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俺の行く先

 「リリア殿・・・だと?」 


 麗沢が汗をダラダラ流した。


 「そう、永零が変えたのはあの時死んだ全てを死ななかった世界へと変えた。その結果、リリアさんの死した魂が元に戻ると言う事態になったんだ」


 三上がリリアって子の肩を叩くと一兆が顎に手を当てて考え出した。


 「成る程な・・・あん時、トクの野郎も急に生き返った。確認したにも関わらずな。だとしたらリリアは、あのタイミングでようやく死ぬ事が出来たって事になる・・・三上、ならディエゴの野郎はどうなった?」


 一兆からまた何か疑問が出たらしい。

 

 「ディエゴさんは復活していない。ただ、一つ可能性があるとしたら桜蘭君だ。今の彼の雰囲気は少しディエゴさんに似てる。特に、あの最後の戦いの後、彼の持つ雰囲気は変わった。


 僕が考えるにはリリアさんと同じ事が起きている。桜蘭君は幼い頃長らくディエゴさんと過ごした経緯があった。そしてかなり長い間、ここと異世界の狭間にいたとされている。その間、桜蘭君の面倒を見ていたのがディエゴさんなんだ。桜蘭君にとってディエゴさんは、実の親以上に関係の深い物になっていたに違いない」


 「先輩にそんな秘密があったとは・・・」


 「そしてあの戦いでディエゴは桜蘭君に敗れた。けど、桜蘭君は同時に全てを見た筈だ。この世に存在する全ての記憶、彼の能力の記憶支配と命の王が合わさり・・・そして変わった。桜蘭君に生まれた強すぎる何かの意志が、桜蘭君の中でディエゴさんを今も生かし続けていると、僕は考えてる」


 「えぇ、わたくしも感じます。この世界の何処かにお兄様を感じます。あの人の怒りが・・・永零さんと桜蘭さん、そしてその中に眠るお兄様・・・それ以外にもわたくしたちが相手にしなければならない敵は数多くいます。止めるにはまず勝たなければいけません。しかし、勝つにはわたくしたちの戦力は低すぎます。そこで、わたくしは三上さんの依頼で秘密裏に行動していたのです。彼らにこの世界でも対抗できる武器を手に入れる為に」


 「武器・・・ですか?」


 零羅はそれが一体何なのか分からないらしい。


 「そう、武器ですよ。みなさま先遣隊覚醒者一人一人に用意しました。こちらです」


 リリアは手に持っていた鞄を広げた。中から出て来たのは・・・これは、アクセサリー?なんでこんなもんが武器に・・・


 「おいこりゃ、アダムスブランドのロゴじゃねぇか、なんでそんなもんが、こいつはセレブ御用達の超高級ブランドだろ・・・って、待て、アダムスブランドの創業者の名前、確かウーネア アダムスだったよな」


 一兆、なんかめちゃくちゃブランドに詳しいな。


 「そう、桜蘭君の母ニヒル アダムスの妹・・・彼女が創業者のブランドがそれだ。そして、その中でも最高級品は、白く輝くアダムスブランドしか取り扱いが許されない特殊な鉱石で作られている。その鉱石の正体は・・・」


 「天石って訳か・・・」


 天石?


 「そう、この石があれば完全覚醒者じゃなくてもこの世界で魔法がほぼ普段通りに使えるようになる筈だよ。リリアさんお願い」


 「はい、では神崎さんにはこちらを、天石のイヤリングです」


 神崎が耳に白い石があしらわれたイヤリングを付けた。その直後神崎の手元に炎が灯された。


 「天石か、昔こいつには世話になったな・・・」


 「そうらしいねゼロ。僕も、君が輝國をあの時たまたま見つけていなかったら僕のこの武器は完成しなかった」


 この2人、昔なんかあったみたいだな。


 「さて、零羅さんと一兆さんにはこちらを、天石の指輪です」


 零羅と一兆の手元にはそれぞれそっくりなデザインの指輪が渡された。


 「綺麗な指輪ですね、サイズもピッタリです」


 「あぁ、流石はアダムスブランドのデザインだな・・・って、零羅?どこに付けてやがる」


 一兆が苦瓜でも食ったみたいな表情で零羅に言った。


 「え?左手の・・・薬指ですね、丁度ここが一番しっくりくるので、何か変でした?」


 あ、零羅って意外と天然なのな。


 「そこに付けるのは結婚指輪だ」


 「そうなのですか?」


 「その指輪はかつてニヒルさんとその旦那様のレイノルドさんへの結婚指輪として作られたそうです、それをお二人用に改造致しました。お二人はお付き合いなされていると聞きましたので」


 「なーんでそんな事になってんのー?」


 一兆は頭をぽりぽりと掻いた。


 「いやはや、確かに一兆殿はロリコンっぽいでござ・・・」

 

 あーあ、地雷踏み抜いてボッコボコにされてる。


 「のー・・・」


 「ま、好きにすれば良いんじゃね?何処に付けようが俺はあんま関係ねーし」


 一兆は右手の中指に付けた。


 「では、麗沢さんにはこれを」


 麗沢に渡したのは、メガネケース?


