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私は見届ける

 ん・・・あ、やべ。洞窟風呂の中にちょうど良い寝転び湯的なとこがあったもんだからそこで2度寝してしまった。


 「風呂で二度寝すると風邪引くぞ?」


 隣?それにこの声・・・


 「ひ、ひゃぁぁっ!?桜蘭さぁん!?」


 なんで!?なんかふつーに私の隣にいた!!


 「すまない。お前と二人きりで少し話がしたくてな、こっそりと入らせて貰った。それに、お前と二人きりになれるのはこの空間でしかほぼ不可能だからな。こんな格好で悪い」


 え、二人きりになりたいって・・・それにこの空間ってもしかして、そう言う事ですか?


 「・・・いや、そっちは置いておけミツキ。手を出す為に来た訳じゃない。お前と話をしたいだけだ」


 ・・・もしかして、心読まれた?


 「命の王は、ありとあらゆる命の流れを見る。いつ何処で誰がどう考えてるのかが俺には分かる」


 ・・・ぼっ!!!


 私の中の羞恥心と言う名のコンビナートにガソリンと火のついたマッチが投入されて炎上した。今想像した事、完璧に読まれた・・・やばい、今相当変態な妄想したんだが・・・


 「だ、だだだだって!!ここここんな状況!!み、見られるか見られないかギリギリのそう言う系っぽいじゃないですかぁ!!」


 「それはあり得ないな。気が付かなかったか?ここの空間は玉藻前の能力で他の誰かとすれ違う事はない。実質完全貸切状態になるようになっている。本来この空間に誰かがいるのだとしても、向こう側からもこちらから側からも、それを認識出来る事は出来ない。俺でも、見る事は不可能なんだ」


 あ、だから誰とも出会わないんだ。凄いな・・・


 「ミツキ、永零の目的は一貫して人類を完全な不老不死に導く事だ。だが、奴はそれだけでは満足出来ない。理由が分かるか?」


 急に質問・・・また真面目な話。


 「三上君を、屈服させたい事?」


 多分、あの永零って人三上君にこだわってそうだった。三上君が永零に寝返らない限り、この戦いは終わらない。逆に三上君は永零の心を折りたいって思ってそうだった。


 「その通りだ。永零の目的は三上を完全に寝返らせる事。人類がどうとかは二の次だ」


 「なんでそんなに永零は三上君にこだわるの?」


 「単純だ。三上と永零は言わば一心同体だった存在。神の精神を二つに分けて持っている。その意志が一つになった時、永零の願いはようやく叶う」 


 「願い?」


 「三上と一つになる事だ・・・」


 ・・・


 もう一度・・・


 「はい?」


 なんかこう、私が好きなジャンルを聞いたような。私は2次元派だが、まぁルックス的にはありだと思う。けど、


 「永零はまだ誰にも告げていない目的がある。それは神々との決定的な決別だ。今この世界には力はかつて程ないが、神だった存在がまだあちこちに存在している。日本神話の八百万の神、ギリシャ神話・・・この世界には様々な神話が存在してる。その全ての神の根源は三上たちの神に通じる。永零はこの世界から神の遺恨を根絶やしにするつもりだ。全ての神だった存在を消す。全てが人間となり、そして進化した人間になる。それが永零の目的だ。


 この世界から神を完全に消すには、二つに分かれた力を一つに戻す必要がある。その方法が・・・」


 「永零が、三上君の子を産む・・・って事?」


 私は一瞬で察した。だからだ、女性になったのは能力の完全把握じゃない。それは建前で、本音はこっち・・・


 「鋭いな」


 「いや待ってよ!?だとしたら、その産まれてくる子は一体どうなるの!?」


 私はすぐさま嫌な予感が頭をよぎった。


 「安心しろ、人間として育てるつもりらしい。二人の間に産まれるのは確かに神の全てを持った存在になる。しかし、あくまでもこの世に人間として産まれる。それこそが永零の神の完全掌握へと繋がる」


 ほっとしたような、やきもきするような、不思議な感じだ。もし、本当にそれが叶ったとしても、勝手な都合で産まれてくる子は一体なんの為に産まれてくるんだろ。


 「私は、どうしたら良いんだろ・・・」


 その中で私が出来ることは何?私は目撃者、ただ成り行きを見ている事しか出来ないの?


 「お前は、お前のやりたいように生きたらいい」


 「そうだけど、そうしたいけどさ・・・桜蘭さん、なら一つ聞いて良い?なんで私にこんな事教えてくれたの?あなたは永零の味方なんでしょ?」


 「俺と永零はあくまで利害の一致で行動してる。奴の目指す平和は俺にとっても都合が良いんだ。俺の目的はただ一つ・・・」


 桜蘭さんは拳をぐっと握りしめた。凄い力の入り方してる。


 「そうだミツキ、お前にコレを渡しておく」


 私は桜蘭さんからある物を渡されて。ゴツくて大きい・・・


 「び、ビッグマグナム!!」


 隠語じゃないぞ。ガチでマグナム。ゾンビ的なゲームでよく攻撃力マックスな感じで出てくる拳銃。名前は詳しく知らない。


 「これは俺の大切だった筈の人から貰った物だ。ミツキ用にカスタムしておいた。これがあれば悪魔たちから身を守る程度の事は出来る筈だ。最初のうちは慣れるのに疲れるかもしれないけどな。少し長話になったな、そろそろ俺は行く」


 桜蘭さんは立ち上がった。


 「あ、ちょっ!!?」


 あれ?なんで服着て・・・いや、服は私も着てる。どうして、私は洞窟風呂にいた筈・・・ここは廊下だ。




 「・・・・・っちゃん、ミッちゃん!!」


 「こら、何ぼーっとしてんだバカ姉ぇっ!!」


 「はっ!?」


 手元には、ご飯茶碗・・・私は、朝ご飯食べてるの?


