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2日目、怒りと悲しみの一振り

 「おや・・・じ?」


 墜落したヘリから現れた男、手には銃を持ちイラッとする笑みを浮かべている。そして今、その男の事をメグは微かな声で親父と呼んだ。これが・・・こいつが、メグの父親?そして父親であるこの男は今、メグに対して銃を撃ち、頭に風穴を開けた。


 「はぁ・・・メグよぉ、永零に対してやたらと息巻いてたらしいがなんだ?この体たらくはよぉ。キャロライン ガイアを奪取しろ。そして天正第二な連中を林間学校で皆殺しにしろ。そのたった2つだぜ?俺がお前に命令したのはよ。たった2つも出来ねーのか?この間抜けが・・・お前なら知ってるよな?道山会は失敗を許さない。俺らに指を詰めた連中はいない。何故なら失敗イコール死亡だ。それが俺の娘だろうと関係ない、失敗したなら死んで詫びろ」


 この男、私の目の前でベラベラと私の友達を侮辱した。こいつか、こいつがメグの心に引っかかってた存在なのか。こんな奴が・・・あの自由の化身を縛りつけてたのか?


 男はメグに銃口を再度向けた。私は庇うように前に立ちはだかる。


 「って・・・この状況は撃った瞬間に俺死ぬな。ここもヴォイドの射程圏内なんだろ?しかもそれよりも早くあんたの剣が飛んで来そうだ」


 「うん、一歩でも動けば全身バラバラにしてあげるよ」


 「ふーん、そういや俺とあんたは会うのは初めてだったな。俺は道山 竜太郎。以後よろしく」


 「こちらこそ初めまして、三上 礼だ。そしてさようなら、道山 竜太郎。この死に損ないが、今度こそあの世に送ってあげるよ」


 三上君の殺気・・・これまでの比じゃない。


 「おー怖い怖い、確かに俺は死に損ないかもしれねぇな。なんせお前以下の神崎に俺は殺されちまったからな。けど、俺という存在はしぶとくてな、今の俺ならあんたともやりあえるぜ?」


 竜太郎はもう片手にメグの持っていた包丁を掴んだ。


 「なーんてな、俺は今やり合う気はねーよ。今日は詫びに来たんだ。娘が迷惑かけたなぁ、そもそもガイアは俺ら道山会と同盟関係にあるんだ。ここは、穏便に済ませようぜ?」

 

 ・・・は?何言ってるんだこの男は。っ!?


 私は気がついた。サバイバルゲームなんてやってるせいかな、殺気があちこちから感じる。あちこちの山々からここ周辺に向けて無数の銃口が向けられている。私含めてここのジャンクション周辺にいる住人たちが全て人質に取られたようなものという事か。


 「正々堂々は嫌いなの?」


 「好きだぜ?そんな奴らをぶちのめすのがな、友達作りは結構な事だが考えてみろよ。そいつらを守るってなるのは超むずいんだぜ?どれだけ強い奴がいても人質を取っちまえばこっちのもんだ。この世界は面白い事になぁ、強い奴程周りに弱い奴がたくさんいるんだぜ、お前みたいにな・・・三上」


 「・・・そのうちバチが当たるよ?」


 っ・・・三上君は刀を下ろした。このクズ、こんなのがメグの父なんてメグが可哀想だ。


 「そういうこった。んじゃな、今日はとりあえず帰るわ。後を追うなんて真似したら・・・ココ(長野)ごと潰すぜ?適当に御嶽山大噴火とかやってな・・・メグはまぁ、もう役に立たねーからやるよ。楽しくキャンプファイヤーだかなんだかやればいいさ」


 どうしようもないのか・・・いくら私たちでも、敵と守るべき人が多すぎる・・・


 「何を言ってるのかな?バチが当たるのは、今だよ?竜太郎さん」


 「あ?何言ってんだ?ここの連中がどうなるのか分かってんのか?」


 「やれるもんならやればいいさ。僕ね、今相当頭に来てるんだ。本当に本当にムカついてるんだ。不愉快で不愉快で仕方がない。君なんかの為に僕は僕を捨てた・・・抑えようと思ったけど無理だね。君のクズ具合には何もかもがどうでも良くなるよ」


 「み、三上君!?何を言って!!」


 殺気が収まるどころか、さらに膨れ上がってる。なんならやばいオーラみたいなが見え始めた。


 「安心しなよ嬢ちゃん、ハッタリだ。昔もああやって異世界を支配してたんだしな。あん時はみんな騙されたぜ?」


 「褒めてくれありがとう、けど今回はどうかな?」


 「ふーん。なら殺すか、まずはこの街の連中を皆殺しにしろ」


 ヤバい!!どうすれば!!っ!?あ、あれ?殺気が・・・消えた?


