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私の夢は叶うのか?

 燃えてるような赤い空、一目でここは異質なのだと実感する。私たちは町の方へとひた走る。


 「ここら辺には例の触手はいないみたいだね」


 「三上っ!!」


 あのドスを携えた厳つい人は、神崎 零だ。少し息を切らして三上君の所へやって来た。


 「ゼロ、敵は?」

 

 「あの触手共は天正第二中学に集中しだした。零羅も一兆たちもそこで応戦している。そっちへ・・・ん?」


 なんだ?変な音がする。地鳴りみたいな、不思議な音だ。


 「ひぇぇ〜っ!!気色悪いですぅ〜!!」

 「んだありゃ!あっ!三上丁度良い!アレなんとかしてくれ!俺の手に負えねぇっ!!」


 零羅さんと一兆さんが冷や汗かいて走ってきた。そのすぐ後ろ・・・


 「なんじゃごりゃぁっ!?」


 変な叫び声出た。


 まるで植物のツルが無数に巻き付いたような謎の触手が、道路を埋め尽くしながら迫ってきた。


 「斬鉄剣・三速!」


 三上君が抜刀をして振り抜くと、青白い閃光が飛び触手を真っ二つにした。


 しかし、その触手はすぐにくっついてより勢いを増して襲いかかって来た。


 「うわ、何これ気持ち悪・・・何本目なんだろこれ」


 いやこれ、そんな流暢に言ってる場合じゃないでしょ。


 「ぎえーっ!!コレ!!早く逃げた方がいいネ!!三上君もサ!!」


 ネーちゃんが三上君の裾を引っ張る。ここは確かに退散した方がいいのか?


 「八本目か・・・なら!!」


 へ?三上君が、増えた?


 私は瞬きした瞬間、三上君が分裂したように見えた。


 「斬絶剣・二刃!!」


 2人に分かれた三上君は、前に見せた斬絶剣って技をそれぞれ繰り出した。瞬きしなくても触手は粉々に砕け散る。けど、その砕けた触手だけでもうぞうぞと動き出す。


 「これだけバラけさせればまだやりやすいでしょ?ほら行くよ!」


 三上君は駆け出し、それに続いて零羅ちゃんと一兆君、そしてゼロさんが飛び出した。


 私と三日月も武器を構えてみんなに付いていく。


 「後ろはうちに任しぃゃ」

 「私もいるから」


 背後には玉藻さんとグレイシア先生がいる。


 「せいゃあっ!」

  

 三上君は相変わらず、見えないくらい素早い動きで縦横無尽に駆け回って触手を切り刻んでいく。


 「ほいよ」


 一兆君の戦い方、カード?投げたカードが爆発したり、放電したり凍り付いたり、そしてそれを抜けて飛んできた攻撃には突如として姿を消したと思ったら、別の場所に急に現れた。三日月の時止め?いや、瞬間移動か?


 「ふん!」


 その隣ではゼロさんが戦ってる。ドスを構えて突き刺した。と思ったら、触手の内側から溶岩が吹き出して触手は溶けてなくなった。


 「はぁぁっ!!」


 ーーードゴォォォォォッッッ!!!ーーー


 その前衛たちの中でも一際目立つのが零羅ちゃんだ。何あれ、殴る度に触手が粉々に砕けてる。そしてえっぐい音が殴る度に鳴ってる。


 「うわあぁっ!!助けてくれぇぇっ!!」


 叫び声!?あれは近所のおじさんだ!!これ、間に合わない!!


 「時よ止まれ!!」


 ーーーしーん・・・


 何これ、急に音が消えた。


 っ、これ、全部止まってる!!まさか!?


 「っ・・・バカ姉!早くしやがれ!!撃て!!俺じゃ届かない!!」


 三日月だ、私に触れてたから私も時止めの対象に出来たんだ。こいつ、咄嗟にそんな事を!!


