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2日目、天正第二中vs山道中

 長野市にあるとある寺  


 本日この寺には林間学校の研修で2校の中学生たちがやってくる。


 寺の住職はいつも通りを心がけようとしていたが、ほんのわずか、到着したバスの雰囲気で嫌な空気を察した。


 (うむ・・・少しばかり悪目立ちする生徒がおるようだな・・・)


 「坐禅対決だっての!!」


 「負けねーからな!」


 (坐禅は勝負事ではない。やれやれ、今回は少し厳しめで行くとするかの・・・)


 「というわけで、今日はよろしくお願いしますから・・・」


 (なっ!!なんたる可憐な女子(おなご)じゃ!!!これが教師とはけしからーん!!)


 ???


 坐禅をすべきは住職ではなかろうか。住職はグレイシアの美貌にノックアウトされていた。


 「う、うむ。では生徒諸君こちらへ参られよ」


 生徒たちはぞろぞろと並ぶ。住職は警策(きょうさく)を持った。


 (ふむふむ・・・この青年は邪念の塊じゃな。ほれ、真後ろに立っても気づいておらん)


 住職は新庄の後ろに立つ。開始して3分と経っていないにも関わらず既に睡眠モードだ。


 パッチン!!!


 「いっだ!!」


 新庄は綺麗な音を立てて肩を叩かれた。


 (さて次、さっきこの少年と張り合っていた子じゃな・・・どう言うべきかな。横になって寝ておるんじゃが・・・)


 メガリスは最早完全に寝る体勢だ。


 (しかしこの子、邪念まみれなのは確かなのだが、なんとも不思議な程に純粋さを感じる。それでも、ここは集団行動の場じゃ!!)


 バチコーン!!


 「んあっ!?」


 メガリスは熟睡してて叩かれた瞬間、何が起きたのか理解できなかった。


 (さぁ次じゃ。ほぅ、この少年は姿勢がよろしいのぉ。何度か経験してきた感じじゃな。しかし、僅かに雑念が読み取れるぞ?)


 住職が霧島の後ろに立つと、本人も分かってか首元を広げた。


 (色々な者がおるのぉ。儂は人の気を見ることが出来るが、ここの生徒たちは多種多様だ・・・はて、よく分からないのがあの少女の気は何故百合の花が咲くのであろうか。それ以外にもあの子・・・何故ベトナム戦争の景色が見えてくるのじゃろうか?儂が知っておるのは第二次大戦であるのに・・・しかし、戦争の景色であるにも関わらず平穏な気じゃ。それから、一番目立つのはあの派手な子じゃ。纏う気まで派手じゃ、白金色に輝いておる)


 住職は様々な気を眺めながら回った。


 (ふむふむ、最初は心配であったが、この者らのお陰で統率が取れておるようじゃな。集団の賜物と言った所かのぉ。さて・・・次は、む?)


 住職は1人の生徒の前に立ち止まった。


 (な、なんじゃこの、少女・・・む?少年か:・・姿勢が美し過ぎる。微動だにせず呼吸も全く乱れておらん。それだけではない、静と動の完璧なる調和・・・例えるなれば仏、いや、仏様ですらこの貫禄は出しきれないかもしれぬ。この雰囲気は寧ろ・・・神様)


 「ふぅぅぅぅ・・・・・・・」

  

 三上は大きく息を吐いた。そしてゆっくりと目を開けていく・・・


 「戻った・・・」


 「・・・むっ!?時間じゃ!皆、楽になされい」


 住職は気がつけば時間が来ている事を思い出した。


 「し、痺れた!!」


 ミツキは足の組み方が変で起き上がれなくなっていた。


 ・


 ・


 ・


 坐禅終了!!あ、足がァァァ!!!


 私は足の痺れとの戦いが始まった。た、立てない・・・力が全く入らーん!!

