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因果が巻き起こした戦いの幕引き

 「ははは!!スパス12ショットガンだ!!」


 「効く訳ないだろう!!そんな鉛玉が!!」


 クラークは弾丸を全て弾いた。


 「ならば、コイツはどうだ?貴様ドイツ人だろ?思い入れでもあるんじゃないかね!!!8.8cm 高射砲(アハト・アハト)!!」


 硝煙まみれで何が何だか分からない。けど、私たちが無事な時点で大佐が有利なのは間違いない。


 「くっ・・・」


 「おいおい、随分と辛そうじゃぁないか。それが本当に十本目の力なのか?分かるぞ、お前はもう力を御しきれてはいない。故に気がついてもいないのだろう。九本目が抑え込まれている事にすらな・・・」


 「っ!?」


 クラークはこれまでにないほど驚いた顔をした。


 「やはり気が付かなかったか・・・十本目は確かに強力だ。完全状態ならば俺でも勝てんだろう。しかしだ、お前は九本目を使った戦いの際に大分疲弊し、十本目をトカゲの尻尾のように使った。それでは完全な力を使いこなせない筈だ。これこそ因果と言うやつだな。お前の選択が巡り巡って、勝つ事が不可能だったこの戦いに勝利の光が見えている。


 それにしても向こう側、良い音を奏でるじゃないか。この爆撃音はV2か?凄まじい攻撃だな。被害を外へ出さない為ならば多少地形が変わろうがお構いなしか」


 言われてみれば確かに、さっき京也をぶっ飛ばした時はもっと早く思えた。私の目が慣れてきたかと思ったけど、そうじゃない。これは明らかにクラークの動きが鈍ってきてるんだ。


 「それが・・・どうした!?」


 クラークは攻撃の手を加速させた。けどもう、力の差が開いてきている。さっきまではかわしていた攻撃も弾かれはじめてきた。


 「力は、ここぞと言う時に使うべきだったな・・・マスター、終わらせるぞ。止めの指示を頼む」


 「ぐっ!!!!」

  

 クラークは更に大佐への攻撃を仕掛ける。けど、もう終わりだ。次の詠唱で止めを刺す。大佐の持つポテンシャル全てをアイツにぶつける最強の攻撃。私の知る限り、今まで見たアニメの中でアレを超えるものは見た事ない。


 このフィギュアの実体化の能力の最大は、元となったアニメ世界の力を現実にまで反映出来る事。アニメ世界の概念をこっちにまで限定的にだけど反映する事が出来るようにする事だ。


 それを可能とするのが覚醒の唄の第三番・・・


 「行くよ・・・覚醒の・・・ん、」


 あれ・・・急に意識が、遠のいて・・・そうか、私も・・・全然慣れてないのにこんな力をいきなり使ったから・・・ダメ、意識よ保ってくれ・・・今私が倒れたら全部が終わっちゃう。


 起きろ・・・身体よ起きてくれ!!


 「・・・鈍くなったのは、どうやらお互い様らしいな・・・」


 「ぬっ!!!?」


 大佐が押され始めた!!


 ヤバい・・・なんで、なんでこんな肝心な時に私は!!馬鹿みたいじゃないか!!後は私に任せろなんて言ってこの体たらく!!起きろよ私!!!頼むから!!!


 スパーンッッッ!!!

 「ほぎゃっ!?」


 頬に強烈な一撃が飛んできた。


 「目、覚めたか?」


 「キョウ君?」


 あぁ、京也が私を引っ叩いたのか・・・それでなんとか意識を取り戻した。


 「お前にばっかり良い格好させるかよ・・・俺はまだ動けるんだ・・・そろそろ、俺にも守らせてくれよ。弟も、家族も、好きな奴も守れないなんてかっこ悪い真似は許せなくてな。ミツキ、その止めは一緒にやれるか?」


 全く・・・お陰で助かったなんて、私の性格的に言える訳無いのに・・・


 「・・・うん。この銃に一緒に手を置いて」


 京也は私の身体を支えるように抱き抱えてから銃に手を添えた。


 「な、なに?恥ずかしいんだけど・・・」


 「こうしねぇとすぐに意識飛ばしちまうだろ?で、どうすればいい?」


 「なら、コレを一緒に唱えて・・・」





 「・・・わ、分かった・・・」


 なんだ今の間は、恥ずかしいってか?恥ずかしいと思うから恥ずかしいんだ。どうせクラスのみんなは特に誰も聞いてないんだし、やりたい放題やれば良いじゃん。私はかっこいいと思ってるし、厨二病だし。


