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力が並ぶ時

 第三局面 THE THOSE WITH POWER


 翌日・・・


 昨日あんな事があったのに、やっぱり今日も授業はある。昨日の事は新聞に載ったりニュースにもなったりもしたけど、これと言った映像が何もないせいか、今日には既にメディアたちはいなくなっていた。


 ガララ・・・


 そして朝のホームルームが始まり・・・あれ?なんかいつもと先生のドア開ける音が違う。


 「おーう、お前ら席に着けー」


 やって来たのはさくらんぼ先生だ。


 「えー、グレイシア先生どうしたんすかー?」


 「あからさまに嫌そうにするなよ新庄・・・グレイシア先生は今日ちょっと休みだ。風邪引いたらしくてな。それと三上も風邪で休みだ。どっちかのがうつったのかもなー」


 「俺グレイシア先生の風邪なら喜んでうつしてもらうけどなー」


 冗談言ってる新庄は放っておいて・・・あの2人が休みか、昨日の今日だぞ?絶対何かあるに違いない。


 「ってな訳で輝夜、今度はお前が三上の家にプリント届けてくれー」


 「あ、はい」


 そういえば三上君、ずっとこの間から何か図面見て何か独り言言ってたっけ。何してたんだろ・・・


 「あ、ミツキ。私も行きたーい。三上君の家連れて行きなさいよねー」


 「あ、分かった」


 東郷、もうちょっと深く聞きに行くつもりなのかな・・・


 「さーて、んじゃホームルーム始めるぞー。キャロライン・・・さん、お願いします」


 「宜しくてよ佐藤先生。皆様、起立なさい!」


 キャロラインがビシッと指示を出すと何故かみんなちゃんと指示に合わせてピタッと起立する。なんか、こう動かなきゃダメな気がして・・・


 「うお、なんだこの統制の取れた起立・・・」


 これにはさくらんぼ先生もびっくりというか、若干ショック受けてる。


 何回も言うけど、ほんと昨日の事が嘘みたいだ・・・あんな危険な悪魔が外を彷徨いていたなんて想像も・・・


 私は外を眺めた。えっと・・・窓の外になんかいる。ウサギのような・・・尻尾はチアリーダーが付けてるポンポンみたいに大きい。そして額から一本の角が生えてる生き物・・・あぁ、確か某最終幻想なゲームにいたなぁ。


 そんな生き物が2階の窓のそとにふわふわと浮かんでる。私はどうしたものかと首をかしげるとその生き物も同じく首をかしげた。


 「えっと・・・キャロラインさん・・・」


 窓との間にいるキャロラインに聞いてみよう。これは幻覚なのだろうか?


 「なんですの?今は先生の話をお聞きなさ・・・」


 キャロラインも窓を見て固まったって事は見えてるんだな。で、無害そうに見えるコレは何かね?


 「キャロットッッッ!?」


 キャロラインは突然席から立ち上がった。


 「わぁっ!!?なんだぁ!?どしただぁ!?」


 あ、また先生の訛りが出てる。


 「きゃーるるん!」


 その生き物は凄く可愛らしい声で鳴いた。


 「一体どうしてあなたがこのような所に!!ヴォイド様はどうされたのです!?」


 「きゅふ、きゃるる。きゃるらら、きゃーるるん」


 「え、後は報告だけだから、お前は好きな所で遊んできていいぞって?」


 あの生き物の言葉要約したの?言葉分かるの?お嬢様すげー。


 「それでわたくしの匂いを追ってきたと言うわけですか。うーむ、困りましたわね・・・」


 「あのー、キャロラインさん?それ君のペットかい?学校に持ってきちゃ・・・」


 ピクっ・・・


 あ、これキャロラインの逆鱗に触れるやつだ。


 「あなた・・・この子の事をなんとおっしゃいました?ペットですって?身の程を弁えなさい!!この子はわたくしの半身のようなもの!!扱いはわたくしと同等でなくてはなりませんことよ!?佐藤先生決めましたわ。キャロットはわたくしと一緒に授業を受けます。構いませんわね!?安心なさいな、キャロットは好奇心旺盛ですが、とても賢くなんならわたくしより聞き分けが良いですから!良いですわね!?」


