表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/111

変身

 ??? 指宿 永零の基地。


 彼はここの会議室の椅子に座っていた。


 「さて、試験はそろそろお終いにしよう。いよいよ本番と行こうじゃないか」


 永零は呟いた。


 「僕はこれまでのビーストや悪魔をこの世界に送った出来事は全て無かった事にした。おかげで今の礼の戦力とかを大体測ることが出来たよ。今は多分僕たちの方が圧倒的だ、けど礼ならあっという間に僕たちに追いつく。そこで、僕はある実験をしようと思う。


 みんなは、怪獣映画って観る?礼って映画好きだから僕も観てみたんだ。あれ面白いよね、映像の表現、ストーリー、音楽。ハラハラドキドキの連続だ。けど、一つだけ腑に落ちない事があるんだ。


 突如として現れた圧倒的な脅威の前に、世界は一致団結して立ち向かう。僕はそこが甚だ疑問なんだ。もし、そんな存在が本当に現れたのだとしたら、僕らの世界は映画みたいに動けるのか?しかも、そんな存在が現れるのが一つの町だけだとしたら・・・罪にまみれたこの世界を、礼は本当に救えるのか・・・」


 






 夜8時、我が家。


 「死・・・・・・」

 バタン。


 私は玄関にぶっ倒れた。その後ろで、


 「た、ただいま・・・」

 バタン。

 

 三日月もフラフラで帰って来て私同様にぶっ倒れた。


 「なんだぁ?2人してよ?いきなり今日遅くなるって言うし何やってた?」


 父が私たちに尋ねる。


 「部活」

 「稽古」


 「はっはー!青春してるねー!!昔あっしもさー」


 「お父さん聞きたくないから。風呂入りたい・・・」

 「俺もー」


 ・・・・・


 「私が先」

 「いや俺だろ」


 こうなったら・・・


 「「早い者勝ち!!」」


 三日月との風呂争奪戦が始まった。けど、


 「いっ!!!あっ!!足がっ!!」


 なんじゃこりゃ!足のモモの筋肉がなんか大変な事になった!!全身から脂汗が吹き出す!!痛すぎて呼吸すら出来ないんだけど!!


 「あー、足つったっぽいなーバカ姉。普段から運動しねーからだぜ?つーか、ちゃんとストレッチしたのかよ」


 こ、これが足がつった感覚なのか!!ストレッチは最後念入りにやれって言われたけどさ!ヘトヘトでちゃんとやれたのか分かんない!


 「ほら、ちょっとづつ足曲げろ」


 「いだだだだだっっ!!!痛いって!!」


 「我慢しろし、次伸ばすぞー」


 ぎゃーっ!!助けてー!!神様!仏様!お狐様!!


 しばらくしてだいぶ良くなってきた。私がほぐしてる間に三日月は風呂に行き、結局私が最後だ。


 



 「で?バカ姉はなんでまた部活なんか?」


 「あんたこそ。何稽古って?サッカー行ってたんじゃないの?」


 私はリビングで三日月と話していた。


 「剣術学ぶ為。今のままじゃ俺はコイツを使いこなせない」


 三日月は私に懐中時計を見せた。


 「成る程、同じようなもんね。私も今のままじゃコレが使いこなせない」


 「にしても、サッカーじゃ足捌きは得意な方なんだけどよ、剣道のあれってまたちょっとちげーな。こりゃ明日筋肉痛来るかも」


 「私は確実。と言うか既に痛い」


 「おー、仲良いじゃねーか」


 父が私と三日月のやり取りを見て何やらニヤニヤしてる。はぁ、


 「じゃ私部屋行く」


 「俺も」


 私と三日月はそそくさと部屋に戻った。



 