 「「覚醒の唄、第三番・・・」」


 「やらせんぞ!!」


 「やらせるよぉ?」


 「貴様!またしても!!!」


 クラークは私たちを殺す為に総力を尽くすつもりだ。かすっただけでアウト、それが何発も飛んでくる。二本目のレーザーも、三本目の大量の触手も駆使してくる。しかもその動きはプールの時とは比べものにならないくらい速い。

 

 けど、大佐は格闘と射撃で全て撃ち落とした。


 「「汝我が僕に非ず、我が友でも非ず、汝は我が推しなり。上に立つは誰、我に非ず。その手に持て、我が推しよ。主従の逆転、人の支配者、その心持って我を踏み行け!!!」」


 「大佐!!!」


 私は銃を大佐に投げた。


 「アイアイサー!!」


 ズガガガガガガガッッッ!!!!


 流石は大佐、あの銃をあんなに軽々と連射する。その攻撃で更にクラークは追い込まれた。


 「ぬぐっっ!!!俺は!!負けんぞ!!!」


 「いや負けだ。ここで手を引くのなら命くらいは助けてやろう」


 「人形ごときが!!上から目線で喋るんじゃない!!!」


 「ごとき?誰に向かって話をしている。今現在マスターの命令により、人形が人間の上に立っているんだよ。それがどう言う意味か教えてやろう。『覚醒の唄最終番』」


 「っ!?なぜ!!?」


 ここにいる私たち全員、それぞれ武器を持って全方向からクラーク目掛けて攻撃を仕掛けようとしていた。


 「さぁ、止めと行こう・・・」




 「「「「「アスタラヴィスタ・ベイビー!!!」」」」」



 

 私と京也、軽音母と教頭。全員が渾身の一撃を放った。


 「ば・・・か・・・な・・・」


 クラークは倒れ、揺れていた地面も収まった。


 「はぁ・・・はぁ・・・もう言ってもいいよね。やったか?って」


 「・・・あぁ、もういい加減くたばってくれよ流石によ・・・」


 その時、私の元に通信が入る。


 『っっしゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!』


 「うわっ!?」


 聞こえたのは歓声だ。


 『やった!!やったんだミツキちゃん!!!クラーケンが遂に滅んだんだよ!!!』


 「シャルロットさん!?そっちは!無事なんですか!?」


 『うん!なんとかね!ここら辺一帯の地形ごと吹き飛んだけど、みんな無事!!しかも誰だろうね!民間人被害も無いの!!不思議な力であの大暴れは無かった事になってるみたい!!』


 八咫烏の術だ・・・


 「あ!ホテルの客たちはどうしたんですか!?」


 『あぁ、あのお客さんたちは別空間でちょっとしたサプライズパーティーみたいにして、お得意のアドリブ対応を私たちの仲間にして貰ってるよ。こっちを元に戻したらみんな元通りさ!ってなわけで、一兆君いっちょお願いします!』


 『・・・あのクラーケン相手にして、V2まで持ち出してめちゃくちゃ破壊した挙げ句、元通り戻せと?シャルロット・・・こればかりはいくら金あっても無理なんだけど・・・』


 一兆君・・・ガチで死にそうな声してるな。どうなってるのか知らないけど、流石に無理なんじゃ・・・


 『えー、じゃどうしよ・・・』


 『あー、ちょっと良いか?』


 「三日月?あんた無事なの?お父さんたちは?」


 三日月の声がしたから私は声をかけた。


 『俺は無事だぜ、父ちゃんも母ちゃんもだ。それよりバカ姉、アイツぶっ倒したのか?急にあの無限の触手が倒れたんだけど』


 「そっか・・・って事はやっぱり倒せたんだ。あ、霧矢君はなんとか無事だよ、ギリギリだったけど。まー最初はどうなる事かと思ったよ」


 まさか近親相姦な危険を阻止する筈が、こんな命掛ける羽目になるなんてね・・・


 『そっか・・・良かったぜ。で、シャルロットさんよ。ちと提案あるんだけどよ、なんとなくだが、俺・・・時止める意外も行けるんじゃないかと思ってな』


 『?なんで、そうだと思ったの?』


 『いや、なんとなくだ・・・とにかく今の俺に出来るのは時を止めるのが30秒。俺しか分からない時を止める感覚。応用すれば、巻き戻しがやれる気がしてるんだ。この地形のみの時間を・・・戻す!!』


