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ジュネーブ防衛戦 三日月vsロベルト

 「さぁてロベルト、とりま俺はあんたには手を出さねぇぜ。三日月君にまんまと嵌められたのが悪いんだからよ。大人1人とこのガキども、どっちが強ぇんだろぅなぁ?」


 ルシフェルはイタズラな笑みを浮かべ、今度は茜の元に向かった。


 「ってなわけで!!斬り込み隊長の役は三日月君がやった。次の一手は紙にかかってるぜ茜ちゃんよ!!さぁ、あのおっさんに対してどう勝つ?」


 そしてルシフェルは茜の後ろに立った。


 「ルシフェルさん。一応言っておきますけど、私たちはこの人を殺すつもりはありませんよ?無力化させてこの戦いを終わらせるのが目的なんですからね?」


 そのルシフェルに対しても茜は少し睨みを効かせた。


 「わかってるよ。まぁ出来れば殺して欲しいとこだが、罪の意識を増やす必要性もねぇしな。どの道全ての勝負の行く末はレイたちが決めんだからよ。けど、負けた場合は全員死ぬことになるってのだけは覚悟しておくんだぜ?」


 「わかってます!!なら!!」


 「いや、俺1人でやって良いか委員長?」


 その時、三日月は剣を見つめながら茜に尋ねた。


 「はい?何言ってるのよ三日月君、流石に1人で戦うのは危ないよ?」


 「あぁ。そうなんだろうけどよ、少し気になった事があったんだ。あいつは俺の時止めにどうやって対抗したのか。ルシフェルさんよ、銃撃ったのはアイツだろ?あの時、マズルフラッシュは先だったか?」


 「っ!おま、そんなとこ気がついたのかよ・・・流石は本来の目撃者だなぁおい」


 ルシフェルは目を見開いて驚いた。


 「???」


 一方茜はルシフェルと三日月の会話が理解出来ない。


 「あー、茜ちゃんに分かりやすく言うとだな、三日月君の時間停止に対抗してんのはあのロベルトっつーおっさんな訳。んで、あいつは三日月君同様に時に関する力持ってんじゃねーか?って疑ったわけよ。だから、アイツと戦うには同じ土俵に立てる三日月君しかいねぇんじゃえねぇか?ってとこだ」


 「あんな一瞬でそんなとこまで・・・流石三日月君・・・」


 茜は三日月に関心した。と言うより元から彼女は三日月に対して少し気があるらしい。


 「っつー訳だ悪いな委員長、本当なら全員で叩き潰したいとこだが、時間の能力を持つ奴相手は俺もまだ対処の仕方が分からねぇんだ。それに、俺なりに時間の力の使い方を考えたんだ。俺の出来る最大の力を使うとなると、周りの事を考える余裕がなくなっちまうからな・・・さてと、待たせたなロベルトのおっさん。俺1人が相手だぜ?」


 三日月はニヤリと笑い、懐中時計を前に掲げるとその手には3本の巨大な時計の針が真っ直ぐに伸びた剣に変わった。


 「過信にも程があるな。確かに私の力を見破ったのは賞賛に値するが・・・力だけ与えられたただの人間相手に私が倒されると?」


 「あぁ、けどそう言うあんたこそ過信だ。あんたは他のビーストだの覚醒者だの同様にほぼ不死身だろ?俺はそんな奴ら相手に一年近くずっとやり合って来たんだ。ただのガキと思うんじゃねぇよ」


 三日月はロベルトを睨む。そして剣をゆっくりと中段で構えた。


 「・・・行くぜ!!」


 そして三日月は剣を上段に構えて一気に踏み出した。


 「その剣は時を操るとは言え所詮は剣だ・・・」


 ロベルトは呟くと胸ポケットから小さな銃を取り出した。そして三日月に向け、引き金を引いた。


 ガァンッッッ!!!!


