第7話 ターミネイト
東から迫ってきていたのはラプトルと呼ばれる怪物だった。どちらかというと軽量サイズの方で俊敏なのが特徴だ。だいたい全長2.5mくらいだろう。ラプトルは恐竜という遥か古代にこのセカイ、アークの覇権を握っていた生物だと言われている。資料が少なく、残存個体数も少ないため、懸賞金が掛けられるほどのレアものだ。
「クゥアッ? キュオ、キュオ、キュオン!」
捕獲できれば当分は遊んで暮らせるだろう。しかし、そこまでの余裕はないと見るべきだ。少し先からする地響きのような音。あれは間違いなくやつだ。アナコンダはその巨体を遺憾無く発揮しながら真っ直ぐにこちらへ向かってきている。幸いなことに、この森の木々は高いものが多いため、身を隠す場所は多い。これだけの高さなら樹齢数百年はくだらないものばかりだろう。
「我ながら余裕だな」
そんな言葉が口から零れる。恐ろしい怪物達と対峙しているにも関わらず、周りの景観を観察できるほどの冷静さもある。左手1本惜しくなかったといえば嘘になるが、あの時の絶望的な経験は確実に今の私を強くしている。
「ラプトルの素材だけは回収しよう、金はあって困ることはないからね。私を狙ってた敵で残っているのは、アナコンダにラプトル、北にいた伏兵が1匹か……ここでラプトルを始末し、伏兵さえどうにかすればアナコンダとは五分よくて六か……」
それだけ勝率があれば十分だな。私ならできる。これでも最上の騎士の名を賜っている。負けない。負けられない。仕えるべき主を得たばかりなことだしね。
ラプトルは小鬼の死体を食していて、警戒が疎かになっている。ラプトルはラプトルキックともら呼ばれる強力な脚力から繰り出される蹴りが要注意だ。それに気を配って一息で殺せれば……。
「キュオッ! スゥー、クキャ」
背後から距離を詰めようとするとラプトルの鳴き方が変わり嫌な感じがした。風を切る音が聞こえたような気がしてそのまま左に避ける。そのまま飛んでいき、地面にべちゃっと被弾するとじゅうじゅうと溶かしいるような音がする。飛んできたのは酸の液体だった。
「伏兵だったのは、ポイズンクイーンアントか……! 厄介な」
その名の通り、ポイズンアントの女王蟻、クイーン個体だ。ラプトルとポイズンクイーンアントに背後けら迫りくるアナコンダか。手早く片付けていかないと八方塞がりになってしまう。
「ラプトルを傷つけないためには、クイーンからかな!」
そう言いつつクイーンアントの方へと距離を詰める。それを確認したクイーンアントは地中へと姿を消した。
「巣穴を巡らせていたのか!」
巣穴つきのクイーンの対処は厄介だ。さて、どう対処するか。