1日目、出会い
2週間後・・・
2泊3日の林間学校の始まりだ。朝6時に学校に集合、校庭には大型のバスが停まってる。それを横目に私たちは教室へと向かう。
「ふんすー!やっぱりこういうのワクワクするネー!」
ネーちゃんは興奮気味だ。荷物の量エグいぞ?先生に叱られない?
「そう?ふぁぁ・・・眠い・・・」
昨日の眠り方が分からなくなって、夜久しぶりにアニメワンクール見てたからなぁ。
「みんな、席に着いて・・・今日は行く前にちょっとみんなに報告あるから」
あ、グレイシア先生だ。報告って、軽音の事?
みんな先に座った。
「今日行く林間学校、急遽別の学校とも一緒になったから。仲良くしてあげて。特に新庄君、ケンカふっかけないで欲しいから」
「んー、それは相手の出方次第ってとこかなー!つーか、それより先生。その学校、可愛い子いますかー?」
「知らん。後ナンパも禁止だから。もう一個言っておくとうるさくもしないでね」
「てきびしー」
やれやれ・・・まぁいいや。新庄の奴いつもやかましいから先生たちにマークされてろ。それより、軽音はまだ来てないな・・・やっぱり厳しいのかな。
「あ、大事な事忘れてた。荻山さん来るから」
「あ?」
「は?」
ふっ、霧島と新庄が驚いた顔してる。くくく、霧島たちにはちょっと集中治療するから林間学校終わるまで会えないって事にしておいたんだ。それで私もリハビリ集中で会えてないから、私もどれくらい動けるようになったのかは知らないんだ。
にしても、霧島の顔受ける・・・くけけ。
「・・・な、なにニヤついてんだ?気持ち悪い・・・」
やべ、なんで後ろ見てんだよ・・・
「ミツキちゃぁぁぁん!!」
って、噂をすれば・・・来れるようになったんだ。けど何故だ?声が窓から・・・
「あぁ、窓に 窓に!!」
「見て!!ここまでジャンプ出来るようになったの!!それにね!ほら!!」
ガッシーッッ!!
「うごぁっ!!」
軽音は私に飛びかかって抱きついた。私は椅子ごと大きくズレた。
「ここまで腕も動かせるようになったんだよ!これでまたみんなと一緒にいられるね!!」
「「「・・・・・」」」
東郷、新庄、霧島三人衆は軽音の見事なはっちゃけっぷりに固まってる。
「素晴らしいですわ荻山さん!貴女のこの学校生活に対する思い!!わたくし感動致しましたわ!!流石は学級委員!久しぶりにクラス全員が揃ったのです!皆様!この林間学校完璧にこなすのですよ!」
そしてキャロラインがスタンディングオベーション。みんな立ち上がって拍手した。
「キャロラインさん・・・ありがとう。私、あなたの事誤解してたわ。これからよろしく!」
「よろしくてよ!!おーほっほっほっ!!では!長野へ向けて出発なさい!!」
バスは関越道、上信越道ってニュースでたまに聞く道を通ってちくまってとこに向かう。千曲と書いてちくまらしい。林間学校のしおりにそう書いてある。そこにあるなんかの施設に泊まるんだとさ。
行程としては1日目、ハイキングと言う名の地獄の登山、山頂付近のなんかの施設で昼食、更に足に追い討ちをかける下山。夕方前宿泊施設到着。からの飯ごう炊飯、夜レクリエーション的なやつだってさ。はぁ・・・やだやだ。このバスよ、永遠に辿り着かないでくれ・・・けど、既にケツが痛くなってきた、おろしてくれ。
「あっ!みっちゃん富士山見えタ!!」
「ほんとだー、近づいてくるとマジでデカいなぁ・・・」
バスはどんどん私たちの町よりさらに田舎の高速道路を走る。近くに見える景色は畑オンリー。その後はクソ長トンネル。抜けたと思ったらすぐトンネル。景色がつまらん・・・バス移動中スマホ禁止だし、移動中のレクのクイズも別に参加したくないし。この私に長野の名産品を答えられると思うか?蕎麦なんだ、へー。ざるそばは好き、わさびは嫌い。眠いな、ねよう。
途中のPAで休憩を取る。ん?なんだろあれ、超長いエスカレーターがある。へー、ここスキー場なんだ。
私もうここで良いよ。けど世界は残酷だ、トイレ休憩の後出発。割と街中になって来たな・・・けど、眠くなってきた。寝よう。
・
・
・
「起きなさいよっ!!!」
スッパーン!!!
