ジュネーブ防衛戦 子どもと大人の戦い
ガギィィィィィンッッッ!!!!!
ミツキの攻撃と桜蘭の攻撃がぶつかり合った。
「っ!?」
ミツキはある感覚に襲われ、距離を取った。
「どうしたでござる?ミツキ殿」
麗沢はビーストと戦いながらミツキを見る。
「ウロボロスが・・・倒された?」
ミツキは何処か遠くでウロボロスが倒された事を察知した。
「今のぶつかり合いで俺の能力とリンクしたみたいだな。聞こえたか父さん?三上の方もそろそろ本格的に動くぞ」
「わーってるよ。にしてもこっちのクズ人間どもは、まだ動くつもりないみたいだけどな」
ルシフェルが見つめるその先、そこには次々と現れる害獣たちと戦う者たちと、人間に向けて静寂を貫く子供たちの2つがあった。
静寂側の子供たち
「おい、いつまでそうやって自分は被害者だみてぇな顔してんだ?」
霧島が刀を重鎮連中に突きつけた。
「いい加減正々堂々勝負するヨロシ!!」
ネーチャンが拳を突き出し、
「ママの言う事納得するわね。あんたら美しくないわ、あんたらのせいで今この事態を招いてるのよ?なのに・・・」
軽音が腕を鳴らし、
「こそこそと隠れやがってさぁ。京也君の手を煩わせるんじゃないわよ!!」
東郷がガシャンと銃弾を装填した。
「お、お前たちこそ何をしているのか分かっているのか!?これはテロ行為だぞ!?しかも前代未聞の!!」
スーツ姿の老人が1人、勇敢にも前に出た。その老人の前に仙石 茜も前に出る。
「そうです、私たちも悩みましたがこれは確かにテロです。それは認めましょう。しかしよく観て下さいこの状況を、私たちの敵はあの怪物たちです。そしてそのリーダーは我々人類の滅亡を望んでいるのです。しかし、その考えを逆手に取り、都合よく私たちを戦わせて機をうかがっている輩がこの中に紛れ込んでいるのです。今がこんな状況だなんて、私は未だに信じられません。けど、現実はこうなってしまってる。もう、目が逸らせない所まで来てしまっているのですよ?」
茜はその老人に出来る限りの説得を試みた。
「人類の滅亡?馬鹿な事を言うなお前、それをやるメリットが分からん。良いか?目を覚ますのはお前たちだ、お前たちは洗脳されそう思い込まされているのだよ。自分が救世主などと思っているのかもしれんが、それはとんでもない見当違いだ!」
老人は怒りながら杖を茜に振り上げた。しかし、それを横から出て来た手が止めた。新庄 巧だ、新庄は今の老人の言動に怒りで額に血管が浮き出ていた。
「おいゴルァジジイ。てめぇガキに、しかも女子に手を出すたぁ良い度胸だなぁ、俺は馬鹿だが状況ぐらいは読めてんだよ。俺でも分かるように簡単にこの状況を教えてやるからよく聞いておけよ?あの金髪イケメン野郎はてめぇの命狙ってるって事だ。んな事も分かんねぇのか?それともアレか?てめぇが仕組んだんだな?そうなんだろおい!!」
新庄は老人の胸ぐらを掴んだ。
「っ!!離さないか!!」
「いいや離さねぇ!!あんたがどれだけ権力のある奴か知らねぇがよ!?あんたらみてぇのが裏でコソコソしまくってたせいでこんな目に遭ってんのがまだ分かんねぇのか!?俺たちの町に変な怪物が現れてもダンマリ!アナウンサーの姉ちゃんが訴えても揉み消し!!あんたらが何にもしなかったせいでどれだけダチが死にかけたと思ってんだ!?それをなんとかしてくれたのはミツキたちだぞ!?
見ろよ!!あそこでそれを分かっててもあんたらの為に戦ってる!!なのにあんたらと来たら金だ権力だそんなんばっかじゃねぇか!!それやって良いのは馬鹿な俺たちだろうが!!あんた頭良いんだろ!?だったら自分の身の事なんて考えてねぇで多少は協力しやがれ!アホ!!」
「ぐっ!!わ、わかった!!分かったから手を離せ!!」
ぽい!
新庄は突き放すように手を離した。
「ま、そんなお陰でミツキはエロくなったし、三上なんてサイコーな奴が来てくれたんだけどな。かと言って!!喧嘩も売ってねぇ女の子に先に手をあげようとすんのはやっぱり許せねぇ!!」
ゴチン!!
