隠し部屋の密談
王城の隠し部屋にケルベスが人に見られぬように入った。そこにはダービス公が待っていた。ろうそくが1本灯る、その薄暗い部屋の中は不気味な雰囲気で満たされていた。人に聞かせられぬ話をするため、2人がここで密談することは多々あった。
ダービス公が声を潜めて尋ねた。
「女王の様子はどうだ?」
「意識がはっきりしない状態が続いております。」
「意識を取り戻すことはないのだろうな?」
「息のかかった者を潜ませておりますが、その様子はないようです。しかしメアリーやその侍女たちが女王に張り付いているため、手が出せない状態です。」
ケルベスの言葉にダービス公はうなずいた。
「まあ、意識を取り戻してあのことを言わなければよかろう。機会を待つか。下手に手を下して大騒ぎになり、あのハークレイ法師に乗り込まれればやっかいだ。」
「確かに。しかしいつでも実行できるよう、手配はしてあります。」
ケルベスの目が不気味に光った。ダービス公はまた深くうなずいた。
「それよりもジェイクだ。奴をさっさと始末しなければな。奴も見ておるかもしれぬからな。」
「はい。我らにお任せいただければすぐに仕留めますが、王女とサランでは・・・。今だに奴を取り逃がしておりますので。」
「まあ、今のところ、あのじゃじゃ馬にはジェイクを追い回していた方が都合がよい。その間に儂がこの国の実権を握る。気づいたころにはアメリアは用なしよ。すべて儂のものになっておる。ふふふ。」
ダービス公は笑った。ケルベスもニヤリと笑った。だが用心深いケルベスはすぐに厳しい顔の戻り、ダービス公に尋ねた。
「王女様は本当のことに気付いたりしないでしょうか?」
「アメリアにはジェイクを仇だと思い込んでおる。お前の証言でな。だがあの男が心配だ。」
「確かにそうでございます。」
「奴はいつ口を割るかわからぬ。適当に金をつかませておるがな。見つからぬように始末しろ!」
「はっ。では今夜にも。」
「アメリアの方はしばらくこのままにしておけ。だが時期が来たらお前の手の者を回せ!」
「それなら私めがこの手で斬りまする。2人ともども。相打ちの形で。ついでにサランも消えてもらいましょう。」
ケルベスの顔に残忍な表情が浮かんだ。
「よかろう。任せる。」
ダービス公はうなずいた。その顔にいつもの笑顔は全くなくなっていた。それは鬼のような恐ろしい顔になっていた。