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序
ある深山に囲まれた緑の地。
世の中心、最も華やかで雅やかと謳われる京からは離れた地。
しかしその緑深き里も例外なく、京から派遣された国司の者達によって管理されていた時代。
後の世からは平安時代と呼ばれる時。
妖かしがまだ巷を跋扈し、人々が神仏に救いを求めた時代。
世の流れとはあまりに縁遠いその緑豊かなその地方一帯では、近隣の山に棲むという『お山のお狐様』を畏れ崇めていた。
農作物の出来、不出来はすべてこのお狐様次第と信じる村人達によって築かれた祠。
その祠の向こうの深山はお狐様の坐す禁足地。
人がみだりに足を踏み入れることはままならない、神聖なる地。




