世界を震わせる触手
「ぬぁぁっ!!!」
「ちっ、除去されたか・・・」
クラークは自身に取り込んでしまった装置を取り出し破壊した。
「どう?ミツキちゃんたち行っちゃったけど、これも予測通りだった?」
シャルロットはクラークを煽る。
「中々の連携だった。認めよう、予測超えの結果だとな・・・しかし、あの小娘2人行かせたところで無意味だ。万が一の足止めもいるからな・・・さて、四本目までだと貴様らに完封されてしまうようだな。困ったものだ・・・これでは永零様の任務を遂行出来ない」
「なら諦めてさっさとやられろよな。次は首と心臓両方貰うぜ?」
エンリコは大鎌を構える。
「五本目以降は破壊力が強すぎて扱いが難しいんだ・・・だが、仕方ない。貴様らは死の恐怖を与える間もなく殺す事になってしまうな・・・六本目・・・サイス・バスター」
ゴゴゴゴッッッ!!!
「な、なんだ!?地面が揺れる!!地震!?」
「ワンコ!これは地震ではない!!見ろ!!窓の外だ!!」
「んなっ!?」
ワンコの視線の先、海の向こう側にまるで天を摩する程巨大な触手の腕だ。
「これを貴様らに叩きつけるのもありだが、それでは芸が無い。貴様らの攻撃力ならこいつごと打ち破りかねないからな・・・だが、この足を水面に叩きつければどうなる?」
「っ!!貴様っ!!」
ナターシャがバルカン砲を一気に撃ち込む。
「五本目・・・シンク・プレデター」
突如としてクラークの周囲を囲むように現れた触手に銃弾は吸い込まれた。
「ご馳走様だ・・・さて、今のエネルギーを更に上乗せしよう。今の六本目の威力なら、この周囲の島たち丸ごと呑み込む津波を引き起こせるな・・・」
「魔法ではなく、弾丸ごと吸収して己の力にしたと言うのか!!」
「そう、キャパオーバー狙っても無駄だ。三上ならまだしも、俺のキャパはこの世界丸ごと呑み込む程のエネルギーを蓄えられる。貴様らでも一瞬でその威力はだせないだろう?さぁ、打ち下ろせ!」
「レールガン・レベル五!!!」
ランディは触手に向かって最大威力のレールガンを放つ。
「無駄だ!!この腕はそう簡単には止められんぞ!!」三本目、トライ・ポッド!!」
「っ!!!」
更には再び周囲に無数の触手が再び現れた。
「さぁ、コイツらの相手をしているうちに死ぬが良い!!」
『エアクイーン2、フォックス1』
触手が振り下ろされる直前、何かが触手にぶつかり触手が粉々に砕け散る程の大爆発が起きた。
その直後、轟音と共に空を一機の戦闘機が駆け抜けた。
「ナイスタイミング!キャンディ!」
エルメスがその戦闘機に向けて感謝を送った。それに反応するようにエルメスに無線が入る。
『エルメステメェ、こちとらコス◯コってとこで菓子バカ買いして隊の奴らと食べようって話してたのによぉ、急に呼び出しやがって・・・自衛隊との兼ね合いもあんだ、流石に一機しか飛ばせなかったぜ?』
「ごめんごめん!年会費払ってあげるから!」
『お、サンキュー。で、操縦変わるか?』
「いや、私は今回地上でサポート専念する。キャンディは上空支援お願い」
『あいよ、菓子持ち込んでたから丁度良いわ。んなら、ちと遅いがエアクイーン2、エンゲージ!!』
空を飛ぶ戦闘機は凄まじい角度で旋回し、クラークに向けて再び飛び出した。
「エアクイーン隊か・・・奴らも呼んでいたか・・・」
クラークは左腕を少し痛そうにさすった。
「そうだよ。ずっと練ってたんだ、全てはこの時の為にね!!完封させて貰うよクラーク!!弱点は見つけた!!」
シャルロットはズビシッとクラークに指差した。
「弱点だと?」
「君の触手ら本数を増やすほどその強大な効果を得るのに時間がかかる。つまりはそこは隙だらけって訳。そして直ぐに発動出来る触手は私たちには通用しない。さ、畳みかけよっか。エルメスちゃん!」
「イエッサー!!はむっ!!」
エルメスはおもむろに何かを食べた。
「あれは・・・?」
「レイサワ印のハンバーガー!!携帯食料バージョン!!ごくんっ!行くぞ・・・ライト・ディビジョン!!」
そしてエルメスの両手は徐々に輝きを始めた。輝く両手を天にかざすとその光はRODのメンバーに降り注いだ。
「なんだ今のは・・・」
クラークは眩しさから手で顔を覆う。
「女王陛下による力の分配ってとこかな?ランディ!!」
「レールガン・レベル六!!」
「気化式ダートボム!」
ランディとシャルロットは同時に攻撃を仕掛けた。極太のレーザーのようなレールガンがランディの銃口から放たれ、シャルロットの投げた先の尖ったダーツのような爆弾は衝撃波でホテルの窓ガラスを全て割り、クラークを海に吹っ飛ばした。
「っ!!!!なんだこの威力は!?予測にないぞ!?」
「ライト・ディビジョン、アダムスの魔法の奥義!アダムスは通常の人間よりも長寿なのはしってよねぇ!その寿命の力を身体能力と魔法力増加って形で周りに分配する、それがこの魔法よ!