 「は、はい・・・すんません」


 先生は完全に縮こまった。このキャロットって生き物を迎えて授業は開始された。


 にしても、凄い大人しい生き物だな。キャロラインの膝の上でじっと授業聞いてる。


 1時間目は数学、2番目に嫌いな科目だ。ったく、何がXを求めよだよ。で英語使ったと思ったら連立方程式とか必殺技みたいな漢字の連呼。数式覚える前にその名前を覚えるのが一苦労じゃ。


 「きゃる?」


 キャロットは私の方をじっと見て来た。


 「な、なに?」

 「きゅふ」


 「じゃこの問題、輝夜解いてみろー」


 わ、私かぁ!?やばい、ちんぷんかんぷん・・・って、え?


 「きゅふ!」

  

 まさか・・・この指してる数学ってこと?


 「X=・・・9ですか?」


 「いっ!?正解!!お前やるようになったなぁ。授業聞いてなかったと思ったら・・・」


 ま、マジか・・・賢いなんてレベルじゃない。この複雑な方程式理解して解いてるよこの子・・・


 「ど、どうも・・・」(ありがと)


 「きゅふふふ!!」


 私がお礼を言うと両手で口を抑えて笑った。可愛い。


 キャロットは一躍クラスの人気者になった。芸達者なんて言うのが失礼に感じる程だ。そもそもどうやってふわふわ浮いてるんだ?




 そんなこんなで放課後、今日は部活休み。私たちは三上君のプリントを持って三上君の家に向かおうとした。


 「あ、輝夜さんお待ちなさい」


 私はキャロラインに呼び止めれた。


 「なんですか?」


 「あなた、三上さんの家に行くのですわよね?でしたらキャロットお願い出来るかしら。私はやることがある故行けないのです。そこに行けば()がいらっしゃる筈ですわ」


 「きゃるる!」


 キャロットは私の腕に乗ってきた。この子の親、どんなんだろ・・・




 そんなこんなで私と東郷、ネーちゃんの3人は三上君の家を目指した。


 「にしても、ほんと可愛いネー。ケドなんの動物なんだろネ?」


 「さぁ。腹立つのはなんでミツキにやたら懐いてんのよ。私にも抱っこさせなさいよね」


 「きゅふ!」


 あ、東郷の腕の中に収まった。


 「わっ、ふわっふわ!!しかもあったかくて気持ちー!!」


 東郷の言う通りだ。特にまんまるの尻尾は枕にしたいくらいの抱き心地だった。


 「きゃるる!!」


 「あー・・・なんだか気持ち良すぎて重力感じなくなって来た・・・って、あ?あれれ!?あ、足が!?」


 「ん?どしたネららちゃん。急に身長伸びタ?」


 「ちゃうわ!足!浮いてんの!!」


 私は視線を落とした。東郷の足が地面から離れてる・・・


 「きゅふふ!!きゃーるるん!!」


 「え、ぇえ!?」

 「わ!私もネー!?」


 私とネーちゃんの体もふわふわと浮かび出した。


 「ちょ、これキャロットがやってるの!?」


 「きゅふ!」


 キャロットはどんなもんだと言わんばかりに笑った。ってあれ?待てよ、無重力・・・重力の支配って・・・


 「まさか昨日のサッカーボール・・・あなただったの?援護してくれたの」


 「きゃーるるん!!」


 大きく頷いた。すご・・・こんな可愛らしい見た目なのに、めちゃくちゃ強いんだな。


 「きゅるる。きゅるんるる、きゃるるーん」


 キャロットは何かジェスチャーをしてる。


 「え・・・っと、三上君の家・・・遠いから、運んでく?」


 なんとなく分かった。成る程、キャロットはなんか不思議なボディーランゲージで言いたい事が何となく分かる。隣ではネーちゃんと東郷が羨ましそうな眼差しを私に向けてる。


 「きゃーるろー!!」


 キャロットが飛び上がると私たちはすんごい速度で飛んでった。


 「ぎゃぁぁっ!!」


 突然ジェットコースターに乗せられた気分だ。体は浮かんだまま町中をすっ飛んで行く。途中ぶつかりそうな気がして私は叫んだ。


 「ひゃっほー!!何これ楽しー!!」

 「ほんとネー!!イェーイ!!」


 一方残り2人はこのアトラクションを存分に楽しんでいた。


 「きゃふふ!!」


 その様子を見てキャロットはニコニコと嬉しそうに笑った。

  

