第6話 ウイルス・バスター
私にできる最善の一手、それは、騎士の誓いを成すことだ。騎士の誓いなど現代の騎士達はやらないような古臭い習慣であることは間違いない。それは認めよう。しかし、逆に言えば、昔からある由緒正しき行いなのだ。騎士の誓いは物語になるほど有名な話も多い。特に人気の話の1つに姫と騎士の物語がある。
「ここがソルガレスの森か」
ここソルガレスには資格のあるもののみが立ち入ることを許される。資格は簡単でいて難しい。”高潔な騎士”であること、ただその一点のみを求められる。これがこの場所に近寄り難い要因の一つとなっているのだ。
「……大丈夫みたいだな」
入り口と呼ばれている場所で手を行ったり来たりさせて、壁がないことを確認する。資格がない者は見えない壁に阻まれて、森に入ることすら叶わない。これもこの森の神秘性を高めている一因と言えよう。
「はぁっ! ふっ、はっ!」
森の中に入ると外では見かけないような珍しい怪物たちに次々と襲われる。これこそが力の試練だ。試練とは、ソルガレスの森で騎士の誓いを果たすために乗り越えねばならない3つの関門だ。1つ目がこの力の試練。そして次が知恵の試練、最後が勇気の試練。全てを乗り越えたものにのみ、騎士の誓いを果たすことが叶う。
「レイスにポイズンアント、ビートルキングに、アナコンダまでいるとは……」
どれも強力な怪物や怪異達だ。レイスには剣での攻撃は聞きづらいし、ポイズンアントは酸性の液体を飛ばしてくるため、触れれば剣が錆びてしまうし、ビートルキングは単純に硬い。単純だがひたすらに硬いというのはかなり厄介だ。アナコンダに至っては知恵が回る。意図的に気を倒して、逃げ道を塞いできたり、他の怪物や怪異を使って波状攻撃、挟み撃ち、伏兵など、対処に神経を使う。
「南から2体、東に1、北に伏兵、西に奴か。南から潰す!」
ケルベロスとはさすがに比べるまでもないがアナコンダと相当強い。ケルベロスが5点中5点だとしたらアナコンダだけで3点、周りに厄介な取り巻きがいると4点はいくだろう。今回はもちろん4点級だ。
「回り込んで、背後を取る」
南にいたのは、小鬼だった。女子供を好んで襲う習性のある最悪なモノたちだ。こちらの正確な位置までは掴めていないようで、警戒を怠らずに私の方を目指してると言った風体だ。一体が少し離れた所で後ろの一体の首を、音もなく水平に切り飛ばした。血が吹き出す。鮮血が飛び散ったことにより違和感を感じたらしいもう一体の小鬼がこちらの方へと振り返る。その振り返りざまに剣を合わせてやる。力はいらない。水平に剣を置いておくだけでいい。
「南は制圧だな」
2体の血で赤い池が出来上がっていた。このままだと血の匂いで他の怪物達がやってくるだろう。次はそこを狙う。