頭のイカれたメンバーを紹介するぜ
「それにしても、よくここまで成長してくれた・・・その佇まい。立ち振る舞い、強さ、何をとっても完璧だ・・・」
チャールズのやつ、あれ、泣いてるのか?チャールズは男泣きみたいに感無量といった感じで涙を流してる。気色悪・・・
「それはどういたしましてと言うべきなのですか?ですが、わたくしには、あなたに涙を流して貰っても嬉しいと思える感情なんてありませんよ」
リリアは軽蔑的な目つきでチャールズを睨んだ。
「まぁ、確かに、お前にはずっと辛い思いをさせてしまった。私の事を恨んでいても仕方がないだろう・・・だが、私は忘れてはいない。お前を捨てる事になった日の約束だけは忘れていない。あの日、私はお前に約束した。必ず迎えに来るとな・・・」
「えぇ、そういえばそんな約束ありましたね。ですが今更過ぎますよ。今更家族なんて言われても何も嬉しくはありません。わたくしの家族はお兄様ただ一人です」
「ディエゴか・・・リリア、一つ言っておこう。お前とあの男を合わせたのは私だ」
「え?」
チャールズは突然泣き止むと、今度は肩を震わせて笑いはじめた。
「ククク・・・リリア、私は本当にお前の事を思わない日はない。だがあの時代、全てが狂った第二次大戦下、不本意ながら私は、お前を捨てる選択をせざるを得なかった。苦渋の決断だったよ・・・そこで私は考えたのだ、なんとかしてお前を救える手立てはないのか?とね」
「救う?わたくしはあなたに救われた覚えはありませんよ。死んじゃってましたしね」
「そのお前の死も、お前の救済の計画の一部だリリア・・・それだけではない。お前を奴隷にしたあの男の元に行かせたのも、そんなお前を救おうとして死んだあの男も、アメリカのギャングに明け渡したのも、そしてディエゴと会わせ、異世界へと誘い、お前にセカンダビリティの真相を見つけさせる事も、それ以外の事も全てお前の為を思っての事だ」
「・・・」
リリアは目を見開いて固まってる。そりゃそうだ、今聞いた限り私もポカンだからな。何だよ、死ぬ事すらお前の計画の内ってか?
「驚いたかね?まぁ仕方がないな。少し、昔話をしよう。私は、全てを捨てた見返りに権力を手にした。この世の全てを自在に操れる権力をな・・・最初は感激したよ、何せ自身の一存で世の中の情勢を簡単にコントロール出来るのだからな。しかしね、そんな力を持ったとしても私は何にも嬉しくはなかった。私が欲しかったのは家族だと言うことを思い出したよ。
そして私はある計画を実行した。極限生命体計画、プロジェクト・マキシマ。指宿 永零が発案したとされているが、本来それを考案していたのは私だ。極限の生命体を生み出すこの計画・・・これは本来誰の為に使われるべきか。これは言わば人類を大きく超える存在を作り出す計画だ。この世界を権力などと言う脆弱な力ではなく、誰の目にでも分かる毅然とした力でこの世を支配する。私が究極の権力を手にしたのならば、力を手にすべきは我が子の筈だ。指宿 永零でも坂上 桜蘭でもない。真にあらゆる生命の頂点に君臨すべきはお前だリリア。そうだ・・・全てはお前の為なのだ」
「全ては・・・私の為?」
「そうだ、最高だとは思わんかね?世界のあらゆる力を持ち合わせても通用しない圧倒的な力だ。お前はそれを手にする権利がある。これまでの恨みを思い出すがいい、お前から奪った何もかもを、今度はお前が奪い返せ。この世界のあり方を我が娘、リリア アンダーソンが変えるのだ・・・ククク、クゥァカッカッカ!!」
チャールズは高笑いをはじめた。
「さぁ、一緒に行こうではないか。私とお前なら何もかもを変えられる。お前が慕った兄も取り戻せるのだ」
そしてチャールズはあろう事か、リリアへと手を伸ばした。その瞬間、私の何かが切れた。
「っっざっっけんなぁ!!」
声が裏返って自分でもキモいって思う声。けど、私は叫んだ。そして叫んだ事に後悔は無かった。このゴミ野郎に言わずにはいられなかった。
「なんだね?今は親子水入らずの会話の筈だ。新月同様、非常識な奴だな・・・」
「非常識・・・非常識だって?あんたがなんでそんな事を軽々しく口に出来るの?訳わからない・・・1人の女の子の人生をめちゃくちゃにしておいて、その全てがリリアちゃんの為だって?寝言にしても程があるって!」
「これだからガキは困るのだよ、世界を全く分かっちゃいない。我々と君とでは生きている世界の基準が違うのだよ。それを分からん奴に目撃者だなどと言う立場は与えられんな。消えたまえ」
『アハハハハハハハ!!!!』
「っ!?うわぁぁぁあああっっ!!!」
悪魔が私に向かって襲ってきた。私は無我夢中で銃を撃つ。
ーーーパァンッ!!パァン!!パァンッ!!ーーー
電撃、一応撃ててる。そしてこの電撃はあの悪魔を足止めするくらいには効いてる。けど、こんなんじゃ倒せない!!