 「む!!これはっ!?」


 「かつて、ニヒル アダムスさんが使っていたメガネを改造、天石をフレームにあしらったそうです」


 「ふむふむ成る程、度もピッタシ!!拙者の度数を知っている者がこれを作った。と言う事は」


 「わたくしが出会う事はありませんでしたが、彼女からの贈り物ですよ。麗沢さん」


 麗沢・・・なんか、震えてる?


 「さてと、まずこれが一手・・・永零は確かにとんでもない能力に目覚めたけど、だとしても神になった訳じゃない。そして永零と桜蘭君は利害の一致で共に行動してると僕は思う。だからリリアさんの復活は永零ですら読めない一手だと僕は思う」


 俺が思うに三上って、めちゃくちゃ計算高いと言うか、用心深いな・・・けど、永零はそれを更に上回るって感じか。


 「なぁ、俺が夢で見たあいつなら、なんとなくだけど・・・これすらも予想してたっておかしくねーなって・・・」


 俺は三上に告げた。確かに三上には驚かされっぱなしだ。けど、夢で感じたあの雰囲気はなんか、何をしても無駄だって感じたんだ。


 「うん、確かにそうかもね。僕自身はこの一手はかなり有効になるって踏んでたんだ。今まではね・・・ただ、君の話を聞いた時僕もその結論に至った、ここも決まっていた事だって。今の永零なら、本当に神に匹敵してもおかしくないってね・・・けど、一つ永零でわかる事は、彼は神を嫌い、()()である事に強い拘りを持ってる。本当に出し抜くならここを突くしか無い。


 だから更に一手を出す。もうすぐゴールデンウイークが始まるよね、そこでちょっとみんなで旅行に行かない?」


 ここまでの雰囲気からいきなりすごい楽観的な一言が聞こえてきた。


 「旅行だ?何言ってんだおめー、つか、何処行く気なんだ?」


 一兆が腕を組んで三上を睨んだ。


 「神を出し抜くには、それを超える神が必要になる。スミレ先生は確かに凄い神様の一人だけど永零を出し抜く程の力は無い。けど、一人だけ思いついた人がいる。その人ならおそらく永零を出し抜ける・・・その人の手がかりを知る人がいる場所に僕たちは向かう。だから行くよ、場所は・・・京都、伏見」


 「伏見・・・って、まさかぁ!?」


 反応を真っ先に見せたのは飯綱だ、何か思い当たる節でもあるみたい。


 「伏見になんかあんの?」


 俺は三上に質問した。思いっきり観光地のあそこに何があるってんだ?


 「それは行ってのお楽しみ。ニーズ トゥ ノウってね、僕の戦い方の基本がこれなんだ。必要な情報を必要な人にだけ、リリアさんもその一つだね」


 リリアはにこっと笑った。


 「だからか、みんなして驚いてたのはよ・・・って事は三上お前、後どれだけ隠し事があるんだ?」


 「さぁ、君の想像に任せるよ」


 絶対あるな、少なくとも3つくらいは策を残してる。


 ヒソヒソ

 (礼兄ちゃんほんと嘘得意だからねぇ、おいらもさ、たまにどうなのぉ?って思う時もあるけどさ、大概全部考えてくれてるんだよねぇ。だからおいらは礼兄ちゃんを信じてるのさね)


 飯綱のヒソヒソ話しで分かった。隠し事だらけの三上がリーダーポジションなのは、俺には想像出来ないくらいな事はやってのけてきたのは違いない。だからみんな信用してるんだ・・・


 「なら三上、俺も京都付いて行っていいか?バカ姉もな」


 「こっちからもお願いするよ。これはもしかしたらお姉さんが目撃者っていう事にも繋がってくる気がするからね、旅費は僕が持つよ」


 「サンキュー、バカ姉には伝えておくぜ」 


 ・


 ・


 ・


 こうして会議は終了した。家に帰る途中、バカ姉とそのクラスの担任、グレイシア先生が一緒に歩いていた。


 俺はバカ姉に今日の出来事を話した。


 「・・・そう。私も軽音さんのお見舞い行った後、グレイシア先生から色々聞いた。異世界の事とか、なんか色々・・・ヤバいよね、頭ん中整理仕切れない。けどさ、正直思っちゃった事が1つあるんだけど、言って良い?」


 バカ姉はなんだか照れくさそうにしてる。気持ち悪ぃ・・・


 「何が?」


 「面白いって・・・思っちゃったんだ。今の現状がかなりヤバいのは分かってる。けど、こんな体験今までした事ないからさ、今面白くて仕方がないの。またあんな目に遭うかもしれないのに・・・また見てみたい、あの狂った笑いを・・・今度は、根こそぎ止めてやりたい!!」


