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序章・円卓会議

 夏休み最終日、私は三上君の家に呼ばれた。前回のクラーク討伐の際のちょっとした報告があるらしい。


 相変わらず庭が広いなぁ、そう言えばここの裏に京也と約束したブランコのある木があったっけ。そもそもあのブランコ、まだあったかなぁ。裏ちょっと見てこ・・・


 「うにゃう!!」


 「すげー!!びゃっこまたキャッチしたー!!」


 霧矢君と白虎がサッカーやって遊んでた・・・


 「次あのブランコで遊ぼー!!ちゅうやー!!まーぜーてー!」


 「いーいーよー!!」


 まだブランコあるんだ。2個並んで括り付けられた簡易的なブランコ。てっきりもう無くなってるかと・・・それより、最初にこのブランコで遊んでる髪の長いこの子は誰かしら?


 「あ!ミツキだ!!ミツキも一緒に遊ぶー?」


 白虎が凄い速さで私の足元に飛んできた。私懐かれてんの?


 「ごめん、今日はちょっと三上君に呼ばれて・・・」


 「そなんだ」


 「それよりさ、白虎君・・・その子は?」


 私は髪の長い子について聞こうと思ったら、その本人がブランコから降りて話してくれた。


 「おれ、狐坂(こさか) 忠也(ちゅうや)だよー。ミツキお姉ちゃんの事はアニキから聞いたー夜露死苦ねー」


 忠也君って言うのか、忠也君は何故か私の頭をわしわしと撫でた。それより、なんでよろしくが漢字になった?誤植か?


 ・・・にしても、


 「「「わーい!!わーい!!」」」


 すっごい楽しそうに遊んでるなぁ、このぽやんと三人衆・・・


 「あ、バカ姉。こんなとこで何してんだ?行くぜ?」


 「あ、三日月」


 三日月も三上君に呼ばれてたのか?


 「あー三日月だー!!一緒に遊ぼーぜー!!」


 「三上に呼ばれて来たつったろ。だから後でな、つーか、霧矢は呼ばれてねーの?」


 「ないよー。みかみさ、ちょっとじゅーよーな会議したいから、ちょっと外で遊んでてって。だからほら、飯綱もいるよー」


 「おーう!!みかつきー!!セミ取れたぞー!!」


 あ、木の上で飯綱が虫取りしてた。甚兵衛に虫籠、なんか凄い似合ってると言うか、昭和と言うか・・・


 「三日月なー。いい加減覚えろー。ってあ、そろそろ時間じゃん。んなら行くわ!」


 「終わったらサッカーしようぜー!!三日月の姉ちゃんも一緒にやろー!!」


 え、なんか遊びに誘われた・・・


 「うん一緒にやろー」


 忠也君にも誘われた・・・


 「なーなー!!ボール止めたらミツキまた猫じゃらしで遊んでー!!」


 白虎、やっぱり私に懐いてる・・・


 「おいらとも虫取りしよー!!」

  

 飯綱もかよ・・・ここは保育園か?


 「わ、分かったから!終わったらね!?」


 とりあえずなだめた。



 「「「「約束だよー!!」」」」



 約束ねぇ、この場所には約束に関する何かでもあるのか?


 さて、とりあえず下に行こう・・・にしても、今回の報告ってなんなんだろう。私はそんな事を考えながら地下の会議室へのドアを開けた。

  

 「ごめん三上君、ちょっと遅くな・・・・た?」



 ズズズズズズズ・・・・・・・

 ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・



 ぱたむ。


 「何?今の・・・」


 私は三日月に尋ねた。


 「俺に聞くなよ。なんか、劇画風になってたな・・・雰囲気」


 「うん、なんか・・・凄い重たい空気だった・・・上の保育園はなんだったの?と、とりあえずもいっかい開けよう」


 ガチャ・・・


 「ぶわぁぁぁっ!!!」


 「ほぎゃんっ!?」

 「ながっ!?」


 突然シャルロットがいつもの雰囲気で私たちを驚かせてきたから、私たちはギャップに吹き飛んだ。


 「ごめんねー!ちょっと空気重かったでしょ。すこーしきな臭い話してたからさぁ。とりあえず入ってよ」


 「は、はい・・・ってあれ?何この部屋?こんな部屋あった?」

  

