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私のクラス

 ーーー翌日


 今朝は昨日ほどの憂鬱感は無い。賭けよう、あいつと同じクラスにならない事を。それなら何とかなる・・・今運が向いてる気がするんだ。


 「あれ?バカ姉早いじゃん。昨日変な格好で帰って来たと思ったら何、中2デビューでもすんの?」


 「うっさい三日月、あんたもさっさと行ったら?遅刻しても知らないよ?」

  

 相変わらず弟はやたら口が悪い、まぁ無視しよ。世間一般的には好評だったんだ。


 私は学校へと向かった。


 「あ!ミッちゃんおはよーネ!!」

 「あ、おはよネーちゃん」

 

 昨日、別れ際に朝一緒に学校に行こうって約束したんだ。


 「クラス変えドキドキするネ!」


 私もある意味だな。頼む・・・


 「あ、そうそう。クラス替えもそうだけど、転入生が2人来るらしいヨ?どんな人かナ〜、イケメンだと良いナ〜」


 「転入生か、ちょっと気になるかも・・・あわよくば、転入生は秘密組織の人間で、この学校にはこの街への潜入目的で来て・・・」


 「ミッちゃ〜ん、心の声ダダ漏れネ」


 しまった!!いつも登校途中こんな妄想ばっかしてるから、思わず口が・・・


 「い、いやその!?」


 「いや、結構面白そうじゃなイ?アイヤー、で、2人でしょ?バディ組んでるってのも面白そうネ!」


 合わせてくれた・・・その後は私の妄想爆発劇場を晒しながら一緒に学校へと向かった。


 ・


 ・


 ・


 そして私のクラスは、2年3組。うん、可もなく不可もない響きだな、黒板に座席標が貼ってある。


 「やったネ!!同じクラスヨ!!」

 「うん!」


 ネーちゃんとは同じクラスになった。これはツイてる。後は奴の名前がない事を・・・あいつらを取りまとめるアイツの名は、霧島(きりしま) 京也(きょうや)


 は?前の席・・・だと?座席に思いっきりアイツの名前のシールがある。っ!?私は周囲を見渡した、まだ、来ていない・・・そもそもアイツとその取り巻きはいつもギリギリに来てた。まだ来てる訳ない。だって今日結構早く家出たから。


 にしたって、前の席はないだろ・・・あ、50音順、霧島と輝夜、そして座席配列が男女交互・・・そう言う並びなのかよ!!


 ガラッ!!


 来た・・・と言うか待て、残る連中も同じクラス!?新庄(しんじょう) (たくみ)荻山(おぎやま) 軽音(かるね)東郷(とうごう) らら。


 とりあえずネーちゃんの所に逃げよ、そこに隠れよっと。4人話し合ってるな、気づかれてないみたいだ・・・いや待て、あの感じ、昨日の事なんか忘れてしまってるみたいな顔してる。


 「おーい、みんな席に着けー」


 担任は去年の佐藤 錦。通称さくらんぼ先生。


 「あれ〜?またさくらんぼ先生担任っすか〜?」

 

 「残念だな新庄、俺は1年の担任になった。このクラスの担任は新しく来た人でな、始業式終わってから交代って感じだ。俺はそれまでの付き添いだ。あ、そうそうついでに言うとこのクラスの担任は、20代女性らしいぜ?」


 『うぇ〜〜ぃ・・・・』


 その一言でなんか急に男子どもが鼻の下伸ばし出した。そんな期待してると幻滅するぞ?


 「それと、噂に聞いてるかもしれないが、転入生2人もこのクラスだ。仲良くしてあげなよ?」


 「先生〜、その2人は男子?女子?どっち?」


 「男女1人ずつだ荻山」


 「へ〜、ならその男子イケメンですか〜?」


 「さぁ、俺はまだ顔見てないからな・・・いじめんなよ?」


 「そんな事しませんよー、みんなと仲良くがモットーですから」


 どの口がそれを言う・・・昨日10万カツアゲしようとした癖に。


 「ほら、それよりさっさと席に付け」


 仕方ない・・・無だ無に徹しろ。よし、霧島は昨日の事なんか完全に忘れたかのように普通に座ってる。


 そして体育館で始業式が始まった。安定にクソ長い校長の話、校歌斉唱。いつも思うんだが、このくだりいるのか?担任の教師やら転入生とやら、肝心な部分はクラス戻ってからとか言うし。今年も1年頑張りましょーって言うだけに、どれだけ時間かかるんだ?