 翌日。


 バカ姉はまだ寝てやがる。


 「おら起きろ」


 俺はバカ姉を蹴り起こした。


 「ほぎゃっ!?っつー!三日月!勝手に入るなって何度もって、いだだだだっ!!!筋肉痛がぁぁっ!!」


 何度も思うが、普段運動しないからこうなる。


 「んじゃ俺もう行くぜ?遅刻しても知らねーからな」


 「・・・やべっ!!もうこんな時間!!いだだだだ!!!痛いよー!!」


 バカ姉が泣き面晒しながら急いで降りていった。さて、俺は行こう。


 俺はいつものように家を出る。で、道中にいつも最初は飯綱と合流する。


 「おーっすみかつきー!」


 「三日月な?最早これ挨拶になってんだけど」


 相変わらず飯綱は俺の名前をちゃんと覚えない。


 「あぁおはようさんやなぁ三日月はん」


 「・・・何してんの?」


 で、何故に飯綱の隣におかんがおるねん。あんた京都の人やろ。


 「飯綱の送り迎えや。いやええとこにここと向こうを繋げる事が出来たもんやからなぁ、ついつい。因みにな、朝は赤に任せとるんよー。ほなうちはここらで帰るわ。飯綱気をつけて行ってきやー」


 「ほいじゃねーお母ちゃん」


 ま、それはさておいて俺と飯綱で学校を目指す。その後の曲がり角で、


 「ごきげんよう三日月さん、飯綱さん」


 相変わらず小綺麗な感じの零羅がいて、それから。


 「あれー?ここさっきも通ったよなー。ん?あー、三日月ー。ここどこー?リフティングしながら学校行こうとしたら同じとこぐるぐる回ってんのー」


 大概ここら辺で道に迷ってる霧矢。つーかリフティングしながら学校行くな。


 俺たちはいつもこの4人で登下校してる事が多い。そして学校へと辿り着く。




 教室 


 朝の会が始まる。いつものように背筋がびしっと決まった純連先生が入ってくる。


 「みなさんおはようございます」


 「「「おはようございまーす」」」


 「今日はみなさんにお知らせがあります。今日からこのクラスに新しいお友達がくる事になりました」


 先生のいきなりの発言にクラスはどよめき立った。大体転入生ってのはみんな興奮するもんなんだよな。ただ、俺にとっては少し心配だ。だって純連先生だぞ?俺に時間停止能力をくれる奴だ。大概また知り合いな気がする。


 けど誰だ?


 「入って来て。自己紹介お願いね」


 「はい、みなさまはじめまして。リリア アンダーソンです」


 あ、あ〜・・・あの子か。けど良いのか?ずっと極秘で動いてたんだろ?


 「おーす!リリア!!学校来ても良くなったんだねぇ〜!!」


 飯綱が手をひらひらさせてリリアを呼んでいる。


 「はい、わたくしのやるべき事は終わったので、今日から学校へ行く事の許可が出たんです。さて、みなさま改めまして。わたくし学校生活というものを生まれて経験した事がありません。なので今少し緊張しています。ですが、みなさまとても優しそうな方が多くて少し安心しました。不束者ではございますが、どうかこれから宜しくお願いいたします」


 あれ?なんだ。零羅と似たタイプだと思ってたけど、こっちはガチでお嬢様っぽいな。いや零羅もお嬢様に違いないんだが、趣味にお嬢様感がない。だって話題が少年漫画に詳しすぎるもの。


 「ちょっと!!質問良いですか!?」


 突然びしっと委員長が手を上げた。


 「は、はいなんでしょう?」


 「私はこのクラスの学級委員長の仙石 茜です。よろしくお願いします。あの、リリアさんはこれまで学校に来れなかったって、一体何があったのですか!?」


 この人のお節介焼きも大概だな。そこは触れちゃいけないとこだろ普通。


 「え?ここに来る前は死んでましたので・・・」


 ・・・・・あー、駄目だ。


 「し?え?」


 「文字通り息の根が止まってました。それから色々あって生き返りました!」


 リリアはニコニコと笑ってすんごい事言ってる。


 「あ!!ごめんなさい!!ずっと入院されてたって事なんですね!!私ったら聞いちゃいけない事聞いちゃいました!?」


 うん、聞いた。これ以上は聞かない方が良いと思うぞー。


 「いえいえ、入院してた訳じゃなくてですね、その前は兄と二人だけで暮らしてまして、その前は奴隷という感じだったので」


 ・・・・・は?