結局新庄は老人に拳骨を入れた。後ろで京也がやれやれと首を振っている。
「あ、あのありがとうございます・・・」
茜はそんな新庄に丁寧にお礼を言う。
「あぁ、いいよいいよ。手ぇ上げた時点でケンカ売ってんだ。俺がそれを買った。筋は通ってんだろ?それよか、マジでどうすんだ?このジジイが悪い奴じゃねぇのは分かった。全員はっ倒すか?俺こいつら嫌いだし、アレだけやってもまだダンマリで固まってる奴らしかいねぇし」
新庄は集められた重鎮たちを半ば見下すように見る。
「それなら問題は無いな。君のおかげで時間が稼げた・・・このミカエルの天秤は、善人と悪人の判別が出来る」
ミカエルが天秤を吊り下げて前に出た。
「しかしこの天秤、ほとんどの奴らは善にも悪にも傾かない。人間は本来そういう奴らだ。まぁ、大半が微妙に悪に傾いてるんだけどな・・・しかし、その中でとっておき、悪への傾きが半端ない奴が混じっている。善に僅かにも傾かない、悪意だけで生きて来た人間が、いや、悪と分かっていながらそれを善と思い込んでいる輩の方が正しいか」
そしてミカエルは右手に剣を構えた。
「貴様・・・何をする気だ?」
性懲りもなく老人はミカエルに楯突く。
「ガーランド フォレスター。世界的権威のある学者でノーベル物理学賞を受賞なんかもしているが、粗暴な態度が度々問題となっている。だが、あなたの功績は新たな発見という形で均衡を保っている。悪人とは呼べんな」
ミカエルは老人を見て少し笑った。
「なんだと?儂を馬鹿にする気か!?貴様な名を名乗れ!!」
「まだやるのか・・・これはいい加減見せた方が早いな」
バサァッ!!!
「なっ!?」
その時、ミカエルの背中から6枚の真っ白な翼が生えた。そしてラフな衣服も神々しい鎧の姿へと変える。
「ミカエル、君みたいな学者が最も嫌う存在だ。で、アイツがルシフェル」
「うぃーっす」
遠くでルシフェルが腕を組みながら小さくピースサインを送る。
「君たちのせいであの弟と少し停戦したんだ。天使と悪魔の目的が合致してしまった。お前たちはそれをよく受け止めた方がいい。そしてもう分かるんじゃないか?このテロが一体何なのか・・・」
「・・・まさか黙示録?」
「流石は聡明な学者さんだ。さて、裁きを与える時が来た・・・ルーシー、そこに関して邪魔はあるか?」
「ちょ、ルーシー呼びはやめれや。けどまぁどの道殺すが、俺にとっての最優先はそいつらだ。そもそもニヒルちゃんを死に追いやったのもこの中に紛れ込んでるから邪魔はねぇよ。なんなら俺個人の復讐的な意味でも手伝おうか?」
ルシフェルは槍を向けた。
「良いだろう。そうだルーシー、子どもたちと一緒に戦ってみたらどうだ?案外子ども息を合わせるってのは楽しいぞ?俺は天正第二中の子たちと戦う。お前は宮ノ下小の子たちを頼んだ」
「あ、おい!!俺はコイツらも殺す予定なんだけど!?」
「けどまずはコイツらだろ?じゃぁ頼んだ。さ、行こう天正第二中の子らよ、我々は更に増える害獣たちの応戦だ」
ミカエルは第二中の子を連れて周囲の害獣たちとの戦闘に向かった。
じー・・・
宮ノ下小の子どもたちはルシフェルをどう対処するか眺めていた。
「俺敵だし害獣呼んでんのも俺だぞあの野郎・・・まいっか、そこそこ使える奴らはこっちにいるし、子どもを舐め腐った大人を痛めつけるには丁度いいぜ。三日月、お前こっちに来い」
ルシフェルは三日月を横に呼びつけた。三日月はじっとルシフェルを見つめながら懐中時計から剣を取り出す。
「敵は誰か分かるのか?」
「お、クロノスの剣の完成状態使えるようになってんのか。すげーなあんた。で、敵がだれかって?知らね!」
ずこっ!!
