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ワールズゲートオープン

 壁が開いていく・・・


 「これを作るのには苦労したよ。この規模での異世界間とのトンネルを繋ぐとなると僕の能力を持ってしてもかなりキツかったな」


 「異世界とのトンネル?」


 「うん、通常異世界への移動はかなりの衝撃を伴うから、体の弱い人は即死する。その衝撃を保護するカプセルもあったんだけど、いちいちそれを使って移動するのは面倒だった・・・そこで僕は異世界とこの世界を大規模かつ簡単に移動できる方法を考えたんだ。そして、これを作った・・・異世界間移動ゲート、名前は『ワールズゲート』さ」


 って事は、この壁の向こうには異世界が・・・って、ん?


 「あれ!?」


 パンパカパーン!!




 「「「「「開通おめでとうっ!!!」」」」」 




 パフパフ!!

 

 なんか、壁の向かうにも同じようなホールがあるけど、そこではパーティーが開かれていた。


 そしてスーツの似合う60代くらいの人が盛大にパーティーを盛り上げてるっぽい。

 

 「やぁ!ミカミ君!!この度は異世界間ゲート、ワールズゲートの開通式へようこそ!!タイミングバッチリさ!」


 「あ、アレックスさん!?おかしいなぁ・・・あなたに言うとまたイベントやるって言いかねないからコソッと開通させとこうと思ってたのに・・・何処でバレたの?」


 三上君は頭をぽりぽりかいてどうしたものかと悩んでる。


 「ふっふっふ・・・何年付き合いがあったと思ってるんだい?君の行動パターンは読んでるよ。それより、彼女らはミカミ君の友達?」


 「あ、ども輝夜 ミツキです・・・」

 「東郷 ららでーす」

 「ネー・チャンヨー!」


 「私はアレックス アダムスだ。アダムス連合王国の親善大使を任されているよ」


 私はアレックスって人と握手した。またけったいな肩書きの方だこと。


 「それから、私の娘を紹介しよう。エルメス アダムスだ」


 わー、綺麗な金髪サイドテール。年齢的にはグレイシア先生と同じくらいか?けど、誰かに似てるような・・・


 「初めましてエルメスよ。ミカミのクラスメイトって事は、グレイシアが先生やってんのよね?あいつちゃんとやれてる?」


 「あ、はい。たまにトンチンカンな事言いますけど、とても分かりやすです」


 「あっはは!相変わらずみたいね!ミカミ、異世界間の移動は普通の人は一カ月は大丈夫なのよね?」


 「うん、逆異世界転移もまたしかり。そこの境界線に色々とシステム突っ込んだから大丈夫だよ」


 「って事みたい。改めてアダムス連合女王としても、これからよろしくね」


 私はエルメスさんと握手したけど・・・待って?お待ちになって?今なんと?じ、女王様と?


 「ほら、そっち側はやたら人が少ないけどこれも何かの縁じゃない。お父様が無駄に食事用意しちゃってるから、良かったら食べてって」


 突然良い匂いするなと思ったら、ブッフェ会場か?ここは・・・って、


 「これむちゃおいしーネー!!」

 「うん!!全部高級食材!!わ!キャビアもあんじゃーん!」


 ネーちゃんと東郷はいつの間にか食事をむしゃむしゃ食べてた。順応早くない?いや、遅いのは私?私がコミュ障なせい?


 すっ・・・


 「ひぃっ!?」


 突然私の肩に腕を回して来た人がいる。てかなんならその手が私の胸に差し掛かってる。私は驚いて変な声が出た。


 「やぁ、ミツキちゃんだっけ?その小麦色の肌、とっても素敵だよ・・・俺はレオナルド、良かったら異世界最初の俺の女になってくれるかい?」


 い、いきなりナンパ!?