 

 「にゃふふふ!!ミッちゃんすんご今事になってんネー!!」


 「ふふふふ、身動きが取れないミツキちゃん・・・えい」


 「ほぎゃぉっ!!」


 軽音がイタズラな顔で私の太ももをツンと触る。


 「ふぁぁ、よく寝たっての〜って・・・あっひゃひゃひゃ!!!ミッキー笑えるってのー!!」


 メグも起きるや否や笑い転げた。なんつーか、坐禅やった意味よ・・・ん?あ、霧島はなんかキリッとした。いつもこんなふうにしてくれてたら良いのになぁ。


 「ミツキさん、大丈夫?」


 「あ、三上君。元に戻っ・・・ん!?」


 なんなんだこの笑顔・・・ま、眩しすぎる!!何があった!?


 「い、いだだだ!!!俺も足痺れたぁぁっ!!」


 「ぷきゃー!!あたしの勝ちだっての!!だってあたし足痺れてないし〜」


 新庄もかい!!私が三上君に起こされると新庄の元へ向かった。


 「新庄君変な体勢で座るから・・・ほら」


 「お、さんきゅ・・・ん?」


 「どうかしたの?」


 「い、いや・・・」


 新庄も流石に変化に気が付いたな。それくらいに雰囲気が今までと違う。


 「あー、さっさとてっしゅー。じゃあなハゲのおっさーん」


 「儂はハゲではなく坊主じゃよお嬢さん」


 「知らねーっての。とりあえず形だけのありがとさーん」


 メグ、思うんだけど素直じゃないだけでかなり無害だぞ?育ちが悪いというのか、ただ口が悪いだけでずっと何か仕掛けてくる様子はない。午前中の三上君がダウンしている時が1番のチャンスの筈だったにも関わらずメグは行事を優先した・・・


 なんとなくだけど、面倒くさくなったんじゃないか?私もよくある。言われた事よりも今やりたい事を優先する、面倒な事は後回し、メグはそんな性格をしてると思う。


 「・・・っておい。ミッキーんとこの派手派手女は?あいつが締めの挨拶する予定だろうがよ。アイツいねーと帰れねーじゃん」


 キャロライン?あれ?いない・・・


 「あれ?」

 「キャロラインさん?」


 周囲に少し動揺が走る。


 「ぁあ?おいおっさんよぉ、あんただけだよなぁ?見てねーっての?」


 「分からぬ・・・坐禅時には確かにおった筈じゃ。あの白金色の気を持つ者じゃ、忘れようもない。先生方は何か知らぬか?」


 「私も見てないから・・・さっきまではいたけど」

 「誰もトイレには行っていない筈」

 「今見て来た。誰もいないぞ」


 「・・・攫われた」


 三上君は、何かを察したように呟いた。


 「攫われた?」


 東郷が聞く。


 「さっき僅かに異空間の気配を感じた・・・東郷さん、ミツキさん、以前あなたを狙った誘拐犯を覚えてる?」


 確か、あの時は霧島がやって来て一兆君がなんとか・・・けど、あの時本当に狙われていたのは・・・


 「あっ!!」


 「キャロラインさんの秘密を知り狙う者たち・・・そして捧げられし者たちとも関わりのある組織、道山会」


 「はぁ!?道山会!?なんでそいつらが関係あるっての!?」


 道山会、その名前に反応したのはメグだった。そして今、その名前に反応すべきじゃなかったと言わんばかりに口を押さえた。


 「やっぱりね・・・メガリスさん、君、道山会の人間でしょ?道山 恵(どうざん めぐ)。君の本名の筈だ」


 「なっ!!あたしの本名・・・てめっ!!いつの間にそんなとこまで!!」


 めぐが本名?って事は、私にだけ本名を教えてたの?


 「戦いは常に情報戦だよメガリスさん」


 「意味分かんないっての!!ちっ・・・めんどくせー事しやがって・・・やれっつーんだな畜生がよ!!お前らやるぞ!!あたしの正体バレたからにはただじゃ済まさないっての!!コイツら全員ぶちのめせ!!」


 メグの奴、なんて顔してるんだ。取り巻きの生徒たちに指示を出して私に視線を送ってきた瞬間。もう泣きそうになってるぞ。


 メグじゃない。この子はキーセブンとかいうメンバーじゃない!暗躍してる奴がいる。メグは、そいつの奴隷にされてる!!


