私の日常、その裏側で
前に相当えげつない感じになるからと思って、R18版として第一話投稿しましたが、じっくり考えてやっぱりこれだけは、自分の全てを捧げる勢いで書きたいから、出来れば全ての人が読めるようにしなきゃと思って全年齢版で描き直しました。ただ、ギリギリで行きますのでご注意を。
そして世界観どころか、世界、主人公そのものが全く前作シリーズと異なるので、この最終章だけはタイトルごと変更しました。
かつて平和を愛し・・・
そして平和に愛されなかった者達へ・・・
今ここにこの物語を捧ぐ・・・
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ーーー到達点 (グラウンド ゼロ)
「めない・・・僕はまだ、諦められないんだ」
赤く染まる空、目の前には誰かがいる。
「・・・そうなんだ。ここまで来ても君は・・・いや、君らしい答えだね、礼。こんなに『死』を目の当たりにしても君は自分を曲げない・・・昔、ニヒルさんは言ってたね。勝負の最後は互いに分かりあって仲直りって。だけど、まだ僕たちは分かり合えてない。君を、完全に屈服させるまではこの勝負は終われない。
ならさ、勝負をしようよ。正真正銘、この世界の総てを懸けた、最後のゲームを」
白い髪を持ち、赤い目をしている少年は語りかけた。
「今の僕たちなら変えられる・・・行くよ、桜蘭」
そして白髪の少年は空へと舞い上がり、大きく手を広げた。
「平和を願いし者たちよ、この世界で闘う者たちよ!」
そこに見えたのは、白い髪を持ち、赤い目をした1人の・・・
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ーーー日本国 某県 某市 午前6時前
「っ!?」
・・・いつもの天井が見える。目覚ましはまだ鳴ってない。
変な夢を見た。私は私じゃなくて、まるで別の誰かになってた。誰かの経験を見せられた、そんな夢だ。
けど、目が覚めた瞬間、どんな夢か忘れてしまった。
原因はなんとなく分かる。後1日、今日までだからなんだろうな・・・憂鬱、それが変な夢を私に見せた。
「ツキ・・・ミツキ!!」
下の階から私を呼ぶ声が聞こえる。輝夜 ミツキ、それが私の名前だ。そして今私を呼んだのは母、輝夜 カマール。名前の通り、母はアラブの方の出身。半ば駆け落ちでこの国に来たらしい、まぁ、そう言うのは興味がないか。そして私はいわゆるハーフって奴だな。中東顔してはいるが、日本語しか話せないんだけどね。母もどう言うわけか母国語を話したがらないから、余計にだ。
「いいじゃん、今日まで休みなんだし」
そして私の憂鬱な理由、それは明日から新学年になる事だ。中学2年、またあのクソみたいな環境に突っ込む事になると思うと気分は最悪だ。だからせめて、最後の今日くらいは休みを謳歌させてくれ。
「早くしなさいよっ!!パパのテレビ始まっちゃうじゃない!!」
「は?なに、あいつテレビ出てるの?」
「何寝ぼけてんのよ!!」
「そうだぜねーちゃん!!国連の新しい事務局長になったじゃねーか!!それの挨拶だよ!!」
いつもは小うるさいだけの私の弟、三日月がテンションマックスで私の部屋に入り込んできた。
「ばっ!!三日月!!私の部屋に勝手に入らないでっていつも言ってるでしょっ!!」
「知るか!!良いから降りて来いって!!」
何なんだ?何か変だ・・・私は階段を降りて台所のテレビを見た。
確かにいる。あの顔、日本人を代表してる特徴のないあいつは私の父、輝夜 新月。
何が起きてる?あいつは国連なんて物には一切釣り合わない、環境保護だのなんだの言ってゴミ拾いやらなんか変な活動してる奴だぞ?稼ぎも殆どない、みすぼらしいを象徴するかのような奴だ。そんなあいつが大量のカメラに囲まれ、似合わない馬鹿みたいに高そうなスーツを着て会見場に立っている。
