスタードマキシマは使わないですか?」

  

 突然アレクシアは刀を下ろしてルイを煽った。


 「まだ様子見しかしてないのに使えって?奥の手って最後まで取っておくものでしょ。それを言うなら、あなたが先に見せないよ、私がアレを使わざるを得ないになるような奥の手を」


 ルイも針を一旦下ろして煽り返した。


 「残念だけど、私の性能は戦闘特化じゃなくてあくまで索敵能力。ありとあらゆる情報を整理する為に存在するAI。あなたのように変身能力は備わってはいないです。ただシンプルな戦闘しか出来ない・・・そうですね。やるとしたら・・・速さを30倍、威力は50倍程度で戦えば、あなたを追い詰められるですね」


 「なに?」


 次の瞬間、今度はルイの首元にアレクシアの刀が迫っていた。ルイはギリギリで防いだが、


 「ぐっ!!!!」


 その衝撃は凄まじく一気に数キロ飛ばされてしまった。ルイは体勢を立て直すが、すぐさまアレクシアの第二撃目が飛んでくる。


 「ほら、どうしたです?まだ攻めるですよ?」


 アレクシアは刀を輝かせて構えた。


 「その構え、三上君の斬鉄剣!!」


 「そう、見た事あるですよね?斬鉄剣・三速。防御不可の斬撃を飛ばす技です。ほら、例の力を使わないとお前は真っ二つになるぞ?」


 アレクシアは刀を振り抜いて斬撃を飛ばした。


 「ランツァデルコラプソ(崩壊の槍)・・・」


 「っ!?」

  

 ルイは手に持っていた針を投げた。そして、飛んでくる斬撃にぶつかると針は大きく爆発を起こし、斬撃を消し去った。


 「まだまだ」


 ルイはニヤリと笑うと再び針を手元に出現させた。


 「血液が爆発したのか・・・お前の能力、聞いていた話と大分変わっているな」

  

 「別に私に限った事じゃないわよ。少なくとも大敗北を喫したあの戦い以降、私たちみんな頑張って個人の戦力アップをしたんだから。アレクシア、さっきあなた能力を速さ30倍、威力50倍って言ったわよね?それ・・・最大値は何倍まで行く?場合によってはセグンド・エスタードマキシマ、見せてあげる」


 「私のとりあえずの目標はお前にその力を使わせる事です。良いですよ、私の能力の現時点での最大値は基本能力の・・・・10万倍程度です」


 「・・・そこは53万だったら嬉しかったかな?けど、貴女の10万倍って言ったら軽く地球相手出来るよね?仕方ないわ、疲れるけどこの間永零の腕も食べたし、10万倍程度なら・・・行けるね」


 「・・・っ!!」


 ルイは突然目を閉じて真っ直ぐ立った。ほんの僅かに静寂が走る・・・


 「行くよ・・・マキシマムビーストは極限生命体ではない。私は成長するマキシマムビースト・・・


 その時ルイの身体に変化が起こる。髪が伸び、徐々に背中の羽が羽毛のような翼へと変化していく。そしてルイの頭上に光輪が浮かび上がった。

 

 「それは・・・天使・・・か?」


 「マキシマムビースト・セグンド・エスタードマキシマ。タイプフェアリーエンジェル・・・めっちゃ長い名前してるでしょ。さてとアレクシア、この姿はさっきまでの私とは別って考えた方が良いわ」


 「ですね。その姿になった瞬間これまでの全てのデータが無効と出た。まるで別の生き物です。シェン・リーのタイプエンジェルとも違う。それは一体・・・なんだ?」


 アレクシアは刀を構えた。


 「知りたいのなら、その身に刻むが良いわ。私とやり合うのなら、その10万倍の力、出しておいた方が良いよ・・・何故なら」


 一瞬、フラッシュライトのような光が放たれた。その瞬間、アレクシアの上半身と下半身が2つに別れた。


 「私は光より早いから」


 「手刀だけで私を切り裂いたですか?」


 アレクシアの身体から血は吹き出さなかった。何事も無かったように視線をルイに向けて倒れゆく身体をルイに向ける。そして地面に倒れる瞬間には身体は完全に復活し、その治った身体をバネにルイに切り掛かる。ルイはその攻撃を素手で受け止めた。


