6話 オールマイティ
コンコンコン
「どうぞ」
「失礼します」
よく分からない見た目をした応募者がドアを開け、面接会場に入ってきた。声から男性だと判断出来るが、今のところ言えるのはそれくらいである。
「場所変わりましょうか」
3人の面接官『面s-3』のリーダー、國丸が応募者に言った。
「うん、やはりあなたは長い机の方がしっくりきますね」
面s-3の座っていた椅子に腰をかけ、机に手を置く応募者。片や1つのパイプ椅子に3人で座る面s-3。
「では、質問をさせていただきます。なにか特技はありますか?」
「なんでも出来ます」
強気に答える応募者。
「では、この石ころをパンに変えてみてください」
「失礼ですが、人はパンだけで生きているわけではないのですよ」
「は?」
とんちんかんな返答を聞き、あからさまに不機嫌になる國丸。
「あ? なめてんのかテメー?」
國丸はあまりの怒りにヤンキー中学生のようになってしまった。これでは使い物にならないので、1番の若手であるロンドが引き続き質問をした。
「えー、なんでも出来る中で、特にアピールしたい特技はありますか?」
「死んでも復活できます」
「やるやんけ」
ロンドは応募者を磔にし、その辺に落ちていた槍でつついた。すると、応募者は死んでしまった。これでいいのだ、復活するという話だからいいのだ。
「⋯⋯⋯⋯」
応募者の遺体を見つめる3人。2時間が経った頃、リーダーの國丸が口を開いた。
「どれくらいかかるんだろうな」
「面接なんで、さすがにもうそろそろじゃないですか? じゃないと我々も待ちくたびれちゃいますよ」
串刺が凝った肩を回しながら言った。
さらに2時間が経った頃、また國丸が口を開いた。
「羊羹食べに行かね?」
「賛成!」
「いいですね!」
2人の賛同も得た國丸はノリノリで羊羹屋へと走っていった。それを追いかける2人。
応募者の遺体は掃除のおばちゃんによって社外へ運ばれ、スペースシャトルに乗せられた。
3日後に復活した応募者は、辺りを見渡して唖然とした。
「ここは⋯⋯!」
耐え難いほどの冷気、やたらでかい山。ここは火星である。応募者は死んでいる間にスペースシャトルで宇宙に飛ばされたのだ。
「チョベリバ!」
山に向かって叫ぶ応募者。
「チョベリバ⋯⋯」
応募者の叫び声が虚しくこだまする。
この一件以来、仮面商事には毎年火星からお歳暮が届くという。