『それでは、世界環境機関。輝夜 新月事務局長、お願いします』
世界環境機関・・・事務局長!?私の父、新月は司会の指示で一歩前に出て大量のマイクに向かって口を開いた。
『一体いつになれば、我々は理解できるのでしょう・・・私はこれまで、世界の環境問題について散々話してきましたが、誰もこの私の言葉に心から向き合う者は存在しませんでした。まぁ、それもそうでしょう。私がこれまで話してきた事は全て虚実ですから・・・そうです。真実はもっと残酷です。この先何十年と地球の環境について考える程の猶予はもう無い、それが真実。人類の滅亡はもう目の前まで来ている。そして、その存続が出来るのかどうかは、今日決まる』
何言ってんだ?この親父・・・ふざけてる?いや、ならなんで手があんなにも震えて・・・あ、ドッキリか。
『局長、予定に無い話は謹んで・・・』
司会は驚いた顔で父を止めている。しかし、父の答弁は終わらない。
『我々人類は、常に発展を求めて進み続けた。その結果、世界に大きな傷を付けてしまった・・・我々の進化は、来てはならない領域に踏み込んでしまったのだ。私は常々思う・・・人類は神が残した最悪の失敗作であると』
周囲がざわついている。何なんだこれ・・・母も弟も、固まっている。ドッキリにしたって趣味が悪すぎる。
『人類が生まれた、それこそがこの世界にとっての罪だったのだ・・・そして今日、その罪が裁かれる。我々が進化を望み続け、その代償を払わなかったが故、世界の運命は一人の人間に全ての命を委ねる事となってしまった・・・
彼が来る・・・我々人類の罪を裁きに、怒りと悲しみを胸に・・・全てを終わらせに彼は来る・・・この世界を終わらせる彼の名は・・・』
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「坂上 桜蘭」
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「っ!?」
いつもの天井・・・今の、夢?時間は、午前8時回った・・・
「ツキ・・・ミツキ!!早く起きなさい!!」
「う、うん・・・今行く・・・」
私は起きて顔を洗った。何だったんだ今の夢?坂上 桜蘭・・・聞いたこともない。けど、何でだろ・・・私はそいつを覚えてないとダメだった気がする・・・彼は私に・・・
『スパーンッ!!』
「いったっ!!!」
突然私の足に激痛が走った。
「おい、いつまで寝腐ってやがんだよ?バカ姉、邪魔なんだけど?」
「っ・・・三日月っ!!何すんのっ!!」
弟は変な紐みたいな奴で私の足を叩いた。
「だったら気づけよ、で、どいてくれない?そこ通りたいんだけど?このぐーたら」
腹立つ〜・・・弟のくせにクソ生意気・・・
「ケンカしないのっ!!三日月、あんたちょっと口悪すぎよ!それでミツキも、ぐーたらし過ぎ!!着替えたらさっさと手伝いしなさい!!」
口うるさい母、そしていつもいない父。いつもこうだ、私の日常は・・・イラつく。
「ごめん、ちょっと今日約束あるから」
「友達と約束?」
「そんなとこ」
「お前友達いたの?」
うるさ、
「昨日の夜、今日が最後の休みだから遊ばない?って来たの」
「ふーん、まぁ気をつけない?夕方には戻るのよ?」
「分かってるって・・・」
私はさっさと家を出た。別に今日は友達と約束なんてしてない。ただ単に実家が気持ち悪かった。
何も無い日常、変わり映えのしない景色。
世間は色々進化して変わったとか言っているが、そんな変化なんて私には何も感じない。
何か、ドカンと一気に変わったりしないものだろうか?
外に出て商店街をぶらぶら歩く、すれ違う人の会話に聞き耳を立ててもくだらない話題ばかりだ。
「昨日のドラマ見た?」
「見た見た!!かっこよかったよね!!」
「明日の会議の事ですが・・・」
「ねぇねぇ、おいらあそこ行きたい!!」
「ダメ!駄々こねないの!!
