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私の旅行

 東京駅、八重洲口、新幹線改札前、私はここにいる。ここが集合場所だからだ。


 1泊2日、京都旅行が今始まろうとしていた。


 「三日月、京都って何時間くらいかかるっけ?」


 私は弟に聞いてみた。


 「あ?んーと、確か2時間ちょっとじゃねーの?」


 「へー、詳しいね。あれ?京都って北のほうだったよね?」


 「何言ってんだ?バカ姉・・・」


 「あ!南か。ジンギスカンが有名だっけ?」


 「はぁ、だめだこりゃ・・・」


 そんなゴミを見る目で見なくても良いじゃん・・・そもそも私は社会全般苦手なんだ。特に地理はちんぷんかんぷんなんだよ、分かってんなら教えてくれてもいいじゃんか。


 「京都はこの東京から言うと左に行くとアルネ。有名なのと言ったら宇治の抹茶とかかネー。アイヤ!このわらび餅美味しそうネ!!ミッちゃんここ行こネ!?」

 

 ネーチャンが旅行雑誌片手にやって来た。


 「へー、美味しそう・・・」


 「あのさ、俺たち遊びに行くんじゃねーんだぜ?」

 

 なんかこの2人浮ついてんな、ここは言っておかねーと。


 「エー、せっかく友達と旅行行くんだから楽しみ無いとつまらないヨ。弟君は真面目だネー。良い心がけだけどサ、そんなんじゃ彼女出来ないゾー」


 「あ?知るかよんなもん!」


 ふむ・・・この2人のカップリングは有りか?弟のやつ変に真面目だからな。ネーチャンのこの性格、結構有りに見える。


 「つか、何見てんだよバカ姉」


 「別にー」


 「それより三上は?」


 「多分もう来ると思う・・・って、噂をすればなんとやら」


 三上君と妹の飯綱、そして普段見ない髪の毛がボサボサして眠そうにしてるグレイシア先生を三上君が腕を引っ張って現れた。


 「ごめん、ちょっと遅れちゃった。グレイシアが寝坊しちゃって・・・」


 「先生学校じゃびしっとしてるけど、家じゃズボラネ?」


 ネーチャンが苦笑いして聞いてる。


 「まぁね、最近またぐーたらで毎回僕が起こしてって・・・その話はどうでも良いか、はいこれ切符」


 私は個人的にぐーたらな先生ってのが凄い気になった。三上はお母さんか?家庭科の授業の時、めちゃくちゃ料理上手かったし。なんならアレンジ加えて先生驚かせてた。


 私は切符を受け取り、改札を抜けてホームへと上がった。


 京都へは私、弟、ネーチャン、三上君、飯綱、そしてグレイシア先生の6人で向かう。


 『まもなく、18番線に07時39分発・・・』


 接近放送が鳴って新幹線がやって来た。座席は指定席を三上君が押さえてくれたらしい。


 「おーっ!!おいらこれ初めて乗る〜!!カッコいいー!!」


 「私もネ!!来年の修学旅行の前に、人生初新幹線!!一足先ヨー!!」


 飯綱とネーチャンはすごいテンション上がってる。そんなに興奮するものか?そう言えば私も新幹線は初めてか、適当に三上君について来たらいつのまにかホームにあるけど・・・私ここはどうやって来た?


 私が立っているのは11号車付近。ドアがそこにピタっと止まった。にしても電車って毎回同じとこに止まるけど、どうやってんだろ?まぁどうでもいいか。


 座席は3人掛けの席を前後に取ってあって、三上君は手慣れた手つきで座席をくるんと回して向かい合わせにした。


 「へー、椅子って回るんだ」


 「回らなきゃどうすんだ?バカ姉・・・」


 またバカにした目で弟に見られた。


 「けど、最初の頃の新幹線って座席が反転出来なかった座席もあったらしいよ。よっこいしょ」


 三上君が椅子に座った、私も座ろう。


 さて、新幹線は東京を出発、あれ?意外と遅いもんだな・・・


 「にしても、少し見ないうちに新幹線も様変わりしたね。車内販売無くなっちゃったんだ。コーヒーとあの硬いアイス買ってアフォガード風にして食べるの好きだったんだけどなぁ」


 「おいらの記憶なんてこんなカモノハシ見たことも無いよぉ?シュポシュポ煙出しながらよく走ってるの眺めたなぁ〜」


 「・・・レイ、お腹すいたから・・・」


 そんな話をしてたらグレイシア先生が三上君の袖引っ張った。子供か?


 「ん、はいこれね。みんなも駅弁買って来たんだけど、いる?」


 なんだろこの3人のホームドラマ感・・・私は三上君から駅弁を貰った。炭火焼き風牛タン弁当。なになに?紐引っ張れ?