 激しい炸裂音が鳴り響く。その瞬間、既に三日月は防御の構えをとっていた。


 「っ!?」


 「おれの読みは正解だな・・・あんたの能力見切ったぜ。あんたの能力はその銃だろ?んで、その銃で出来る事は相対性理論に基づいた光速を超える弾丸の発射だ」


 「三日月君、なんて?」


 茜自身学級委員長と言う立場もあり、成績はかなり良い方だが、そんな彼女でも三日月の口から出た言葉の意味がよく分からなかった。


 「こいつの銃弾は光の速度を超えるんだ。光よりも早く動くものの時間は遅くなるって理論があるんだ。こいつはそれを利用して俺の時間停止に対抗してきてる」


 三日月はじっとロベルトを睨みながら解説した。


 「ほぉ、賢いんだな君。だが少し甘い、この世の中で光を超える方法には何がある?」


 ロベルトは少し関心した様子で三日月に質問を返した。


 「熱か重力?」


 「本当に賢いな、正解は正に重力だ。この銃は重力を発生させその力を用いて弾丸を発射する。その結果光速を超える弾丸の発射を可能にしたのだよ。しかし欠点もあってね、そんな威力の弾丸を地面に当てればこの星は崩壊してしまう。上に撃っても、一瞬で第二宇宙速度を軽く突破する弾丸が与える影響は計り知れない。その為この弾丸は300メートル程度で衝撃波もろとも自動消滅するようになっているのだよ」


 ロベルトは得意げに解説した。


 「へー、やっぱりかがくってのはすげーな。魔法やら神の御業なんて呼ばれるのを平気で解明するなんてさ。ただ、つくづく思うのは、なんでそんな力を破壊にしか転用出来ないんだろうな!!」


 三日月は剣を構え直して切り掛かる。その次の瞬間、炸裂音が鳴り響き、周囲の壁や地面にいくつもの風穴が空き、そして気がつけば三日月は剣を振り下ろし、ロベルトは銃でそれを受け止めていた。   

 

 「私の指の動きを見て引き金を引く瞬間に時を止めて防いだか」


 「俺の時間停止だと弾丸が見えるからな。だから防げた。そして、俺とお前の弱点が理解できたぜ」


 「なに?」


 三日月は剣で弾いて間合いを取った。


 「俺の今やってる時間停止は完全には停止してねぇ。そしてお前は完全には俺の時間停止の世界にはついてこれてねぇ。俺は純恋先生の力の全てを使えるようになったとはいえ完璧に使いこなせたかと言われたらそうじゃねぇんだ。んぇ、それはお前もだぜ?俺の時間停止は限りなく停止に近いスローなんだ。そしてお前も、限りなく停止に近いスローの世界を見てる。そもそも完全な時間停止は光も停止する筈だろ?そうなったら俺の見えてる世界は俺も停止して見える筈だ。今気がついたぜ」


 「その理論は私も承知の上だ。私に出来るのはあくまでも時間の停止した状態に対応する事のみ。しかし君には時間逆行があるだろ?」


 「あぁ、プラスの力からマイナスに行く。その瞬間のゼロこそが完全時間停止の世界だ。けど、流石にそれをやるのはどうやったら良いのか俺にも分からない。それさえ出来て、俺がその世界を認知する事が出来りゃお前を倒すのは造作も無くなる。けどそれは難しいから、次の一手を出すとするか・・・なぁロベルト、なんで俺があんたの事知ってて相対性理論なんて大体の小学生が知らない理論を知ってるか分かるか?それは俺が学んだからだ。時間を操る者に人間はどうやって対抗してくるのか、その結果色々学んだ。そして、重力の応用をしてくると踏んだ。だから俺も重力で対抗するぜ!!キャロット!!!!」


 ズガァンッ!!!

 「きゃ〜る〜っ!!」


 三日月が名前を呼ぶと三日月よりも少し幼い雰囲気の少女が影から飛び出して三日月の首に腕を巻きつけて寄りかかった。


 「っな!何あの子!?」

 

 茜はその姿を見てこの状況にも関わらず、少々その姿にヤキモチを焼いた。


 「あーキャロットちゃんだー、おっきくなったねー」

 「キャロット!?って確かあのうさぎちゃん!?言われてみれば・・・似てる?」


 霧矢の一言でなんとなく茜は少女の正体を察した。


 「そいつは・・・」


 「勝負は一瞬で終わらせてやるぜロベルト。キャロット、重力剣術で行く」


 「きゃる!!」


 少女は元気に頷いて三日月の肩から離れる。そして三日月は剣から針を一本分離させ、放り投げると同時に前に飛び出した。


 「何をするつもりか知らんが、お前の攻撃はあくまでも人間の速度だ。時を止めても同じく反応出来る私に届くまい」


 ロベルトは向かってくる三日月に銃口を向ける。


 「そして、私の銃は更に加速する。クイックシルバー!!!」


 「重力剣術!!」


 三日月とロベルトの姿は消え、次の瞬間炸裂音を鳴らしたロベルトと、剣を振り抜いた三日月が現れた。


 「なにっ!」


 そしてロベルトの胸から血が吹き出した。


 「ちっ、一撃でぶっ倒すつもりだったんだけどな・・・防がれちまったか」


 「・・・なんだ今のは、私の目で追いきれない程に剣が加速した?」


 ロベルトは流した血を眺めて考察を始めた。


 「けど・・・次は仕留めるぜ?」


 三日月は再び構え直した。


 「くっ!!!ならば私も、更に加速するまで!!!」


 ズガガガガガガガッッ!!!!!


