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私が探す者

 「これの原因は君?」

  

 三上君はあの女の子・・・いや、メスガキに尋ねる。


 「それ以外なにがあるっての〜?悪魔どもはもうあたしたちの手の中っ訳。で?三上は京都に何の用があるっての?まさか、あの二人?今更あの化けギツネ共が何の役に立つっての〜」


 「何言ってるのかな?ゴールデンウィークなんだから友達と旅行したいに決まってるでしょ。だからさぁ、さっさとこの状況終わらせてくれない?」


 「ちっ、よわよわなくせに腹立つっての・・・あたしの役目はあんたの邪魔する。そんな事わかってんだろ!!」


 あいつが来る!!三上君もそれに合わせて刀を構えた。けど、


 「メガリスちゃん、そこまで」


 急に現れたふわっとした白髪の男。私はこの男を見た事がある気がする・・・覚えてる。夢の中で・・・こいつは指宿 永零。けど、三日月が言ってたように女じゃないぞ。


 「永零様・・・!」

  

 あのメスガキは永零が現れた途端、表情が固くなった。


 「ごめんね礼、僕の部下がちょっと失礼しちゃった」


 永零は三上君とはまた違う穏やかな絵顔を見せた。


 「全くだよ永零、そもそも初対面で人を呼び捨てにするし、自己紹介はしないしさ。失礼にも程があるよ」


 「手の焼ける子だからね、ちょっと大目に見てあげてよ。彼女はメガリス アラガキ。僕の仲間だ」


 あ、本当にメスガキだった・・・


 「それより、順調そうでなによりだ。この状況でもみんなを守った・・・流石だよ礼。僕は君が京都で何をしようとしてるのか詮索するつもりは無い。僕を出し抜く術を探してるんでしょ?だったら僕はそれを待つよ。真っ向勝負だからね。立ちはだかる事はあっても邪魔はしないよ」


 「ならありがたいや。で、時間的にそろそろ山科あたり通過だよね。僕たちは出来ることなら何の滞りもなく旅行したいんだ。何とかしてくれない?」


 「・・・あぁ、もう僕の真の能力についても予想付いてるんだ。ほんと流石だよ・・・僕は君のそういうところ好きだ。なら、見せてあげるよ。一瞬だから見落とさないでね」



 ーーーパチンッーーー



 永零が指を鳴らした。その瞬間に何もかもが変わった。永零とあのメスガキは姿を消して、客室も何事も無かったように元に戻ってる。三上君の刀も消えてる。だけど私は確かに見た。指を鳴らす瞬間、永零の顔つきが変わった。あれは、完全に女の子の顔つきだ。


 『♩♫♬・・・まもなく、京都、京都です・・・』

 

 チャイムが鳴って、新幹線はスピードを緩めている。トンネルを抜けたら変な蝋燭みたいなタワーが見えてきた。京都タワーってやつだな。にしても京都って、古都って聞く割には・・・


 「めっちゃ都会やん」


 「ミッちゃん?なんで関西弁になってんねん?」


 ネーチャンもな。


 私たちは新幹線を降りて改札を出た。そう言えば伏見ってとこに行くんだよな。てか、伏見って何だ?何処にあるんだ?京都にあるなら近くだよな・・・


 「みんなはぐれないで付いて来てよ〜。ここから乗り換えて奈良線で稲荷って駅まで行くから」


 まさかの乗り換え。清水寺とかも京都駅にあるんじゃないのか。


 「バカ姉、今、京都駅に全部の観光地が集約してるんじゃねーの的な馬鹿な事思ったろ?」


 三日月エスパー?


 「んおー!景色は変わったけど線路はあんま変わってないね〜!懐かしいや〜」


 そう言えば飯綱は京都が故郷って言ってたっけ。しかもなんか神様的な凄い感じな事言ってた。そんな風には見えないけどな・・・


 で、京都駅10番線・・・


 「んぎゃぁぁぁっ!!!」

 「せまぁぁぁい!!!」

 

 さっすがゴールデンウィーク!!観光客で電車がパンパンッ!!


 「むかしこんなに人いなかったよぉ!?」


 「僕の記憶でも!!ここ最近になってまた増えた!?」


 三上君昔来た事あるのね。てか、何年前の話だ?


