私の入部届け
休みが明けた。京都で色々あってまだ現実感が無い。ほんと何処までが夢だったんだ?あの時、桜蘭さんの言ってた事。永零の目的は三上君の子を孕むってなんだよ。私の妄想も大概にして欲しいよ全く。
てな訳でまーた億劫な日常の再開だ。まぁ、前ほど嫌な気分にはなってないから良いんだけどね。それでも授業は眠い。別に先生たちの教え方が下手とかじゃないんだ。どうしても眠くなってしまうんだよ、分かるか?この感覚?
昼休みになった。さて、私はこれからどうすべきか。念の為あの銃は持って来てる。完全に校則違反だけど、ある意味これはこれで一種の興奮があるもんだな。
とは言っても、あの後家でこれ使ってもうんともすんとも言わない。中に銃弾みたいのは入ってるんだけど、三上君に聞いてみるか・・・と思ったが、
「永零の女性化のメカニズムはなんだ?理論は確かに理解できるが、実際に出来るかどうかは別。肉体そのものの構造を変えてるのか?いや、そもそも男性として生まれた以上あんな風に簡単に切り替えるのはどう考えても無理だ・・・僕には絶対出来ない?この言葉の意味が関係あるのか?永零の能力は、結末を変える事。永零が女性として産まれた世界線になってる状態なのか?いや、だとしてもその世界線に行き着くのはどうやっても無理だ。存在しえない世界の結果には行き着けない筈・・・ぶつぶつぶつ」
なにやら独り言を述べながらノートに見たことない図形やら計算式を書いている。とても理解出来たものじゃない。ダメだな三上君も流石に手一杯か。まぁ、永零とあれだけの実力差見せられたらこうもなるか。あんまりぶつくさ言っても迷惑か。
誰かー、この銃の扱い方教えてくれよー。
「ねーねー、三上くーん。部活ってやらないのー?」
あ、東郷だ。三上君を部活に誘ってるのか?三上君は部活やらないって言ってたじゃん。つーか、空気読めねー奴だな。三上君今真剣に何かやってる感じだったじゃん。
てか、東郷は逆に部活やってたのかよ。そこに驚いたわ。
「ごめんね東郷さん、家の事とかがあって部活はやれないんだ」
「えー、三上君いてくれたら絶対盛り上がりそうなのになー」
なんで東郷は三上君に絡むんだ?あ、そう言えば金持ってたな三上君って。それか、くそ◯ッチめ。
「あはは、そう言えば東郷さんは部活なんでしたっけ?」
私も正直気になる。
「サバイバルゲーム部」
・・・・・そんな部活あったっけ?なんだ?その横文字の部活。
「へー、この学校そんな部活あるんだ。サバゲー好きなの?」
「あ、興味湧いた?沸いちゃった?この部活ねー、私が部長で私が始めたんだー、珍しいっしょ。意外とメンバー集めたら集まってさー、正式に部になったんだよねー。ただ、ただのミリオタみたいな遊び感覚の奴はお断り。おじいちゃん直伝の自衛隊式メニューをこなせない奴はうちの部にいらない。けど京也君が言ってたよ?三上君はとんでもない素質あるかもってさー。だから部長の私自らスカウトしてるって訳」
東郷の奴、金目当てじゃないんだ・・・聞き耳立てて見るのもありだな。
「東郷さん、そんな風に迫られたら断りづらいよ・・・それよりちょっと質問いい?」
「んー?これはいけるかー?」
「いや、僕の立場は変えるつまりは無いけど、ちょっと気になって。東郷さんのお爺さんってもしかして、東郷 慎平じゃない?第二次大戦中、陸軍大佐をやってたって言う」
「え!?三上君知ってんの!?物知り〜。そう!私のおじいちゃん凄いんだから!パパもね!!てか!なんで知ってんの!?」
本当だよ、三上君ってしばらく異世界にいたんでしょ?なんで東郷のやつにツテがあるんだよ。
「知り合いのお爺さんが君のお爺さんの知り合いだったんだ。世界って意外と思わぬところで繋がってるものだね。正直びっくりしたよ」
「私もだよー!でー?この運命的な状況でー?三上君の返事はー?」
「・・・残念!」
三上君はあざとく手を前に合わせて頭を下げた。
「くーっ!!ダメかー!」
東郷も手を頭に当てて悔しがってる。
「けど、もしかしたらいい人材がいるかも。身体能力はあまり高くは無いんだけどさ、今変わろうと必死な人がいるんだ。良かったらその子紹介するよ。そして鍛えてあげて欲しいんだ」
「へー、やる気ありそうな感じじゃん。三上君の見立てなら間違いなさそ。なら放課後その子連れて来てよ。テストしてあげるからさ」
「うん、僕から伝えておくよ」
・・・・・・・
おい、三上君?今なんで一瞬こっち見た?まさか、まさかまさか!?嘘だ、嘘だと言ってくれよ!なんで私があのクズ頼らなきゃいけないんだ!?