 山の上に無数に感じてた気配が突然として消えた。


 「なに?」


 「あーあ、ほんと嫌になっちゃうよ。この戦いたちも君を通じて永零に伝わってるんでしょ?腹立つなぁ・・・けど見せるよ。そして震え上がれ・・・僕を怒らせた事を後悔しろ」


 三上君の殺気の行き先・・・あの男じゃない。竜太郎にはこれっぽっちの感情も抱いてない。永零だ、この殺気は永零に向けられてる。


 「応援だ、早急に・・・」


 『だ、ダメです竜太郎様!!仲間が突然煙になって!!いや!蒸発してる!!あ、ぁあ!!』

 『へ、ヘリがドロドロに溶けて・・・沸騰していく・・・あ、ぎゃぁぁ!!』


 「・・・・」

 

 何が起きてるの?竜太郎が呼ぼうとした応援部隊の通信からは断末魔ばかりが聞こえる。


 「僕は天照から全てを授かった。そしてその時僕の中である力が解放されたんだ。僕の中にある本来の神の力・・・特異点でも到達点でもない。真のファースタビリティ。概念の支配・・・この世のあらゆる事象にルールを付ける能力・・・その一部が解放された、


 さっき、僕が手にしたのはメガリスさんを難なく倒せる能力って言ったけどそれは間違い。道山会程度なら軽く潰せるくらいの力が正解だ。けど、それでも僕は彼女に瀕死の重傷を負わせてしまった。ほんと、つくづくムカつくよ、こればかりは永零にも同意してしまう所が更に腹が立つ。


 見るがいいさ道山 竜太郎。君がこれまでに積み上げてきた罪を裁く時が来たんだ。覚悟しなさい、私はもう、貴方を許さない」


 三上君が刀で軽く地面を叩く。すると刀から火花が散って焼け焦げたようにあの真っ白な刀身が黒く染まった。


 「っ!!」


 「特異点制御限定解除。概念効果及び因果律を含む全ての事象を、我と我に敵対すべし全ての者にのみに有効とする。敵勢力殲滅までの間これを保持・・・」


 そしてゆっくりと刀を竜太郎に向けた。


 「さぁ、一つだけ質問をするよ。君は、人間か?」


 「はん、何を今更・・・俺はとっくに人間を超えてる。何をしたのかは知らんが相手になってやるよ。今の俺は永零にも匹敵し、やがては奴をも超える存在になるんだからな」


 「成る程、つまりは私と同じ化け物か・・・なら行くぞ、神器化」


 眩しっ!!あっつ!!!あれ、いやそうでもない?一瞬体が溶けるかと思ったけど、全然そんなんじゃない。けど、明るい・・・もう夜になってた筈なのに、空がまるで昼間のように青く晴れ渡ってる。


 「なんだ・・・それは」


 言うなれば、本当の意味での変身だ。天女の羽衣のような着物をその身に纏い、凛としつつも心落ち着くこの表情、正に際どくも、格好良く、美しい姿だ。


 「神器化・・・私のこの刀、異世輝國に神の力を与えた。その力は天照の力・・・そして天照は太陽、その全ての力をこの刀に与えたんだ。けど、そんな太陽の力をこんな所で使えば瞬く間にこの世界ごと燃え尽きる。そこで新たに使えるようになった僕の本来の神の能力を行使した。この天照の力の及ぶ範囲を君と君の仲間たちにのみ適応させた。悪いんだけど竜太郎さん、君の仲間は少なくともこの長野にいる君の仲間はみんな、炭も残らずに消えたよ」


 「っははは・・・面白い、ちょうど良いな。今の俺が何処まで行ったのか試したかった所だ。いいぜ、相手になってやるよ。そんでお前のその力も、俺のものにしてやろう!!」


 「っ!!!」


 今度仕掛けたのは三上君の方だ。竜太郎は様子見と言った感じで一振りを避けた。けど、


 「このパワーはっ!!?」


 ひ、一振りで山が・・・消し飛ん  え、元に戻った?


 まさか、さっき言ってた概念効果がうんたらかんたらってこういう事?三上君の強すぎる攻撃でも、敵以外の全ては影響を受けない。


 ・・・なんつーご都合主義な能力だよ!?


 「二発目!!!」

 「うりやぁっ!」


 竜太郎、受けて立つ気か?