 私は無心で銃口を触手に向けて一発お見舞いした。



 ーーーバガアアアアァァァァンッッ!!ーーー



 先端がスパークして光った玉が飛び出した。そして、触手に当たったタイミングで攻撃の時が止まった。


 「げほっ!!」


 三日月が咽せた瞬間、触手は丸焦げになって消えた。


 「はぁ・・・はぁ・・・しんど」


 「そんな事無いネ!今の、姉弟の連携技ってトコ?仲良しだネー」


 「「そんな事ない!」」


 ネーちゃんへの否定セリフ、ハモッた。ったく、こんな状況でもこれかよ。





 「せいやっ!!ふぅ、ここらはあらかた片付いた。後は学校・・・そろそろお出ましかな?」


 『ズゾゾゾゾゾ・・・・・・』


 なに、なんの音?気色悪い嫌な音だ。這ってるような、引き摺ってるような・・・


 「あ、あれをっ!!」


 零羅ちゃんが学校の空を指差した。真っ赤に染まった空。私は振り返る。


 「なに・・・」


 もうこれ以上の言葉は出なかった。恐怖のせいだ。唇が乾いて汗が吹き出す。真っ赤な空を覆い尽くす程の触手。


 どうしようもない・・・アレと戦うには私たちは小さすぎる。逃げられない・・・


 「っ!?」


 だが触手は、突然何かに吸い込まれ始めた。そして瞬く間に空を覆い尽くした触手は消えた。


 「十本目・・・成功、予測通り。町での死者ゼロ・・・これは、流石に予測通りとは行かない。だが、予測の範囲内だ」


 男の声・・・何処だ?何処から聞こえる?


 「あそこか」


 今度は一兆君が指さす。学校の屋上・・・いた。スーツ姿の似合う堀深めのショート金髪の男だ。


 「初めましてだな三上、俺はクラークだ。クラーク プファンクーヘン」


 なんだか美味しそうな名前だな。


 「初めまして、僕は三上 礼。それより、久しぶりの方がいいんじゃないですか?ね、お玉さん」


 「ほんまやわ、相変わらず無愛想な奴やなぁ。触手は順調なん?」


 「玉藻か。あぁ、ようやくクラーケン十本目の掌握に成功した。だが、お前たちはまだのようだな、予測通りだが」


 「あんだトー!?町をこんなにしたのはお前カ!?お前なんて!!三上君にけちょんけちょんにやられちゃうヨロシ!!」


 話についていけない所でネーちゃんが水を差した。正直ナイスだ。けど、こいつは刺激していいタイプなのか?


 「なんだ?この小娘」


 この感じ・・・ダメな奴だ!!


 「ネーちゃっ!!」

 「クラークさん。僕、怒るよ?」


 「っ・・・」


 今のは、ちょっと三上君が本気になったんだ。三上君は自分の足だけであの男の背後に回り込み、刀で心臓を突き刺した。


 「早いな・・・」


 「鍛えたからね、それより・・・もういいでしょ?このデモンストレーション。何から何まで、君の実演でしょ?永零」


 ーーーパチンッーーー


 クラークが消えた。そして、三上君は私たちの所まで戻って来てる。


 「ごめん、つまらなかった?でも、いい物は見れた」


 「指宿 永零!」


 私は校門の前に立った()()()に向かって叫んだ。彼女が今の指宿 永零。ふんわりとした白髪、そしてほんのり赤い目をした着物姿の女の子だ。


 そして、背後にフードを被ったローブ姿の人たちが突然現れた。


 「成る程・・・これが君の言うかつての僕のリーダー枠。七つの鍵、通称()()()()()だっけ?だっさ」


 三上君が珍しく毒を吐く。今日は普段見れない部分をよく見る。


 「ちょっと!?リーダー達なんてもっと酷いネーミングでしょ!?僕必死に考えたんだよ!?」


 一方、永零は前に見せたあの余裕を忘れたかのようにわなわなと手を震わせてる。


 「必死になるとこズレてるよ。さて、気になるのは二点。なんでみんなローブなの?てか、一人足りないよね?永零、君が七人目やるの?それともまだ集まってない?分かるよ、本当は集まってないんでしょ」