 「お!とーちゃーく!!よっとネ!!」

 「ほっ!!ふぅ!!楽しかったー!」

 「え、ぇあっ!?どやって止まる・・・どへっ!!」


 三上君の家の前、東郷とネーちゃんは綺麗に着地したのに私は感覚が分からずすっ転んだ。


 「いたた・・・」


 「きゃーるるん」


 転んだ私にキャロットが手を乗せると頭がすぅっと消えた。


 「あ、ありがと・・・」


 「きゅふ!」


 「キャロット、帰ったな。この町は楽しかったか?」


 ん?渋い声、けどちょっと優しさがある。三上君の玄関前に1人の男の人が座ってた。キャロットはその人の所にピョンと飛んでいった。成る程、多分この人が親だな。


 「きゃるる!」


 「そうか。君らがキャロットと遊んでくれたらしいな。礼を言う。って、君らは昨日の・・・」


 「昨日?会ったっケ?」


 ネーちゃんは首を傾げた。


 「もしかして、病院から10キロも離れてた所から私たちを援護してくれた・・・」


 「あぁ、中々良い連携をしていた。自己紹介してなかったな・・・俺は」

 「ヴォイド ロドリゲスさん・・・ですよね?」


 男の人の自己紹介を遮ったのは東郷だ。え、なに。今度はこっちが知り合い?


 「俺を知ってるのか?」


 「も、勿論よ!!米軍最強のスナイパーじゃないですか!!会えて光栄です!!」


 東郷はこのヴォイドって人と握手して手を大きく振る。


 「あれ、けど亡くなったって・・・国葬の様子ニュースで見たわ」


 「あぁ、君の言う通り俺は一度死んでいる。だが、一応三上から話は聞いてるだろ?俺もキャロットも生き返った。しばらくは三上の司令でアメリカに潜伏していたんだが」


 「あ、それより三上君はどしたネ?ヴォイドさんはなんでこんなとかで座ってるノ?」


 ネーちゃんが質問する。


 「ちょっと待っててくれとの事だ。けどまぁ、そろそろだろう。ふっ、噂をすればなんとやらだ・・・」


 ガチャ・・・


 玄関のドアが開いた。そして・・・


 「ぐっっはぁぁぁぁ〜・・・・・・・」


 「わっ!」


 予想と全然違って、ガチで体調悪そうな顔色の三上君が玄関から蛇みたいに転がってきた。


 「や、やぁミツキさん・・・それに東郷さんとチャンさんも。今日はわざわざごめんね・・・」


 「すんごい顔色してるけど何してたのよ。つーか昨日のアレは本物じゃないみたいな言い方してたしさ」


 東郷がプリント一式を渡しながら三上君に手を差し伸べる。


 「ちょっと無茶しすた・・・流石に分身体をあれだけの時間出しながら、こっちでも色々やってたもんだからさぁ・・・気がついたら朝だ。ここまで疲れたの輝國作って以来だよぉ・・・良かったら上がってく?飯綱も帰ってるからお茶出してくれるよ」


 「三上・・・その様子、報告は明日にした方が良いか?」


 ヴォイドさんも少し心配そうに眺めてた。やっぱりここまで疲労してる三上君は見た事なさそう。


 「いや、聞くよ。というより当たってた?」

 