『オマヘノツミハ・・・』
「うざい!!」
「「「っ!?」」」
悪魔がまた死んだ。けど、私たちが何より驚いたのは殺した張本人の言動だ。
「お父様・・・いえ、あなたを肩書きで呼ぶことすらムカつきますね、さっきから聞いていれば何ですか?わたくしを物扱いするだけでなく、人生はめちゃくちゃに、それに大切な友人を愚弄し、わたくしの兄まで愚弄して・・・例え全部わたくしの為だとしても、もう遅いです・・・あー、なんかこんな風に淑やかに話してるのも馬鹿らしくなってきました!!あんたに言いたい事は一つ!!
死ね!
この超!!大馬鹿やろーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
リリアがガチギレしちゃった・・・普段使わない汚い言葉遣いでチャールズをコケにした。
「・・・なんの冗談だね?」
チャールズの野郎、特に何か効いてる雰囲気はない。普通、娘にそんな事言われたら傷つくぞ。
「冗談はあんたのほうよ、知ってます?『生き抜く術』ってのを、わたくしがお兄様から教わった大切な教訓です。その中にあるのが決して一人になるな。この教訓、例え世界がどんな風に変わろうともそれは絶対に変えちゃいけないと思うんです。けどあんたは、一人でなんとかなるって思ってる大馬鹿者。
ほんと、永零さんも人が悪いですよ。こんなのをボスにしちゃうなんてさ・・・わたくしは、あんたなんかの言いなりになんてなりませんよクソジジイ」
「・・・あぁ、成る程。そう言う事か、可哀想に・・・少々長く底辺の世界に浸らせすぎたか。が、まぁいい、作り直せば問題はない」
作り直す・・・今こいつ、作り直すって言った?はぁ?私も更に腹が立ってきた。
「ねぇミツキ。その銃貸してくんない?あいつの脳天ぶち抜きたいんだけど」
さっきまで怯えていた東郷もこの男を前にして怒りが勝りはじめた。
「東郷さん、私の撃ってるコレが多分魔法ってやつ。コツは簡単。ムカつきをそれに込めれば勝手に対応してくれるっぽい」
「さんきゅー」
私は東郷に銃を渡した。
「やれやれ、私の存在というのは忙しいのだ。面倒だが、一気にこの町ごと消えて貰おう。異空間展開・・・最大」
なんだ・・・外、悪魔の数がどんどん増えてる。この赤い空の空間が広がってるんだ・・・
「ちっ・・・そうやってあなたは高みの見物ですか?自分で戦う気はないと?ほんっと、やな奴ですよもう。分かりました、全部相手して見せますよ!!ミツキさん!!ららさん!!一緒に戦いましょう!!」
「オッケーよ!!」
「あ、私の武器は!?」
「バカ姉!!コイツ使え!!」
「うわっと!!!」
階段を駆け上がってきた三日月が私にクロノスの剣を投げてきた。あっぶね、刺さるとこだった。
「今度は新月の息子か・・・」
「その友人Aこと!霧矢もいるよー!!これ!おっさんのせいなんだって!?その腹立つ顔にサッカーボールぶつけてやるよー!!」
三日月の友達も来た。あの子にも話したんだな・・・
「それだけじゃないよ、君のせいで天正市全域で悪魔が現れた。けど、もう既にみんな動いてる。君ごとき、僕が出るまでもない」
「っ!?三上・・・」
そして階段をゆっくりと三上君は登ってきた。ラスボスみたいに出てくるな・・・流石のチャールズもこいつの登場に少し表情を変えた。
「・・・ククク、クゥアー!カッカッカ!!この状況、実に面白い状況ではないか!!丁度良い実験が出来る!!礼を言うぞ三上!悪魔どもの最高性能を引き出せそうだ!!」
「それは僕の方もさ。チャールズさん、君とはウマが会うかもね。僕も丁度実験したかったんだ。僕たちの仲間は君を倒せるのか、丁度良いから死んでくれるかな?」
三上君はにっこりと脅した、逆に怖い。
「勘違いするな、死ぬのは貴様の方だ!!」
来るぞ!!