 「あ、ごめん・・・ぶつかったから」

 「お!お構いなくぅっ!!俺は次ので乗りますんでぇっ!!」

 「???ありがと」


 グレイシア先生のラッキースケベくらった一般人が降りてくれてなんとか全員乗り込めた。ぎっちぎちの電車で2駅程揺られて目的地に到着した。


 「んおーっ!!懐かしの我が家ー!!!」


 我が家って・・・ここ、神社じゃん!!しかもここって、あの鳥居がめちゃ並んでるとこ!!伏見稲荷大社!!流石に私でも知ってる!!


 「飯綱おま、本当にここ我が家なのかよ?」


 三日月でも疑ってる。


 「何年経ってもここはおいらの家さね。さ、こっからはおいらが案内するよ!」


 飯綱はテテテーって、進んで行く。途中気になる店あったけど・・・メインは観光じゃないから仕方ない。


 「あっちの屋台にお団子売ってたネ。後で食べヨ?」


 ネーチャンも屋台とかに気を取られてたみたい。


 「にしても、今日正月じゃないでしょーよ。なんでこんなに人多いのぉ?さ、こっちこっち〜」


 わーお、ほんとにぎっしりと鳥居が並んでる。何処まで続いてるんだろ・・・


 ・


 ・


 ・


 「ぜぇ、あのさ・・・はぁ、何処まで・・・続くの?」


 登れども登れども、永遠に鳥居が続く・・・無限ループって怖くね?ってやつになってきた。


 「んー、よつつじまで来たから後は、ほいっとやってほっと振り返って、てーんってやってぐるーんとすれば!」


 あれ?なんか人の気配が急に消えた。さっきまでの観光客まみれの山から、木が揺れる音だけが聞こえる静寂な森へとここは姿を変えた。

 

 「昔調べて分かったんだけど、飯綱のお母さんは幻術の扱いに長けてたらしいんだ。なんでも飯綱曰く、ここは特殊なルートを通ると新たな道が開かれるんだって。それは飯綱しか知らないんだ。もし、下手にそれをやろうとしたら、永遠に山に閉じ込められるらしいよ」


 三上君・・・脅さないでください。雰囲気だけみたらなんか、不気味なんだから・・・そして鳥居の先、急に景色が開けた。ここって・・・旅館?少し趣のある旅館。なんでこんなとこに?さっきこの先にトイレありません的な事書いてあったのに。


 「えーっと、『旅館マヨヒガ』?あれ?三上君予約してた旅館の名前って・・・」


 ネーチャンが旅館の名前を読んで気がついた。三上君から聞いた今日泊まる所の名前。旅館マヨヒガ・・・ここ泊まるの?

 

 「そう、飯綱のお母さんは伏見で旅館経営してたらしいんだ。ここへはかなりの強運と資質が無いと辿り着けない旅館なんだって。ただ今回は裏口から入る必要があったからここまで来たんだけど」


 「おうともさ。ほんとなら駅に近いとこに入り口あるんだけどさ、そこから入るとお母ちゃんに怒られちゃうのさね」


 へー・・・なるほどついていけない。


 私たちは一歩踏み出した。その時だった。


 「えっ?」


 建物の目の前に誰かが降り立った。黒装束で顔は見えない。そして手には短い刃物・・・


 ーーーガキィッ!!!ーーー


 その黒装束の男は真っ先に三上君へ切り掛かった。が、三上君はあの刀をいつのまにか取り出し、攻撃を受け止めた。


 「貴様!何奴!!」


 何奴って・・・時代劇か?


 「ちょっと、自己紹介する前にいきなり切り掛かるは失礼でしょ?」


 「こちら側から来る者!碌な者無し!!」


 「まぁこのご時世、神様として用事がある奴なんていないもんね。けど、今日はその神様に用事があって来たんだけど・・・どうやらまずは君を倒さないとダメっぽいね」


 「いかにも!!良く心得ておられるようだ!拙者!相手いたす!!」


 男は黒装束の覆面を脱ぎ捨てた。うーん、なんと言うか一言で言うなら・・・めっちゃ忍者だ。


 「殺気は本物。と言うより、本当に忍者の家系か何かかな?エセ侍の彼とは違うみたいだ・・・」


 はっくしょーいでござる〜・・・


 何処かで麗沢のくしゃみする声が聞こえた気がした。


 「拙者!志村(しむら) 赤影(あかかげ)と申す!!侵入者よ!名を名乗れ!!」


 「三上 礼・・・行くよ志村さん。とは言っても、僕は君を倒しに来たわけじゃ無い。だからこれで行く・・・」


 ーーーボッキーン・・・ーーー


 「なっ・・・」


 「斬鉄剣(ザンテツケン)一速(いっそく)