 ーーーぐつぐつぐつ!!!ーーー


 「あっつ!!何これ!?」


 引っ張ったらめっちゃ容器が熱くなった、なんじゃこりゃ。


 「何これって、それ引っ張ったら温まるやつじゃん。酸化カルシウムに水入れたら熱くなるって現象の応用だよ、確かに珍しいけどそんな驚くか?」


 「へー、かがくのちからってすげー・・・」


 なんでこの弟は変に博識なんだよ。


 「そんな匂いも気にならないネー」


 ネーチャンは隣でグツグツしてる容器を眺めてる。あ、これちょっと待つのね・・・他のみんなはそれぞれ食べ始めた。飯綱のあれ、新幹線の形のお弁当箱・・・可愛い。


 って、熱!!


 『ままなく、新横浜に到着いたします・・・』


 新横浜に着く時くらいにはみんな丁度食べ終わった。結構乗って来るなぁ・・・満席近くなった。


 そして新横浜出発、新幹線は加速して・・・って、なんか早くない?ちょっと?早すぎない?


 「ちょっとちょっと、三日月?新幹線って時速何キロで走ってんの?」


 「ん?東海道は285キロだけど・・・あのさ、バカ姉が引きこもりがちなオタクなのは知ってるけど、なに?もしかして・・・ビビってる?」


 こくこくこくこく!!!!


 私は全力で肯定した。何をどうしたらこんなスピードで走れるんだ?よく冷静にいられるな・・・


 「ミッちゃん可愛いとこアルネー・・・にしても、電車ってこんな音する?キーって飛行機みたいな音してるアルヨ?これ空飛んで行っちゃわない?大丈夫?なんか昔、300キロくらいを超えると車体は宙に浮くとか聞いた気がするネ」


 ネーチャンも同じだ!仲間!!と言うかそんな話あるのか!!


 「新幹線でビビり散らかす奴なんて初めて見たわ・・・安全に決まってんだろ。飯綱見てみろよ、窓に張り付いてるぜ?」


 「おーっ!はやーっ!!んお?あれ!!富士山見えた!!」


 飯綱、めっちゃはしゃいでる。


 「フォックス、もうちょっとトーン落として。周りの迷惑になるから」


 「はーい」


 そしてそれを三上君が落ち着かせてる。私は外は見ないでおこう。平常心・・・で、そんなふうにしてたら、気がつけばあっという間に名古屋、次はもう目的地の京都だ。新幹線すげーな。





 「ちょっとトイレ行って来る・・・」

 「ワタシもネー」


 私とネーチャンは落ち着かせる為ともうすぐ到着だからという理由で、トイレに向かった。にしても電車のトイレって流したやつ何処に行くんだろ・・・


 その時、異変が起きた。私が用を済ませて客室へと向かおうとした。


 「え・・・なんで」


 デッキにあり得ない人物がいたんだ。坂上 桜蘭・・・桜蘭は私の事をじっと見ていた。


 「どしたネミッちゃん?あの人・・・知り合い?」


 「あの人が・・・桜蘭さん」


 「え?」


 ネーチャンは身構えた。


 「ミツキ、それで良い。お前は進み続けろ・・・そしてその目に焼き付けておけ。この世界の全てを・・・」


 「桜蘭さん・・・聞かせて、なんで私を目撃者にしたの?目撃者ってなんなの?」


 「簡単に言えば戦いの総てを見て来た者だ。俺が命の王という役目が与えられた存在なのだとしたら、お前に課せられた役目は戦いの総てを見届ける事。そしてお前を選んだ理由はそうだな・・・言うなら偶然、だが必然でもある。俺が命の王になってしまったように、お前は目撃者になる運命を持って産まれた」


 「意味が分からないけど・・・」


 「意味ならいずれわかるようになるさ。俺もかつてそうだったからな・・・れ


 桜蘭は私に背を向けて客室へと消えた。私はすぐに後を追う。だが、客室に桜蘭は何処にもいなかった。


 けど、客室の雰囲気はさっきまでの平和とはかけ離れていた。照明は消え窓の外から差し込む赤い光。動揺を隠せない乗客たち。明らかに異常だ。なのに、この新幹線は止まる気配が無い。


 この雰囲気・・・何が起きるのか分かる。これはあの時と同じ・・・悪魔が来る!!


 「おい!!何が起きてる!?くそ!ドアが開かない!!」

 「非常停止押しても何も起きないよ!?」


 乗客たちはほぼパニック状態だ。これ、私の後ろのドアも開く事は無さそうだ。ネーちゃんがすぐに開けようとしたけどダメみたい。


 「ミツキさん」


 そんな中、やはり冷静なのは三上君だ。


 「その感じ、今誰かに会ったね」


 「桜蘭さんがいた・・・」

  

 「やっぱりか・・・何かしら行動はして来ると思ってたけどね。さて、そろそろお出ましかな」


 

 『ゔら゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっっっ!!!!!!』



 めちゃくちゃ怒ってるような叫び声、前の異様な笑い声とは違う。般若みたいなお面を被った気色の悪い二足歩行生物が地面からぬるんと現れた。前と違う・・・けど分かる。これは前見た時と同じ。こいつは悪魔だ。


 「な、なんだコイツら!!」

 「ひ、ひぃっ!!?」


 「今度は堂々と来たか」


 三上君は、懐にしまってあったあのトリガーが2つ付いた鞘の先端みたいなのを取り出した。


 『オマエノ罪ハナンダァァッッッ!!!!?」


 同じセリフ・・・悪魔は襲う前にこの言葉を言う。理由は何だ?