 「あ、えっとそれは」


 「良いよ、僕もそうだったもん。ゲームはルール作り大変だよねー。で、後ろは結局なに?一人一人紹介して驚かせようって?ダメダメ!演出わかってない!!」


 「その、それはなんと言うか・・・」


 何これ・・・満を辞して登場したと思ったら、すんごいタジタジになって顔を真っ赤にしてる。


 「なぁ、ミツキ・・・目撃者としてのあんたに言っておく」


 私の後ろからこっそりと一兆君が声をかけた。


 「三上は機嫌が悪いと、ニコニコ笑いながら精神を抉って来る」


 成る程、これが三上君の本気か。


 「戦う相手って言うのはね、ギリギリになって分かるからこそ意味があるんだ。しかも、何人かは目星付いてるんだよ?それでこの演出はノー。


 やるなら君一人で現れるべきだ。そしてこう言う。『流石だ礼、僕も計算外だったよ。だとしても、君は僕に勝てない』とかね」


 「はい・・・」


 敵に指導始めた。なんなんだ?

 

 「そうしたら僕はこう言う。なら、試してみる?ってね・・・」


 っ・・・読みが分かった!ここで決着付ける気だ!!全員いる今!この瞬間で!!


 「・・・ははは、ごめん。礼、僕礼を分かった気になってた。けど、まだまだじゃん・・・何やってんだよ、もっと礼の好きなゲームやれば良かった・・・認めるよ。ここは僕の負け・・・けど、一つだけ負けてないとこがある。だとしても君は、僕に勝てないってね」


 三上君は刀を携えゆっくりと歩き出した。


 「そう、なら・・・


 完全なる力、


 到達した力、


 全てを超えしその力、


 君のその力を・・・・・


 試させて貰おう・・・・・」


 ラスボスはどっちだ?三上君からこれまで感じた事の無い威厳さを感じる。


 「ははは・・・正直、このちょっと怖い礼、結構好きだ。みんな、手を出しちゃダメだよ・・・これは、僕たちの戦いだ!!」


 永零も刀を構えた、三上君と同じように真っ白な刀身の日本刀。それを顔の横に構える。


 一方三上君は再び抜刀術から入る。肌がビリビリする・・・




 そして互いに一気に駆け抜けた。


 


 「えっ・・・」


 結果は、私の想像を遥かに超えたものになってしまった。圧倒的な気迫を持っていた筈の三上君が・・・


 「ぐっ!!」


 全身切り刻まれて倒された。


 「ほら、勝てないでしょ?」


 永零は刀を納めた。


 「うん、予想以上だよ・・・」




 ーーーガギィィッ!!!!ーーー




 三上君は突然永零の背後に立ち、攻撃を放っていた。けど、それも防がれた。


 「これでも、君は僕に勝てない」


 永零は刀を軽く振ったようにしか見えなかった。けど、その一振りだけで三上君はあらゆる方向から攻撃を喰らったように切り刻まれた。


 「はぁ・・・はぁ・・・ふふ、ダメだ。今のままじゃ、勝てないね」


 それでも三上君はにっこりと笑う。不気味だ・・・


 「その口ぶり、まだ策があるって言いたそうだね。けど、今の僕に勝ちたいのなら、それは君には絶対に出来ない方法だよ」


 永零は三上君に手を差し伸べた。


 「絶対か・・・嫌いな言葉だな。可能性は一つだけじゃないよ永零、今はまだ勝てない。けど、僕は必ず君に勝つ」


 三上君は永零の手を掴んで立つ。


 今の三上君の言葉、どうやらこの言葉は永零に響いたみたいだ。明らかに嬉しそうに身体を震わせてる。その嬉しさあまりに永零は三上君に抱きついた。


 「ふふ、期待してるよ・・・礼」


 「待っててね、永零・・・」


 永零はその場で姿を消した。そして上にいたローブ姿の人たちも同様に姿を消す。


 空は青く澄み渡った。住民たちはまるで何事もなかったかのように外を歩いている。さっき襲われてた人も同じだ。


 ここからが本番だ。私はそう確信した。ここからが本当のゲーム開始になるのだ。


 第一局面 THE DREAMS COME TRUE 完

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