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私の恐怖

 「わああああああああああああっっっ!!!!!???」


 いつもの天井?私は周囲を見渡した。ドアにびっくりした顔で固まってる弟がいる。


 「ば、バカ姉、驚かすなよ。中々起きねぇから起こしに来たら、急に叫び出すわ飛び上がるわ。びっくりしたぁ・・・」


 「あいつは・・・私はどうしてここに・・・私は、殺されて・・・」


 「な、なに物騒な事言ってんだ?てかさっさと起きろ、遅刻するだろうが」


 弟は部屋の電気を付けた、光に刺激されて私は少し目をを細めた。


 「いや〜・・・コイツの厨二病もいよいよヤバいとこまで来たか?ガチめに精神科探した方が良いんじゃね?」


 「・・・夢?」


 待て、何処からが夢なんだ?私は・・・いつこの部屋に戻ってきた?


 「そりゃ夢見てたんじゃねぇの?俺もう行くからな?って、バカ姉!?顔真っ青じゃん!?」


 「え・・・そんな事」


 「いやいや!!ちょっと熱測れ!!流石にそれは風邪かインフルかなんかだろ!!寝てた方が絶対良いって!!うつるから俺行くぜ!?母ちゃん!父ちゃん!!ちょっと!!」


 弟が、私の心配してくれた・・・あの生意気なガキが・・・


 「ミツキ!?凄い汗じゃない!!」

 「おいおいなんだぁ風邪かぁ!?あっしが帰って来てそんな嬉しかったかぁ!?って、冗談はさて置き、ちょっくら学校電話するわ!」


 私、そんなに酷い顔をしてたの?それにしても・・・何処からが夢で・・・


 私は考えるために手を口に当てた。


 「うぇっ!!」


 生臭っ!!なに、このべたっとしたのは!!?


 「血・・・?」


 手には血がべったり付いていた。ベッドのシーツも、血で濡れてる・・・


 「おいミツキ・・・そいつぁまさか、女の子の日って訳かぁ!?すっげえ量だな!?」

 「ちょっと!あなた!流石にモラル!!」


 「おっとわりぃ。とりあえず今日はゆっくり休んでな?」


 違う・・・今日はそんな日じゃない。この血は、あの時の・・・夢じゃない、あの出来事は起こったんだ。軽音は・・・あの後どうなった?


 ドクンッッッ!!!


 心臓の鼓動が一気に跳ね上がった。終わってない、奴は・・・存在してるのなら!?


 窓の・・・外・・・部屋を覗いて

 



 『アハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!』




 頭の中にあの声が鳴り響いた。


 「あああああああああっっっっっ!!!!!!!!!」


 私は窓の鍵を閉めてカーテンを閉めた。


 「ミ、ミツキ?」


 「ひっ!!!」


 母の顔が・・・変わってる。あの、ピエロに!!私は咄嗟に自分の部屋の扉を閉めて鍵をかけた。


 「ちょっとミツキ!?いきなりどうしたの!?」


 「いなくなれ!いなくなれ!いなくなれ!!!」


 私に出来た事は部屋の押し入れに逃げ込んで、布団を頭から被ることだけだ。耳をふざけ、目を瞑れ・・・落ち着いて・・・きっと、夢だ。今度こそ本当に目覚める。ただの悪夢、そうに違いない。


 醒めろ、醒めろ、醒めろ、醒めろ、醒めろ、醒めろ・・・・・・・・







 私は永遠に唱え続けてた。何時間も、いや、時間なんて分からない。そんなことを考えてる余裕は無かった。


 ーーーピンポーンーーー


 「ごめんくださーい!!」

 「ごめんヨー!!」


 僅かに聞こえた。三上君の声・・・そしてネーちゃん。今度はお前たちの姿で来たのか。


 「あらあらごめんなさいね。ミツキってば今朝から変で、全部の鍵閉めちゃって出てこないのよ。よっぽど怖い夢を見たのかしらね・・・あ、良かったら上がっていったら?」


 「いえいえ、僕はプリントを届けに来ただけで」

 「うーん?三上君ヨ、ついでなんだしお見舞いしてこーネ。ミッちゃん家来るのも初めてなんだからサ」


 余計な事しなくて良いよネーちゃん。今は来ないで、お願いだから・・・でも、私はいつまでこうしてれば、いつ目覚める?いつまでこうしてれば・・・



 「カァ!!カァ!!!」



 「ぁあっ!?ちょっとそれミツキさんのプリント!!ちょっとーっ!!」

 「カラスさーん!!それ返してーネ!!」


 私のプリント、カラスが取ったのか?カラス・・・?




 (知りたければカラスを追え、そこが全てに繋がる)




 違う、今は違う・・・あの時の言っていた事は、きっとこれの事なんだ。それに、私はあの時三上君を追っていた。その直後にアレだ。三上君には何かあるんだ・・・何かを知ってる。


 動け、このまま何もしなきゃ、きっと奴に殺される・・・行けっ!!


 バタンッッッ!!