 上の一文で終わる始業式が終わって、いざ担任の紹介だ。


 ざわざわ・・・


 聞き耳を立てると、主に男子は転入生の女子と担任の話、女子は男子の方の転入生と、後は・・・愚痴だな。あれがうざかっただのなんだの聞こえてくる・・・


 ーーーガララ!!ビシャンッ!!


 「おーい!お前ら席に着けぇ!!?」


 あれ?またさくらんぼ先生?てか、なんで慌ててる?


 「ど、どうしたんですか?先生・・・」


 「い、いや・・・本来ならここで担任交代をして新しい先生にバトンタッチするんだが・・・はぁ、はぁ・・・」


 顔真っ赤・・・何を興奮してらして・・・あ、そう言えば去年イジられてたな・・・童貞先生と・・・新しい担任は20代女性か、なるほど。


 「先生・・・」


 前の席の霧島が苦笑いしてるのが見えた。


 「だ、ダメだぁ!!俺には直視出来ん!!てな訳で!!ぐ、グレイシア先生!!お願いするだ!!」


 グレイシア?外国の人?英語教師か何かか?


 ーーーガララ・・・


 ドアが開いた。その瞬間、私はその人に釘付けになった。いや、唖然とせざるを得ないだろう。


 エメラルドグリーンの様なサラサラとした綺麗な髪、なのにその中に真っ赤なメッシュが入ってる。1番目に飛び込んできたのはその超特徴的な髪色だ。そのコンマ数秒後、白くてスベスベした肌に、ピンク色の宝石みたいな左目、片方は眼帯。まつ毛もエメラルドグリーン・・・


 今までの教師と言う立ち位置に当てはまらない情報が、大量に押し寄せた。その中で私が思ったのは一つ、


 『綺麗』


 この一言に尽きた、クラス満場一致だ。普段周りを睨む事しかしない霧島すら目を見開いてる。


 「グレイシア ダストだから・・・二年三組のみんな、これから一年よろしく」


 く、クールビューティー・・・予想していた数倍綺麗な声とトーン。


 「「「ぐっはぁぁっ!!!」」」


 あ、男子が卒倒した。女子たちは・・・目が輝いてる。まぁ無理もない。まさかこんな2次元から飛び出したみたいな人が、この中途半端な街の担任になった。その事実だけでも一生語り継ぎたい出来事だもんな。


 「佐藤先生、こんなのでよろしかったから?」


 「は、はいぅ!?こ、ここ、この、くくくくらす、おおおねがいしますですだぁ!?」


 さくらんぼ先生がガッチガチのままバインダーをグレイシア先生に渡した。


 「変な喋り方・・・」


 「し、仕方ねーだ!?んだらどっこいせ!」


 方言がどんどんキツくなる前にさくらんぼ先生はクラスから出た。にしても・・・強烈なのが担任に来たな・・・


 となると、少し気になってくる・・・最初は期待してなかったのに、転入生とやらが!!


 「みんな、少し静かに・・・転入生の子が待ってるから」


 「「「はいっ」」」


 これは良い。これだけ美人なら、普段先生の言う事なんか聞かない奴らも一瞬で黙る。


 「改めて、私はこのクラスの担任のグレイシア ダスト。担当科目は・・・国語だから」


 英語じゃないんかーい!!どう見ても英語な顔してるじゃん!あ、けど日本語めっちゃ流暢だな。日本生まれなのかな?


 「それで、転入生の紹介から行く。れ・・・み、三上クン・・・お願い」


 あ、ちょい噛んだ。

 ーーーガラッ


 あれ?あの子は・・・その転入生を見た瞬間、ネーちゃんと目が合った、そして互いに頷いた。


 「(おおとり)中学から来ました三上 礼です。宜しくお願いします」


 昨日、私のファッションチェックしてくれた兄の方だ・・・いや待て、年下にしか見えないんだけど?小学生って思ってたんだけど?中2なの?確かに今思えばあの兄妹、ここら辺で見た事無かったな。


 なら妹の方、弟と同じくらいに見えたけど、同じ小学校行ったのか?