 「どう?めちゃ硬いでしょ。でも私の見立て通りならあなた、もっと強い筈でしょ?それなのにこの程度でやられちゃうの?」


 「・・・・・」


 アレクシアは自身の刀を見つめた。


 「はぁ、やれやれ・・・私の10万倍の威力は核兵器レベルだ。出来る限り使用は制限しろと命令されているが、仕方ないです。やるか」


 アレクシアは刀を天に掲げ、振り下ろした。


 「っ!?」

 「うおっ!?」 

 「ぬっ!!」


 その振り下ろした斬撃は、大地を地平線の彼方まで切り裂いた。


 「ルイ!!」


 「はい!!天使の槍ランツァ・デ・アンセル!!」


 一兆の指示の元、ルイの手元に細く長い槍が握られた。なんの装飾もない、先程まで使用していた針を槍のような形に変えただけの武器だ。


 「そんな竹槍みたいな武器で私に挑むですか?愚か!!」


 「見た目は貧弱だよね。けど、威力はどうかな!?みんな伏せて!!」


 ルイは槍をアレクシアに投げた。


 「これは!!」


 その次の瞬間、巨大な火球が空を覆った。凄まじい衝撃波と熱風、爆風が吹き荒れる。


 「うお!!?うわわ!!!」


 その威力に放ったルイ自身がバランスを崩す。ルイは地上に降りて防御壁を作っていた一兆の後ろに隠れた。


 「自分で威力も調整出来ねーのかよ」


 「ほんとこの姿扱い難しいんだって!!」


 「へーへ」


 一兆はルイの発言を華麗にスルーした。


 「それにしても奴、妙な違和感を感じるな」


 一方、戦いの様子を見ていた神崎は少し疑問を抱いていた。


 「違和感?」


 「なんだよルイ、気が付かねぇのか?まぁ俺も何がとは分からねぇけどよ、どうにも仕込まれてる臭くてな?」


 一兆は物陰から火球の様子を眺めて呟く。火球は巨大な火柱となって辺りを焼き尽くしていた。


 「・・・仕込まれてる?」


 「そ、俺がここに戦いの場所を決めるのも、ルイとアレクシアをぶつけるのも計算の内ってな。おそらく第三帝国を追っていたのは本当だ。んで追ってるのは多分レイノルドの野郎だ。けどこいつは三上とレイノルドの組み合わせになる。第三帝国程度潰すには余剰戦力だろ?」


 「うん」


 「だったらあの女。何しに来たんだろうな?世界最強のAIだ。俺たちと交渉決裂するのは分かってた筈。利害の一致で自己判断の一次停戦はやるが、それ分かってて交渉しに来る必要なんかねーよな?それか戦力を測る為つっても、手の内を隠しはするが、戦力は既に拮抗してる事も向こうは知ってる・・・あと考えられるとしたらなんだと思う?」


 一兆はルイに振った。


 「うーん、あ!ミツキちゃん!!」


 ルイはミツキが1人になるのでは?と疑問を呈した。

 

 「それも思った、永零も第三帝国もミツキを狙ってる。けどな、今のアイツにあの最高戦力以外の誰をぶつけられる?正直今のミツキはあんたより強いだろうからな。だったら考えられるのはウロボロスか?」


