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ラヴドゥール島侵攻作戦 リリアvsディエゴ 

 「ウロボロスが・・・」


 ウーネアは空母の甲板の上から上空の戦いを見届けていた。そして今、空中の戦いが終わりを告げる。空にはオレンジ色の閃光が走る。エアクイーン隊とサラの援護がこの戦いを終わらせた。


 次なる作戦はいよいよ上陸作戦だ。


 「・・・んでよ三上、今更おさらいするのはなんだけど・・・上陸作戦の内容アレってマ?」


 一兆は苦笑いしながらも準備を着々と進めていた。


 「うん、この空母の大きさじゃ島にはそう近づけないし、ウロボロスを倒したとしてもバケモノたちの増殖を食い止める事ができるだけでまだ残ってるタイプワイバーンたちはまだ無数にいる。となると、この方法しかないでしょ?」


 三上も刀を眺めて手入れを続ける。


 「とは言ってもよぉ・・・大砲で俺たち撃ち出すってどう言うこったぁ!?」


 いよいよ一兆はツッコミを入れた。上陸作戦の内容は上陸部隊の6人を大砲に入れて撃ち出すという方法だったのだ。


 「しかもよぉ!!なんだこれ!?サーカスの人間大砲とかじゃなくてガチ兵器の大砲じゃねーか!!こんなん粉々になるわぁ!!」


 「大丈夫だよ、火薬量やその他諸々はディ・ゴイ君とシャンデラさんが最高速かつ身体が吹き飛ばないギリギリで調整してくれてるから」


 三上は刀を納めて大砲に向かった。


 「あいつらの技量次第かよ・・・言っとくけど俺は覚醒者だが普通の人間なんだぜ?あんたは完全覚醒者だし、神の転生者だし、他の連中はマキシマムビーストやら狐の神様やらアタオカな暴力娘やらなんだぜ?」


 一兆はチラッと嬉しそうに大砲に飛び込む零羅を眺めた。その後ろで飯綱もヒョイと大砲の中に入り込んでいたが、腹がつっかえたようだ。


 「南斗人間◯弾ですよ一兆さんこれ!!」


 「アニオリ回も熟知してるんかお前!!」


 嬉しそうな零羅に対して一兆はツッコミを入れる。


 「それよりも早く入って下さい!カウントダウンで同時に撃ち出すんですよ!?」


 「どーにも俺はこの手のもんは嫌いなんだよ!!完全に他人に己の安全を任せるってやつのはどーにもな!!」


 一兆が信じられるのは己自身だ。それが彼のポリシーなのだ。仮に任せるとしても100%信用はしないがモットーの為、この人間大砲作戦に手をこまねいているらしい。


 「・・・それって、一兆さんもしかして・・・ジェットコースター嫌いなんですか?」


 「うん、大っ嫌い」


 己しか信じないと上で言ったが、要するに一兆はジェットコースターの類が嫌いだから入りたがっていないだけだ。


 「ふふふ!わたくしなんて乗った事無いのですよ?だから凄い楽しみなんです!!もう1人のわたくしも楽しそうと仰ってるんですから!!ほら!!みんなで乗れば怖くないですよぅ!」


 零羅は逆に嬉しそうに筒の中に入っていく。


 「怖くはねぇけど嫌いなの!!けどまぁ、仕方ねぇな・・・三上も準備出来たし、ここで時間かけるのは意味ねぇよな」


 一兆も大砲に身体を突っ込んだ。


 『六連装射出装置発射シークエンス開始します!!』


 スピーカー越しにシャンデラが大砲発射の準備を進める。


 『ディ・ゴイ君!!角度右に3度修正!!』


 『はい!!』


 『安全装置第一弾解除!!標的位置確認!射出者は射出後火山飛来物に注意して下さい!!』


 「りょーかい」


 一兆は適当に返事する。


 『位置適正!最終安全装置解除!!!!秒読み開始します!!十!九!八!七!六!五!四!三!二!一!!!』


 「わーちょ!!おいら反対向いちゃってん・・・」

 「ゼロ!!!!!大丈夫です!!行ってらっしゃい!!」


 お腹が引っかかっていた飯綱を無視してシャンデラはトリガーを引く。


 鋭い音と共に島に向かって6発の人間が発射された。


 「ぐえっ!きっつ!!!」


 普段表情を崩さない一兆もキツそうな顔だ。サーカスの人間大砲とは比べ物にならない衝撃とGが加わり、普通の人間ならば粉々になるのは必須だ。それをモロに受けながら一兆たちは撃ち出された。