 そして周りを見ると流石にさっきのグレイシア先生のインパクトに欠けるからかな、反応は普通だ。


 「三上クンの席は廊下側、チャンさんの隣だから」


 「はい」


 「おー!この間はどうもネ!ワタシ、ネー・チャンアル!お隣同士仲良くネー!」


 「うん、こちらこそ宜しく」


 ネーちゃんは元気に迎え入れてる。どこのグループとも仲良く出来るのは羨ましい反面すごく大変そうだな・・・


 「じゃあ次、入って来て良いから・・・ん?」


 ーーーガッ!!


 ーーーゴロゴロゴロゴロ・・・


 な、なんだ?急にドアが開いたと思ったら何か転がって来た・・・これは、レッドカーペット?


 ーーーザザッ!!!


 そしてそのレッドカーペットの左右に大量のスーツ着た男が立ち塞がった。


 『パッパラパパパ♪パッパラパパパパ〜♫』

 「キャロライン ガイア様のお通りです!!」


 ラッパが吹かれて、廊下に・・・馬車?いや引いてるのは人だから人力車?ともかくあの例のかぼちゃっぽいのが出入り口に乗り付けた。


 そして執事っぽい人の差し出した手を取り人影が降りて来た。


 なんか、これも私とクラス満場一致で思った事。





 (((なんか濃いの来た!!!)))





 金髪ロング縦ロールの碧眼女子・・・おかしいな、ここは普通の市立の中学だ。アニメみたいなお嬢様学校じゃないんだぞ?と言うか、コレが似合う日本の学校って現実に存在するのか?


 ーーータンッ!


 その子は教壇の前に凛々しく立った。


 「日本の庶民の皆様ご機嫌よう・・・ふふふ、言わなくても分かりますわ、庶民のあなた方は知らないのでしょう?このわたくしの名を。ならば教えて差し上げましょう。このわたくしは、ガイアグループの令嬢にして、この世界全ての美しさの頂点に君臨する者、キャロライン ガイアですわ!!」


 お嬢様だ。これは紛う事なきお嬢様だ。誰がなんと言おうとお嬢様だ。だってですわなんて口調、アニメでしか見た事ないもん。


 「・・・キャロライン、派手すぎだから」


 「オーホホホ!!何を申しますのグレイシア先生?このわたくしが来た。こんな光栄な事、本来であれば学校側が最上級のもてなしをしなければなりません事よ?それをこの程度で済ましているのですから、充分慎ましいと思いますわ」


 「はぁ・・・、キャロラインさん。あなたの席は」


 「前から四列、左から二列目。そここそがわたくしに相応しい場所ですわ。今日の為に日本の事を調べたのですわよ?あらゆる作品群の中で最も主人公たる存在がいる場所、それが前から四列、左から二列目ですわ」


 1、2、3・・・ん?その席は、


 「いやキャロラインは一番左・・・」

 「と言うわけであなた、丁度隣が空いてますわね。移っていただけるかしら?」


 ・・・私か!!キャロラインはどうやらこの私の席が良いらしい。こんな時に目立たせないでくれ全く・・・あのインパクトある先生言う事すら聞いてないし。と言うか、主人公椅子は左後ろでしょ、作画的に楽だし。


 「え、あ、はい・・・」


 「良かったから?えっと、輝夜さん」


 グレイシア先生は一応私に確認取ってくれた。


 「お構いなく」


 正直、霧島を毎日真正面に見るよりかはまだこっちの方が数段マシだ、私はさっさと席を移動した。


 「あなた、話が早くて助かりますわね。このわたくしが褒めて差し上げますわ」


 「ど、どうも・・・」


 「むっ、もう少し反応したらどうですの?このわたくしが話しかけた。こんな光栄な事はないのですよ?まぁ良いですわ、確か輝夜 ミツキさんでしたわね。わたくしとの口の書き方を教えて差し上げ・・・」


 「キャロラインさん?」


 あ、面倒な奴に絡まれた。そう思った瞬間だった。とても優しい声がクラスに響いた。呼びかけたのはあの三上って奴だ。


 「そろそろやめようね?」


 「は、はぃ・・・た、確かに。じ、時間をかけ過ぎましたわね。グレイシア先生?ホームルームを始めてくださるかしら。さて、召使い共は撤収なさい。この辺鄙な学校ではボディーガードは必要ありませんわ」


 止めた?たった一言だけで・・・変なの。


 その後は慎ましくホームルームが進んだ。今日の始業式はこのホームルームが終われば帰宅で良い。


 『キーンコーンカーンコーン』


 放課後になった。キャロラインって奴の周りには男子も女子も集まってる。


 「オーホホホ!よござんす!」


 へー、意外と丁寧に対応するんだな。もっと高圧的な奴だと思ったが・・・三上の方は?