 「セカンダビリティ、時間支配。マスターの弟はかなりセンスがあるようだな。マスター見ろ、大暴れしたこの洞窟に走ったヒビが直っていくぞ」


 大佐の指さす方向、壊れた壁とかが逆再生みたいに戻っていく。


 「三日月すご・・・」


 『おーっと?これは報酬貰えるのは三日月君だねぇ〜。どうだい一兆くーん?』


 『馬鹿言え、俺を使う時点で料金は発生してんだ。協力金5000万』


 『ひゃーっ!!』


 後は漫才が繰り広げられた。





 「さてと、それよりも大佐。ありがとう」


 「あぁ、流石にそろそろ俺も活動限界が近いようだ・・・マスター、俺に活躍の場を用意して貰い感謝の極みだ」


 大佐は私に丁寧に頭を下げた。


 「そんな!頭下げるなんてらしくない!!」


 「だな、この手のやり取りはパンチョの役目だ。だが感謝の印は示す、マスターの友人たちにも感謝だ。咄嗟の判断力、行動力。得体の知れない俺をよく信じて行動してくれた。お陰で奴を倒す事が出来たぞ」


 「得体の知れない奴だからこそ、止めは俺しかいねーだろ」

 「何もせずに見届けるなんて汚らしい真似、私が出来るわけないわ」

 「私も同感だ。息子たちを殺そうとした輩を前にただ立ち尽くす真似は出来ない」


 3人は思い思い語った。


 「ふっ・・・マスター、お前の彼氏とその家族、複雑な関係ではあるが、良い奴らだ。これからも仲良くやっていってやれよ?また機会があればいつでも呼んでくれ、ではさらばだ」


 あ、大佐がフィギュアに戻った。


 「ちょっ!?大佐!?私コイツの彼女になるなんてまっぴらなんだけど!!」


 「京也、式はうちの神社であげるか?」


 「私は花嫁衣装を見繕うわ」


 「教頭先生!?荻山さん!?話が飛躍し過ぎてでは!?てか!!私の家族は!?」


 「俺もそう思う!!!話が飛びすぎだ!!」


 うん!!ようやく意見合ったな!!


 「う、うーん・・・うるさーいよー」


 その時だ、うなされる声が聞こえてきた。


 「そうだ霧矢君!無事なの?」


 「あー、今霧矢君お香の影響でかなり発情してる筈ね」

  

 この匂いって、そういう媚薬的なやつだったんだ・・・って、あれ?私たちも嗅いでるくね?


 「は、発情って響煌おばさん!?どうすんだよこれ!!」


 「かなり放置したからそうね、目が覚めたら野獣みたいになるかも・・・」


 「え、ならどうするんですか?」


 この状況でからかうかね!?


 「いや、治るまで受け入れるしか・・・私が原因だから私がやるわ。なんなら2人も隣で休んできたら?防音室が隣にあるわよ?この香りは特に雄をより発情させるから京也君、そろそろキツいんじゃない?」


 「なっ!!?お、俺はっ!!?てか、親父はどうなんだ!?」


 京也、顔真っ赤・・・どうりでやたらとキザな事言うわけだ。このお香とやらの影響でより興奮してたんだな。


 「私は問題ない。儀式が終わり次第霧矢を運ぶ為に裏にいたからな。その際にこのお香の効果を封じる別のお香を嗅いでおいた」


 「あー・・・え?ならそれを嗅がせれば」


 「無理だ、先に嗅いでしまうと抜くしか方法はないだろうな」


 なんてこった・・・ここに来て人生最大のピンチ。中学生と小学生相手になんつー事を・・・不純異性交遊も甚だしい。


 「俺は、俺はまだなんとか堪えれる・・・けど霧矢はマズいだろ・・・どうする?」


 「あ、外にいたあのお姉さん方は?」


 「あー、あの子達2人とも彼氏いるわね」


 NTRはダメだな。


 「だからっておばさんもねーだろ。てか、それが一番やべーだろ・・・」


 「だとしたら、後霧矢くんなんとか出来るのは不慣れなミツキちゃんしかいないわよ?」


 「っっっ!!!!」


 わ、私かよ!!!無理!!確かにこのトロ顔でそそるところはあるけど、いきなりは無理!!