 「ど、奴隷?と言うと?」


 俺も流石に委員長と同じ反応だ。リリアの昔はそんなに聞いたことなかったからな。


 「文字通りです。主人に飼われて〇〇させられたり、臓器売られたり、人体改造されたり色々です」


 ここまでくると冗談にしか聞こえないだろうが、あたかもしれっと普通に言うもんだから空気がどうしたら良いのか分からん感じになった。


 「せ、仙石さん。リリアさんへの質問はそろそろそこまでにしておきましょうね?ほら」


 先生ですらどうしようか迷ってるし。素で天然なんだろうなリリアって。


 「は、はい。ごめんなさい・・・」


 委員長は座席に座った。


 「いえいえ。えっと、席は霧島 霧矢さんの隣で宜しかったですか?」


 「そうですね。霧矢君」


 「はーい!俺が霧矢ねー!!特技はサッカーと家に帰る事ー!」


 「はい。よろしくお願いします」


 リリアは席についた。


 「ふぅ、それでは朝の会を終わり・・・ん?」


 『緊急放送、緊急放送。校舎内にイノシシと思われる動物が侵入しました。生徒、職員は教室にて待機して下さい。これは訓練ではありません。繰り返します・・・』


 突然校内に聞き慣れない放送が流れた。避難訓練と似た感じで事務的に落ち着いた放送してるが、それは多分まだ現実を受け止められていないせいだ。


 なんとなく察したぜ。校内に侵入したのはイノシシじゃない。そもそもこの天正市は都会ではないものの、イノシシが出るような地域じゃない。まぁ最近は分からないけどな。けど、このタイミングでそれは無いだろうな。


 ーーーバリィィィンッ!!ーーー


 ガラスの割れる音がした。


 「「きゃぁぁっ!!」」


 女子たちはビビって教室のすみに逃げ出した。


 「みなさん落ち着いて!慌てないの!!」


 先生は生徒をなだめる。さて、俺たちはどうするか?いや、俺は動けるか?昨日の今日で俺1人であいつらに立ち向かえる力はある訳ない。頼みの綱はやはり零羅と飯綱だ。けど、ここであんなパワー出したらまずいよな色々と。


 「三日月さん・・・」


 その時、零羅が俺にこっそりと話しかけた。


 「零羅、これどうすんだ?」


 「大丈夫です。この事態は三上さんも予測してましたから。そろそろ永零さんが本格的に動くだろうって。そこで、わたくしがちょっと提案した事がありまして、それには三日月さんの協力が必須なんですよ」


 「協力?何する気なんだ?」


 ヒソヒソヒソヒソ・・・


 零羅はさらに小さな声で俺の耳元で囁く。


 「いっ・・・上手くやれんのか?」

  

 「やれるというか、一回やってみたかったんですよね!!」


 零羅は少し興奮気味だ。


 「・・・はぁ、じゃぁやるぜ。時よ・・・止まれ!!」


 俺は零羅に手を置いて時を止めた。


 「おぉ!これが止まった時の中!!これなら、誰にも見られませんね!!いざ!!変身です!!」


 変身?おい何をする気だ・・・ん?あれは三上も付けてた腕時計・・・


 「まずは、煙玉!!」


 ーーーボンッ!ーーー


 煙が弾けた瞬間に時が止まる。


 「そして・・・行きますよ、零羅さん」


 なんだ・・・零羅の雰囲気が一気に変わった。今までのおっとりした感じじゃない。


 俺が零羅の変貌に気を取られた瞬間、時間停止が解除されてしまった。


 「わっ!?なんだ!?煙ー!!げほげほっ!!」


 部屋中に煙が充満したが、その煙は一気に消えた。


 「残念でしたねわたくしよ。あなたの提案した衣装、わたしは苦手だと感じましたので、少々変更させて貰いましたよ。そもそも少女というのなら、ピッチリとした衣装ではなく、この様な衣装の方が受けが良いと学びました」