 バカ姉が珍しく険しい表情で拳を握った。


 「けど私には戦う力なんか無い、でも見届けたい!!三日月、私も京都に行く。付き合ってやる・・・目撃者がなんなのかを見届けてやる!」


 「・・・はぁ、あんたの厨二病も大概だと思ってたけどさ、今なら良いか。多分それくらい現実逃避してねーと付いて行けねーっぽいしな。俺も付き合ってやるよ、俺もこの戦いに巻き込まれてんだからな。行こうぜ、京都!!」

 

 俺はバカ姉とハイタッチした。こんな事すんのいつ以来だ?いや、幼稚園くらいからバカ姉とはいつも口喧嘩ばっかしだったっけ。って事は、こんなふうにやんのはむしろ初めてか。


 ・・・悪くはねーな。俺は視線に気がついた、グレイシア先生だ。俺たちをチラッとみて、小さく笑っていた。


 ・


 ・


 ・


 ・


 ・ 


 一方その頃・・・


 羽田空港国際線


 フランスシャルル・ド・ゴール発、日本羽田行きの入国審査に一人の女性がいた。


 「日本へはなんの目的で?」


 「愛しの彼に会いに来たの」


 「日本語お上手ですね・・・はい、日本へようこそ」


 「あなたも、良いおもてなしするわね」


 女性は入国審査の男に投げキッスを送った。男の目がハートになる。


 長身でスタイルは抜群、ウェーブのかかったプラチナブランド、誰もが振り返るような美女、名はウラジーミル エチナヴァナ リザヴェノフだ。


 「ちょっと!リザ!!先行かないでよ!!」


 後ろから追って来たのは、もはや対照的と言って良いほどのボサボサポニーテールにグルグルな眼鏡をかけた女性だ。彼女の名は静也丸 峰子。


 「だってぇシィズちゃん。早く会いたいんだもん。はぁぁ・・・あのお腹にまた会えるなんて・・・早くぷにりたいわぁ」


 「気持ちはわかるけど、私たちの目的分かってるでしょ?」


 「分かってるわ。アウロの持つ異世界監視AI、サクリファイス2・・・それの所在が日本にあると言う情報を得たから来た」

 

 「イーサンの情報じゃアメリカの研究者、ベンジャミン タイラーが全世界監視AIの試作機サクリファイスを制作。それを元にアウロは異世界監視仕様のサクリファイス2を作った。ただし、その肝心なコンピュータは何処にあるのかが不明。私たちは国連本部にあるって踏んでたんだけど・・・」


 「えぇ、サクリファイス2は予想以上にかなり小型。何処へでも運搬が可能だった。そして今、そのAIはこの国にいる。所在が掴めるまではまだ密かに行動しなきゃダメよ?」


 「はーい。三上君たちもまだ、ゲートは作れても逆異世界転移対策までは少し時間かかるだろうから、少しは我慢するわ」


 二人の女性は何処かに向かった。


 ・

 

 ・


 ・


 更に同時刻、


 アメリカ合衆国、テキサス州、とある飛行場。


 「マイク!!準備出来たかぁ!?」

 

 「あぁ、いつでも飛べる」


 屈強な迷彩服を着た二人はヘリの準備をしていた。


 「済まんアラン、ちょっと行くの待ってくれるか?」


 そこへまた一人、身長の高い男がやって来た。ただ、その男の背中には何か小さな物を背負ってる。


 「ん?なっ・・・お前、ヴォイドか!?死んだ筈じゃ・・・」


 「なんだその残念そうな顔は。ま、トリックとだけにしておくか・・・」


 この男はヴォイド ロドリゲス。異世界で死んだ筈の男。


 「訳ありってか」


 「そんなとこだ、お前たちは相変わらず世界中飛び回ってるみたいだな、あと3人はどうした?」


 「今回は2人の任務だ。ところで、俺たちに何の用だ?何か依頼か?」


 アランと呼ばれた男はヴォイドに尋ねた。


 「そんなとこだ、足が付かずに日本へ飛ぶ事は出来るか?とある情報を、とある人物に渡したい。ただ、そいつと会うにはあらゆる痕跡を残したくは無いんだ。今俺が相手にしてる奴は少々手強いからな。お前らは実力も口の硬さも折り紙付きだと思ってる」


 「・・・任せな。マイク!!ヘリは止めだ!!輸送機を使う!!準備しろ!!」


 「あいよ」


 「悪いなヴォイド、少し待っててくれ。と言うか、一つ気になるんだが、その後ろのはなんだ?」


 「あぁこいつか?名前はキャロット。俺の娘でありバディのようなものだ」


 『きゃるる?』


 ヴォイドの背中からツノの生えたウサギのような生き物が顔を覗かせた。


 「ほー、中々可愛い生き物じゃないか。よっしゃ、深い事は聞かん!!とにかくお前を痕跡残さず日本に送り届けるさ!!」


 「あぁ、頼んだ。終わったらまたアームレスリングでもするか?」


 「良いねぇ、ずっとお前に勝てなかったからな、リベンジしてやるよ!」


 「ふっ、受けてたってやるよ・・・」


 ヴォイドは少しニヤリと笑った。

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