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輝夜家の過去

 とりあえずこの場はこれで収まった。部屋へ行こう、そこで父に問い詰めてやろう。コイツは一体何をやらかしてこんな事態を引き起こしたのかを。


 「話せ」

 「うん、話して」


 三日月と私はとりあえず部屋に突っ込んで父に詰め寄った。あー、外の景色は綺麗だなぁ。けどそんな事よりも私はこっちに集中しなければ・・・


 「そうだなぁ、あの2人の事を話すとなると、母さんとの馴れ初めも入れなきゃいけなんだが・・・カマール、良いか?お前の傷をえぐる事になるけどよ」


 「そうね、いつかは話しておかなきゃいけないのなら私は構わないわ。話してあげて」


 なに、これってそこまでドシリアスな問題なの?これは、簡単に聞くべきじゃなかったか?


 「母ちゃんが良いってんなら、今のうちに聞いておくべきだろ。それにあの2人には永零が絡んでるんだ。あいつが関わってる以上、俺たちは首を突っ込まねーとな」


 肝座ってるなぁ。


 「世界っつーんは、変に狭いもんだなぁ。わーったよ、響煌と連也と知り合ったのは大学の時でな・・・」


 父の過去語りが始まった、


 ・


 ・


 ・


 「響煌は大学時代、そりゃべっぴんでなぁ。高嶺の花とはアイツの事言うんだろうなってな感じだったんだ。とは言ってもあん時から差別主義は変わらなくてよ、なんなら今より全体的に差別してたな。よくナンパされてたのを見てたが、ボロクソ言われて男共は撃沈してたっけ。


 一方あっしはあん時から今と変わらず変わりもんでなぁ、響煌に声かける以前にあっしは校内清掃ばっかしててよ、専攻してたのも環境関係ばっかりで、どーにも校内のポイ捨てが気になって仕方なかったのよ。


 そんな訳であっしと響煌とはなんの接点も無かったんだけどな?ある時あっしがゴミ拾いしてたらタバコをポイ捨てしてる輩を見つけて注意しに行ったら、その野郎ゴミ捨てるわその手で響煌をナンパしてやがってよ、それが響煌とのファーストコンタクトって訳、あ、因みにあっしはそのナンパ男を箒でギャフンと言わせた訳よ。


 そしたら響煌の奴俺の活動に興味持ってくれてよ、そっから結構仲良くなって校内の清掃だけじゃなくてもうちょっと地域に活動範囲広げる事になったんだ。


 で、ある時せっかくこんな活動してるのなら世界に向けて活動してみようぜって話になってなぁ、そん時出会ったのが連也だったんだ。あいつは当時世界情勢について専攻しててよ、あっしらの活動は恵まれたこの日本じゃなくて、恵まれない地域でこそ役に立つんだって力説してたっけ。


 そっからあっしらは大学を中退して、世界を股に掛ける『国境なきお掃除屋さん』を始めた訳だ。あん時は楽しかったなぁ、当時日本はいわゆる就職氷河期ってやつでよ、尚更日本にいてたまるかっ!!つって世界に飛び出したんだ。


 んで、そっからが世界編突入、あっしらの活動は最初は小さな村での炊き出しとかからやって、次は簡易的な道路の整備、そん次は農場の整備とかを初めてみたんだ。無論、国連に許可は取ったぜ?


 で、その活動は比較的順調に進んでな、国連から支援も貰えるようになって、組織はそこそこ大きくなって来たんだよ。


 ただ、ある時ちょっと事件が起きてな、あっしらの活動していた地域ってのは貧困ではあったが比較的治安は悪くない地域ではあったんだ。みんなちゃんと列には並ぶし、感謝の言葉をかけてもらえるとあっしらの活動の意味はあったんだって感じれた。


 けどそんなある日、あっしらの寝泊まりしてたキャンプ地に盗賊が押し入って来てなぁ、まぁ盗賊つっても素人集団の集まりで、武器に自動小銃とかも持って来られたんだが、素人の撃つ銃弾はブレッブレで的にろくに当てられたもんじゃないから、自己防衛くらいは出来たんだ。それに米軍の兵士とかもそこにいたお陰で盗賊の撃退に成功。そのうちの1人を捕虜として捕らえる事に成功したんだ。