 「・・・にーちゃん?あれ、俺寝てた?あー、頭が重たいよー。身体ダルいし、寒いし・・・なんか鼻の奥も変な匂いするんだ・・・」


 起きた・・・ヤバいどうする?いや確かに可愛いな。やっぱり私も少なからず影響受けてるのか?顔真っ赤で目がトロンとしてて鼻水垂れてて、なんとも言えないショタを感じる・・・ん?鼻水?


 「ズズ・・・っしょんっ!!!あー・・・」


 くしゃみ・・・


 「あの・・・これさ、媚薬の影響と言うより・・・」





 (((((風邪ひいてるだけでは?)))))





 「助けてにーちゃーん・・・鼻水止まらないよー・・・」


 「ぷっ・・・あははは!!!これはしてやられたわね!!これ、鼻詰まってお香が全然効いてないみたい!!」


 軽音母が大笑いした。


 「うーん・・・にーちゃーん、あったかいポカリあったっけー?」


 「霧矢・・・だから昨日腹出して扇風機に当たりながら寝るなっつったろーが。今朝若干鼻声か?と思ったら・・・やっぱ風邪かよ」


 「はははは!!あーあ、これこそ因果ってやつね。つまりは、霧矢君は永零たちに協力しないし、私たちの言う事も聞くつもりはないみたいね。私たちの完敗よ、輝夜ミツキ。今日は家族旅行でしょ?向こうもそろそろ元通りになってるだろうし、時間的に夕食ね。帰りましょ?」


 軽音母よ、深海図太いと言うか何というか・・・こんな事になってもすぐにこの空気ごと水に流してしまった。


 「京也、ミツキ君もホテルに戻りたまえ。少しばかりの未成年バイクデートは見逃してやろう!ハハハ!!!霧矢は私が連れて帰るからな!!風邪ひきは家でお休みだ!」


 「うー・・・」


 「ちょっ!!デートじゃなくて帰るだけです!!」


 ぬー、教頭も霧矢君連れて帰ってしまった。


 「・・・なぁミツキ、一つ良いか?」

  

 「なに?」


 何か話す事あったっけ?


 「あんた、明日もう帰るのか?」


 「そりゃ、1泊2日の旅行だもの」


 顔真っ赤にしたままなにをする気だ?


 はっ!!?さてはコイツの中のケダモノが暴走寸前!?ヤバい!!既に2人きりのベッドルーム!!何も起きない訳がない!!


 ジリ・・・大丈夫だ、私には東郷に叩き込まれた近接格闘術、CQCがあるのだから・・・


 「な、なんだよ・・・何もしねぇって・・・明日の夜、連れて行きたい所があんだよ。昔、話したの覚えてねーか?俺の地元で夏にすんげーデカい花火大会があるって。その花火大会・・・明日なんだよ」


 「・・・夏祭りアンド花火イベここで回収すんの!?」


 「相変わらず意味わからない反応するなお前・・・」


 うるさい、私は基本ゲーム脳なんだ。


 「そんな2泊する程お金ないよ?」


 「俺が出す。恥ずかしいなら弟も連れてきて構わねぇからさ。俺だって今割と勇気出したんだからな?今まで散々当たり散らかした詫びとは言えねぇけど、昔からの夢だったんだ。昔はあの花火が怖くてよ・・・けど、お前と一緒なら怖くないかもって思ってたんだ。


 昔はお前かなりヤンチャだったもんな。昼ドラも驚きのドロドロおままごとから、変身ヒーローごっこまで色々付き合わされたっけな」


 やったなぁ・・・あの頃は私も陽キャ気味だったっけ、友達も多かった。よくおままごと仕切って配役決めてやってたっけ。いつからだろ、こんな隠キャになったのは・・・あぁ、一度引っ越してからだ。


 「ヒーロー役、やっとやれたね。分かった、お父さんになんとか言ってみるよ。けど、三日月も誘うから。決してデートじゃないからね」


 「分かったよ、霧矢も体調良くなったら呼ぶ。まーアイツの事だ。明日の朝にはケロっとしてるだろ。さて、帰ろうぜ?山上館のハーフバイキングは絶品だぞ?」


 「・・・まさか、バイキングも被らないよね?」


 ここまで散々被ったんだ。そっちも被ったら落ち着いて食べられない。私、けっこう盛り盛り盛るんだよ。


 「あぁ、俺らは団体客専用の別部屋で会席料理だ」


 「ほっ・・・やっとゆっくり出来るよ。なら帰ろっか」


 私たちは洞窟を出て、ホテルへと走った。あ、この感覚。また八咫烏がなんとかしてくれてるみたい、ありがとうカラスちゃん。

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