壮牙くんの家族
きっかけはこの一言だった。
「俺にとって、palletは家族ですから!」
満面の笑みを浮かべる可愛らしい最年少メンバーに一同癒されていたが、その一方で彼らの中にはこんな疑問が湧いた。
この中で母親ポジションは誰なのかと。
palletには壮牙を除き、アイドルでありながら街を歩くと怖がられてしまうメンバーばかり揃っていた。
「この中で母親っつったら、ルークだろ。髪なげえし。」
議論が続きだんだん面倒くさくなってきた天音は、投げやりな口調でそう言った。
「ルーク様は…絶対に有り得ませんね。詳しくは言えませんが断言できます。」
サシャは主人を横目にきっぱりと言い切った。
「それを言うなら、天音ではないのか?体も小さく、なかなかかわいい顔をしておるし。」
*ルークは天音を小さいと言ったが、178cmもある。
「なんだと!?俺は小さくて可愛くなんかねぇよ‼︎」
短気な天音はルークに食ってかかる。
ルークもそれをわかった上で面白がっている。
「はいはい、わかりましたから。
天音は背が高くかっこいいです。そんなにすぐ怒らないで。ルーク様もからかって面白がらないでくださいね。」
この瞬間、二人はサシャが母親だと悟った。
「なんですか?二人して黙ってこっちを見て…」
サシャは不思議そうな顔で二人を見つめ返した。
後日答え合わせにて…
「palletの家族構成?サシャが母親で〜ルークが父親だよ!」
元気にそう宣言され、サシャは一瞬驚いた後ぶつぶつと呟いている。
「ルーク様と夫婦…それに手のかかる息子が二人…いや、天音はペットポジションか…」
「じゃあ俺は壮牙の兄貴だな!」にこにこ笑顔の壮牙に同じような笑顔で宣言する天音。
その言葉を遮って「天音は弟!」と言いにやりと笑って見せた。
「俺の方が歳上だし体もでけぇだろうが!?」心外だと言うような天音の声に「弟が欲しいんだもん!」とおどけて逃げ回って見せる。
「よーし、俺から逃げ切れたら弟になってやるよ‼︎」
と、楽しそうに壮牙を追いかけ始めた天音。
「かわいい子供達じゃのう、母さん。」普段サシャと呼ぶように母さんと言い目配せをする。父親扱いはまんざらでもないようだ。
「天音、壮牙、あまり遠くへは行ってはなりませんよ〜!」
まったくと三人に呆れているようだが、その口元は嬉しそうに微笑んでいた。