 問題はその捕虜でな、そいつはキャンプの炊き出しによく来てくれてた子なんだ。大人しくて、礼儀正しい子だった。なんであっしはそんな子が銃なんて物を持ってここへ来たのか聞いた。


 答えはこうだった、ここのキャンプにいる奴らを殺せば家族全員に幸福を与えてやる。そう言われてその子はあっしらに銃を向けたんだ。


 それを知った響煌はその後人間不信になっちまってな、銃口を向けられて命の危険に晒された挙げ句、それをやったのが支援をし続けた人たちだ。それもあって黒人系への当たりが更にキツくなってな、連也も俺たちの活動に疑問を持ち始めて2人は日本へ先に帰国する事になった。


 けどあっしは残って活動を続けた。あの子があんな真似をしたのは教育が悪かったからだ、特に道徳に関する教育が不足してたからだって思ってな。あと、その捕虜の子を放って置くわけにも行かなかった。


 あっしはとりあえずその子の家族の元に連れて行った。けど、その子の家は燃やされて家族全員殺されちまってたんだ。その子はテロリストたちに騙されてたんだよ。 


 あっしはその後、その国の政府と大使館、なんなら日本政府とも交渉してその子を日本に連れて行く事にしたんだ。あっしに出来るのはそれくらいしかもう思いつかなかったからな。で、頑張って日本での就労ビザ獲得まで漕ぎつけたよ。


 で、あっしはその子と日本で暮らしていくうちに惹かれあって結婚した、それが母さんって訳だ。


 で、その後はあっしはご覧の通り世界のあちこち巡って活動は続けてるが、響煌と連也とはそれっきりでなぁ。今日会ったのもほんとそん時振りなんだよ。これが俺たちの過去話だな」


 ・


 ・


 ・


 思ってた以上に重い話だった・・・どうりで母の出身とか話したがらない訳だ。てか、ちゃんと仕事してたんだなこの父は、私は今までの父への態度を改めようと思った。


 「さぁて、にしてもこっちは良い景色だなぁ!この景色たーっぷりと堪能してくんなせぇ!んじゃあっしらは下に行くからな!後でプールでな!」


 「分かった、話してくれてありがとよ」


 父と母は本館へと向かった。


 「で、どうすんだ?バカ姉」


 「どうするって、何を?」


 「あのおばさんだ。あいつ仕事でここに来たつってたが、何の仕事だ?そもそもここまで上手く出来すぎてるとは思わねぇか?地元商店街で旅行の当選、海水浴場での一幕、んで全員がこのホテルに・・・どうにも無理矢理道を敷かれてるとしか思えなくてな。そもそもあとおばさん自治会長かなんかなんだろ?そいつがここに1人でいる理由は?バカ姉のクラスメイトのあいつがいない理由は何なんだ?」   


 言われてみれば、確かに不自然過ぎる・・・軽音母は軽音も連れずに1人でこんなとこで何してたんだろ?


 「まさか、何かの罠だってこと?」


 「何の罠かは分からねーけどな。何故プールに来いつったのか、しかも家族全員でよ」


 「ん〜・・・結局行かなきゃ分からなくない?」


 とりあえず行って確かめれば良いと思う。


 「お前も大概楽観的だな。そういやあの三上の側近っぽいシャルロットってのも行くつってたな。なんとなくだがあいつの強さは三上に匹敵すると思う。何かあればあいつらを利用するのも手だな」