 「いや、ただでさえクラークを失っているんだ。ウロボロスを出せば即座に永零のアジトを突き止めて攻撃に移る。永零がそんな馬鹿な真似はせんだろう」


 一兆の考えを神崎は否定した。


 「だったら一体・・・まーさか三上の野郎、これ狙って分配しやがったな?」


 「え、どういう事?」


 ルイはどう言う意味か分からず聞き返した。


 「チャンの奴の潔白証明だ。ここまでやって三日月を狙った犯人が分からずじまいって事はだ、犯人はやはりあの女って事になる」


 「え!?でも!!彼女じゃないって!!」


 「あぁ、アイツではねぇだろ。考えられるとしたら一時的に操られたとか、洗脳されたとかそういう類いだな。チャンを操った奴がいる、三上はそう考えた。んで三上は組織ごとそいつを潰す事で全てを終わらせる魂胆って事だ。その為に俺たちにわざわざ永零と手を取り合う事も辞さないなんて事を言ったんだろうぜ・・・ほらルイ、そろそろ爆風も収まる、俺たちはとんだ茶番に付き合わされた。さっさと帰るぜ」


 爆風が収まると同時に服だけがボロボロになったアレクシアが現れた。


 「セグンド・エスタードマキシマとはよく言ったものですね。まさかここまでボロボロになるとは思わなかったですよ。それより、少し会話を聞いていたが、馬喰 一兆。お前の推理は少し間違っているな」


 アレクシアは一兆の前にゆっくりと舞い降りた。


 「何が?」


 「おおよその見当は当っているですね。だが、そこに永零の意志は反映されていない。考えなかったですか?目的の為なら手を取り合う事も辞さない。それは第三帝国の奴らにも言えると」


 「なに?」


 一兆の顔が少し引き攣った。


 「もし、あの女が・・・・・」


 アレクシアの言葉を聞いた瞬間、一兆は指を鳴らして地面に隠していたカードを全て展開させ、全方位から一点集中の攻撃を浴びせた。


 「戻るぜ。ルイ、神崎」


 「今の、どう言う・・・」


 「分からねーんなら急げ!!取り返しのつかねー事になるぞ!!」


 「やれやれ、そう易々と行かせるですかね?」


 その一言と同時に一兆の攻撃は掻き消された。


 「クソが!!」


 「さて、まだまだ遊ぶですよ?」


 ・


 ・


 ・


 校舎裏


 「この四人で並ぶのなんざ何年振りだぁ?レイ、あんたこれ仕組んだ?」


 レイノルドは三上に問いかけた。


 「さぁ?そっちが僕に泣きついて来たんじゃないの?」


 その問いに三上はさらっと流した。


 「三上 礼、レイノルド ビル ルーカス、稲魂 飯綱、そしてグレイシア・ダスト・・・かつて神崎 零を討伐したメンバーか」


 黒星はゆっくりと歩き出した。


 「あぁそうだぜ。にしても、随分とまぁあの時と情勢が変わったもんだよなぁ。フォックスは縦にも横にもデカくなったし、グレイシアちゃんは随分と喋れるようになったし、レイに至っては女の子になっちまったしな!」


 レイノルドは嬉しそうに三上の肩を叩く。


 「ビーンさん、ついでに殺してあげても良いんだよ?」


 三上はそれに対してニッコリと笑って見せた。


 「ヒッ!さーせん!んじゃ、さっさと黒星ぶっ殺すか」


 レイノルドは槍を構える。


 「いや、殺しちゃ駄目だよ?」


 「なんでぇ?」


 「だって、コイツは死なないからね。僕やビーンさんの力でねじ伏せてもコイツは死なない、さっきこの刀で切ったじゃない。まずは取り込んだ悪魔を引っ剥がす・・・そして」


 「わーってるよ、コイツは全ての第三帝国民と繋がってる。ある意味ナチズムの究極系って奴だな。けど、それが最大の弱点。捕える事に成功すれば・・・」


 「おーう!!なるほどー!じんもんして!ごうもんして!はかせるんだな!?」


 飯綱が答えを導き出したが、思想がちょっと過激だった。


 「捕まえたら終わりだよ。だから、厳密に言えば・・・」

 