はぁぁ、このありふれた会話たち。この一見どうでも良い言葉は実は隠された暗号だったりとかしないかなぁ。例えばドラマは何か別の意味があって・・・ふむ、ちょっぴり面白いストーリーが出来た。
急にどうしたって?これは私の趣味だ。色々と何気ない人間観察をしてそこから適当にストーリーを妄想する。そうすればまだこのクソみたいな現実を見ずに済む。
そんなこんなでぷらぷらと街を歩く、その時だった。私は少し外を歩いたのを後悔した。
「あれ?あいつミツキじゃね?」
「うわ、ほんとだ!!」
っっ・・・・なんで、こんな時に出くわすんだ。あいつらは一年の時の気に食わない奴らだ。男女のグループでいわゆるカースト上位の連中だ。用が無いのなら消えてくれないかな。私は明日お前たちと同じクラスになるかもしれないのが嫌すぎて寝不足なんだ。
「おいミツキ、お前ここで何してんだ?」
「・・・・・」
「あれ?質問聞こえますかー?もしもーし?あ!そっか!!お前言葉通じないんだっけ!?確か親父さんがアフリカなんだって?アフリカだとアレな感じ?腰蓑的なやつ巻いてウホウホやってんの?」
「ぶっ!!マジ草www」
な訳あるか、確かに私はハーフだけど言葉は通じるし、父は一応は環境保護団体の人間だ。何してるから知らんがな。てかそもそも父は日本人だ。国籍が違うのは母だ。と言うかアフリカじゃない。
今のこれだけでどれだけツッコミを入れさせる気だ?疲れた・・・面倒くさ。
「あ?なんだその目はよぉ、文句あんの?」
「・・・いや、無い」
「まぁ良いけどさ、お前明日学校来るの?」
行かなきゃどうすんだ。億劫だが、かと言って不登校になるつもりはない。
「お前マジでキモイからさ、明日から学校来るんじゃねーよ?もし来たら、分かってんだろーな?」
は?キモイ?私はお前に気持ち悪がられる事をした覚えはないけど?確かに見た目は褐色だし、地毛が銀髪だから、この国じゃ変な風に見られるのは当然だ・・・
けど、それだからって・・・
私はそいつを睨み返していた。その時、私は強引に髪を掴まれた。
「痛っ!!!」
「ちっ・・・お前見てるとさぁ、ボコりたくて仕方なくなるんだよ。生理的に無理、さっさと消えてくれねーかな?」
私はそいつに無理矢理路地裏に連れて行かれた。なんで・・・なんでこんな事になってる?私だけがどうして?
「げほっ!!」
こいつの拳が私のみぞおちに入る、私は息ができなくなり地面に倒れ込んだ。
なんで私だけがこんな目になるんだ・・・何がいけない?何故弟の方は私と違って周りと仲良く出来てる?私の何がダメなんだ?
理解出来ない、こいつら、なんで私をこうまでして嫌うんだ?なんでこいつらは人が殴られるのを見てゲラゲラ笑ってる?