 「とんわぁぁぁぁぁっ!!!おいらどなってんだぁぁぁっ!?地面と空が交互にぃぃ!!!」


 飯綱は変なふうに撃ち出されたためクルクル回ってる。


 「気持ちわりー!おえー!!」


 そして飯綱はモザイクの入った虹を描きながら島への架け橋を作っていた。


 「飯綱ちゃん・・・相変わらずねぇ・・・」


 空母の甲板からウーネアは若干引き気味で空を眺める。


 「けど、これで全部終わらせてくるのよ飯綱ちゃん。そして、信じてるわよお姉様。さぁて、私たちは上陸の援護と空母の護衛と行きますか!!!」


 ウーネアは腕を鳴らして未だ空に蔓延るバケモノたちを睨んだ。





 一方その頃、射出された三上たちは・・・


 「前方!!火山弾!!!」


 三上は前方から飛んでくる火山弾を見つけ、注意を呼びかける。


 「わたくしが砕きます!!!神破聖拳!!!衝勢!!!」


 零羅は火山弾に正拳突きを放つと火山弾は粉々に砕け散った。


 「ひゅー!!流石零羅だぁー!!」


 飯綱はなんとか体勢を整えた。


 「どういたしましてです!!けど!その後ろにバケモノが隠れてたみたいですね!!」

  

 零羅の砕いた火山弾の影からタイプワイバーンが現れる。


 「この大きさ・・・成る程永零の奴、第五段階のワイバーンを隠していたな!」


 三上は刀の柄に手を触れる。


 「いや、お前は出来る限り体力を温存しておいた方が良いと思うですよ。だから、次は私がやる」


 上空でニヒルは加速した。そして三上の前に飛び出し、手に携えた日本刀を抜く。


 「ニヒル アダムスの戦い方か・・・あの構え、三上と似てんのか?」


 ジェットコースターが苦手な一兆だが、咄嗟にニヒルの動きの観察を始めた。


 「ふっ、そんな観察しなくても私の剣は結構基本的ですよ。ただ、この刀を媒介に一部をビースト化させて戦う。これが新たな私の戦い方です」


 ニヒルの腕は刀と一体化し、迫り来るタイプワイバーンを次々に切り刻んだ。


 「さぁ、着地地点見えてきたよ!!」


 三上はそう言うと足元に風を爆発させて一気に減速し、地表に降り立つ。他のみんなもそれぞれの方法で着地した。着地した場所は島の海岸沿い、周囲には溶岩流が海に流れ込み蒸気があちこちから昇っている。


 「にしてもでけー島だなぁ。さっき上空からこの島見たが、地平線の彼方まで地表と火山で覆い尽くされてたぜ?聞いてた以上にデカいぞ」


 一兆は腕を組んで空を眺めた。


 「確かにこの島・・・いや、大陸と考えた方が良かったのかも。常々疑問だったんだ、永零は以前以上に簡単に異世界転移をやってのける。それには膨大なエネルギーが必要なんだけど、そのエネルギーは何処から来るのか・・・行き着いた答えは地熱エネルギー、だから永零は地熱がふんだんに使える火山島を根城にしてると踏んでいたんだけど、成る程ね。この大陸全てが火山って事だったわけだ」


 三上は1人納得していた。


 「んで、納得するのは良いが肝心な永零は何処にいるのか目星はあんのか?」


 そして一兆はジト目で三上に問いかけた。


 「向こうから勝手に来ると思うよ。どちらにせよ僕自身がここが最も近いと感じたんだ、永零だってそう思った筈。つまりはここも一つの到達点・・・噂をすれば、なんとやらだ。そして、そう来るんだ・・・これは意外だな」