 「ぐへっ!?」


 今、多分弟が私の部屋の前にいたけど気にするな、一気に階段を駆け下りろ。


 三上君だけを追え・・・


 「っと・・・何とか取り戻せた・・・危ないなぁ」

 「うおー、凄いジャンプ力ネー・・・」


 「三上君!!教えて!!私に、何が起きたの!?」


 「あ、アー!!イー・・・っ!?ちょっと!!?なんなのその血っ!?あ、もしかして女の子の・・・」

 「ごめん!ちょっと黙ってネーちゃん!!」


 「う、うん」


 「・・・覚えてるの?」


 三上君の雰囲気、声だけで変わったのが分かる。


 「覚えてる!アレは何だったの!?知ってるんでしょ!?あのピエロも!あの変な怪物も!坂上 桜蘭も!!」


 「っ!!?」


 そして、いつもおっとりしてる三上君が表情を驚愕に変えた。


 「何で・・・知ってる?彼の事を・・・」


 私と三上君の間に何かが繋がった。


 「え、えっ?な、何?ピエロ?さかがみさくらってなに?」


 一方、ネーちゃんは何も知らないらしい。


 「やっぱり・・・知ってる。新年度が始まる前の日、私は変な怪物に襲われた。その時私を助けてくれたのは彼、そして彼は言った、カラスを追えって・・・」


 「なら、君が・・・目撃者」


 「教えて・・・一体何が起こってるの!?」


 聞かなきゃ行けない。私は、知る義務があるはずだ。聞き出してやる・・・けど、けど・・・


 「怖い?知るのが」


 三上君はまるで私の心を見透かしたように聞き返した。


 「怖い・・・知ったら、知ったらどうなるのか・・・私は、どうなるの?」


 「・・・怪物の方は恐怖の前に現れる。この段階で教えるには、巻き込む人の数が多すぎる。けど、決めたよ・・・僕は巻き込む!」


 「痛ってーな!!バカ姉!!扉は慎重に開けろ!」

 「おいミツキ、ほんと大丈夫かぁ?」

 「ミッちゃん・・・全然話が付いていけないヨ?」


 ここにいたのは三上君に加えて弟、三日月と、父、新月、そして私の友達、ネーちゃんだ。


 「クロノス!!止めてっ!!」


 え、何これ・・・鳥が、止まってる?風になびいてた草も、倒れたまま固まってる。


 「み、三上君?何したネ?」


 「いずれはこの世界の生物全員が知ることになるこの世界の真実だよ。ごめんね、君らはそれを先に体験する事になる。僕はただ、その世界の運命に刃向かう。愚かな馬鹿野郎の一人ってだけだ。だから今はこの事は黙っててくれると嬉しいな」


 三上は何かを取り出した。アレはなに?刀の鞘の先端みたいな。けど、その皿に先っちょに鉄砲の引き金が2つ付いてる。


 そして、それを構えた瞬間に奴は現れた。


 「ぐるるるるるる・・・・・」


 奴だ。あの日、私を襲った謎の怪物・・・


 「な、なんだこいつ!?」


 弟が叫んだ。


 「フィアーズビースト・・・それが一応正式な名前かな。でも、こんな名前貰っても何の意味もない。奴は恐怖を糧に動くだけの、ただのバケモノだ!!」


 三上君が動いた。あの鞘みたいなのをあの怪物に向ける。そして先端の引き金を引いた。


 先端が光った、音はそんなにしない。けど、その光った瞬間には怪物の体にゴルフボールくらいの穴があちこちに空けられた。


 「一匹目・・・次!!」


 まだ奴はいる、三上君は2番目の引き金を引いた。するとさっきまで銃口の役割を果たしていた鞘の先端から光る刀身が現れた。


 その先の景色はもう付いていく事が出来ない。刀身が現れた瞬間、あの怪物は一気に何十匹も現れた。私が見えた景色は怪物がこっちに来るたびに焼き切られたような傷を作り、地面にバタバタと倒れていく景色だ。


 「な、なっ!?」


 弟はキョロキョロと顔を動かす。追いつけないんだ。


 これが、三上君の本当の実力・・・いや、なんで笑ってる?まだまだ余力を残してこの戦いを・・・楽しんでる。


 「あはは!!これでおしまい!!」


 地面にあの怪物の死体が転がった。三上はあの鞘みたいのを何処かにしまった。


 そして瞬きした瞬間、怪物は消えて周囲の鳥も動き出していた。


 「な、なな・・・」

 「ぽけー・・・」

 「おいおい、なんだよおい・・・」


 この現実を突きつけられたみんなはそれぞれ固まってる。


 「さてと・・・まずは何から話そうかな?うん、色々話す前にまず僕の事を少し話しておかないとね、僕の名前は三上 礼。四年前まではこの世界に住むただの一般人だった。


 けど四年前、僕はある実験に参加させられたんだ。僕の意志も関係なく、ほぼ巻き込まれる形でね。で、その実験とは何も知らない存在をある環境に置いて経過観察する事だった。そして、その環境に適応出来た者は力を得る、これは見せた方が早いね」