「もーその辺にしといたらー?」
一人こいつを止めた。こいつのグループの女子、そいつは私に近づいた。
「ねえミツキちゃん、助けてあげよっか?あいつはあー言ってるけどさ、一応同じクラスだったじゃん、同じ仲間じゃん?だからさ、助けてあげる」
「へ?」
急な何を言い出すんだ・・・?あ、ぁぁ・・・この後の展開は分かったよ。もう・・・
「けど、ただで助けたら私が怒られちゃうもんね。だから条件、君のお父さんって確か何かの団体の会長やってるんだっけ。そうねー、あ、明日みんなに10万円ずつ持ってきてよ。そうしたら助けてあげる。あ、なんなら私たちの仲間にしてあげるよ?ねー、それなら良いよね?」
「あー、明日持ってきたら俺お前許すわ。学校にも来ていいよ?けど、持ってこなかったら、これだけじゃ済まないからな?」
金・・・なんとなく分かってた、もしかしたら私がこんな目に遭ってるのは、それが原因の一つかもしれない。父親が金をそれなりに持ってるから、こいつらはそれに嫉妬してるのか・・・
けど、私の家はそんな金持ちでもなんでも無い。そもそも父は会長とかそんな凄いやつじゃ無い。家にいつもいない、家族の為に何かするでも無い。一人でいつも仕事してるクズだ。
・・・最悪だ、もう私の人生は終わった。明日から私はどうすればいい?親に相談する?駄目だ、母は『お前がしっかりしてないからだ』としか言わない。弟も・・・誰も、誰も私の事を分かってくれる奴がいない。
「んじゃ明日ねー」
あいつらはいなくなった、私は汚い地面に転がったままだ。
じゃぁ死ぬか?それも良いかもな・・・誰か私を殺してくれないかなぁ、それか・・・
あいつら全員死ねば、そうだ。そっちの方が良いや。誰か、あいつらを殺してくれ。
『グルルルル・・・』
唸り声?野良犬?こんなとこにまだいたのか?立たないと、流石に犬に襲われるのは嫌だ。
・・・だが、私の目の前にいたのはこれは・・・犬じゃ無い。何コレ・・・剥き出しの牙、尖った鱗、動物云々じゃない。コレは例えるなら、化け物・・・
「うわあっ!!?」
私は情けない声と共に走った、後ろからその化け物が追いかけてくる。なんで、なんで私だけこうなんだ?なんで誰も私を助けてくれない?
「あっ!!」
私は転がってたゴミに躓いて転んだ。そして化け物に追いつかれた。
「誰か・・・」
声を出してみた。けど、私を助ける人は何処にもいない。
この時私は冷静になった。別に良いか、もう。私の人生こんなものなら、もういいや。どうせこの先生きててもつまらない。ならいっそのことこの異形に殺されるのなら、最後の最後で私は誰も経験したことのない世界を体験した。それで・・・私はゆっくり目を瞑った。
「それで良いのか?」
え?
目を開くと一人の青年がいた。正直に言おう、金髪碧眼の超イケメン・・・
「選べ、輝夜 ミツキ・・・生きるか、死ぬか」
「なんで私の名前・・・」
「命の王は全てを観る・・・だが、俺はまだ選ばない。だからお前が選べ、この世界で生きるか、死ぬか」
この時、突然私の生存本能が刺激された。死にたく無い、まだ生きていたい。
「そうか・・・ならば『死』」
青年が一言呟いた。その瞬間、あの化け物は急にバタンと倒れてしまった。そしてみるみるうちに消滅していく。
「え、え?」
「立てるか?」
「は、はい・・・」
私はその人に手を差し出され、引っ張り上げられた。その瞬間、私はある事を感じた。一気に身体の痛みが無くなっていく。
「あ、ありがとうございます・・・えっと、名前・・・」
私は名前を尋ねた。この人は、私の人生とは何か違う。何かを経験してきた人だ・・・知りたい、私はずっと疑問だった。なんでみんなこの世界で満足に生きていられるのか、他人を蹴落として嘲笑って、そうやって生きる人たちしかいないこの世界。それを見て見ぬふりをするこの世界。なんでみんなそれで満足してるのか?
この人は、それを知ってる・・・世界の意味を。そして私はこの人を知っているこの人は・・・坂上 桜蘭。
「え?」
何で名前を・・・何処で?
「知りたいか?」
「は?」
「知りたければカラスを追え、そこが全てに繋がる」
『バリバリッ!!』
「わっ!!」
突然目の前で稲妻が弾けた・・・
桜蘭さん・・・桜蘭さんは私の目の前から消えていた。
これは、本当に私の人生が変わるかもしれない・・・
私は少しの希望を見て、家路に着いた。