 「むっ!!レオナルド貴様!!初対面の女性に何をしておるか!!」


 「お、これはアンリエッタちゃんどーも。今良いとこなんだ後に・・・って、あーれー!?」


 レオナルドって人はガタイの良い女性に強制連行された。


 「ちょっ!!ねー!今度あの2人のメアドとかスリーサイズとか教えてくれよー!!」


 行ってしまった・・・


 「三上君、なんか、みんなすごい濃いけど、この人たち全員君の知り合いなの?」


 「まぁ、ね・・・前に言ったかもしれないけど異世界とここの世界の時間は本来かなり時の流れが違っててね、僕はこの世界で二十年近く世話になってるんだ。僕の人生の半分以上は異世界で暮らしてたんだよ。あ、それよりアレックスさん。彼は?」


 「おいーっす!!こっちこっちー!!頼まれてたもん作ってきたぜー!!」


 今度は作業着着た子供・・・手にはちょっと大きいジュラルミンケースを持ってる。


 「あ、ジュニアさんどうも」


 「おう!俺っちに任せりゃ朝飯前さ!で、早速お代を徴収するぜぃ。ざっと見積もってほれ!日本円で千五百万円!!」


 「いっ!?そんなする!?」


 「だって、リリアちゃんのヤツの調整料金も込み込みにしたらそんなもんよ?」


 三上君は何処かからバッグを取り出して少年に渡す。バッグの中身は・・・札束・・・今度はギャング映画か?


 「にしても、なんで日本円なの?」


 「ちょっくらこっち観光したくてよ!毎度ありー!!」


 少年はバッグを持ってどこかへ消えた。


 「三上君、何それ?」


 「荻山さんのお見舞いの品、昨日僕の分身が病院に行ったのはそれ関連の事もあったからなんだ」


 へー、軽音のか。どんなんだろ・・・って1500万つった?


 「で、中身は?」


 「行ってからのお楽しみ。今日もお見舞い行くんでしょ?」


 「うん、行く」


 「今日は僕も一緒に行くよ。昨日の事、荻山さんにももうちょっと詳しく話さないといけないからね。という訳なのでアレックスさん。僕らはちょっと出掛けるから、ちゃんとお片付けしておいてね」


 三上君はこの群衆、どころか王族にもお母さんムーブで対応した。


 「了解。じゃ、ミツキちゃんたちまた今度ね」


 女王様に手を振られた。


 「ネーちゃん、行くよー」


 「ハイナ!!あ!でもこのフォアグラ食べてから・・・」

 「この肉むちゃうまだから!これ食べてから行く!!」


 なんでこの2人今日こんなにも食い意地張ってるんだろ。


 まぁそんなこんなで外に出た。って、あれ?あの子は確か・・・


 「あんたがったどっこさー♫ひーごさー♩ひーごどーこさー♪」


 あんたがたどこさを歌いながら、サッカーボールをリフティングして歩いてくる少年が1人・・・


 「それーをこーのはーでちょいとかーぶーせっと・・・あれー?ここどこだっけ。また道に迷っちまった・・・ってあ、三日月の姉ちゃんとそのお友達だー」


 「誰がこいつと友達よ!!」

 「友達のネーチャンヨー!」


 東郷は即座に否定した。確かにそうだけど・・・


 「んー?仲良さそうに見えたら友達でいいじゃん」


 「何なのよこのガキ・・・ってか、こんなとこで1人で何してんのよ?」

 

 「えっと、リリアちゃんとデートの約束してたんだけど目的の場所行こうと思ったらこんなとこに来ちゃったー」


 リリアと付き合ってんの?最近の子はませてるねー・・・


 「ふーん、て事は迷子か。一旦家には帰れる?」


 あ、東郷のやつ話聞くんだ。私は面倒くさがって適当に頑張ってーってスルーするかも。


 「分かんない。でもテキトーに行けば帰れるよー?」


 「「「・・・・・・」」」


 この子、声かけて正解かも・・・


 「東郷さん、これ交番行った方が良い?」


 「学校に連絡するネ?」


 「それか、家族と連絡取るかね。ねぇぼく、家族はいるの?」


 「兄ちゃんいるよー」


 ・・・普通両親だろ。三日月と友達の同級生なんだよね、大丈夫か?この子・・・


 「まぁいいわ・・・で、そのお兄ちゃんの名前なんて言うのかな?」


 東郷がキレそうなのを我慢して必死に優しい声で語りかける。


 「京也兄ちゃん。霧島 京也ねー」





 「「「・・・・・・・・・」」」





 私と東郷とネーちゃんは顔を見合わせた。そしてこの子の顔をじっと見る。


 「「「「弟ぉぉぉぉぉっ!?」」」


 そして同時に叫んだ、隣で三上君が若干ビクッとしてる。

 