 「この人たちに罪はまだ無いでしょ」


 ーーーズバババッッッ!!!ーーー


 悪魔たちが乗客たちに襲いかかる直前。三上君はトリガーを引いて鞘の先端からあの、某SF映画に出てくるビームソード的なのが飛び出て一気に悪魔どもを切り刻んだ。


 「う、うわあああっっ!!」


 案の定、突然のこのスプラッタな惨状に周りのパニックは更に悪化する。そして更に悪魔どもは数を増してきた。


 「うーん、流石にこれだけパニックなると僕もやりずらいな・・・なら仕方ない。グレイシア!!みんなを後ろに誘導して!!飯綱も!!そして三日月君!!まだ君は戦わなくていい・・・」


 チラッと見たら三日月が懐中時計を取り出して構えていた。


 「っ・・・」


 「焦らなくてもいいよ。奴らは僕が倒すからさ。けど、頼む時は頼むよ」


 「っ!?あ、ぁあっ!!」


 三日月は何かを察したのか三上君の後ろへと避難した。


 『うぅおお゛お゛お゛らぁぁぁっ!!!!!』


 「うるさ、車内では静かにしてよね。ほら!みんな早く僕の後ろに!!」


 三上君は余裕で倒していってるけど、この狭い通路。そして多くの客。正直かなりギリギリでみんなを守ってる感じだ。


 「ほら、手掴んで」

 「みんな早く〜!!こっちだよぅ!!」


 グレイシア先生も飯綱も頑張って乗客を三上君の後ろへと誘導する。だが、


 「うわっ!?」


 1人の乗客がつまづいて転倒した。


 『ら゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛っっ!!!!!』


 「っ・・・!」

 「時よ止まれっ!!!」


 完全に三上君でも間に合わないと思った。けど、倒れた乗客は襲われる瞬間突然姿を消して、気がついたら三日月が後ろへと引っ張っていた。


 「ぜぇ・・・ぜぇ・・・マジか、時間停止・・・めっちゃ疲れる。しかも、5秒くらいしか出来なかった・・・集中切らしたダメなのかよ」


 これが話に聞いてた三日月の時間停止か・・・本当に漫画で見るみたいに、気がつけばいなくなる感じになるんだな・・・正直、羨ましい。


 それよりも、これで避難完了した。三上君は何をする気なんだ?しかも、あの悪魔ども更に増えてる。こんな数どうするんだ?


 「さ、反撃開始」


 ーーーガガァァァンッ!!ーーー


 「うおっ!?」


 三上君が手を前にかざすと突然爆発音が鳴り響いた。そして三上君の手には真っ白な刀身の日本刀が握られていた。やべ、こう言うの正直かっこいい。


 「うん、上手くいった。超小規模空間転移。やっぱ先に異世界間転移装置を作っておいて正解だった。これなら、僕のコレ(異世輝國)もあちこちで運用出来る」


 三上君はあのトリガーが2つ付いてる鞘の先端みたいなやつにあの日本刀を納刀した。やっぱり、アレ鞘なんだ。


 「なぁ三上・・・流石に数が多すぎるぜ?こんな数・・・」


 三日月が心配そうに三上君に尋ねる。


 「いや、この程度どうって事ない。一瞬で終わらせるから。さっさとこの異空間から出よう」


 三上君は一瞬のうちに抜刀術の構えに入った。そして鞘の下の先から出てる刀身がどんどん淡く輝き始めた。


 


 「斬絶剣(ザンゼツケン)



 

 今のが・・・三上君の技、なの?瞬きすらする余裕は無かったのに、気がつけば閃光があちこちに走って、あの悪魔たちに焦げた線が入った瞬間に消し飛んだ。こんな、こんなのって・・・


 「「か、かっけぇぇっ!!」」


 私と三日月は同時に声を揃えた。流石にこれは刺さるものがある。こんな事出来る人なんかいたんだ。気がついたら刀を収めてる的な技。


 「今の何!?どうやったの!?」

 「今度俺にも教えてくれよ!!」


 「にゃふふ、仲良し姉弟ネ。それより三上君?これで元に戻ったって事でヨロシ?」


 ネーチャンが三上君に尋ねる。


 「いや、どうやら敵さんはこの異空間を完全掌握出来たらしいね。原因は、彼女だ」


 彼女?え?あんな子さっきいた?三上君の前、そこにはニタニタと笑う下手すりゃ三日月よりも年下に見える女の子が立っていた。


 「きゃっははは!!!さっすがじゃ〜ん三上ぃ〜。あの方の足元にも及ばないめっちゃよわよわなくせして頑張ったね〜。このあたしが褒めてやるっての〜」


 ・・・うん。急に現れた人に対して失礼だけども、一言言っていいかな?このメスガキ腹立つ奴だ。

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