 三上は少し笑みを浮かべた。その目線の先、1人の影が奥から現れた。


 「これは俺自身も驚いている事だよ、三上 礼君・・・」


 「っ!?こ、この声・・・お兄・・・さま?」


 そしてこの声に反応するのはリリアだ。三上たちの目の前に現れたその男は、坂神 桜蘭の手によって死んだ筈の男。ディエゴ アンダーソンだ。


 「随分と元気になったようだなリリア。かつて生きる意志だけでかろうじて生きていたあの頃が嘘のようだ」


 「何故、ここにいるのですか?」


 リリアはディエゴに問いかけた。


 「俺は坂神 桜蘭君と戦い、そして死んだ。彼に俺の全てを伝えてな・・・だからお前も感じていただろう?坂神 桜蘭君の中に僅かに俺の気配を。無論、指宿 永零君もそれを知っていた。それで俺はその中から呼び戻されたのだ。初めはものは試しの出来損ないとして復活させる予定だったそうだ、言わば俺の力を持ったコピーを作り出す実験だ。しかしリリア、お前が俺を兄と呼んだと言うことは本物を生き返らせてしまったと言うことなるな。これは偶然と呼ぶべきか、奇跡と呼ぶべきか・・・はたまたこれもまた神の掌の上での事なのか」


 ディエゴは背中に背負ったフランベルジュを掴んだ。


 「今、目の前にいるのはお兄さま・・・心で感じます。あなたは本物だと。だからこそ何故、わたくしたちに刃を向けるのですか?」


 リリアは堂々と立ちディエゴに尋ねる。


 「俺のやるべき事、伝えるべき事は終えた。言ってしまえば俺は生き抜いた。かつてのお前のようにな・・・ならばこの俺にやれる事は、お前たちを試す事だ。ここには立場も、思想も、俺の中に燻っていた憎悪は無い。ただひたすらに今は試してみたい。君らの実力はあの指宿 永零君を超えるに値するのかをな」


 そしてディエゴは腰を落として剣を構える。


 「そうですか・・・最後に一つ聞いても良いですか?桜蘭さんには、一体何を伝えたのですか?」


 「俺の見てきた全てだ。お前にも見せていない全て、この世の真実、俺はそれを伝えた・・・それを知った彼は何をするのかは俺も知らない」


 「分かりました・・・桜蘭さんはお兄さまの意志を継ぎ、自身の覚悟を決めたのですね。なら良かったです、お兄さまがもし、桜蘭さんに未練を残しただけなのだとしたらわたくしは、お兄さまがちょっと許せませんでしたので」


 リリアはガントレットを装着し、同じくフランベルジュを構えた。


 「その剣は・・・」


 「えぇ、お兄さまのですよ・・・みなさん、ここはどうやらわたくしとお兄さまの一騎討ちしなければならないみたいです。時間が無いのは承知の上ですけど、ここは見守って下さい」

  

 「・・・分かった」


 三上は目を瞑って頷いた。その直後・・・


 「ふんぬぉあああああっ!!!!」

 「やぁぁぁああああああっ!!!!」


 互いの剣がぶつかり合う、その衝撃で島の地図が変わった。大地は凹み、入り江が出来上がる。そしてその衝撃で舞い上がった煙の中から閃光が飛び交う。


 「はぁぁあっ!!!」


 攻撃はリリアが優勢だ。ディエゴの斬撃を押し除け地面に叩き落とした。リリアはそのまま一気にフランベルジュを振り下ろす。


 「強いな・・・が」


 ディエゴは何食わぬ顔で攻撃を突き刺された状態で受け止めた。そして倒れた状態で剣を振り上げる。リリアはガントレットを突き出して受け止めたが、その衝撃はガントレットを砕き、リリアの腕をズタズタにした。


