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1話-2 真王サマは知りたい!

 結局ジュリアスが逃亡したこともあって命は助かったロミアだったが、勿論そのまま自由の身というわけにはいかず王城の地下にある牢に捕らわれた。一階層に数部屋ある牢だが、どうも捕らわれているのは自分一人、全く人気が無く薄暗い、不気味な牢の居心地はとにかく悪い。

 尤もそんな文句をつけていられる立場にないことはようよう分かっていたのだが。


「くそっ、こんなはずではなかったのに‥‥‥」


 己の弱さを悔いる。本当であれば今頃、立ちはだかる敵は自慢の剣の腕で全て薙ぎ払い、ジュリアスを救い自国へと戻ることができていたのに。

 だがそこでふと考えなおす。ジュリアスは自分を殺しこそはしなかったが、南の国の王に心酔しきっている様子だった。自分のことを覚えてはいても、あの様子では仮に全戦全勝で彼の元にたどり着いたとして一緒に帰ることなどできなかったのでは?


「ジュリアス‥‥‥!」


 一人悶々と時を過ごしていたロミアの元に一つの足音が聞こえる。


「やあやあ、我が王城の牢の居心地はどうだ?」

「っ‥‥‥」


 足音の主は国王ロバーツ。相変わらずロミアは敵意に塗れた瞳でロバーツを睨みつける。


「そう怖い顔をするな。別に取って食おうという訳ではないのだ」

「‥‥‥何の用だ」


 鉄柵を挟み向いあう両者。


「お前には聞かねばならないことが沢山あるのだ、その為に生かしたのだからな」

「ふんっ、国王自ら尋問か。お前たちに話すことなど何もないし、そもそも私は西の国の機密など何も知らないぞ」


 わざわざ偉そうに言うようなことでもないことを威張って告げるロミアを鼻で笑いロバーツは言う。


「西の国の機密‥‥‥だと? そんなもの、つゆほども興味ないな」

「はぁ?」


 当然ロミアは怪訝な表情だ。


「では、答えてもらおうか。貴様は‥‥‥」


 何を聞かれるのかと身構えるロミアを前に、随分勿体付けてからロバーツが聞いたのは――


「ジュリアスと、幾つの頃から親しいのだ?」



 ジュリアスがロバーツ国王の側近に取り立てられたのは今から5年前、彼が14歳の頃だ。ロバーツが彼と出会ったのもほぼ同時期の話。当然それ以前のジュリアスをロバーツは知らない。

 ジュリアスが昔の話を全く話したがらない為に伝聞情報もほとんどなく、西の国の出のジュリアスの事を知る人物は南の国には一人たりともいなかったので彼の過去は今まで正にブラックボックスであったのだ。

 だがロミアは正真正銘ジュリアスの知人、おまけに相当深い関係にあったと見える!

 ロバーツはロミアから自分の知らないジュリアス像を根掘り葉掘り聞く為にわざわざ彼女の下へやってきたのだ!


「ジュリアスと、幾つから? そんなこと聞いて何になる」

「捗るんだよぉ!!」

「何が!?」

「いいから答えろ! 出会ったのはいつだ、お前たちはどういう関係だ、告白はどっちから!!」


 否、ロバーツはジュリアスの事、というよりもロミアとジュリアス、二人の事を聞く気満々であった!

 ロミアが見せたジュリアスに対するドデカイ感情、それを目の当たりにした瞬間からロミアとジュリアスの二人はロバーツにとっての推しカプになっていた!


「な、なぜそんな事お前に教えなければならないんだ!」

「知りたいからだが‥‥‥それ以外に何があるというのだ‥‥‥?」

「なぜお前が困る! というか告白はどっちからってなんだ。どっちも告白してないが!?」

「またまた~」

「またまた!?」


 実際問題ロミアは敵国のから南の国へ侵入し国王へ危害を与えんと企てた大罪人であるが、結果彼女ができたことと言うと「城門を守る門番に斬りかかった」のみであり、おまけにその門番も無傷。

 国王が重用するジュリアスの旧友でもあるということでロバーツは「彼女は結果誰にも危害を加えなかったのだから我々も彼女に危害を加えるのはよそう」と提案、秘書のエリザベートも「まぁ‥‥‥ギリギリ‥‥‥セーフですかね」と王を支持したので晴れてロミアは助かり平和な尋問を受けている。


「では、なんだ、恋人同士でもないのにわざわざ単身助けに来たと」

「‥‥‥それは、まあ、そうなるな」

「ははーん、片思いか」

「黙れ!!」





「ジュリアス、いつまでそう塞ぎ込んでいるのです」

「‥‥‥」


 時を同じくして、ロバーツの推しカプの片割れ、ジュリアスは王室の前の廊下の端でうずくまっていた。

 見かねたエリザベートが彼のメンタルケアに当たっているが状況は芳しくない。


「それで、結局彼女とはどういったご関係で? ロミアとは、いったい何者なのです?」


 エリザベートもジュリアスとは王の秘書と側近同士、それなりに長い付き合いになるが、彼に女っ気を感じたことは一度たりともない。

 エリザベート、28歳。王のあまりにもな恋愛脳に普段は自制を促す役回りだが、彼女も心は乙女。二人の関係は気になるのである。


「ロミアは‥‥‥古くからの友人だ。俺は捨て子で、彼女の家に世話になって育ったから、兄妹というのが近いか」

「なるほど、義兄妹のようなものですか」


 冷静に言葉を返しながら、エリザベートは内心アガっている。血のつながらない兄妹という設定は彼女の大好物。そもそもジュリアスはそのような表現をしていなかったが、好物故に彼女は多少強引に義兄妹認定して盛り上がっている。


「‥‥‥しかし、今更あいつに会わせる顔など、ない。俺は‥‥‥おまけに先ほども‥‥‥」


 しかし今のジュリアスは恐らく、そういった話で弄っていい精神状態にはない。

 出来る女エリザベートは空気だって読めるし、人の気持ちも慮れる。


「まぁ、あなた達の事情は知らないけれども、また落ち着いたら一回くらい顔を見せに行きなさい、積もる話だってあるでしょう」


 故にエリザベートはここはグッと我慢し、大人の女として悩める若者にアドバイスをするにとどめた。

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