 「???これ美味しいよネー?って話ネ?」


 ネーちゃんが顔を覗き込んできた。


 「え、あれ?私いつのまにここに・・・待って、何処からが夢だ?」


 「何寝ぼけてんだバカ姉?そりゃ非日常の連続で分からなくもねーけどよ、流石に朝ご飯くらいシャキッとしやがれってんだ。牛乳頭からぶっかけんぞ?」


 相変わらずの三日月の暴言は放っておいて・・・手元にあのでっかい銃はない。あー、今思えば私があんな朝早起き出来る訳ないよな。ならあそこは既に夢かぁ。たまにあるんだよね。頭が寝てて起きた事忘れてるのって。


 ここまで区別付かなくなってるのは初めてだけど・・・


 「あ、美味しい」


 私は改めて玉藻さんの朝食に舌鼓。


 さて、今日は次なにしようか・・・そう思った瞬間だった。


 『三上さん!!聞こえますか!?』


 急に慌てた声、三上君の方からだ。聞こえたのはあの腕時計?そう言えば三上君はあの腕時計をいじって前、あの刀を出してたっけ。


 「零羅さん?何が・・・」


 零羅?確か三日月と同じクラスメイトの、神和住製薬の令嬢。


 『天正市が大変なんですぅ!!異世界間通信の出来るコレ以外の全部の電子機器が使えなくなって!その後空が真っ赤に!!そして・・・』


 ーーーバゴォォォォッ!!!ーーー


 通話越しにけたたましい音が鳴り響いた。


 『悪魔ともまた違う、地面からおびただしい触手が皆さんを襲おうとしてます。これは一体・・・ともかく!三上さんは至急こちらへきてくれますか!?皆応戦してるのですが、数が多すぎるのです!!座標を教えて下さい!!』


 私たちの町が襲われてる?このタイミングで、一体なんで?


 「やれやれ・・・永零の奴、僕が留守のタイミングで狙うかね普通、デザート食べ損ねたじゃないか。座標は?」


 「いや、そんな事する必要はあらへんよ」


 玉藻さんがいつのまにかあの、忍者の印を結ぶ的なポーズを取ってる。この人も忍者なのか?いや、今はそんな事考えてる場合じゃない。


 「玉藻さん、何を?」


 「言うたやろ?うちの幻術は空間歪曲や。それの応用で毎日あちこちから温泉をこっそり引いとるんや。誰にも言ったらあかへんでな?ま、そないな事より、うちは空間と空間を繋げる事も出来る。ここと、三上はんの家繋げるわ。これやるんは、ちと疲れるのが難点なんやけどな!!」


 玉藻さんの髪が突然煌めく銀髪に変わった。そして、飯綱と同じような大きなふわっとした耳と大きな尻尾。


 そうか、これが玉藻さんの本当の姿。妖怪、玉藻前としての姿なんだ。


 「はぁぁっ!!!」


 玉藻さんは一気に力を込め、印を素早く結ぶ。その直後、玉藻さんからかなりの汗が流れて膝をついた。


 「はぁ・・・フルマラソン走った気分や。せやけど、繋げたで?そこ開けてみぃや」


 三上君はふすまを開けた。そしたら私の見慣れた景色。あの幽霊屋敷の庭が見える。けど、やはり様子が変だ。空が真っ赤。悪魔が現れるあの現象だ。


 「流石ですね・・・一兆さんも大概な能力持ってますけど、アレは個人にしか使用できないし、一度行った場所じゃないとマーキングも出来ない」


 「セカンダビリティはあくまでも分散された能力やからな。その彼もやり方次第やったら行けるんとちゃう?それより、繋げたからにはここも安全や言えへん。準備はええか?って、聞くまでもないわな」


 私含め覚悟は出来てる。私は三上君についていく。私は立ち上がる。


 ーーーごとっ


 私の腰から何かが落ちた。あ!


 「び、ビッグマグナム!!」


 落ちたのは夢で渡されたあの銃。


 「それは!!ディエゴさんの!?」


 三上君ですら驚いた表情をした。


 「あれは、夢じゃなかったの!?」


 「・・・今はこのことを考えてる余裕は無いか。ミツキさん、三日月君も、覚悟は出来てる?」


 私は少し深呼吸をした。


 「出来てる」


 私にしてはかなり良い声が出たと思う。私は信じた。ただそれだけだ。それだけが今まで全然出来なかっただけの事。


 「さぁ、行くぞ!!」


 三上君は再び手元に刀を出現させた。グレイシア先生も左手の手袋を外す。


 私たちは外へと飛び出した。



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