  

 ジュッ・・・


 「っっ!!!!!」


 案の定近いただけで竜太郎の持つ包丁の先端から蒸発していき、一瞬で腕が燃えてなくなった。


 「ははは!!これ程とはな!!だが、学んだぞ!!」




 ガッギヂィィィッッ!!!!!



 

 んなっ!?受け止めた!?


 「驚いたか?教えてやるよ三上、俺たち道山会が到達した力ってやつをな。お前らの持つその力セカンダビリティ、その力を人工的に生み出す事に成功したんだよ俺たちは。そして、一度その力を俺たちに見せれば即座に解析が出来る。ほんと親父には感謝だな」


 「じい・・・ちゃん?」


 「っ・・・竜太郎、まさかとは思ってたが、道山会創設者、道山 隆二は・・・」


 「あぁ、奴は俺の実験道具になってくれたよ。覚醒者の肉体、ニヒルアダムスと繋がってたあいつは随分と俺の役に立ってくれたぜ。今も俺らの研究施設で管に繋がれてんじゃねーか?」


 こ、この男・・・娘だけじゃなくて親すら犠牲に!!


 「で、後はガイアを手に入れりゃ俺らにもう敵はない。あらゆる命を見張る事しか出来ないガイアの力。その力を手にし、俺たちの力が合わされば、坂神 桜蘭の命の王は、俺たちの物になる!!」


 こんなクズが・・・この世界に生きてたなんて・・・許されて良いはずがない!!


 「あなた・・・ガイアを、命の管理者を・・・そこまで愚弄しますか」


 キャロラインも今の発言には怒りが頂点に達したみたいだ。


 「あ?ただ見張るだけで何も出来ないくせによく言うぜ。俺らがお前らに変わって今まで出来なかった事をしてやろうってのによ。分かったらさっさとその体を明け渡せ、必要なのはお前じゃなくてガイアの器なんだよ。しってるか?お前たち一族のその呪いももた、セカンダビリティ由来だって事をよ。


 安心しなよ、別に殺しはしねぇから。器さえ手に入れば要は無い・・・どっか適当な奴らにでも売って金にでもするか」


 「三上様!!」


 「うん、分かってるよ。そしてある意味安心した。これは潰し甲斐があるね・・・貴方には、地獄すら生ぬるい地獄を、見せてあげるよ・・・」

 

 また刀を振る・・・けど、さっき防がれた。


 「お前脳筋か?さっき見て無かったのか?お前の剣は・・・」

 「切るさ」


 突き抜けて切った。


 「な、なに・・・」


 「私の本来の力は特異点、あらゆる運命の流れの中でそこに逆らう一つの点。それは、運命の因果律をも捻じ曲げる。君は既に一度私に切られた時点で因果は決まった。そこが一つの特異点、そこに辿り着けば最後!どれだけ対策しようとも、私のこの刀は、お前を切り殺す!!」


 「くっ!!」


 竜太郎はもう避けるしか出来ない。


 「ははっ!!なるほどな!!これは認めるしかねぇな!この強さは本物!!けど俺には無意味だ!」


 「無意味はどちらかな?極限生命体マキシマムビースト、ほぼ完全な不老不死の力、今の君はそれだ。聞いてなかった?この刀は魂ごと切る。魂が死ねば意味がない。それに、君の魂をデータにしてバックアップしてるんだろうけど、それももう対策済みだ」


 「なに?対策済み・・・だと?」


 「今、青ざめたね?そして唾を飲んだ・・・最後に教えてあげるよ。私は既に、道山 隆二の行方に到達した」


 「馬鹿な・・・奇跡でも起きない限りそんな事は・・・っ!?」


 「思い当たる節があっただろ?いつも彼はふざけてるからノーマークだった訳だ。けど、彼の能力は私の力を遥か上を行くセカンダビリティを持つ。人口セカンダビリティ被験者成功例一号。麗沢 弾の幸運支配なら可能だよ」


 「っ!!!親・・・父!?はっ!?」


 気がつけばあの太った男と、隣には超美人が2人。そして、似ても似つかない、佇まいだけで堂々とした男が立っていた。そして、竜太郎が気がつく頃には手遅れだ。三上君は刀に見ただけでヤバそうな炎を纏わせて構えていた。


 「因果とは巡り巡っていつかは己へと戻ってくる。道山 龍太郎・・・これが!!今まで積み重ねてきた罪の重さだ!!」


 「くっ!!三上ィィィッ!!!!!!」





 「斬絶剣・万滅烈火(ばんめつれっか)!!!!」





 三上君の一振りに見せかけた超連続切りは竜太郎を燃やし、溶かし、そして最後には細胞の一片も残さず綺麗さっぱりと消えた。

 

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