「あそーだ!今日のホームルームさぁ、林間学校の班決めやるじゃん、それでさー」
話題変わったし・・・てか、掃除の時間じゃん。
私は席を立ち、三上君とすれ違いざま。
「お節介かもしれいけど、手を出させて貰うよ。彼女はきっと君の役に立つ筈だと思うから」
「・・・はいはい。放課後行きますよ」
掃除が終わって、ホームルームの時間になった。さっき言ってたやつだ。例の班決め。
「今日は来月の林間学校の班決めするから。はいこれ」
グレイシア先生がおもむろに箱を2つ用意して来た。
「あの、なんですかそれ?説明ないと分かりません」
霧島が相変わらず眉間に皺寄せて質問してる。
「このクラスは男子十五人、女子十五人の合計三十人。そして班は六人で一グループ。ここには一〜六までのボールがある。あとはもう分かるね?」
まさかのランダムで班分けるのか。
「普通話し合いとかで決めないんですか?」
「それだと結局いつものメンバーが揃うだけ、このクラスのみんなは仲がいいって思ってるけど、それでもこんなに人数がいれば苦手な人は必ず一人はいる。避けたいと思ってしまう人は必ず現れる。だからこそこれが必要だと思った。例え苦手でも、この先の将来、いつかは苦手な人と行動を共にする機会は必ず来るから。
文句あるならいつでも受け入れる。けど、私を納得させないとダメだから」
い、いつになく言葉が重たい気がした。そして一瞬クラスの大半が私をチラ見した気がした。私はまだクラスで嫌われている・・・グレイシア先生はそれに勘付いている。そう言ってるようだった。
「それに、一方的に苦手だと思っていても、蓋を開けたら面白い子は沢山いるから・・・」
先生、良い事を言う。そう、私だって前までの私じゃない。今はまだ根暗野郎のレッテル貼られてるけど、脱却してやる。
「あ、後普通にくじ引きって面白そう。私も参加したくなったから最後に私にも引かせて」
ズコッ!!あなたは引率でしょうが!
「「・・・・・」」
そろそろクラスのみんなもこのノリに慣れて来た。三上君もやれやれと首を振ってる。
「じゃあ、出席番号順に取って行って。男子は右、女子は左の箱から。それで最後に一斉に中の紙を開く」
順番にボックスの紙を取っていく。私の番だ。班は6人、何となく三上君の能力的に三上君と私は被る気がするけど、ネーちゃんと被ると良いなぁ。後は霧島とか意外なら誰でもいいか。確率的にはかなり低い筈・・・
天正第二中学、林間学校合宿 第3班
霧島 京也
新庄 巧
三上 礼
輝夜 ミツキ
ネー チャン
東郷 らら
・・・・・
ど゛う゛し゛て゛だ゛よ゛ぉ゛ぉ゛!゛!゛
何が悪かった!?私の日頃の行いか!?いくらなんでもこの組み合わせは天文学的数値過ぎるだろ!!
「わーい!!ミッちゃんと同じネー!!ララちゃんもヨロシク!!」
「ネーチャンもよろしくねー。にしても、なーんであんたと一緒な訳?まぁいいわ、京也君一緒ならさ。ミツキあんた、せいぜい京也君の足引っ張るんじゃないよ?」
「わ、わかってるよ」
「そうだぜ、お前バカなんだからよぉ、ヘマして迷っても助けねーからな」
バカはお前だろ新庄、成績私とどっこいどっこいじゃろがい。
「あーんたが言えた義理ないでしょうが。あんたら仲良く迷子になってなー。その隙に私はー、京也君と2人きりでーぐっふっふ」
東郷が新庄にツッコミを入れる。そして彼女の妄想劇場が始まった。私と妄想力大差無いな。
「あのー、私と三上君もいるヨー?」
ネーちゃんの話をスルーされた。
「さぁて!!班決め終わったのでしたら!そのまま次に行きますわよ!!まずはレクリエーションについてですわ!!さぁお聞きなさい!!」
この先は、キャロライン主導で林間学校のスケジュールやら何やらの計画立てを行った。
さて、放課後・・・行くか。
「ミッちゃーん。今日一緒に帰ろーネ!」
「ごめんネーちゃん、今日ちょっと行かないといけないとこあって・・・ふぅ」
「なんか、凄い緊張してるアル?」
「うん・・・今までやった事も、やる気も無かった部活に手を出さなきゃいけないからさ・・・ネーちゃんは、バドミントン部だもんね」
「そうネ、弱小チームだけどもサ。基本部活あるのは火曜、木曜、土曜ネ。ミッちゃんどこの部入るネ?」
「サバイバルゲーム部・・・」
「え゛っ!ららちゃんの!?あ、そう言う事ネ。あの武器使いこなしたいってコト」
ほんと、ネーちゃんは察しが良くて嬉しいよ。
「そう言うこと。三上君のお節介に巻き込まれてね。とは言っても、私自身がなんとかしなきゃいけない。頑張るよ」
「ならサ!一緒について行くヨ!」
「ありがとー!」
「さてと、準備は出来たみたいだね」
三上君がやって来た。さぁ、行くぞ!!
