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逃走経路の攻防

 一方その頃、三日月は・・・


 「はぁ・・・はぁ・・・くっそ、なんじゃこりゃこの腕みてーなのはよぉ!!」


 308号室に向かう通路。そこへと迫り来る腕のような敵。俺は時を止めながら敵を倒していく。


 「おーい早く避難してー!!出口はこっちー!!」


 戦えない霧矢は避難の誘導をする。こいつはとんでもない程の方向音痴だが、帰省本能だけは他を軽く凌駕してる。今も一見非常口とは真逆に誘導してるが、敵を避けて行くにはそこがベストだ。霧矢はそれが分かってる。にしても・・・


 「時よ・・・とーまーれぇぇぇぇっ!!!」


 襲いかかる腕を時止めで対抗するには、そろそろ限界だ。10分もう経っただろ・・・なのに、なんで・・・


 「三日月ー!!後は308の人だけー!!って!大丈夫!?」


 「あぁ、まだなんとかやれるぜ・・・っ!?」


 しまっ・・・油断した!!腕が俺の目の前に迫っていた。


 ーーーバゴンッ!!


 「こらー!!三日月いじめんなー!!」


 霧矢の強烈なキックによるサッカーボールが腕に当たった。腕は軌道をそれて地面に当たる。


 「一旦下がろ!?その部屋に!!わっ!!また!!」


 ーーーガララッ!!


 「うお!?」

 「ひゃっ!?」


 俺たちは突然空いたドアから伸びた腕に掴まれて病室に引きずりこまれた。


 「いてて、サンキューバカ姉の友達よ」


 「だからワタシネーチャンヨ、弟クン」


 引きずりこんだのはバカ姉の友達のネー・チャンだ。


 「俺の方こそ三日月だっての。それよりこの部屋は・・・」


 308じゃないぞ?


 「明らかにあの男、あの部屋狙いそうだったからこっちに移したネ。ケド・・・こっからどうやって逃げたものかネー?」


 この部屋にはベッドごと移動させられたであろう1人の患者がいた。こいつが軽音って奴か。見た感じ、不安が半端なさそうだな。


 「ミツキちゃんの弟君?チャンさん、これ一体何が起きてるの?」


 「うーん、ワタシもどう説明したらいいのかわかんないネ。言えるのはとりあえズ、なんかヤバいのが来ちゃってるって感じカ?」

  

 俺も今の現状説明しろって言われても無理だ。


 「なんか外、腕がばーってなってんの。だから逃げたいんだけどさー、どうしよって状況」


 余計に分かんねーよ霧矢。


 「分かったわ。兎に角大変なのね霧矢君、君がそんな顔してるのは相当切羽詰まってる時だから・・・んっ!!!」


 軽音は霧矢の様子を見るや否や松葉杖を取り出し無理矢理ベッドから起きようとした。てか、霧矢と面識あったの?


 「チョーイ!!何してるネ!?無理しちゃダメヨ!!」


 ネーチャンが無理してる軽音を止める。


 「霧矢君が焦ってるなんて相当な状況なんでしょ?このままじゃここもヤバい・・・多少無理しないとみんな巻き込んじゃうじゃない・・・」


 「確かにねー、ここもこのままじゃダメになっちゃう。お団子のお姉ちゃんは、けーおん姉ちゃん抱えれるー?」


 「・・・もちろんネ!!そうダ!!弟クン時を止めて、私と弟クン友人と2人で軽音ちゃん抱えれば流れるんじゃナイ!?」


 30秒で片足の無い奴をここから出せるか?いや、連続して発動すればギリ・・・後は俺の体力との勝負だな。


 「あぁ、やってやるぜ・・・時よ・・・」




 『アハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」

 



 突如部屋に笑い声が鳴り響いた。そして地面からぬるぬるとあの悪魔が這い出して来た。


 「くっ!!今度はコイツかよ!!」


 「なに・・・あれ、あれは・・・」


 軽音がより汗を流してる。そう言えばコイツにやられたんだったよな・・・


 「弟クン!!作戦変更!!まずはこいつをやるネ!!」


 「あぁ!!」


 『クハハハハ!!!!私をやるだと?悪魔も随分と舐められたものだ・・・』


 な、今この悪魔が喋ったのか?いや・・・いまのこいつは、悪魔じゃねー。チャールズだ。


 「悪魔・・・?何、これ・・・私、こんな奴見るの初めての筈なのに、覚えてる・・・私は・・・なんで?」


 『それもその筈だ荻山 軽音。お前はこの姿を知っている・・・』


 「止まれ!!」


 この野郎、いやらしい性格にも程があんだろ。今このタイミングでバカ姉から聞いた記憶を呼び起こしてみろ。下手すりゃ精神壊れるぞ?