 「相変わらずのパワーですねお兄さま」


 リリアは手をちょっと振ると怪我はみるみるうちに治る。


 「お前のパワーはこんなものだったか?」


 「いえ?今から、お見せします!!!」


 リリアは剣を肩に担いで一気に振る。


 「っ!?」


 ディエゴはガードするが、そのガードを突き破ってリリアの剣はディエゴを吹っ飛ばした。地形はまた凹み大爆発を起こす。


 煙の中からディエゴは笑みを浮かべながら現れた。そして2人の防御を知らない猛攻が続く。


 「おーおー、あいつも零羅と負けず劣らずアタオカな戦い方してんなぁ・・・」


 一兆は当たり前のように零羅と三上の後ろに立って頭を守りながら戦いを眺める。


 「あのガントレット壊れてもディエゴさんに引けを取らないなんてね。僕も驚きだよ」


 三上は堂々と戦いを見届ける。


 「けど相手はあのディエゴだよぉ?リリア勝てるかなぁ・・・」


 逆に飯綱は少し心配そうに空を眺める。


 「勝てるかどうかは分からないですけど、今のリリアの生きる意志の強さは、かつてのあの感覚とは違うのは明らかだと思わないですか飯綱?」


 「んおー?」


 飯綱の隣でニヒルは優しく声をかけた。


 「今のリリアはただ単に死にたく無いから生きてるのではない、生きたいから生きているです。その心と言うのは途轍もない強さを誇ると私は思うですよ」


 「ほーん・・・なぁんとなく分かるかも。リリア昔から優しかったけどさぁ、いつもちょっと怯えてたもんね。けど今はなんていうのか、おいらみたいさね」


 飯綱もニヒルも今のリリアの在り方を感じていた。かつて死を恐れるあまり無理やり生きて来た彼女だが、最期はそのしがらみから解放され、その命を捨ててでも自分が生き抜いた証を周りに託して死んでいった。


 だが復活した今彼女にあるのは好奇心だ。その好奇心が貪欲に生きる意志へと変わっていっている。それが今のリリア アンダーソンだ。


 「うぉあああああああああっ!!!」

 「やぁああああああああああっっ!!!!」


 2人の猛攻はやがて鍔迫り合いとなった。僅かにでも力を緩めれば即その身体は真っ二つにされてしまうだろう。2人の踏み込む足は地面にめり込み、剣からは火花が散る。


 「良いパワーだリリア・・・だが、その程度では俺と変わらないぞ・・・ふぅんっ!!!」


 ディエゴは剣を振り抜いてリリアを吹き飛ばした。


 「まだだ。この程度では坂神 桜蘭にも指宿 永零にも勝てはしない。今の俺を倒せない限りはな・・・」


 ディエゴは剣を構え直した。


 「そうですね・・・まだまだ、お兄さまは強いです」


 「俺が?勘違いするなリリア。今の俺はお前の足元にも及ばない筈だ。それほどまでに力の差はある、お前がそれを理解していないだけだ」


 ディエゴは少しイラついた声でリリアに問いかけた。


 「わたくしが、お兄さまよりも・・・強い?」


 リリアは少し困惑し、聞き返した。


 「そうだ、今お前はこう感じているだろう?俺と肩を並べる事が出来るようになったと・・・そんな感情を抱いているようではお前は永遠に俺には勝てない。俺はあの時お前に勝手についてこいと言ってお前は俺について来た。そして生き抜く術を教えてきた。だが、今はどうだ?お前はまだ、俺の後ろを追って来ているか?」


 「っ・・・わたくしは・・・」

 

 リリアは少し自身の足元を見る。そしてすぐに真っ直ぐディエゴを見つめ、剣を構えた。


 「ふっ、そうだ・・・ならば見せてみろ、今のお前はどう生きるのか!!でぇりぃやあっ!!!」


 ディエゴは渾身の一撃をリリアに放つ。一方リリアはまだ構えたままだ。


 (わたくしはずっと、お兄さまの後ろを追って生きてきました。それは今もずっと変わってなかったみたいです。お兄さまの後ろに憧れて、生き方を学んで、お兄さまと生きる事。それがわたくしの望みでした。けど、たった今それはもうやめます。今のわたくしにはもう必要無かった事が分かりましたから・・・お兄さまが教えてくれたのは、お兄さまの生き方。わたくしはそれを真似ることしか出来ませんでした。しかし、ここの時代で生き返って、ここでみんなと過ごして分かりました。みんなそれぞれ違った生き方があったのだと。みんなそれぞれが自分で生き抜く術を見つけていたのです。


 わたくしはあの時、確かに生き抜いて死にました。けど、今わたくしはまた生きたいと願っている。みんなとまだ一緒に過ごしたいと感じています。自身の目で色んな事が見てみたいのです。だからお兄さま、あなたはかつてのわたくしのように桜蘭さんに全てを託したのですよね。でしたらもう、お休みになって下さい。そして、わたくしもお兄さまの意志を継ぎます。その先の選択は桜蘭さんと同じになるのかどうかはまだ全然分かりませんけど、これが・・・今わたくしに出来る、わたくしの生き方です!!)