 「おーいミッちゃーん!!なんか話聞いたらネ?三上君とミッちゃんの家近くなんだってヨ!だから一緒に帰ろーネ!」


 「あ、うん!」

 

 そう言えば近所に引っ越して来た人がいるって、先週くらいに聞いた気がする、近所って言っても自治体が違うから挨拶とか無かったけど。


 「おい」


 がしっ!!


 肩を急に掴まれた。霧島・・・


 「お前・・・何約束忘れてんだ?悪いなチャン、今日コイツと帰る約束してたからな」


 「アイヤー、それは仕方ないネ。なら三上君と一緒に帰るネ?」


 「なら、また明日だね」


 「ばいちゃー!」


 待って・・・お願いだ。気づいてくれ・・・違うんだ。私は必死に訴えたが・・・ダメだ、声に出せない・・・巻き込めない。


 「で、今日ここにいるって事はあるんだろ?」


 「・・・・・・」


 「チッ・・・お前、ほんとクズ野郎だな。来い」


 「え、ちょっと!!」


 私は無理矢理腕を掴まれて教室から連れ出された。そして、体育館の裏に連れて行かれた。


 どうしよう・・・どうやって逃げる・・・なんとか方法を・・・


 「おーい、聞いてくれよ。コイツさ、持って来て無いってよ」


 「はぁ?何それ、ふざけてんの?」

 「サイアクー、今日それ楽しみだったのに」

 「約束破るなんて最低ね、ほんと残念。せっかく友達になれると思ったのになー。ねぇ、悪いと思ってる?」


 軽音が顔を近づけて来た。この顔・・・まるで私を奴隷か何かに見てる目つきだ。


 「わ、悪いも何も・・・ない」


 「は?聞こえないなー!?理由あるなら聞くよー?ほら、大きな声で言ってみてよ!!」


 「持ってないものは無いから無理なの!!」


 必死に絞り出した。こうなればもう謝り尽くすしか道はない。


 「ぶっはは!!声、裏返ってる!!必死かよ!!ぎゃははは!!」


 新庄・・・私は必死なんだから仕方ないだろ。笑うな・・・このクズ野郎。


 「無い?そんなの理由じゃねーだろ?お前、約束の意味分かってる?それに昨日言ったよな?持ってこなかったらコレだけじゃ済まさねーってよ?」


 「ホント、サイテー。ねぇ霧島君・・・こいつもう2度と学校に来れないようにしちゃおうよ。このブッサイク面をめちゃくちゃにしてさ、なんなら2度と表を歩けなくするくらいにさぁ」


 東郷は霧島の肩に手を回して物騒な事を言う。


 「まーまーららちゃん、そんな事したら流石に可哀想だよ。ねぇミツキちゃん。まだ学校来たい?」


 読めない・・・どうにもこの4人組で1番読めないのは荻山 軽音だけだ。新庄はただ単に私を笑いたいだけ。そして東郷は霧島とくっつく口実欲しいだけ。


 そして霧島は・・・コレも分からないが、ただ単に分かる事は、私を目の敵にするくらい嫌ってる事だ。


 だけど、荻山だけは何がしたいのか分からない・・・どう答えれば良い?間違えたら何か・・・嫌な予感がする。


 「き、来たい・・・」


 「なんだって?」

 

 「来たいよ!」


 「コイツ神経図太いなぁ・・・やっぱりボコるか?」


 「いや待って新庄君。今日はまだ終わってないんだからさ、約束守らせようよ。昨日の約束、覚えてる?」


 「み、みんなに10万・・・」


 合計40万・・・そんな大金、不可能に決まってる・・・

 

 「無理だって今思ったでしょ?ノンノン、それがミツキちゃんの悪いとこ。たった40万なんて2時間もあれば・・・いや、ミツキちゃんなら1時間で稼げるよ?パパ活って言葉くらい聞いた事あるでしょ?」


 な、何・・・学生が聞いてはいけない言葉。まさか、この女・・・私に?