 「あ、あんた・・・誰だ?」


 俺の目の前には、さっきの零羅の姿は無い。いるのは零羅より一回り以上大きい高校生くらいの女だ。


 ただそれ以上にインパクトあるのはその衣装だ。アイドルを彷彿させる・・・いや、こんな回りくどく言っても分かんねーな。つまり、変身魔法少女な格好だ。長い金髪とピンクと紺色のふわっとした格好だ。


 「名乗らなければいけませんか?ん?え・・・だからレイラーマンは却下です」


 誰と話してんだ?


 「すみませんね、名乗る程の者ではありませんが、この姿を呼称するのであればそうですね。この姿は世間的には可愛いというものをモチーフにした姿。そしてわたしは破壊の化身。それを合わせてキュートブレイカーとでも呼称しますか」


 キュートブレイカー、なんとも奇妙な名前だな。にしてもこいつ、本当に零羅で良いんだよな?多分変身のカラクリは三上の武器召喚と同じ。腕時計経由で衣装丸ごと転送したんだろうけど・・・今の零羅はまるで別の誰かに感じる。けど、何処となく抜けたところに零羅の面影を感じる。何なんだこいつ・・・


 「さてと、雑談はこの程度にしておきましょうか。今のであのバケモノたちは一気にここへとやって来ます」


 ーーーバゴンッ!!ーーー


 クラスの入り口のドアが勢いよく壊されて飛んできた。けど、零羅・・・キュートブレイカー?いややっぱ零羅でいいや。は、ひしゃげたドアをキャッチボールみたいに受け止めた。


 そして、その奥からバケモノが姿を現した。剥き出しの牙と刺々しい鱗。動物とは明らかに違う姿形。


 「な、なによあれ!?イノシシなんかじゃない!!」


 『ぐるるぅぁぁあああああっっっ!!!』


 「ひぃっ!!」


 委員長はバケモノの雄叫びを聞いて腰を抜かしてしまった。そりゃ普通そうなる。零羅いなかったらこれ・・・全員死んでるもんな。


 「来なさい」


 『ぐぅおおおおっ!!!』


 バケモノは煽った零羅に襲いかかった。


 「神破聖拳・・・衝勢 極」


 ーーーパァンッ!!!ーーー


 な、なんだ?スターターピストルみたいな音がしたと思ったらあのバケモノは、赤い霧になって消えた。


 「あれ?歯応えありませんね・・・ですが命が壊れる、死の瞬間というのはやはり心地良い」


 見た目からは想像出来ないやべーセリフが聞こえた。マジで零羅で良いよな?


 「さぁ、もっとこのわたしに死を感じさせてはくれませんか?せっかくわたくしがわたしの為に用意された舞台です。わたしの為に贄を捧げなさい」


 あのバケモノの後ろ・・・何匹いるんだ?他のクラスの連中は無事なのか?放送も途切れたし・・・


 「三日月さん。アレは統制の取れていない野生のバケモノだ。バケモノというのは自分の事しか考えられない。自身に降りかかる恐怖を取り除こうとする。この学校と呼ばれる場所において今、最も脅威なのはこのクラスです。故にアレらは、ここにしかやって来ない」


 零羅はニヤリと笑うと一歩前に歩き始めた。


 「みなさんはもう少し下がりなさい。そして動かないで下さい。下手に逃げたら間違って殺してしまうかもしれませんからね。分かりましたか?」


 「「「は、はい」」」


 零羅の脅しはクラスを一つにした。完璧に恐怖で支配されてる。だが、今はこれでいい。


 「さぁ、もっと血を・・・もっと死を・・・わたしに」


 零羅は部屋中血の煙を撒き散らしながらバケモノを倒していった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