表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/16

王宮の悲劇

 オーガス国は緑豊かな森に囲まれた小さな国である。この国を統治するマルーテ女王は心優しく、多くの人々から慕われていた。またその夫のコースラン公爵は女王を支え、政に真剣に取り組んでいた。


 この国は、以前はさびれて貧しかったが、ある時、この地をメカラス連邦の最高顧問である稀代の方術師、ハークレイ法師が偶然立ち寄った。この法師の助言により周辺の国から多くの人が集まり、町が発展し、この国は栄えて豊かな国になった。


 女王と公爵の間には一人娘のアメリアがいた。彼女は男たちを圧倒するほどの剣術の腕前であったので、じゃじゃ馬王女と陰で言われていた。だが彼女にも恋する男がいた。それはジェイク・タケロス公爵だった。若いながら有能な彼は、王城に勤めてコースラン公爵を大いに助けていた。またそのさわやかな雰囲気と思いやりの心を持つジェイクは誰からも好感を持たれて慕われていた。そしてゆくゆくはアメリアとジェイクは結婚して、この国を立派に治めていくだろうと国の未来も明るいように思えた。


 しかしそれはある出来事によって壊された。ある雨の日の夜だった。


     ―――――――――――――――――――――


 王宮内は騒然としていた。次々に広間や部屋や廊下、屋外に火がともされた。そしてそこに兵たちが走り回っていた。誰かを探そうとして・・・。

 王宮の中央には女王の部屋があった。そこに多くの者が集まっていた。その中から泣き叫ぶ女の声が響いていた。


「父上! 母上!」


それはアメリアだった。彼女に前のベッドには瀕死の重傷を負ったマルーテ女王が寝ていた。頭を斬られ、意識はすでになかった。そしてその横のベッドには斬り殺されたコースラン公爵の亡骸が布をかけられて置かれていた。


「一体誰が・・・誰がこのように惨いことを!」


アメリアは涙を拭いて近くの者に尋ねた。すると王弟ダービス公の家来のケルベスが進み出た。


「恐れながらタケロス卿の仕業でございます。」


その言葉にアメリアは目を見開いて驚いた。


「なに! まさか、ジェイクが・・・・」


「いえ、間違いなくタケロス卿でした。私が通りかかったとき、タケロス卿は血の付いた剣を握り締めて女王様の部屋を出てきました。あまりにも不審なことなので問い詰めましたところ、逃げて行きました。侍女たちも目撃しております。」


「そんな・・・何かの間違いでは・・・」


「いえ、逃げたのが何よりの証拠。多分、王女様や公爵を殺し、この国を自分の物にしようとしたのでしょう。王女様はだまされているのです。」


ケルベスはきっぱりと言った。その言葉を聞いてアメリアは茫然としていた。彼女はジェイクのことなら何でもわかっているつもりだった。しかし様々な証拠を突き付けられ、ジェイクが犯人であることは疑う余地はなかった。

 そこにサランとメアリーもようやく駆けつけた。メアリーは育ての親だったマルーテ王女とコースラン公爵の変わり果てた姿を見て、へなへなとその場に崩れこんだ。サランはケルベスに問い詰めるように尋ねた。


「タケロス卿の仕業だと聞いた。本当か? ケルベス!」

「ネスカ子爵。間違いございません。この目で見ました。」

「しかし・・・」

「いや、もうよい。」


サランの言葉をアメリアが遮った。


「ジェイクが・・・すべてジェイクがやったことだ・・・」


アメリアはそのまま立ち上がり、ふらふらと部屋を出て行った。


「お姉さま・・・」


その姿にメアリーはそれ以上、かける言葉を失っていた。

 アメリアは自分の部屋に戻った。そしてベッドに倒れ込んだ。


「うううう・・・・・。」


こらえていた悲しみがまた一気に彼女の心に広がっていった。裏切られた思いのアメリアは一晩中、泣き晴らした。そして朝になり、彼女は決心した。


「私がジェイクを討つ。父上と母上のために!」


     ――――――――――――――――


 アメリアは元々、勝ち気で、剣の腕に自信があった。彼女はその日からジェイク憎しの執念で国中、追い回していた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