 さっきは雰囲気のせいで気が付かなかったけど、こんな部屋前まであったっけ?めっちゃ円卓会議のそれ。


 「無かったよ・・・けど、急遽作ったんだ。作ったのは6月、僕たちが林間学校に行った後だ。ニード・トゥ・ノウの精神に従ってみんなには伏せてたんだ。ここはRODともAWROとも違う、この世界の脅威に対抗する為に、僕が個人的に引き抜いた戦いのスペシャリストたちで構成した新たな組織。この部屋の形状に因んで『円卓』って名付けたんだ。この部屋と組織については絶対に秘密にしてね?」


 円卓・・・なんか、私すんごい所来ちゃった?三上君はいつもの爽やか笑顔で私たちを迎え入れた。

 

 「お前たちの席はそこだ、座りな」


 ひっ!?いつかのヤクザの人!!確か神崎 零!!


 「緊張すんな。俺たちは全ての情報を共有する仲間、しかも三上が選んだ奴らだけで構成してんだぜ」


 あ、一兆君もいる・・・


 「そ!コワモテもいるけど!私もいるから!ねっ!」


 シャルロットは場を和まそうと私の肩にぽんっと手を置いた。


 私は席についた。


 周りを見渡す、これが円卓のメンバーなのか。全員みた顔だ・・・三上君を中心に、グレイシア先生、シャルロット、この間親善大使とか言ってたアレックスさん。そしてヴォイドさんがいて神崎 零がいる。それとこの間のクラークとの戦いにいたランディとニャンタ。それから、道山会の現会長の道山 隆二とちょくちょく世話になってる馬喰 一兆か・・・確かに、このメンバーは特に濃い気がする。それに加えて私と三日月の計12人、円卓と呼ぶのに丁度良い数。


 「さてと、この度僕ら『円卓』に新たに仲間を加える運びになった。理由はさっき述べたように今回のクラーク討伐の功績と、彼女自身の特異な能力。そして、彼女自身が目撃者になる選択をした。故に彼女をこの全ての情報を共有する僕らに加える。そこに異論はない?」


 「ないよ!私は直に見たけど、ほんと凄かったからね」

  

 「多少性格的に心配なとこはあるが、俺も異論はねーよ」


 一兆君・・・性格的にって、私そんなべらべら喋りそうかなぁ。


 「よし、みんな満場一致だね。なら円卓会議を始めよう・・・議題は第三勢力の脅威についてだ。このゲームと称される戦いは本来、僕と永零との戦いの筈だった。けど、どうにも部外者が動いてるみたいでね、まさかのドイツ第三帝国が出てくる始末。


 それで、これはミツキさんがこの間言っていた事だけど、永零の目的の一つはそのナチスドイツを含めたあらゆる過去の遺物の排除を目論んでいる可能性あると言うことだ。僕もその可能性は多いにあると思う。そこで、僕から一つ提案があるんだけど、第三勢力の敵に関して僕は、永零たちとの協力も辞さない考えでいる」


 「なっ!?三上!!何言ってんだ!?アイツに協力するって!?」


 三日月が立ち上がった。けど、他のみんなはじっと聞いてる。


 「敵の敵は味方って言うでしょ?永零がそもそも僕にこのゲームを仕掛けた理由は、この世界がいかに醜いかを僕に知らしめる為だ。世界の醜い部分を僕にぶつけて、僕の考えを改めさせるのが永零の狙いなんだよ。


 正直、ずっと暮らしてた異世界と比べるとこの世界の醜さは常軌を逸してると思う事もある。原因は何百、何千年前から続く過去の遺物のせいだ。そいつらが足を引っ張るせいでこの世界は成長を止められている。


 僕は成長を続ける世界を望み、永零は成長を終わらせる事を望んでる。けど奴らはそのどれをも否定し、自分の都合さえ良ければ良いと思ってる連中だ。どの道、このゲームに僕らが勝っても奴らが邪魔をするのは明白だ。それで僕も永零の手に乗ってやろうと思ったんだ」