「いっだぁいっ!!あだまがぁっ!?」
頭を思いっきり叩かれた。
「このねぼすけが!!いつまで寝てるのよっ!!みんなとっくに降りたわよ!?」
「寝顔可愛かったぁぁ・・・この写真宝物にするね!」
東郷が往復ビンタの構えをとり、軽音がカメラを構えてる。あぁ、軽音は急遽カメラ係に任命されてたっけ。って事はこの私の寝顔・・・卒業アルバムに晒される可能性あり?
「あ・・・」
「・・・東郷さん、次は私が起こすから・・・」
「え?」
ばちこーん!!!
「ほぎゃっとぉ!!」
「うん、起きた」
グレイシア先生から強烈なビンタ喰らって目が完全に冴えた。私は全速力でバスから降りた、外では学年全員集合してる。
「あせあせあせあせ!!!」
私は急いで荷物を抱えて班の列に並ぶ。
「ちっ、寝腐りやがって・・・」
そして霧島に舌打ちされた。ごめんなさい、心の中でだけどこれはごめんなさい。多分昨日のアニメ一気見が原因です。
私は口にはしないが心で霧島に謝った。
さてさて・・・で、こっから地獄の山登りか・・・多少は東郷のしごきである程度体力付いたと思うけど何これ、今からこれ登るの?上の方雪残ってるぞ?あ、そこまでは行かないのね。
「と言うわけで、山頂ホールに11時30分集合だから」
あーあ。こっから班行動か・・・にしても私の班、私以外運動神経抜群しかいないじゃん。みんなルンルンで登っていく・・・あれ?意外と歩ける・・・
「何よミツキ、ちゃっかり置いて行こうと思ったのについてきてんの?」
「え、いや・・・」
東郷、私置いて行こうとしてたの?
「あはは、東郷さんのスパルタが効いちゃったのかもね」
三上君は息も荒くせずそこら辺の歩道を歩くノリで会話する。
「あー、クソ。京也君とのこっそりランデブー計画が・・・」
そう言えばそんなような事言ってたな。
「成る程どうりで・・・最近ミツキちゃんの肌綺麗になったなぁって思ったらそういうこと。胸もちょっと大きくなったんじゃない?」
「ひっ!?荻山さん!?」
軽音のスキンシップ激しくない!?普通に揉まれた。
「軽音止めろ・・・女子同士でそんな事・・・」
霧島はむっちゃ怪訝そうな顔だ。
「いや俺はむしろ眺めれるかも・・・」
新庄お前、なんか最近変態キャラになってないか?
「たーのしーネー!!おっ!こんなとこにカブトムシネ!まだ涼しいのに、早くに目覚めすぎたのカナー?」
うわ、カブトムシ鷲掴み。よくやるなぁネーちゃん。
「ひぃっ!!チャンさんそれは寄せ付けないで!!」
あ、三上君そう言えば大の虫嫌いか。
「きゃっははは!!!虫ダメとか!だっせーってのー!!」
その時だ。なんか聞いた事あるムカつく声が聞こえた。この声、何処だっけ。聞いた事あるような・・・って、あ。
「へぇ〜、今日林間学校で被る学校って、よわよわ三上の学校ねぇ〜」
「な、何してんの?メスガキ・・・」
いたのはこれ見よがしなツインテールが特徴で、どう見ても私より年下。後ろの取り巻きっぽいのは中2みたいだけど・・・ほんと、何してんの?