 俺は時を止めて悪魔を切り刻んだ。しかし、


 「ぐっ・・・はぁ・・・はぁ・・・」


 『もう限界のようだな、輝夜 三日月・・・』


 今の俺じゃ仕留めきれない。身体が・・・限界だ。


 「ちょ、弟君?どうしたの急に?」


 「なんでもねー、いいからさっさと逃げろ・・・」


 こいつの目的は軽音の記憶を呼び覚ます事。なら、俺のすべきはそれの阻止だ。


 『以前、こんな実験結果があった・・・一人の女性に関する結果だ。その女性は人肉を食べる異常性を持っていた。その女性に対し坂上 桜蘭そしてその彼女の記憶ごと人格を殺した。そうすると彼女はごく普通の女性へと変わった。しかし、ある時その当時の記憶が呼び起こされる。彼女は人格を取り戻しはしたが、かつてほどの人肉への欲求は復活しなかったらしい。


 次はどうなる?荻山 軽音・・・お前の記憶を取り戻した時お前は、かつての自分に戻るのか、はたまた新たな存在になるのか・・・』


 チャールズは軽音にゆっくりと近づく。


 「私は、一体・・・何があったの?」


 『記憶を取り戻したいか?』


 こくり・・・


 軽音は頷いた。ダメだ、けど、誰にも止められない。


 『良い返事だ・・・記憶というのは一つの言葉から連なって蘇る。無くした記憶で一番深い言葉だ・・・お前の場合は、これだ・・・()()()()()()()()()


 「私の・・・罪?私は悪いことなんかして・・・違う、私はあの時・・・何を・・・っ!!!」


 軽音が頭を抱えて地面に倒れた。呼吸が荒くなっていく。


 「軽音ちゃん!!」

 「ねーちゃん!!だいじょーぶ!?」


 「はぁ!はぁ!・・・私、あの時・・・ミツキちゃんを見つけて・・・私は、ミツキちゃんを・・・堕とそうとした?なんで・・・ちがう!!私そんな事したくなんかない!!けど仕方ないじゃない!!」


 な、何言ってんだ?軽音は、零羅みたいに自問自答をし始めた。


 「私はちゃんとやった!!ちゃんとやったから!ねぇ私ちゃんとやったでしょ!?」


 なんだ、この異質感・・・トラウマな記憶だとしても、こんな風になるか?これはむしろ・・・


 『クァッカッカッカッ!!これは面白い結果だ!記憶の連鎖はどうやら深層心理の感情を呼び起こしたらしい!!』


 「ごめんなさい・・・今度はちゃんと、するから!!」


 「っ!!弟クン!!その剣も一本出せるネ!?」


 軽音の様子を見かねたネーチャンが俺に向かって叫んだ。


 「いや、もう一本はバカ姉に渡してる・・・もうねーんだ」


 「・・・え?なら、も一本ある筈ネ」


 「あ?」


 剣は2本しか出せなかったぜ?


 「時計の針って、時針、分針、秒針の3つデショ?」


 俺は瞬間的に察した、俺のこの剣は時計の針。それが巨大化したような武器だ。おれは今までずっとこの力の一部しか使ってなかったってのなら、使える筈だ。この剣は本来3本で1つの形になる筈・・・


 今まで使えなかったのは、俺の覚悟が足りなかったからだ。やるぜ、気合い見せろ!!!この現状をぶっ壊せ!!