「こいつは、こう撃ちゃいいんだろ!?」
ーーードゴォォンッ!!!ーーー
一発目、東郷はどう言う理屈か、鉛玉みたいなガチの銃弾を撃った。弾丸は悪魔の脳天を貫いて倒れる。
「へぇ、不思議・・・でもこれ本物としても使えんのね。思いっきり銃刀法違反だけど、まぁいいっしょ!!」
少しショック。使いこなすの、私より上手いんじゃない?なら今度は私だ!!
「止めて!!」
「うおらっ!」
三日月が私に触れながら時を止めた。動けるのは私たち姉弟だけ、今のうちにコイツらを刻む!!
「うおいぃぃやぁぁああああああっっ!!!!」
「うお、三日月すんごい掛け声・・・剣道のやつ?」
三日月も持つ私と同じ剣。流石に使いこなし方は上手いなぁ。私も剣を振る。殺すなら、突き刺すのが1番か。振ったら引っかかってノコギリみたいにしか私は使えない。突き殺すのが一番だ。
「はぁ!はぁ!・・・30秒・・・リリア!!」
「・・・っ!!」
リリアは悪魔を右腕のゴツいガントレットで切り裂いた。戦える・・・力を合わせれば、こいつらと私たちは戦えるんだ・・・
「ふむ・・・これは中々に面白い結果だ。ただの人間でもセカンダビリティなどは必須だが悪魔は殺せる・・・だが、悪魔は個々の戦力は高いが、この異空間がある限り無限に湧き出る特性を持つ。この町を覆う異空間の効果時間は10分程、君らは何処まで耐えられるかね?」
「10分ね・・・前にやった、かかり稽古20分の半分じゃねーか。余裕だな」
「私も、東郷さんの訓練に比べたら10分全力は・・・屁でもない!」
地面からどんどん悪魔が増えてくる。さぁ、全力を出せ!!
一方、病院の外では・・・
「なんだこれ!?スマホが使えない!!」
「空が真っ赤に!!」
「おい!アレを見ろ!!なんだあの・・・怪物は!?」
町中はパニックに陥っていた。その中、コンビニ立て篭もり事件に駆けつけていたメディア一行がいた。
「カメラ回せる!?」
「不可能です!」
「くぅ!!こんなスクープが撮れないなんて!!まぁいいわ!始めて!!!こちら、天正市総合病院前のコンビニエンスストアから中継しております。立て篭もり事件が謎の2人により解決したかと思われた途端の事です・・・このように空が一面真っ赤に染まり、まるでこの世の終わりのような景色になっております。そして、謎の怪物が現れたとの目撃情報があったとのことです。現在スタジオとも中継が取れない状況ですが、誰かこの現状を伝える人はいませんか?」
「さ、増子味さん!!あれを!!」
「な、何よアレ・・・ご覧下さい!!地面から何かが這い出て・・・」
『アハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!』
「っっ!!耳が痛くなるような笑い声が響いております!!あの人型の怪物は一体!!