 「利用って、人が聞きの悪い・・・」


 「逆に聞くが三上の側近だからって信用して良い理由にはならないぜ?だったら行くか・・・」


 疑り深いなぁ、まいっか。


 「うん、あそうだ三日月、水着は持って行った方が良いのかな?」


 「プール行くんなら持ってった方が良いんじゃねーの?知らんけど」


 そんな無責任な・・・結局必要だった。私たちはホテルのプールへと向かう。


 「なんとなく分かってたけど、あんたら霧島家もいるのね」


 「霧矢が行きたいって言い出してよ、んで親父も行ってこいっつーからな」


 「かつての友との再会だ。少しくらいは顔出すさ」


 霧島兄弟がプールで先に遊んでいた。父も優雅に寛いどるわ。


 「おー!!ミツキ、三日月さっきぶりー!霧島一家もさっきぶりー!」


 さっきまであんな重たい話してたとは思えない父が来た。母も父の後ろにいる。


 ざわざわ・・・


 ん?なんだ、急に周りが騒がしく・・・


 「よろしい、みんな揃ったわね」


 「おう、ちゃーんと来てやったぜ!っつーか水着はいるのか?一応着てきたが・・・って、WOW!!なんじゃ!?その水着!!」


 「どう?似合ってる?」


 あのえぐい水着だ。なんだ?見せつけたかったのか?


 「そりゃあんたならそいつは似合うだろ。どの角度から見ても綺麗に見えるぜ!バッチシだ!!」


 だってさ霧島、もうちょい褒めても良かったんだぞ?


 「褒められたきゃ自分磨け」


 はい。


 「中々嬉しい事をしれっと言うわね相変わらずさ。さて、じゃぁ早速始めようかしら・・・異空間展開」


 っ!?部屋が突然赤い光に包まれた。そして賑わっていたプールには私たち以外誰もいなくなった。


 「ちょっと、危ない事はしないんじゃなかったの?」


 「あなたがちゃんとすれば、何も危険はないわ。ルールは簡単、私が今からこのプールの中に例の怪物を放つ。悪魔は使わない、あなたたちはこの空間が元に戻る前に怪物を殲滅させれば良い。出来たらあなたたちの勝ち、私はあなたたち一家に口出しはしないし、新月とまた活動してあげても良いわ。ただし」


 「負けたらここのホテルの奴らの命が危ないってか」


 三日月が懐中時計を取り出して呟いた。


 「ちゃんとやれば何も問題はないわ・・・」


 私たちの間に緊張が走る。




 「ほーうほう!話は聞かせて貰いやしたよっ!!」


 バリンッッッ!!!


 その時、まるで居酒屋ののれんを潜るかのようにシャルロットが空間を突き破って現れた。


 「なに?あなた・・・」

  

 「異世界側の軍のトップってとこかな?で、私が来た理由はこの異空間の調査アンド、君たちの審判をやってあげようってわけ。どう?第三者が審判やる方がフェアでしょ?」


 助け舟出しに来た訳じゃないのね。


 「へぇ、手を出すつもりはないって事かしら?」


 「そりゃ美しくないもん。これはあくまでお姉さんとミツキちゃんたちの問題。そこに私たちの技術が絡むだけで問題自体は君たちで解決しないとね」


 「あなたとは話が分かり合えそうじゃない。今度一緒に飲みに行く?」


 「良いねぇ、この国の良い店教えてよ。とは言っても、万が一私たちに危害が及びそうになったら、そん時はそん時対処するから、それで構わない?」


 「えぇ問題ないわ。では・・・」

  

 「いや、問題大有りなんですけど!!」


 なんかこのまま話が進みそうだったから私は遮った。


 「あら、何か質問かしら?」


 「私!!泳げないんですけど!!」


 この編の冒頭思い出せ、私はプールの授業で思いっきりあぎゃぎゃぎゃって溺れていただろ?


 「ふーん、けどそれはもう今更無理ね、私がプールに呼び出した時点で言わなきゃだめよ?この世の不運も幸運も、過去の因果で繋がってる。あなたはあの時申告しなかった。その選択をしたのはあなたよ」


 「バカ姉、別にプールに入る必要はねーだろ。敵は敵のいる場所だ。、俺たちは自分の地の利を充分に活かせる場所で戦えば良いだろ?」

 

 「あっ!そっか!!三日月天才か!?」


 「あんたがバカなんだろ・・・なぁ師匠?」


 「あぁ、特に地理は見てて吐き気を催すくらいに酷いもんなこいつ」


 三日月と霧島の毒舌ダブルパンチ!!きっつい!!


 「さて、じゃぁ始めるわ。制限時間10分・・・さぁ!美しく踊りなさい!!」

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