 「あ?んだよ急によぉ。ケンカするってんなら買うぜぇ?今寝てすっきりしたしよ!」


 「なっ!!待たれよ生徒諸君よ!!こんな所で争い事はよさぬか!!」


 「こらっ!!やめんかお前ら!!」


 住職と教師たちは生徒を止めようとするが、止まる気配がない。特に山道中学は一瞬で臨戦態勢に入ってる。こいつら全員舎弟か何かか?


 「・・・ここで暴れる。その覚悟はあるの?」


 その時、グレイシア先生は静かにメグに語りかけた。じっと真っ直ぐメグの目を見つめてる。


 「ぁあ!?んだよ先こうがよぉ!!てめーにあたしが止められるかっての!!」


 「止める気はないから。ただ、その判断で本当に良いのか、私は質問しただけ」


 「うっさいっての!!大人はどいつもこいつも知ったような口聞きやがって!!」


 メグはズカズカとグレイシア先生の方へと向かう。


 「先生!!」

 

 「佐藤先生、手は出さないで良いから。今はこの子の自由にさせる」


 「しかしこのままでは!!」


 「旅行の醍醐味はトラブルだって私の知り合いが言ってた。特に今回みたいな研修旅行なら、尚更良い学習になると思うから」


 止めようとしたさくらんぼ先生をグレイシア先生は口で黙らせた。けどどうする?このままじゃ先生もただじゃすまない。


 「止まりなさい!!」


 その先生の前に立ちはだかったのは軽音だった。


 「邪魔!あんたから殺されたいのかっての!?」


 「やれるもんならやってみなさいよ!!あなた、確かやたら私たちに勝負ふっかけてきたわよね?だったら今度は私から仕掛けさせて貰うわ!先生方すみません、ここは生徒だけで収めて見せますので・・・どうかここは!!見守り下さい!!」


 そして軽音は腕を捲って義手を前に突き出した。


 「分かったから荻山さん・・・そう言う事です先生方、ここは副委員長に任せますので、私たちはキャンプファイヤーの準備するから」


 グレイシア先生は他の先生たちの背中を押して何処かへと向かった。はぁ、普通こんな状態になったら警察呼ぶよな・・・けど、状況が状況。警察も、下手すりゃ自衛隊程度では当てにならない・・・マジでなんなん?


 「三上君とミツキちゃんはキャロラインさんの捜索をお願い!察しはついてるんでしょ!?」


 ・・・私が捜索隊!?


 「うん、ならこっちはお願い。戦力は拮抗してると思うけど大丈夫?」


 「勿論よ」


 捜索・・・私に出来る事・・・あっ!!


 「東郷さん!!コレ!!」


 私は銃を投げ渡した。


 「おっ!!ちゃんと先生たちにバレずに持ってんな?感心感心!!」


 東郷は銃を受け取るとシリンダーを意味もなくガラララと回した。


 私は捜索三上君が戦闘、今この銃はいらない。


 「っ!!行かせるかっての!!お前ら!!」


 「「「オッス!!」」」


 メグの取り巻きが私たちの前に立ち塞がった。


 バチコーン!!!!


 「んぎゃっ!!」


 と思ったらすぐやられた。


 「坊さん、ちょっとそこにあった木刀借りるぜ。なんか面白そうじゃねーか、巧、らら、軽音、俺がケンカすんの親父には黙ってろよ?アイツうるせぇからな・・・で、ミツキ。何しでかしたかは知らねーが、この林間学校を台無しにしてみろ、ブチ殺すだけじゃ済まさねぇからな?」


 ひぃぃっ!!霧島が木刀を担いで私に威嚇してくる!!敵はあっち!!


 「わ、分かってる!!」


 「なら・・・行けっ!!」


 霧島は木刀を振り抜いて道を開く。


 「ひゅー!!京也君かっこいい!!んじゃ、その隣に可憐なるエージェント添えてみない?」


 パァン!!パァン!!パァン!!


 更に東郷の電撃弾で私でも走り抜けられる道が完成した。

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