デメリットは私の寿命を減らす事だけど、それはレイサワのこのハンバーガーで補える!バケモノの肉は素晴らしい事に、寿命すら伸ばす程の効果を持ってるのよ!」
エルメスはしてやったりな顔で薙刀をクラークに向けた。
そこに続いてRODは総力戦を仕掛けた。
「大炎舞!」
「水鉄切断!」
「土竜叩き・打ち上げ!」
ワンコ、ニャンタ、ポンサンの連携でクラークに隙を与えない。
「切り刻め!!ブレイクスルー!!」
ジョニーの放つ短弓から巻き起こる鎌鼬の矢がさらに触手を切り刻む。
「くそっ!!七本目!!!セブン・ツイスター!!!」
「「っ!?」」
クラークは七本目を発動させた。海面が突然水蒸気爆発を起こし、海の中から溶岩が吹き出した。その後突如として雷雲が巻き起こる。
「隙を与えないか・・・確かに俺の弱点は本数が増えるごとに発動への時間がかかる事だ。しかしだ、俺を即座に殺さない限り、時間さえあれば発動出来るのだよ。さて、能力の説明でもしておこう。七本目の能力は天候支配。あのセカンダビリティと同じ能力だ。しかし、荒天限定だがな・・・海底噴火とクラス5レベルの台風、人間が自然災害にどう立ち向かう?」
「ふはははは!!自然災害とな!?ならば私にもってこいではないか!!」
そこへランスを携えたアンリエッタが堂々と現れた。
「いやぁ竜巻との修行楽しかったなぁ!地上へと垂れる漏斗雲!やがては全てを吸い上げる巨大竜巻!それを我がランスと炎で切り飛ばしてやったわ!!さぁ!クラーク!貴様の台風とやらはどんなものだ!?」
アンリエッタは全身を炎で包み、燃え盛るランスを構え、一気に突き放った。
巨大な炎柱が巻き起こりホテルの半島の半分が消失した。
「おーおー、戻ってきてみりゃアンちゃんやり過ぎだろ」
「ひーっ!?なんですかこれー!!」
ミツキたちを送ったレオナルドが戻ってきた。増子味はレオナルドにお姫様抱っこされている。
「むっ!?貴様!!また女性をたぶらかしているのか!?」
「無論、なんてったって一応女子アナだ。地方局の子ではあるが全国放送の経験もある。最悪の場合この子使ってこの様子を全国に垂れ流すのさ。んで、クラークや永零の野望を白日の元に晒してあいつらの動きを封じてやろうってな?」
「相変わらず卑怯な奴だな貴様・・・だが」
「あぁ、それは最悪の場合だ。その事態は三上も望まないし、ミツキちゃんも嫌がるだろうからな。壊れた島はウラヌスとイッチョーに任せりゃ直せるさ。さてと、こんなんじゃくたばらないだろあいつは」
「その通りだ!!」
クラークはまだダメージを受けたようには見えないが、その表情には僅かに苛立ちを覚えている。
「所詮はこの程度か、今の七本目はまだ本気を出してはいない。貴様の炎はそれが最大らしいな」
「私は常に全力だ!!」
「なら、尚更残念だ・・・本当の自然災害とやり合うには弱すぎる。三上の半分にも及ばないな・・・」
「ほぅ!!ミカミ陛下の半分以下並の評価を与えてくれるとは!嬉しい事言ってくれるじゃないかぁ!!確かに!私の全力は今のだけだ!!しかぁし!!今貴様、ミカミ陛下を愚弄したな?」
アンリエッタは突然落ち着き、ランスを下ろした。
「あの・・・あの人の・・・悪口を・・・言ったのは・・・お前だな・・・」
アンリエッタの後ろ、そこでゆらりと蠢く影がいた。やたらと胸の大きい目にクマのある女性、ベアトリーチェだ。ベアトリーチェは肩のアーマーと一体化した盾を構えながらゆるりと前へ出る。
「しょーじき、ブチ切れたベアトリーチェは私の手に負えなくてな、コイツの瞬間的な爆発力は私どころか、今ならグレイシア様をも超えるだろう。自然災害がなんだって?そんなものはベアトリーチェの怒りで全て凍らされるぞ」
「ふふ・・・ミカミ様・・・こんな奴は、あなたの手を汚すまでもありませんよ・・・ミカミ様に楯突くゴミ虫、わ、私が駆除しておきます・・・」
「なんだこの感覚は・・・薄気味悪いな・・・ならば!一気に終わらせ・・・っ!!?」
気がつけばクラークの巻き起こした嵐は全て凍っていた。
「皆下がれ!!ワンコ!!巻き込まれる前に火炊いておけ!!」
「我を焚き火みたいに言うな!!」
「なんだ!?これは!!触手ごと凍って・・・」
ドンッ!!!