『オマエノツミハナンダ!?』
「ひっ!?も、申し訳ありません・・・わ、私もう、ダメかも・・・」
アナウンサーは腰を抜かし、涙を流して絶望し、諦めた。
「すまねーけど、もうちょっと逃げるなりなんなりしてくんない?簡単に諦められると間に合わねーんだ」
「え?」
ーーードゴォォォォォッッッ!!!ーーー
「きゃっ!!な、何!?」
「どーもさっきぶりの、えーっと・・・そうそう、ジャックポッド伯爵様の再登場って訳だ」
「あなたは、さっきの!!」
「よ、アナウンサーの姉ちゃん。俺たちはあの怪物たちと戦う為に発足した政府非公認の秘密組織だ。アタオカ戦隊バケモンジャーってな?ふざけた名前だけど、俺たちはこの町に現れる人類滅亡目指すアイツらからこの町を守って見せるから応援の方宜しくって事で」
ジャックポッド伯爵こと、一兆はアナウンサーの女性をお姫様抱っこしながら囁く。
「あ、し、質問宜しいですか?」
「シー・・・仕事熱心なのはいいが質問はなしだ。こーゆーのは、秘密のヒーローってのが鉄則。追いかけるが、正体が掴めない謎の存在。それが俺たちさ・・・」
一兆は人差し指を軽くアナウンサーの唇に置いた。
「俺たちって・・・一体何人いるの?」
「まだ質問すんのね。ま、少しばかり見せてやるよ。頭のイカれたメンバーを紹介するぜ。まずは・・・」
「炎獄灰燼葬」
ーーーどっかぁぁぁぁんっっ!!!ーーー
突然きのこ雲を伴う炎の柱が広がった。
「どひゃー!!?な、なによ!?」
「一人目、あの核爆弾みてーな奴は、バケモンジャー筆頭、さっき俺と一緒にいた魔法少女(?)キュート・ブレイカー。えっぐい物理攻撃と魔法攻撃を組み合わせて戦うやべー奴」
「これは紹介、ありがとうございますジャックポッドさん。ん?飛翔破顔薙」
『ぐぅおおお!!』
悪魔の頭がキュート・ブレイカーの回し蹴りで消し飛んだ。ここに血の雨が降り注ぐ。
「まだまだ壊せる物が多そうだ・・・申し訳ないが、先に失礼しますよ」
キュート・ブレイカーは何処かに飛んで行った。
「はえ〜・・・」
アナウンサーは腰を抜かした。
「んじゃ次な。2人目、自称服飾担当の・・・」
「今度はなに?空が暗く・・・って、え?」
アナウンサーは最早苦笑いしか出来なかった。
「ロードローラーだッ!!!」
空から突然ロードローラーが降ってきて悪魔を押し潰した。
「おい、余り周りのもん壊すなっての。ってな訳で、あのネタに走ったのがアタオカイエロー。周りにあるもん何でもかんでも武器にするイカれた奴」
そこには、黄色い変な格好した奴がいた。
「弁償するから問題なーし!!よし!!お次は〜・・・タンクローリーだッ!!ぶっ潰れよぉ!!」
アナウンサーたちの目の前をタンクローリーが物凄い勢いで飛んで行った。黄色い奴はどっかに行った。
「ご覧の通り、変な奴ばっかなバケモンジャー。紹介はここら辺にして、次回、バケモンジャー大集合。絶対見てくれよな。じゃ、俺も残ってる奴始末してくるから、これにておさらば・・・」
「うぉぉぉい!!おいらを忘れんなー!!」
そしてカウントもこの場を去ろうとした時、誰かが後ろから追いかけてきた。
「あっ!!てめっ!!ちゃんと変装しろつったろうが!ほら言わんこっちゃねー!!おりゃ!!」
「んお?あ!あーれー!?」
追いかけて来た誰かは突然姿を消した。
「・・・姉ちゃんよ、なんも見てねーよな?」
「は、はい!!何も見てません!!」
「なら良い、ったく・・・今度こそじゃあな」
カウントも突然姿を消した。
「・・・・・撮れた?」
アナウンサーこと、増子味 報道はカメラマンに問いかけた。
「だから撮れてませんって」
「機械のカメラはね・・・けど、アナログなら撮れる・・・持ってて良かったわ写◯んです。ふふ、撮ったわよ、彼だけはね・・・さぁ、マスゴミと呼ばれようが関係ない!!正体暴くわ!!」
「あんた死にますよ?」
「そん時はそん時よ!!全員遺書は書いたか!?行くぞぉ!!」
増子味は記者魂に火がついたのであった・・・