 気がつけばリリアは踏み込んでいた。そしてすれ違いざまに剣を振り抜いていた。


 「・・・ありがとうございますお兄さま。今の一撃に全ての魂を込めてくれて。お陰でようやくお兄さまの心が分かりました」


 「ふっ・・・それで良いリリア。だが、俺の全てを受け止める必要も無い。お前には、俺の憎しみを背負わせたくは無い」


 「そんな事言っても、桜蘭さんには背負わせたんでしょ?酷いよお兄さま・・・わたくしは背負いますよ。例えお兄さまがダメだと言ってもわたくしは背負いますからね。これがわたくしの新たな生き方です」


 「ははは・・・強いなお前は。俺の憎しみに満ちた一撃を与えても尚、お前はまだその顔でいられるんだな・・・」


 「えぇ、わたくしの心はお兄さまの憎しみ以上にこの世界のみんなを信じてますから」


 「坂神 桜蘭とは逆だな・・・彼は俺の意志を汲んで、この世界の全てを滅ぼす決意をした・・・同じ敗北なのに、受け止め方は全然違うものなのだな。リリア、そして三上 礼、最期に一つ言っておく事がある。坂神 桜蘭は俺の憎しみを継いだ。俺の憎しみとはこの世界の絶望だ、死者の通り道で俺は全てを見て来た。その死の中にある感情のほぼ全ては絶望だ。俺はその絶望を全て無くす為に逆に全てに絶望を与えようとした。今の坂神 桜蘭が何をするつもりで指宿 永零に協力するのから俺にもわからないが、彼は決して絶望を与える為に君らと敵対しているのでは無いと断言出来る。あの戦いで彼の心は変わらなかった。にも関わらず彼は全ての人間を終わらせる覚悟を背負ったのだ。それだけは・・・伝えておく」


 ディエゴはそう告げるとぐらりと体が揺れて地面に倒れ、そして消えた。


 「おやすみなさい。お兄さま・・・」


 リリアは振り返る事もなく、ゆっくりと剣を背中に背負った。


 「お待たせしましたねみなさん」


 「あのディエゴ相手にこんなあっさり決着つく方がおかしいっての。んで?この先は?」


 一兆は周囲を見渡してみた。しかし、人の影や人工物の類のものは見つからない。


 「そんな事言ってもなんとなく察してるでしょ一兆さん?」


 その一兆に対して三上は少し笑みを浮かべた。


 「んー、なんとなくなー。そもそもディエゴの奴をぶつけたのも生き返らせたのも言っちまえば試験みてぇなもんだろ?全ては俺たちの能力を計算する為によ。アレクシア・・・どうせステルス機能かなんか付けて見てんじゃねぇのかねぇ?」


 「はい、大正解ですね」

 「うおっ!!」


 一兆がぼやくと突然一兆の耳元付近で声が発せられた。一兆はびっくりして振り返るとそこにはニヒルに瓜二つの女性、アレクシアが立っていた。


 「噂には聞いていたが、気持ち悪いくらい似てるですね」


 ニヒルは少し引き気味で呟く。


 「まぁ、私はあなたをベースに作られましたので、ほぼそっくりでしょうね」


 アレクシアはメガネを少し直した。


 「んで、次はあんたをぶちのめすのか?」


 一兆はガードを一枚めくる。


 「半分正解です。指宿 永零の基地は地下奥深くにあるうえ、地表は核シェルター並みの強度を誇っています。入り口も少ないので私が案内をしようと考えました。なので私と戦うのは基地の中になるですね一兆」


 アレクシアはそう言うと少し地面を蹴る。そこにはハッチがあり、下へと続く通路が現れた。


 「火山灰で完全に埋もれてたのか。さてと、とりあえず今は考えてても時間を食うだけ、ここはお言葉に甘えて行くとしよっか」


 三上は警戒を解いてハッチに向かった。

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