「ぁあ?あたしはメガリスだっての〜。つかあんたこそ誰だっけ?」
覚えてないんかい。
「自己紹介はしてないと思う」
「ははーん・・・メガリス アラガキだっての」
え、なんで急に大人しく・・・
「輝夜 ミツキ・・・」
「ぁあ?名前なんか聞いてねーってのー。なんであたしがお前の名前を覚えなきゃならない訳?」
ならなんで自己紹介したのさ。
「つーわけで、あんたら全員あたしの下僕だから。二日間くらい辛抱してねー」
あぁ、そういうこと。けど・・・
「んだと?メスガキよぉ。ケンカ売ってんなら買うぜ?俺女に手出す趣味ねーけどさぁ、ここまで舐められてスルーは出来ねーんだわ」
案の定、新庄が腕を鳴らして前に出た。そうしたら、
「てめぇ、メガリスさんに手を出そうったぁいい度胸だなゴラァ!」
後ろの取り巻きも出て来た。
「ぁあ゛!?まずてめーらからやるってかぁ!?上等じゃぁ!!」
あーあ、グレイシア先生に喧嘩するなって言われてたのに・・・まぁ、ふっかけたのは向かうだ。仕方ない。うん、仕方ない。私じゃ止められない。
「うーん。せっかくの林間学校で二日間一緒なんだ。無駄なケンカは良くないなぁ。けど、競争なら良いと思うよ?僕は、無駄な争い、嫌いなんだよね・・・」
ぞくぅっ!!!三上君から息が止まりそうな程の殺気が・・・直接その気に当てられた取り巻きたちは同時に冷や汗を流してる。
「・・・あ〜あ、つまんないっての〜。けどそれは結構面白そうじゃーん。よわよわのあんたらとあたしたち、どっちが上に早く着けるか競争しようじゃん!!んじゃ!!あたしお先ー!!」
あ、行っちゃった。
「あ!テメ!!待ちやがれ!!!」
「新庄君、行ったらダメ」
追いかけそうな新庄を三上君は止める。
「ぁあ!?舐められっぱなしでいられっかよぉ!!」
「落ち着いて。彼女たち何勝手にはしゃいでるんだろうねー。僕は競争は良いって言ったけど、あの子と競争するなんて一言も言ってないのに・・・」
「は?」
「僕たちは僕たちのペースで行こ?他校に合わせる必要なんてないんだから。
「お、おう・・・」
ふっ、三上君ってこういうとこあるよね。
「はは!三上お前面白い奴だな」
あ、新庄が珍しく笑った。
「捻くれてるでしょ」
そして三上君もにっこりだ。
「捻くれてるネー」
私たちの班は可もなく不可もなくと言ったペースで登る。そして展望台にまで差し掛かった。あとはもうちょい歩くだけだな。
「わー綺麗!!京也くーん、この景色を2人きりで眺められるなんて素敵ねー」
「いや後ろに色々いるが?」
「見えないもーん」
展望台で私たちは少し休憩、みんなそれぞれ羽を伸ばしてる。
「あ、チャンさん、これがここに書いてある高山植物ね」
「あ、本当ネ!」
「何が違うんだ?同じ植物だろ」
ネーちゃんたちはちゃんと校外学習という事をしてる。あれ?三上君は・・・いた。じっと下界見てる。にしても、こんなとこまで上がって来たのか・・・我ながら凄いな。私も景色を見る。あそこは何処の街だろうか。
「あそこに見えてる街一帯が善光寺平、長野市になるね・・・そしてその奥、あの山が戸隠山・・・けど、あそこには何も感じない。近くに感じる・・・途轍もない神の気配。けど何処にいるんだ・・・」
天照大神か、そんなものがこんなとこにいるのかねぇ。私も周りを見渡す。普通に観光に来てる人も結構多い。記念写真撮ったり、あの女の人に至っては推し活、ぬい活ってとこか。大きなカバンから何かを取り出して景色と一緒に撮るつもり・・・って、フィギュア!?そんなもん持ってきてんの!?壊れない!?なんか結構ダメージが入ってるし!
私は目を丸くして思わずその人を見てた。そしてある事に気がついた。気がつけば私は声を上げていた。
「そ、そそそそそのフィギュアァァッッッ!!?」
「え?」
「す、すみません。そのフィギュアって転生魔法少女特殊部隊プリティースター☆の超限定フィギュアでは!?」
この人の持ってるフィギュア・・・もしかしたらもしかするぞ!!