 ロベルトが引き金を引くと同時に再び周囲の壁に穴が空き、その後に炸裂音が響く。


 「お前の銃は見えてんだよ」

  

 三日月はそう告げるとその次の瞬間にはロベルトを切り裂いていた。


 「ぬぐぅっ!!」


 「まだ倒れねぇのかよ。しぶてぇ・・・」


 ロベルトは三日月から距離を取った。


 「危ない・・・だが今の攻撃理解したぞ・・・アレは貴様の剣ではないな・・・あの先ほど投げた剣、アレは指示棒か。お前の剣を本当に動かしているのは・・・さっき呼び出したあの小娘か」


 「っ!!」


 「ふっ、図星だな・・・あの投げた剣も今持っている剣も一心同体、剣を通してあの小娘に剣の動きを指示し、そこに重力加速を行い私の動きについて来た・・・よく考えた作戦だ」


 ロベルトは今度は銃を二丁取り出し、連射した。


 「なっ!!?」


 三日月はかろうじてその連射を防ぐが、少し押され始めた。


 「きゃ、きゃるぅ・・・」


 「ほらほらどうした?時間停止して私の攻撃を防ぐのは良いがお前は所詮人間。すぐに体力の限界が来るぞ?さて、次で最後にしよう。お前が時間を止める限界が来た時、お前の体は見るも無惨に穴だらけになるだろう」


 「うりゃぁっ!!」


 三日月は僅かに見えた隙を使い間合いを取り直した。


 「はぁ・・・はぁ・・・」


 「今の隙を攻撃に回すべきだったな。次はもう捌けないだろう?」


 ロベルトは再び銃を三日月に向けた。


 「だろうな・・・かと言って万事休すとは言えねぇよ。万事次なる一手・・・けど、次こそ最後の一手だ。これで仕留められなきゃクラスのみんな全滅しちまうな・・・あー怖」


 三日月は更に剣を分離させ、右手に長い針、左手に短い針を持った。


 「まだ何かするつもりか?」


 「あぁ、俺の考えたとっておきだ。んで、宣言するぜ、ルシフェルも聞いておけ。この一攻撃が俺の最後の最後の攻撃だ。もしこれが通用しなかったら俺の負けだ」


 三日月は2人に告げると左手を中段に、右手を上段に構える。


 「そうか、そこまで言う程ならば・・・徹底的に潰すのみ」

 

 そしてロベルトも銃を三日月に向けて固定した。


 「なら、お互いが最後の一撃っつー事で見といてやるよ。んじゃ、勝負!!!」


 ルシフェルの掛け声で三日月は飛び出し、姿を消した。三日月は時間を止めたのだ。


 (俺に与えられたのはこの30秒の時間停止世界!!この間に俺のありったけを全て叩き込む!!!)


 三日月はロベルトに向かう。


 (無駄な事を、重力加速銃クイックシルバー、最大加速!!この銃弾は最早時を止めたとしても人間であるお前の目にはただの銃弾と変わらないほどの速さだ!!)


 ロベルトは三日月に向けて引き金を引いた。三日月の身体に無数の穴が開けられる。


 (終わりだな・・・ん?なんだ、風穴が空いた奴と、私に向かう奴が2人いる?なんだこれは!?私の目はどうなって!?)


 ロベルトは確かに三日月に攻撃を当てた。しかし、それと同時に三日月はロベルトに向かって来ている。


 (この!!)