 敵の敵は味方か・・・そのシチュエーションは好きだな、敵vs敵みたいなの。


 「よーするに、真剣勝負に横槍入れてくる連中をぶっ潰せって事だろ?」


 「そういう事だよ一兆君」


 簡単に纏めてくれた。そもそもこの戦いは永零と三上君の頂上決戦の筈。それを横から手柄を掠め取ろうなんて、不敬な輩だな。


 「けど、ひとつだけ大問題があるんだよねぇ」


 シャルロットが頭の後ろで手を組んで椅子を仰け反らせた。


 「問題?」


 「うん、それが今回ミツキさんと三日月君を円卓に引き入れた理由にも繋がる。ミツキさん、心して聞いて」


 何、この感覚・・・心拍数が突然跳ね上がった。嫌な予感ってやつだ。けど、何が嫌なのか分からない・・・


 「あの戦いで第三帝国は別に完全沈黙した訳じゃない。確かにクラークを失うのはかなりの損害になり得るだろうね。けど、奴らはその程度では潰れない筈だ。過去の遺物ってのは、今現在にも深く侵食する。


 ヴォイドさんの調べでは、第三帝国は、国連はおろかあらゆる諜報機関に工作員を忍ばせている事を突き止めた。ドイツを主体とした国家を掲げる割には、アメリカCIAの人間もいればフランス、イギリス、ロシア、中国。様々な国の連中が第三帝国の一員としてスパイをしていた。そして、それは僕らの中にもいる・・・」


 ・・・え?


 「けどこれはあくまでも憶測だ。クラークの発言してた言葉を元に僕が予測した事に過ぎないからね。シロならそれで終わる事なんだ。僕も流石に疑ってなかったよ。ただ、一つ疑問があるだけなんだ」


 「疑問?どんな?」


 三日月が深く聞きだした。


 「それがクラークが言っていた事だ。彼は君のクロノスの力を手に入れようとし失敗したと言っていた。疑問はいつのまに、どうやって君からクロノスの力を奪おうとしたのか・・・」


 ガダッ!!

 「まさかっ!!?」


 三日月が突然血相変えて立ち上がった。


 「なに?どうしたの三日月?」


 「・・・なぁ三上、それってただの憶測なんだよな?」


 「うん。だから()()()ではその疑わしき人物の名は伏せておくよ。シロでもこの先関係がぎこちなくなっちゃうし、クロなら尚更危険になるからね」


 誰だ・・・誰を疑えって言うの?私たちの中にスパイがいるって・・・思い当たる節が無い、ネーちゃんは私の親友だし、東郷は性格はアレだけど面倒見の良い奴だ。軽音は私ラブになっちゃってるし、新庄・・・アレは私並にバカだから嘘なんか吐けない。京也に至ってはこの間逆裏切りかましたようなもんだしな。なら、三日月の友達?


 あー!!ダメだ!!疑える人物が思い当たらない!!


 そんな事を考えてたら、三上君は一旦この議題を終わらせて次の議題に移った。


 「それを踏まえて、僕から一つ提案があるんだ・・・ただこれは、流石にみんなも納得出来ないかもしれないからそれを先に言っておくよ。コレは、今までの僕のポリシーを捨て去ると同義だからね」


 「みかみん、まーたぶっ飛んだ事考えてるでしょ」


 シャルロットはチラッと三上君を見た。


 「だな、けど聞かない限りどうとも言えねぇ、何するつもりだ?」


 そして一兆君が腕を組んで机に肘を乗せた。




 

 「ニヒル アダムスを生き返らせる」





 ・


 ・


 ・


 外、会議も終わって夕方。遅くなっちゃったから、霧矢君は帰って、飯綱は家に戻り夕食の手伝いをはじめた。白虎は虎の姿になって庭ですーすーと寝てる、忠也君は一緒に出てきた神崎さんと一緒に帰っていった。あの人のツレなんだ。


 「なぁ、バカ姉。ちょっと良いか?」


 「なに?」


 「さっきの会議で三上は、この場では疑わしき奴の名を伏せるつったけどよ、それはあの場意外で伝えろって意味だと俺は思った。んで、俺からそいつの名をバカ姉に教えておく」


 いつになく真剣な顔だ、私はすこし唾を飲み込んだ。


 「だ、誰なの・・・」


 「名は・・・・」

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