7話 チョリ〜ッス
コンコンコン
「どうぞー」
「チョリ〜ッス」
20代前半といったところだろうか。金髪のチャラチャラした男性が入ってきた。面s-3の苦手なタイプだ。
「私仮面大学から参りました久 死鰤と申します。本日はお時間いただきましてありがとうございます!」
ツンツンヘアーの金髪にキラキラしたピアス。完全に陽の者だ。面s-3の大嫌いなタイプである。
「⋯⋯いつまで立ってんだよ、座れよ」
「すみませんっ、指示をいただいていなかったものでつい」
それを聞いたリーダーの國丸タンコロが眉間に皺を寄せた。
「なにお前、俺が悪いって言いたいわけ? 椅子座るくらいいちいち指示出さなきゃダメなの? そんなんで会社入ってからちゃんと働けるの?」
「⋯⋯すみません」
「あとお前、口の利き方がなってねぇな。『すみません』じゃなくて『申し訳ございません』だろ。大学でなに学んで来たんだよ」
陽キャが嫌いな面s-3はそういう応募者が来ると徹底的にいじめるのだ。読者の皆様にはお見苦しいところをお見せしてしまい本当に申し訳なく思っている。
「んで、お前なんでうちに入りたいわけ? 仕事出来そうに見えねーけど」
ナンバー2の串刺が聞いた。3人とも本当に陽キャラが嫌いなのだ。彼らは学生時代陽の当たらない場所でひっそりと暮らしてきたので、その頃に培ったジメジメした力を持っているのだ。
「はい、私が御社を志望した理由は19個ありまして⋯⋯」
「多いよ! 嘘つくんじゃねぇ!」
串刺に理不尽にキレられる応募者。不憫でならない。けど、19個はさすがに嘘だろ。本当だったとして、全部言うつもりだったのかお前。
「志望理由はあなたがた面s-3の皆さんに憧れたためです」
「あぁん? 点数稼ぎのつもりか? 俺たちゃ面接官だぞ? しかも俺たちが死ぬまでうちでは誰もほかに面接官になれないんだぞ? 俺たちに死んでほしいってことだよな?」
点数稼ぎをしたいがために墓穴を掘ってしまった応募者。ここから挽回なるか。
コンコンコンコンコンコンコンコンコン
「國ちゃんにちょっと用事あるんだけど、入っていい〜?」
オタフク社長の声だ。
「いいっすよ」
面s-3で1番の若手のロンドが答えた。
「お邪魔しま〜す」
「あっ、フクちゃん久死鰤〜! 元気してたぁ〜?」
応募者が突然社長に話しかけた。
「ちょお前失礼だろ! 社長、お知り合いなんですか?」
「知らない」
「ちょっと忘れちゃったの〜? さっさと思い出して俺の事合格にしてよぉ〜」
「私は生まれた時から今までの記憶を全て完全に覚えているが、君のような男にあった記憶は1ミリも存在していないよ」
応募者の嘘がバレてしまった。点数稼ぎに社長の知り合いという嘘。もう極刑はまぬがれないだろう。
國丸がどこかへ電話をかけると、すぐに部屋にサングラスをかけたマッチョの黒服が入ってきた。
「ちょっと、何するんですか! 離してください!」
暴れる応募者をガッチリ掴んでどこかへ連れていく黒服。
「もちろん不合格な、異論はないな?」
國丸が2人に確認する。2人はうんと頷いた。
『不採用理由:名前に死が入ってて不吉だから。ていうかそんな命名可能なの?』