三日月は思わずズッコケを入れてしまった。
「おっと、ギャグはナシ。今撃ったの誰だ?」
三日月の目の前、そこにはルシフェルの手元とその指には煙が上がる弾丸が摘まれていた。
「っ!やっぱり・・・こん中に・・・」
「あぁいるぜ・・・さぁ、どうやって見つけ出す?ん?」
ルシフェルは三日月の肩をぽんと叩いて後ろに回った。
「見つけ出す方法・・・アレをやるか。おいあんたら、とりあえず今のは相当危なかったんだけど。どこの誰がやったか分かんねーけどさ、捕まえるならまだしも殺すってのは酷いと思わないの?俺、ムカついたからとりあえず1発誰でもいいから殴るから。そこ、動くなよ?」
三日月は前を睨んで歩き出した。堂々と歩く姿に周りは一歩下がった。
「おい、動くなつったろうが・・・もういいや、次動けば動いた奴から殺す!」
「ちょっ!!三日月君!?何言ってんのよ!?」
後ろで茜が三日月を止めようとした。
「止めんなよ委員長、これまで散々俺たちの街に好き勝手やってくれた奴らはここにいる。桜蘭の奴は4人つったけど、連帯責任だろこれ。だからとりあえず誰だろうと全員は殴っておかないと気が済まないんだよ。それこそ俺を下に見てた癖に、俺から逃げるような奴はな・・・絶対に許さねぇ!!行くぞ!!!でぁっ!!!」
三日月は剣を構え、一気に踏み出した。
「な、このガキ!!本気か!?」
「あぁ!!!本気だぁぁっ!!!」
ガギィィィィィンッッッ!!!!!
三日月の振り下ろした剣は、ある男に止められた。
「成る程、動けたのはお前たちか・・・まんまと引っかかったなバーカ」
三日月は振り下ろした男に告げた。
「なに?」
「まだ気がついてないのか?それなのによく上級民族みたいなポジションにいるよな?時は、動き出す・・・」
「っ!?」
三日月の周囲で時が動きはじめた。
「攻撃のタイミングで俺は時を止めた。その中で動いたのはお前たちだけだ。時を止めた中で動けるのは、俺のこの力に対策をしてる奴らしかいないだろ?そして、見事に動いたのは4人。見ろよ、みんな何も言わなくても俺の意思を汲んでくれたぜ?なぁ、ロベルト オールドマン?」
男が気がつけば戦況がどうなったのか理解した。ロベルトの目の前にはルシフェルと宮ノ下小の生徒たちが立ち塞がった。そして、
「あーあ、私さぁ、結構ファンだったんだけど?CIA長官リチャード ベルナルディ。全く、上の連中ってのはみんな結局金だのなんだのなのね〜、このくーず」
東郷がM4アサルトライフルを向けたのはリチャード ベルナルディ。CIA長官にして捧げられし者たちの1人だ。そこに更に天正第二中の生徒とミカエルが立ち塞がる。更に、
「あなたは動かなかったのは懸命だと思うから。けど、私の目は誤魔化せない・・・時の止まった中で君は僅かに私を見た。えっと、名前は知らん」
「アレッシー エル アザード・・・成る程、グレイシア ダスト、警戒を強めすぎたな・・・」
グレイシアは氷の剣を褐色肌の男に突きつけていた。
「はぁあ・・・結局暴力でしか解決出来ない訳か。あっしはあんま好きじゃねぇなぁ。だろ?アビエラちゃん」
「っ・・・」
司会進行をしていた女性、アビエラは新月に銃口を向けていた。しかし、新月も同じく同時にアビエラの頭に銃口を突きつけていた。
「その銃下ろしなよアビエラちゃん。あんたは他と違ってあっしと同じただの人間だろ?互いに撃ったら死んじまう。それに、旧友もこの記者会見に来てくれてんだ。穏便に行こうぜ?」
新月がチラッと見ると教頭と響煌もアビエラ向け銃を構えたいた。
「こんな真似をして、タダで済むと思わないでよ?あなたは我々に協力さえしてくれれば世界は救われるかもしれなかったのに」
「そっくり返すよ。あんたらがこんな真似をしなきゃそもそもあっしはここに立つ必要はなかった。つか、最初っから互いに協力し合える関係なら世界はこんな切羽詰まった感じにはならなかっただろうが。全部、自身に都合のいいように生きてきた連中が世界を支配した因果の果てがコレなんだよ。だから、今はお互い見守ろうぜ?俺の息子も戦ってんだ。んで、お前たちに罰を与える。俺もムカついてんだ。この戦い終わったらお前、お尻ぺんぺんだからな?」
「せ、セクハラはやめて!!!」
アビエラは顔を赤くした。
「ははは!!冗談!!あんたはあいつらと違って別に好きでそのポジにいるわけじゃないのは分かってる。だからこそ見守ってくれ。この戦いの行く末をよ・・・ほんとにもぅ、俺たち人間は、一体いつになったらこんな争い止められるんだろうなぁ」
新月が眺める中、ジュネーブ防衛戦は第二局面を迎える事になる。