 ロベルトはもう一度風穴を開ける。だが、それでも三日月は向かってくる。そして三日月はロベルトの間合いに入った。


 「うぉぉぉあああああっっ!!!」

 「っっ!!!!」


 ロベルトは銃身で三日月の剣を防ぐ。


 「この重さ!!!」


 ロベルトは三日月の一撃に苦悶の顔を浮かべる。


 「キャロットの重力加速の一振りだぜ!!重てぇだろ!!けどそれは俺のこの左手だけだ!!俺の右手は!!俺自身の剣だ!!食いやがれ時間完全停止!!」


 「なっ!?」


 ロベルトは三日月の剣を弾き飛ばそうとしていた。ロベルト自身の目にはそう見えていた。しかし、起きたのは逆だ。ロベルトの銃が空に向かっていた。


 (これは!!そうか!!光の停止!!時間停止の中で完全時間停止を一瞬行いながら私に近づいたのか!!だから私の目には光が止まった奴の姿が見えていた!!しかし!!そんな事をすれば奴とて光の止まった世界を認識出来ない筈!!いや、見てはいないのか!!重力による誘導!!そして奴の剣の感覚だけで私の攻撃を防ぎ!!そして!!)


 「てめーに追いついたんだぜ!!!タイムオーバー!!!」


 その直後、時間が動き出した。だが、その動き出した時間の中で動けたのは三日月だけだ。


 「ぬぅぉぉぉぉぉぉあああああああああああっっ!!!!!!」


 二刀流によるめちゃくちゃな斬撃の数々を三日月の体力が限界を越えるまでロベルトに叩き込み続けた。


 「ぐぅぉっ!!あああああああっっ!!!!」


 「どぉあああありゃぁぁあああああっっ!!!」

 

 そして、渾身の一撃を二振りの剣で放ち、ロベルトを吹っ飛ばした。


 「ぜぇ・・・ぜぇ・・・げほっ!!おえっ!!」


 「三日月君!?大丈夫!?」


 三日月は疲労と完全時間停止による感覚のバランスが崩れ嗚咽した。茜は即座に駆けつける。


 「あ、あぁ・・・はぁ・・・なんとか・・・き、気持ち悪ぃ・・・あの時間停止は、人間の住む領域じゃねぇよ。身体が追いつかねぇ・・・だが、倒したぜ皆んな」


 三日月は横たわるロベルトを眺めた。


 「んっ・・・ぐっ!!!」

 

 「っ!!?」


 しかし、ロベルトはかろうじて立ち上がった。


 「はぁ・・・死ぬとこだったぞ・・・子ども風情が・・・しかし、仕留め損ねたな。さて、終わりだ子どもたちよ・・・」


 ロベルトは三日月たちに銃口を向ける。そしてその指がトリガーにかかった。だが


 スパァンッ!!!


 「なに・・・・っ!!」


 「おいおい、勝負はありだ。どう見てもお前の負けだぜロベルト」


 気がつけば離れて見守っていた筈のルシフェルが剣を手にし、ロベルトの両手を切断していた。


 「ルシフェル!!!貴様!!!」


 「だってそうだろ?この勝負は生きたか死んだかの勝負じゃねぇ筈だ。先に一本取った方が勝ち。そもそもこいつらがここで出来る事は時間稼ぎだ。礼たちが永零を倒すか礼が倒されるかの間のなぁ・・・っつー訳だ。この戦いはお前の負け、大人しく死んでろ」


 「っっっ!!!!この!!」


 「桜蘭〜」


 ロベルトはルシフェルにターゲットを絞り、手を治すと銃をルシフェルに向ける。


 「・・・ロベルト オールドマン・・・死」


 「あ・・・・・」


 桜蘭の呟きがロベルトに届いた。そしてその瞬間、彼は突然生き絶えて地面にまるで人形のように転がった。


 「全く・・・俺は今戦ってる最中なんだよ父さん」


 桜蘭はすぐさまミツキに視線を戻す。


 「ごめーん!てへぺろ!!」


 ルシフェルは何故かあざとくてへぺろってした。


 「・・・」


 桜蘭は無視した。


 「とりあえず、対ロベルトは三日月君たちの勝ちだ。とは言え、俺の役目はお前らも倒す事も含まれてんのよ。さ、どうする?」


 「っ!!」


 ルシフェルの問いに三日月は構えを取り直す。


 「なーんて、今は待とうぜ?この戦いは余興、本戦は礼たち、無理にやり合う必要もねぇ。それに、まだ他の戦いは続いてんだ。俺たちは他の戦いの行く末でも見守るとしようじゃねぇの」

 

 ルシフェルはそう告げると剣をどこかへしまい、転がっていた椅子を拾い上げてのんびりと腰掛けた。


 「さぁて、今度の注目は第二中とリチャードのおっさんだ。さぁて、あいつ相手に兄弟はどう出るだろうな?」


 ジュネーブ防衛戦はまだまだ続く。

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