 三上君は右手を前に差し出した。そして手から激しい炎が吹き出した。


 「なんじゃいネ!?マジック!?」

 「いや、そんなんじゃねーよ!こいつはもしかしてよ!!」


 ネーちゃんと弟がすごい興奮してる。


 「この現象を一番楽に説明するのは一言、魔法だよ。けど、さっきも言ったよね。順応出来た者は力を得ると。じゃあ順応出来なかった者はどうなるのか・・・それがさっきのアレだ。恐怖に怯え続け、恐怖に襲いかかる怪物、フィアーズビーストと化してしまう。


 実験の意味はそこにある。いかにしてバケモノにならずにこの力だけを手に入れる事は出来ないのかってね。僕はその実験の道具に使われた」


 「・・・三上君、とりあえずその話が本当だと仮定しよう。その上で1つ聞きたい事があるんだが、良いかな?」


 急に父が真面目なトーンで三上君に語りかけた。


 「良いですよ」


 「あっしが考えるに、本当に必要としていたのは魔法じゃないだろ?君の動きから察するに、真に必要なのはその体力だ。そして今、こんなどうでも良いようなあっしらの前に君は現れた・・・正直に答えてくれ、そろそろヤバいんだろ?」


 「・・・そこまでは僕には分からないよ。ただ、遠からずではあると思う。で、実験の本当の意味は新月さん、あなたの言う通り体力だ。無限の体力を持つ者を生み出す。つまり、不老不死の完成が長年続けられてきた実験の最終段階なんだ。そして今、その実験は終わりを迎えようとしてる」


 「そうか・・・くく、成る程!!あっしの予想はやっぱり合っていた!!」


 何をそんなに興奮してるんだ?父は・・・それよりも、私が聞きたい事は・・・


 「三上君・・・あのピエロは何?それと・・・荻山 軽音はどうなったの?」


 怖かったけど、私は聞いた。軽音があの後どうなったのかわからないんだ。あれは、生きてる方がおかしい・・・いずれ私も、ああなるんじゃないか・・・


 「彼女は無事だよ、一応ね。ミツキさん、ここに関しては僕が聞きたいんだ。荻山さんは僕が駆けつけた時には虫の息だった。それを僕がこの魔法の力で何とか一命は取り留める事は出来たんだ。けど、そこに君はいなかった。そして何より、彼女はあの出来事を覚えていない、代わりに別の記憶が存在していた。轢き逃げに遭ったってね」


 私は今、安堵したのかよく分からない気分になった。死んではいない・・・


 「けど、君は覚えてるんだよね?あのピエロの仮面の事を・・・そして、坂上 桜蘭の事を・・・あの時、君が僕を尾けていたのは知ってた。そこに荻山さんも居た事も。


 あのピエロは元々神とも呼べる存在だったんだ、四人の神の一人。けど今は一つだった意志が殺されて、罪に巣食う存在と成り果てた。アレは罪の意識の前に現れる、正式名称はまだない。断罪者と呼ぶ者、そこから派生してジャッジメントビースト、フィアーズデビル。色んな呼び方がある。


 けど、僕からしたらアレは、成仏する事の出来ない、この世界に留まりしあらゆる負の感情の集合体、悪魔って僕は呼んでる」


 悪魔・・・それがあのピエロの正体・・・


 「なら、何で今そいつが現れたの?なんで私だったの?」


 「僕のせいだ・・・君たちは戦いに巻き込まれた、ただそれだけ。悪魔は罪の感情の前に現れる。ミツキさんと荻山さんの関係は分かってた、僕は奴を引きずり出す為に君を泳がせてたんだ。まずはあの悪魔を見つけなければ僕の求める場所へは行けない」


 「それって・・・それって、三上君の個人的な理由で私は、あんな目に遭ったって事?」


 「その通りだよ」


 「荻山 軽音も、君のせいで死にかけたって・・・こと?」


 私はいつの間にか、三上君に対して少し恨みに近い言葉をぶつけていた。けど、三上君はまっすぐ私を見たままこう言った。


 「弁明をするつもりはないよ。全ては僕の勝手な都合で君たちを巻き込んだ。だから僕から言えるのは一言、ごめん・・・」


 たった一言だ。これだけの事をしておいて、私に対して言ったのはごめんの一言。怒りが込み上げてくる、そんな事で私は人生を無茶苦茶にされたのか、そう思った。


 けど三上君の顔を見た瞬間、その怒りは消え去った。こんな顔した人なんて今まで見た事がなかったからだ。涙は無い、悔しさとかも何も無い。むしろ少し笑ってる・・・けど、なんでこんなに物悲しいのか。


 「・・・・・三上君、教えてくれる?何があったのか、この世界は今どうなっていて、三上君は一体何と戦ってるのかを!」


 私は聞かなきゃいけない、そう思った。


 「いや、君は知る必要は無い事だよ。輝夜 ミツキ」


 「っ!?」


 先に驚きを表したのは私じゃない、三上君だ。そこには1人の高そうなスーツを着た男が立っていた。


 「あ、あんた!!」


 突然父がそいつを指差した。


 「おや、輝夜 新月さんもお越しか。私の名は、チャールズ オリヴァー。よろしく」

 

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