 三上君の目で追えたもんじゃない抜刀術、それであの志村って奴の剣を切断して吹っ飛ばした。

  

 またかっこいい技を・・・にしても今度は斬鉄剣なんだ。絶じゃないのね。あれって奥義的な技だったのかな・・・


 「ふっ、中々やるな・・・ならコレはどうだ!!」


 「っ!!」


 熱っ!!!何だ急に!!志村の周囲になんか青い炎を纏い始めた。


 「神の炎に焼かれるがいい!!奥義狐火!!」


 「ほりゃーっ!!!」


 あの青い炎を志村が撃とうとした瞬間。飯綱が前に飛び出し、同じ青い炎で相殺した。


 「なにっ!?同じ狐火!!まさかあなたはっ!!」


 「やほーっ!!あんちゃんもしかして(あか)兄ちゃんでしょ!?久しぶり〜!!」


 「え、まさか・・・飯綱様かっ!?」


 急に志村は攻撃体勢を止め、さっきまでの殺気がどっかいった。


 「こ、これは飛んだご無礼をした!!昨日別の侵入者があった故!!ついっ!!」


 そして綺麗に90度腰を曲げて志村は謝罪した。


 「侵入者?誰か来たのー?」


 「稲荷がひっさしぶりに帰って来よったんや」


 建物の奥から女の人の声、はんなりとした関西弁でなんだかおっとりする雰囲気だ。割烹着姿で綺麗な艶のある髪を纏めている。グレイシア先生とはまた違う気品ある美人だ。


 「あ!お母ちゃん!!」


 「こっちは、ひっさしぶりなんてレベルやあらへんな。見ない間に、えらい大きくなってもうたわ・・・ほんとに」


 割烹着姿の女の人は突然裸足のまま飯綱の方へ走り出した。そして、思いっきり抱きしめた。


 「お、おう?」


 「堪忍や・・・飯綱、ほんとうちは親失格や・・・ずっと忘れてしもうてた、うちに娘がいた事も、ニヒルはんの事も、何もかも・・・ずっと何か忘れてる気がしてただけで、何にも出来へんかった。まだあの戦いは続いてたや言うのに、稲荷が昨日ここに来るまで、なんにも思い出せへんかったんや・・・ほんま、御免な!」


 女の人は飯綱にしがみつくように泣きついた。にしても忘れてたって・・・どう言う事?


 「仕方ないさね。おいらだって本当の名前を500年以上忘れてたんだよ?お母ちゃんから貰った大事な名前の筈なのにさ。おあいこってやつさ」


 「ほんま、えらい成長したな。身長も内面も・・・あと、横もやね」


 「ふぐわっ!!」


 飯綱はお腹をぷにぷにされてダメージ喰らってる。


 「食べ盛り言う事や。ほんで、あんさんがずっと飯綱の面倒を見てくれてたんやな。三上 礼・・・やっぱ何処かニヒルはんと似とるわ。けど」


 「永零にも似てる・・・ですか?」


 三上君が続けた。確かに、少し似ているって私もさっき思ったからな。


 「せや。けどな、何か根本的に違う感じもするんや。何が違うのかは分からへんのやけど・・・それより、永零はんと戦うんにうちも旦那も協力は惜しまへん。あん時の戦いはまだ終わってへんのやからな。せやけど、あん人出し抜くんにはうちと旦那だけじゃ心元あらへん。どないするつもりなん?」


 確かに、なんか元々ここには来る予定みたいな感じだったけど、何かあって急遽予定を早めた感じだった。結局三上君の目的が分からないんだよね。


 「あぁ、その為に僕はここに来た。ある人物を探してるんだよ。名は、天照大神(アマテラスオオミカミ)


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