 「うぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」




 俺は気合いを込めて叫んだ。その時だ、俺の手元の短剣だった物の姿が変わり、一振りの長剣へと変貌を遂げた。


 「その剣は・・・」


 「時の神の剣だぁぁぁっ!!!」


 俺はその気迫と勢いのまま、チャールズに切り掛かった。一撃だ。振り抜いた剣はチャールズを真っ二つにした。


 「今だ!!外へ行くぜ!!」


 廊下に出ると再び腕の大群が壁や天井を覆い尽くしていた。


 「うへー、またキモい事になってんネー」


 「ネーチャン、こいつ使え」


 俺は短剣の方をネーチャンに渡した。


 「ドモー、霧矢クンだっけ?軽音ちゃん任せても良いネ?」


 「おーう!けーおんねーちゃんは任せとけー!」


 霧矢は軽音を支えながら進み、俺とネーチャンは襲い来る腕と戦いながら下に降りる階段へと向かった。


 「私は・・・悪くない・・・いや、悪いのは、私・・・」


 特に暴れたりはしないけど、この荻山 軽音、ずっとぶつぶつ言ってる。バカ姉、あん時一体何があったらこうなんだ?


 「階段には何もないネ、一気に降りヨ!!」


 俺たち3人で軽音を抱えて一階まで降りた。後は出口に向かうだけだ。しかし・・・


 『残念だが、実験はまだ終わっていなくてね。後は君たちの死のサンプルが必要なのだよ』


 またあのピエロ野郎チャールズだ。出口に陣取ってやがった。


 「くそが!!」


 俺は剣を構えた。けど、思いもよらない事態が起きた。


 「やーれやれ、お前いっぺん負けてんのに往生際悪いなっとぉ・・・」

  

 「っ!?貴様は・・・!」


 突然俺たちの目の前にロン毛の長身男が現れた。


 「何驚いてんだぁ?あぁ、俺はそう言えば死んでたなぁ。確かに、シェン・リーとしての俺は間違いなく死んだ。が、神様ってのはそう簡単に死ねなくてねぇ、そこの軽音ちゃんよろしく記憶をそのままにまたこの世界に戻ってきたまったのさっとぉ。で、そこ、死んじまうぜ?」


 ーーーバスンッ!!!!


 チャールズの脳天に突然穴が空いた。チャールズは後ろに飛びながら倒れる。


 「チャールズ、お前は形はどうであれ正々堂々戦って負けたんだぜ?負けたんなら行かせるのが礼儀ってもんだろうがよっとぉ」


 『シェン・リー。よもや貴様が三上側につくとはな・・・』


 チャールズは何事も無かったように起き上がった。不死身か?


 「だって仕方ねーだろっとぉ。俺はこれでもかってな程に前の戦いで三上たちに負けてんだ。丁度、今永零の奴が三上にやろうとしてる事と同じさ。俺はあいつに屈服しちまった。だから今の俺はこいつらの味方で、あんたの敵って訳だ。とは言っても、俺自身がこいつらに直接手を貸す事は出来ねーからなぁ。クロちゃんとの約束ってな。間接的にしか力は貸せねーんだ。って事でサッカー少年、ちょいとそのボール貸してくれるか?っとぉ」

  

 「おん」


 シェンリーって奴は霧矢からボールを受け取った。そして軽くリフティングを始めた。


 「あんた・・・何者なんだ?」


 俺は質問する。コイツからは何処となくスミレ先生と同じ雰囲気を感じる。ただ先生と違ってコイツはなんか、軽い感じだ。


 「俺か?そーだなー、この肉体はシェン・リー。チャールズと同じくやべー権力だけ持った憐れな奴。んでもって空間の支配者、宇宙を司る存在。肩書きはいくらでもある。けど、やっぱりこの響きが1番良いよなぁ。俺は、ウラヌスだ!!っとぉ!!!」


 ウラヌスはボールをとんでもない方向へと蹴った。しかし、その威力は壁を削り、柱を折り、天井に穴が空いた。


 ーーーガラガラガラッッッ!!!


 「うお!?」


 俺が瓦礫を避けるといつのまにかウラヌスの手元にサッカーボールが戻っていた。


 「んー。このボール中々良い感じに蹴られてんなぁ。使い手が相当上手いぜ?少年、お前将来サッカーで食っていけるぜ?っとぉ。さて、俺が出来る助っ人はここまでだ。あいつは、お前たちで倒しな」


 「けほけほ・・・なんなの?急に床が」


 聞き慣れた声、この声は・・・


 「バカ姉?」


 「三日月?」


 上から降ってきたのはバカ姉だ。そして、一緒に奴も落ちて来た。


 「シェンリー・・・舐めた真似を・・・」


 チャールズ アンダーソン、ご本人の登場だ。


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