 「あ、兄ちゃんの友達だったんだー。俺霧島 霧矢だよー」


 ぜんっ・・・ぜん違うんだけど、え?あの目つきのわるーい、一匹狼の化身みたいなあの男の弟が、このぽやーんとした子なの!?


 「あー、昨日助けてくれた子だー」


 そして霧矢君は私たちの後ろを指差した。振り返ると飯綱とキャロットが遊んでる。


 「きゃるる?きゃーるるん!」


 「昨日はありがとねー」


 霧矢君って、天然と言うか・・・電波と言うか、変わった性格してるな。キャロット見たら普通なんだろこの生き物が真っ先に来るでしょ。それが何を察したのか昨日の助っ人だって見抜いたし、何者なの?


 「おーう!霧矢だー。あれ?今日はリリアと遊ぶんじゃなかったのぉ?」


 「道迷った!」


 「ありゃま、そりゃ大変だねぇ」

  

 飯綱は完全他人事かい。もうちょっと手伝ってやれよ友達だろうが。


 「こっちだと思ったんだけどなー。あ、でも合ってたみたい。おーいリリアちゃーん!」


 また突然手を振るとリリアが何故か走ってた。


 「あ!霧矢さん!申し訳ありません!!少し用事を片付けていたら時間が過ぎてしまってました!!でも、ちょうど良かったです。近道しようとしたらたまたまここにいらっしゃって・・・何故わたくしがここにいると分かったのです?」


 「んー?なんとなく、これあれって言うのかなー。運命の赤い糸?」


 「ふふ、面白いですね。では参りましょうか」


 「うん!今日は昨日ほど緊張してないや!あ、ならサッカーやるー?」


 「映画にしましょう。サッカーをテーマにした作品がやってるらしいですよ?」


 行ってしまった・・・あのカップル、特に霧矢君・・・大丈夫か?よく成立したな・・・


 「あーあ、良いなぁ。私も京也君とあんな風に歩きたーい。2人きりでデートしたいよー!全く、小5で見せつけてくれるわね!」


 「良い彼氏転がってないもんかネー。あ、三上君私とどうネ!?」


 なんだかんだカップルを見て本能に火がついたみたい。


 「残念、僕なんかじゃ割に合わないから、もっと良い人いる筈だよ」


 軽くあしらわれてる。


 「ちぇー。けど、三上君可愛げあるもんネー。学校でも結構気になってる人いるみたいヨ?」


 そうなの?私は色恋沙汰には興味ないからな、この少子化の世の中でも案外みなさん積極的だこと。因みに私の推せるのは182センチ超え金髪碧眼だ。それくらいのスペックが欲しい。けど、それに踏まえて私の事を愛してくれて性格も良い人なんているか?いないよなぁ!2次元にしか存在しない!なので私にはこの話は無縁だ。


 ってな訳で、再び病院到着。


 「あ、ミツキちゃん!ららちゃん!ネーチャン!それと三上君も!毎日ありがとう!」


 ・・・昨日ぶりなんだけど、軽音の私を見る目がなんかいつもと違う気がする。今も、先に私の名前呼んだぞ?