そして、それからも一瞬だった。ベアトリーチェは凍った海面を滑らかかつとてつもない速度で駆け抜け、クラークへと向かった。
「しまった!!」
「砕け散れ!!このイカ!!」
目にも止まらないベアトリーチェの盾の突進は巨大な触手を全て砕いた。
「ぐぬぅぉっ!!!!」
クラークはその突進をもろに受けた。
「あなた・・・ほ、本体だ・・・なら、このまま!!」
「間に合うか・・・八本目!!!!エイトっ!?」
触手に意識を集中したわずかな瞬間、クラークは気が付いた。全員が最大威力の攻撃の準備に入っていた事に。
「馬鹿な!!!!?この俺が!!やられるだとっ!?」
「VSクラーケン、この為にずっと私たちは対策を練っていたんだよ。何百年も前から今この瞬間になるまで異世界はあなたを倒す算段をずっと考えてた・・・あなたはその強大な力にあぐらをかいていたから私たちの力があなたに迫ってる事に気が付かなかった・・・さぁ、止めだよ。クラーク プファンクーヘン!!!」
戦闘機からミサイルが放たれ、そこに続いてRODメンバー全員による総攻撃がクラークに集中した。何秒、何分、その総攻撃が終わるのは果てしなく時間がかかったように感じた。
その衝撃で最早ここにホテルがあったかどうかすら分からない。周辺は焦土と化した。
「はぁ・・・はぁ・・・なんとか、八本目出す前に倒した・・・」
シャルロットは横たわるクラークに向けて呟いた。
「なぁシャルちゃんよ。こいつの八本目ってそんなヤバいのか?」
レオナルドがシャルロットに質問した。
「普段見てたあの大陸みたいな姿。八本目はアレなの」
「なっ!?おいおい!ちょっと待てよ!?つまりは八本目であれってぇ事は、まだ二本分能力残してたって訳か!?」
「そゆこと。ま、最悪の場合三日月君に時止め以来するところだったんだ。八本目出されたらいよいよ世界中の戦力集めてもどうにもならなさそうだからね」
「最後俺頼みだったのかよ・・・あぶね、このとんでもインフレに巻き込まれるとこだったぜ・・・」
三日月は苦い顔して頭を抱えた。
「まーともかく!!あっしらは助かったって訳だ!!で!これどーすんの?」
新月がこの荒れ果てた大地を見てチベットスナギツネみたいな顔をした。
「だいじょーぶ!前と同じく元通り再現するだけさ!いっちょーくーん!!」
シャルロットが名を呼ぶと一兆は今にも死にそうな顔で現れた。
「・・・・・・いや無理、マジで無理。原型ないじゃん。ただでさえ病院一つ直すのに3日寝込んだんだぜ?俺を殺す気か?」
「そこをなんとか!避難させたここの宿泊客とかスタッフとかあっちに留めておくのには限界あるもんでさぁ!」
「・・・修理費用30億な」
「ふにゅっ!?なんつーぼったくり!!」
「安いくらいだろうが、島壊滅してんのすら直すんだぞ。それくらい払え」
「へぇ〜・・・あいわかったよー。振り込んでおくよー。あぁ、せっかくトップアイドルまだ上り詰めて稼いだお金が・・・おーいおいおい・・・」
シャルロットはあからさまに嘘泣きをした。
「お前はそれ以外でも稼いでるだろうが、たかだな30億で嘆くんじゃねぇ」
「ほほほ、バレましたか」
「んじゃ行く・・・いや、まだだな」
「っ!?」
一兆はピタッと動きを止め、クラークの方を振り返る。
「ふふ、死ぬかと思ったぞ・・・」
「なーんで生きてるのかなー?君はマキシマムビーストじゃないで・・・しょっ!!」
ドガンッ!!
シャルロットは爆弾をクラークに打ち込んだ。
「無駄だ・・・俺はもう倒せはしない。十本目を発動したからな・・・」
「十本目!?」
クラークはゆらりと起き上がる。
「そうだ、そして十本目が発動したと言うことは八本目と九本目も発動した。世界の海全てに触手を張り巡らす八本目、エイト・ターミネート、こいつは地上への攻撃は出来ない。海の全てを支配できるのがこの八本目だ。それがお前たちの知る俺の最大の力・・・それの更に上を行く九本目の能力の使用は一撃で全てが終わる為、永零様に何があろうと使用の許可はされなかった。だが、使わせて貰うぞ。命令に背くことになろうとも、この一撃で世界の命全てを終わらせる・・・ナイン・エクスペンタブル」
そう告げるとクラークは地面に溶けるように消えた。その直後、大きく地面が揺れ始める。
「な、なにっ!?これ!?」
「地面が!!まるで生きてるみたいに動いてる!!」
『あらゆる大地は我が手足となる。さぁ、終わらせるぞ・・・』
クラークは文字通りこの大地全てに触手を張り巡らせ、世界全体を震わせた。
「っっっ!!!!クソが!!もんあんたしかいねぇぞ!!バカ姉ぇ!!!」
その時、三日月は何故か姉を呼んでいた。