 「ビンゴだ」


 「ふっ・・・んしょっ!!あともうちょい頑張ろ!!」


 三上君は顔をぺちんと叩いて気合いを入れた。


 奥に進み地下室に行くと前に見た無骨な空間は無くなり、ホテルのホールみたいな部屋に変わってた。


 「わー、広ーい。三上君パーティーでも開くのー?」


 東郷は呑気な事聞いてる。


 「どうだろうね、まぁ、飯綱はやりたがるかな?」


 「おーう!!ねーちゃんたちー!お茶とジュースとお菓子持ってきたぞー!!」


 上の階から飯綱が器用に頭に色々乗せて降りてきた。


 「あ、どもー」


 そしてテーブルにそれぞれカップを置いて私たちを案内してくれた。どんどん女中さんが様になってきてるなぁ・・・私たちはそれぞれ席に着く。


 「飯綱はキャロットちゃんと遊んできていいよー」


 「んお!キャロットー!!あそぼーぜー!!あ!みかつきん家行くー?」


 「きゅふふ!!」


 「今日は遊ぶなら家の中でね!ふぅ、さてと・・・昨日の続きから始めようか」


 突然、悪の幹部たちの会議な雰囲気に変わった。そしてヴォイドから会議は始まった。


 「俺は昨日君らを襲ったチャールズの所属する組織について調べていた。彼らはこの世界の最高意志決定機関、ワールドオブサクリファイス、通称『捧げられし者たち』だ。俺は三上からそいつらに関する情報を探っていた」


 「永零の率いるキーセブンは恐らくにその組織は深く関わってる筈だと思ったからね。実際、チャールズはその一人だったし、そもそも永零の作ったAWROも捧げられし者たちの息がかかった組織だったんだ」


 そして内容もガチで裏組織の会議に参加してるみたいだ。なんかちょっと楽しい・・・


 「あぁ、それでコレが俺の調べた限りの捧げられし者たちの一員のリストだ。これが欲しかったんだろ?」


 ヴォイドは机に写真と名前の書いた資料を出した。


 「うんこれ、これが欲しかったんだ」


 「えっと?なになに?これチャールズのおっさんね・・・次、CIA長官、リチャード ベルナルディ!?」


 東郷の反応から察するにこのCIA長官はその裏組織の一員と・・・わお、アクション映画か?


 「あ、この間のメスガキ・・・」


 メガリスもそのリストに載っていた


 「それだけじゃない、アラブの石油王に南米の麻薬王。消えた王族、色んな人たちがいる。でもこの人たちは何処まで行っても人間。所在を掴む事は不可能じゃない。けど、一人だけいるんでしょ?」


 「あぁ、年齢、国、組織、性別すら不明の存在が一人だけいた」


 ヴォイドはバサっと紙を広げる。そこには名前だかが書かれていた。


 「アレクシア?苗字は無いのネ?」

 「写真もないじゃないのよ」


 「そうだ、アレクシア。それしか不明の存在だ。俺の腕を持ってしてもこの名に辿り着く事しか出来なかった。だが、コイツは必ず存在している。そして、今、この日本にいる」


 「なんでそんな事分かるのよ」


 東郷が質問する。そこに三上君が答えた。


 「ヨーロッパ方面で捜査してたシィズさん達からの情報だよ。彼女たちは僕らを散々苦しめてくれた異世界全てを監視するシステムについて調べていたんだ。そしてそれの正体はAI、名前はサクリファイス2。そしてそれは超小型で色んな場所で運用が効く最早機械と呼べる代物ではないという所まで掴んだんだ。そしてヴォイドさんの情報を照らし合わせて考察すると・・・」


 「サクリファイス2の正体が、このアレクシアって事?」


 三上君が褒めてくれた。


 「流石、察しが良いねミツキさん。サクリファイス2は人のようでありながらこの世の全てを監視する頭脳を持ったつまりは、人工的な桜蘭君のような存在だと僕は思ってる」


 桜蘭さんか・・・あの人結局、私たちの敵なの?味方なの?


 「とは言え、日本の何処かまでは掴めなかったがな」


 「問題ないよヴォイドさん、永零もそう簡単に尻尾は出さないさ。だから次の一手からは情報戦はもうやめだ。その為に僕は無茶してまで頑張ったんだ。それでようやく今、僕らの戦力は永零たちに並ぶ」


 その時だ、一面壁だと思っていたものが大きくスライドして開いた。

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