 「げ、元気そうでなにより・・・」


 「なんか気分的に吹っ切れた感じがしてさ。これからは自分に正直に生きようと思う。ママの事は大切だけど、私はあの人の奴隷じゃないし、学校はあの人のものでもない。昨日の夜、ずっと考えてた・・・私、逆らうよ。これが贖罪になるなんて思ってないけど私は、今しかないこの学校生活に悔いは残させないって決めた」


 本当に吹っ切れた顔だ。以前の何考えてるのか分からない顔じゃない。そして昨日までのおっとりでもない。真っ直ぐ前を見てる。そしてその視線・・・すんごい刺さるんだわ。そんなに見ないで、私は人にジロジロ見られるのは苦手なんだよー。


 「ふふっ、部屋に入って早々荻山さんからそんな言葉が聞けるなんてね・・・それならこのお見舞い品、渡しても問題なさそうだね」


 三上君は優しく笑うとあのジュラルミンケースを取り出した。


 「あ、それ結局何?」


 「わ、何その箱。札束でも入ってんの?」

 「あ!若しくは秘密兵器トカ!?」

 

 「2人とも2割くらい正解かな?これの中身はこのケース目一杯の札束と同等の価値のある物だよ」


 ケースが開いた。その中身は・・・腕と脚・・・


 「これって・・・」


 「あの時間に合わなかった謝罪の気持ちって所かな。異世界技術とこの世界の技術の粋を集めて作ったフレックスアームの最新モデル。これならほぼこれまで通りの生活に戻れる筈だ。これをプレゼントするよ」


 三上君、もしかしてこれも追加で作ってたから余計に疲れてたのかな?


 「元通りって・・・そんなの出来るの?」


 「出来るよ。リリアさんの腕もその技術の応用で戦闘特化にしてる。それにさっきミツキさんが出会ったあのセクハラマン。彼の腕もこのフレックスアームなんだ。全然違和感なかったでしょ?」


 「あ、さっき私の胸触ろうとした人・・・そうなんだ」


 「え?ミツキちゃんの胸を触ろうとした輩がいるの?って、待って・・・落ち着いて・・・その腕、そんな器用に動かされるの?」


 一瞬、すんごい殺気みたいなが出てた・・・私、大丈夫かな。


 「文字も書けるし、激しい運動も勿論、そして防水仕様だから水泳も可能だよ。その上日常生活ではメンテナンスフリー。数年に一回の点検くらいで良いんだ」


 車検かよ。にしても、この世界の技術を大幅に超えてる・・・


 「す、凄い・・・けどそんな凄いの受け取れないよ・・・」


 「言ったでしょ?これはプレゼントだ、使うか使わないかは君次第」


 三上君、あくまで選択肢を与えるんだ・・・


 「チョイチョイ三上君・・・つかぬ事聞くケドネ?その腕、もしかしテ・・・ロケットパーンチとか出来たゃったりするネ?」


 「あ、うん。ロケットパンチは付けて無いけど、対悪魔用にプラズマキャノンを一門備えてるよ?」


 ・・・スペースコ◯ラ!?


 ネーちゃんの質問に私はあの腕をつけた軽音を想像してしまった。ネタが古いって?私は古いのもよく見るんだよ。


 「後はオプションでレオナルドはバズーカ砲やガトリング、リリアさんは魔導エンジンブースターを備えてるね・・・必要なら付けるけど・・・」


 「ううん。そこまでは要らないよ充分過ぎるからさ。三上君、この腕は貰うわ。これのリハビリってどれだけかかるの?」


 「その人次第だね。確かに時間をかければ誰でも完璧に馴染ませられるけど、努力次第では1ヶ月でものに出来る」


 「なら、2週間ね・・・林間学校、私行きたかったのよ」


 軽音はニヤリと笑ってみせた。


 「分かった。後でグレイシア先生に伝えておくよ。けど、相当きつくなると思うよ?これの装着には特に手術は必要ない。だから、今すぐにでも装着に取り掛かれるよ」

 

 そして三上君も笑い返す。


 「構わないわ。ママはどうせ仕事が忙しいからって来月まで見舞いに来ないって言ってたもの、目にものを見せてやるわ。私、絶対に行くからね!」


 だから何故視線は私限定なんだ!?


 「なら、1人増えて京也君の班は7人ってとこかしらねー」


 「なんだカ、こんな風になるように仕組まれてたみたいだネー」


 確かに、班決めの時は東郷とここまでな関係になるなんて思ってなかった。って事は、新庄と霧島とも関係よくなったりするのか?


 ・・・いや、想像出来ないな。

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