「あ?いきなり何騒いでんだ?ミツキの野郎」
「いっきなりうるさいわね。ちょっと!!良い雰囲気台無しじゃないのよ!!」
「ごめんなさい!!けど私は止められない!!だってコレあれだよ!?世界に5体のみしか存在しない!プリティストコマンダー!最終決戦仕様!!際どくも格好良く尚且つ美しい!!その一体一体のダメージ加工は職人1人1人の手作業!!それ故にその5体全てに同じ物がない!!それだけじゃない!!細かな装飾!肌の質感!!その全てがこの世の全てのフィギュアの中でも最高クオリティなんですよ!?それが!!このフィギュア!!」
「う、うん・・・これそのフィギュア。ありがとう・・・」
私は女の人の前で力説した。
「いつも無口なミツキが・・・しゃべってやがる」
「あぁ、だがミツキ。とりあえず言えるのは・・・」
「「早口で何言ってんのか分からん」」
新庄と霧島に突っ込まれたのは、何熱くなってんだ?的な事じゃなくて私の早口だった・・・
「と、とにかくコレ凄いフィギュアなの!!」
「チョーイ、落ち着いてお茶飲みーネ」
「慌ててるミツキちゃん可愛いわぁ」
私はネーちゃんに渡されたお茶を飲み干した。
「ふぅ、所でお姉さん、これを何処で?」
「うーん、何て言うのかなぁ。あの、大きな声出さないでね。このフィギュアの製作者、私なの」
「いっ゛!?」
私は叫びそうになったが、なんとか堪えた。
「マジか、って事は有名人じゃん」
「すっげぇな。でもなんでこんなとこでそんな貴重なもん広げてんだ?」
霧島の言う通りだ。いくら製作者とは言えそれをここで開ける意味が・・・
「実はこの子、6体目というか、プロトタイプってとこなのよね」
な、なぬ!?レアモノの中のレア!?
「プロトタイプって、何か失敗したんですかー?すんごい綺麗だけど」
東郷がフィギュアをマジマジと見つめる。こら、誰もがやるけどパンツを覗くな。
「いやぁ、この子の場合完成度を高くしすぎちゃったって言うか、丹精込め過ぎて魂こもっちゃったのよね。そういうのは定期的に外に出してあげないと大変な事になっちゃうから」
職人の言葉だぁ・・・どうりで視力さほどよくない私でもあの距離から一発で分かる訳だ。フィギュアなのにオーラがある。
「はぁぁ・・・眼福眼福、つまり5体の中でも更に群を抜いたフィギュアなんですよね。そんなものをこんな間近でみられるなんて・・・林間学校、最高かも」
「林間学校、そういうんじゃないケドネー」
「はぁぁ、キモ・・・」
霧島が呟く。なんか、今ぷちんと頭で音が・・・
「霧島君、確かに私はキモいかとしれないけど、このフィギュアをキモいと言ったら許さないからね。今、私含めてこのフィギュアもキモいって言ったように聞こえたけど?」
「ぁあ?知るかよんなもん。お前の興味あるやつなんてキモいわ」
「・・・おい、聞き捨てならないな。言ったよね、私は良い。けど、このフィギュアを愚弄するのは!!誰だろうと絶対に許さないから!!」
「ぇ、あ、あっ?」
私は感情がどうしようもなくなり、霧島の胸ぐらを掴んで押し倒した。
「はいはいストーップ!!ミツキちゃん熱くなりすぎ!!可愛かったけど、ケンカはだめ!」
「あ、ご、ごめんなさい!!なんか熱くなっちゃって!!」
軽音に引っ張られて私は急に落ち着いた。
「それから京也君も、こんなショボイ事って思うかもしれないけど、人が大切にしてる事を馬鹿にされるのって凄く傷つくんだからね。彼女だってこの人形を作って生活してるんだから」
「わ、悪かった・・・すまん」
「分かればよろしい!」
軽音、綺麗にまとめてくれた。
「ごめんなさいねうちの馬鹿が・・・」
ついでに東郷にも頭を押さえつけられた。
「いいのよ。決めたわ、この子あなたにあげる」
私の手元にいきなりあの芸術がポンっと渡された。
「え、ぇえ?ぇえあ!?」
「あなたはこの子を愛してくれる、波長が会うのが分かるわ。今怒ったのも、この子の波長に当てられたからね」
波長?何の事?ってか、それよりこんなの持ってたら!!
「じゃ、私は行くわ。林間学校でしょ?頑張ってね」
「あ、あわわわあわわわ!!!」
女の人を止めようとしたけどこの貴重な物を持ってるせいでどうしようもなかった。気がつけば女の人はいなくなった。
「アーいなくなっちゃったヨ・・・あのさ、貰ったのは良いけどネ、ソレ・・・後で不用物で没収ヨ?」
「ぁ、ぁぁぁぁああああ゛あ゛あ゛!!!!!」
私はなんとも言えない叫びが出た。
「グレイシアに言っておくよ、それよりもそろそろ行かなきゃ。時間に遅れるよ」
そっか、グレイシア先生に言って預かってて貰おう。あれ?今、三上君、先生呼び捨てにした?
私たちは予定通り山頂のホールに到着した。