・
・
・
校舎裏、ちゃんと東郷はそこで待ってた。
「あ、三上くーん!連れて来たー・・・?」
なんだ?この間は・・・
「あのー三上君?確か、ネーチャンってバド部だよね?って事はさ、まさかのまさかだけどその隣にいる変な奴がもしかして入部希望って言う・・・」
「そ、そうだよ。わ、私、輝夜 ミツキは・・・東郷さんの部活に入りたいと思ってます!!」
もうちょっとなんからしい事言えたんじゃないか?けど、今はこんな事しか言えなかった。
「・・・・・はぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
うっ、心底嫌な顔された。
「ミツキあんた!頭のネジぶっ飛んでんの!?それとも何!?あんた私のストーカー!?軽音ちゃんのお見舞いもほぼ毎日来てるしさぁ!!流石にキモいって!!」
キモいか、やっぱど直球で言われるとキツイ。
「それは、私も分かってる。自分のやってる事、すごく変だって・・・でも、例えどんな風に思われても、私はやるって決めた」
「・・・確かにさぁ、なんかちょっと雰囲気変わった感はあるけどさぁ。あ!もしかして私に近づいて京也君物にしようって魂胆じゃないでしょうね!?」
「いやそれはない」
そっちに関しては私は即答できた。一方的に嫌ってくるアイツに近づきたいなんて思いもしない。
「めっちゃ即答するじゃん。つーか、うちの部に入りたいなら何かある程度物がいるよ?服装だって、他の部みたいに1つのユニフォーム使う訳じゃないしさぁ。ま、学校内だとジャージでの練習だから良いけど、肝心なのは装備品よ。何か持ってんの?まずそっからなんだけど」
え、装備品って・・・エアガンなんて私持ってないけど。
「あー・・・」
「あ!ミッちゃんアレ持ってたじゃんネ!!肌身離さず持ってろって言われてたんデショ!?」
「は?なんか持ってんの?つか、持って来てんの?なら見せなさいよ」
東郷、すんごい睨んでくる。
「いや、けどアレは・・・」
どうする?あの銃はそもそも法律的にアウトだったりしない?
「・・・なんなの?どっちなの?嫌なら私部活行くけど」
「わ!わかった!!こ、これ!!」
やっちゃった・・・後先考えずに見せちゃった・・・
「ミツキあんたこれM500って、中々な趣味してんじゃん。って待って、何これ・・・これ、オーダーメイド?ちょっとよく見せて」
「あ、」
持っていかれた。
「ガス式みたいだけど、なんでガスの注入口がこんなグリップの側面にあんの?で、薬莢式・・・サバゲで使うにはかなり難しいけど」
東郷はなにやらカセットガスみたいなやつを取り出して銃の側面に注入しだした。なにあれ?
ーーーバスンッ!!
「0.13J・・・一応範囲内。で、命中精度は・・・すご、何この等速直線運動みたいな飛び方」
言ってる事ちんぷんかんぷんだけど、この銃ってエアガンの類で良いって事?なんかちゃんとBB弾出てたし。私用にカスタムってもしかしてそう言うこと?普段は玩具として使用出来るって意味?
「・・・はぁ、まあいいわ。こんなの実戦じゃ役に立たないだろうけどあんたにはお似合いね。それでせいぜい頑張んなさい。まぁその前に、あんたが本当に私の部に入りたいのなら、今日やるメニューについて来なよ?出来なかったら入部なんか認めて上げないからね。ほら、ついて来なさいよ!」
「は、はい!」
中学に入学してから1年ちょっと、私の部活が始まった。