 「今からが拷問になるから」


 グレイシアも氷の剣を黒星に向ける。


 「ふん、何をするつもりか知らんが、私を捕える事は不可能だ!!」


 黒星は途端に姿が見えなくなった。しかし、


 「よっわ」

 「うん、雑魚」

 「ほいや!」

 「邪魔だから」


 この4人の前に黒星成す術なく地面に叩きつけられていた。


 「な、何故!!?」


 「だーから言ったろ?立ってる土俵が違う。冷静に考えてみろ?相手にしてんのは下から数えても神の子、邪神の末裔、堕天使、神。なんで人間が勝てると思ったんだぁ?第三帝国は馬鹿の集まりなのかねぇ?どう思う礼?」


 「この人は自身の力量も分からない愚か者なのは分かるよ。けど、切れ者なのは確かな筈だ・・・黒星さん、君に一つ質問するよ。チャンさんを操ったのは、君かな?」


 三上はゆっくりしゃがみ、覗き込むように質問した。


 「・・・答える必要は無いな。んがっ!!」


 余裕の顔を浮かべた黒星の頭をレイノルドは足で踏みつけた。


 「俺も聞きたいんだよそれ。永零の奴も何か予測立ててたし、ニヒルちゃんに聞いても、お前は馬鹿だから言っても無駄ってあしらわれたしさ」


 「成る程、永零もニード・トゥ・ノウやってんだ、僕の真似しちゃってさ・・・ま、敵を騙すにはまず味方からって言うし、永零の事だから利害が一致すれば君たちとも手を組んでいてもおかしくない。だから聞く、彼女に・・・何をした?」


 「・・・・・良いだろう、そろそろ答えても良さそうだ。だが聞いた事を後悔するなよ?あの女に何をしたか。何もしていない。貴様らはあの女を洗脳して襲わせたと思っているんだろうが、そうじゃない。元々洗脳する脳なんかアイツには備わってないのだよ」


 「んだと!?ネーチャン馬鹿にしてんのか!?あんたぁ!!」


 今にも殴りかかりそうな飯綱を三上は止めた。


 「あん!?何すんのさ礼兄ちゃ・・・」


 飯綱が三上を見た時、飯綱は三上の笑みに少し恐怖した。


 「今の言葉の意味・・・詳しく聞きたいな」


 そしてニコッと笑いかけた。しかし、その手に持つ刀は今にも暴れそうなほど震えている。


 「くくく、もう遅い・・・既に3月31日の時点であの女の運命は決まっていた。あの女はな・・・」


 「万滅烈火」


 全て言い切る前に三上は黒星をチリ一つ残さずに切り刻んだ。


 「・・・桜蘭君、見てるんでしょ?そして、知ってたんでしょ?」


 三上は後ろに向かって問いかけた。すると桜蘭が物陰から現れた。


 「相変わらず何処からともなく現れるなぁあんたよぉ」


 レイノルドは頭をぽりぽり掻いて一歩下がった。


 「ごめん父さん。俺も色々と忙しいからな。それより三上、お前はどうする?」


 「まず君にお願いしたいのは、今殺した黒星を繋げて、今すぐ第三帝国民を皆殺しにしてくれない?」


 「今、殺し終えた。一人を除いてな・・・明日のニュースは面白い事になるだろうな。これにて第三帝国は完全崩壊、元指導者、ヴェルデ・リヒターはたった今別荘のベランダから足を滑らせて頭から崖下に落ちた所だ」


 「ありがとう・・・じゃぁ、僕は行くよ」


 三上はゆっくり刀を収めた。そして元気なく歩き出す・・・


 「辛いか?」


 「君ほどじゃないよ・・・そして、ミツキさん程じゃない。これは、僕の負けと言えるのかな?」


 「降参するか?今なら不都合な真実を伝える前に止められる」


 「いや、止めちゃだめだ。永零、僕は尚更負けられないよ・・・この理不尽に立ち向かってこそ、僕はまだまだ進む・・・だから!!」


 「ミツキが何を受け入れて、何を選択するか・・・そういう事だな?」


 「うん」


 「なら行ってこい。アイツの一番の幸福の頂点を見届けておけ」

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