君との出逢い①
後悔している。
あの時、時間がないからって見て見ぬふりをした自分に。
『まだ、居てくれるよね?』
はやる気持ちを抑えきれずに、小雨が降る中を駆け足で向かう。
『あの子きっと怯えている。大丈夫、すぐに行くから。お願い待ってて』
誰かの為にこんなに必死になるのは、何年ぶりだっけ?
ううん、もしかしたら初めてかもしれない。
心臓がドキドキして、足は絡まりそうで気持ちだけがはやまっていた。
あの角を曲がったら、もうすぐそこに着く。
「ハァハァ…」
胸に手を当てて、あがった息を整える。
目の前には、遊具がほとんどない殺風景な公園。左隅端の整えられてない植木に目をやる。
驚かさないように、ゆっくり静かに近づく。
そこには、小さなダンボールが一つ、植木で少し隠れるようにポツンと置かれていた。
植木と蓋が屋根のようになっていて、ダンボールは小雨でも濡れていないように見える。
驚かさないように、そっと静かに開ける。
「遅くなってごめんね」
小さく呟いて、覗き込んだ。
ダンボールの中には、淡いピンク色のタオルが敷かれていた。
「あれ?いない……。どこ?」
慌てて、辺りを見渡し、植木の茂みをかき分ける。
「お~い。どこ?どこ行ったの?」
どうして、いつまでもいると思ったんだろ?
あれから、何時間経った?
誰かに拾われた?
もしかして、カラス……
嫌な予感がよぎる。
「ニャ~。ニャ~」
小さく猫の鳴き声をしてみる。
返事はない。
リュックから、スマホを取り出して『 母猫、子猫 、呼ぶ』を検索してYouTubeで流す。
静かに、耳を澄ませる。
小雨の音とYouTubeから流れる猫の鳴き声しか聞こえてこない。
馬鹿だ私。
なんで、あの時すぐに連れて行かなかったんだろう。