 

 荻山は少し鼻息を荒くして笑ってる、そして私の後ろに立った。


 「私良いアプリ知ってるんだ〜。ほら、インストールっと・・・」


 私のスマホを勝手に触られて何か変なアプリを入れられた。


 「このマッチングアプリ、パパ活したい人ばっかり使ってるからさ。その中でも中学生なんて聞いたら無数にヒットするよ?ミツキちゃんモテモテだね〜。特に、ハーフって付け加えるだけで更にヒット率は爆上がり。それでもって、ホ別のNNなら10でオッケーっと。コレだけで1人から最低でも10万は取れるのよ?後はこれで募集かければ終わり。その後はパパさんに任せれば大丈夫、ね?簡単でしょ?」


 何だ?最後の呪文・・・何かの数式?にしても、こんな簡単に・・・


 「さぁ、ここまでやってあげたんだから、ほら、募集押しなさいよ・・・ねぇ?」


 この画面をタップした瞬間、私の全てが終わる気がする・・・こんな簡単な話がある訳無い、代償が見えない・・・怖い・・・けど、押さないと・・・


 「さぁ、早く押せよ・・・」


 押してしまった・・・こんな簡単に終わるものなのか?今、私の人生が終わったと頭が実感した。なのに、こんな・・・こんな指の一本で終わるなんて・・・こんな呆気ない事があって良いのか?


 「え?」




 『インターネットに接続されていません』




 直後に表示されたのはこの一文。通信が、途切れた?


 「なにこれ・・・ミツキちゃん、何かした?」


 「ねぇ君たち。そこで何してるの?」

 

 「「「っ!?」」」


 全員同時に振り返った。あいつは・・・三上?え?ネーちゃんと一緒に帰った筈。


 「お前、何でここに?」


 霧島が聞き返した。


 「ちょっと忘れ物しちゃってさ、急いで戻って来たんだけど、そしたら物音が聞こえてね。何があったのかは分からないけど、イジメは良く無いと思うよ?」


 こいつ、命知らずか?いや確かに転校して来たから分からないのも無理ないが、霧島を敵に回したらヤバいんだ。


 「イジメ?あぁ、そう見えちまったなら悪いな。けど、これは約束守らなかったコイツが悪い。今ちょっと説教してんだよ」


 「あら、そうなの」


 「そうだよ、ミツキちゃんは大切なクラスメイトだもん。いじめたりなんかしないよ?ただ、ちょっと悪い事したかにはお仕置きは必要でしょ?」


 「確かに・・・チラッと話は聞こえてたんだけどさ、輝夜さん、この人たちに40万渡す約束してたっぽいよね?」


 え、こいつ・・・いつから話を?


 「けど、それなのに持ってこなかった。うん、確かに約束破ってる」


 分かった・・・思わず首を突っ込んだが、引き返す手段を出したんだ。コイツに私を助ける気なんか無い。


 「でしょ?ほんとに悪い子なんだから」


 「だね。だけど、中学生でそんな大金の貸し借りはあまり良く無いとも思うよ?そうだ、はいコレ。みんなお金に困ってたみたいだから、コレで手打ちにして終わろうよ」


 は?札束?三上は封筒から何十枚かの札を取り出した。全員諭吉・・・


 「な、何?このお金!?」


 東郷が目を¥のマークにして輝いてる。


 「ちょっとした支払いがあってね、丁度手元にあったんだ。大丈夫だよ、それは僕のお金だから。支払いは別にまた明日でも良いしね」

 

 「お前・・・何者だ?」


 霧島は手に金を持ったまま三上を少し睨んだ。


 「僕はしがない工場で働く父の息子だよ。それより、それで仲直りしようよ。僕としてもこれからの学校生活でこの先、こう言うのはあんまり見たく無いんだ。僕、お節介な性格ってよく言われててね、無視すれば良いのにこうやってついついちょっかい出しちゃうんだ。ごめんね?それとも、まだ何か約束してた事がある?」


 「・・・いや、ミツキは今日10万を持ってくる。そう言う約束だ。だから一応は約束守った訳だ、偶然だがな。それをこれ以上突いても意味ねぇな。俺たちは帰る・・・けどな三上、そいつと友好関係築きたいってなら一つ忠告しておいてやる。そいつは見た目以上のクズだってな」


 霧島たちはそれ以上何も言う事なく帰って行った。けど、荻山だけはじっと私を見て行った・・・なんか、凄く残念そうな顔で・・・


 「あ、ありがと・・・」


 「どうって事ないよ。あ、あのお金は、僕が勝手にあげたやつだから返さなくて良いからね?さて、チャンさんも帰っちゃったし、僕たちも帰ろうか。帰り道一緒だったよね?」


 「うん」


 私は三上と一緒に帰宅する事になった。

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