尾瀬治哉短編集
一つの時代に二人の英雄が生まれ出でた悲劇を語ろう。
一人は、ルゲ郎。
一人は、剣子。
二人の運命が交錯する時、世界はひどく爆発する……。
『ルゲ空』
〈ッバァーン!!〉
教室の後ろで起こったイキナリの轟音に、剣子は振返った!
「ルゲ郎ーっ!!」
ルゲ郎は何者かに爆殺された!!
「ル、ルゲロォ~ウッ!!!」剣子は叫んだ。力の限り。
そこにちょうどやって来たのは剣子の元彼トメと連れのレミだった。
「あ、あんたの仕業なの?」
「フン!だったら何だよw」
「ゆ、……許さない!絶対に許さない!!!」
「ちげーよw俺じゃねーよっwww」トメがシラを切った。
「被害妄想ひどくないっすか?パイセン」イッコ下のレミが口を挟む。
「……ゴメン…」剣子はうなだれた。
「気にすんなよ。つーか俺たちで一緒に天下とらね?」
「……ありがとぅ」剣子はトメの優しさに涙した。
こうして物語の幕はいきなり明けたのだった……。
放課後の教室で起こったイキナリの大爆発。死者5名。生き残ったのは、剣子とトメとレミの3人だけ…。教室の天井には、ルゲ郎が飛び散った後が花火のように残っていた……。
※
黄昏時の爆破事件から10分後、剣子たち3人は学校の正門をあとにした。入れ替わるように、救急車がなだれ込んで来る。
「アタシたち…どうなっちゃうのかな?」剣子がつぶやくようにトメに聞いた。
「んな事知らねーし。関係なくね?」
「関係ないって…アタシたちの目の前で、ルゲ郎が殺されたのに…」
「事故っすよ、事故www」レミが剣子をあざ笑った。
「……………」
レミは確かに美しい。とても小学5年生には見えない。剣子は思った。
「だけど、アタシだって来年から中学生なんだ!」
そして、おもむろにレミに飛びかかった。
「て~めぇ~ば~か~や~ろ~!!」
その刹那!トメが叫んだ!
「やめろ!そんな事、望んでると思うか!?…アイツが……」トメにしては珍しく真顔だった。
「アイツが!…デフ山がよぉ!!」
「つーか、デフ山って誰よw?」レミが間髪入れず突っ込んだ。
「ハハハハハッ!だわな」トメが笑った。
「良かった……みんなに笑顔が戻った…」剣子はこぼれ落ちる涙を手で拭った。
※
剣子が目を覚ますと、枕もとのめざまし時計はすでに8時をまわっていた。
「……夢……だったら良かったのに…」
しかし、昨日の事はよく覚えている。ルゲ郎が…保育園の頃からの付き合いだったルゲ郎が、死んだ。
TVのニュースでは、昨日の夜から爆破事件の話題で持ち切りだった。その度に画面にルゲ郎の在りし日の姿が映る。時に写真で、時にビデオで……。
耐えられなかった剣子は、昨夜はすぐにベッドに潜り込んだ。そして、お気に入りの映画のDVDを観るうちに眠りに入った。
〈トングッ!トングッ!〉剣子の部屋のドアをノックするのは母だ。
「剣ちゃん…けいじさんが来てるの……。話聞かせて欲しいんだって……」
ドア越しに母が続ける。
「嫌だったら、無理しなくていいのよ。帰ってもらうから……」
しかし、剣子は思った。(洗いざらい話そう……昨日、アタシが見た事を)
「ううん、いい。今行くから」
剣子が居間に下りて行くと、遠い親戚のおじちゃん、Kei次さんがいた。
「わぁ!Kei次おじちゃん!久しぶり!!」
「お~っ!元気にしてたか?さ、さ、聞かせておくれ!昨日見たDVDの話を!」
「も~、またぁ?いつも同じ話聞いて飽き無いの~?」
「飽きるもんか!剣子のストーリーテリング能力は異常だぞ!何度も聞きたくなる!」
「ふ~ん。それじゃぁ、仕方ないね。話すよ」剣子はにっこり微笑んだ。
そのあとおよそ90分。剣子は昨夜見たお気に入りDVDの話をし続けた。
Kei次も剣子の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の話を聞き続けた。
※
突然ですが、連続ブログ小説『ルゲ空』は、連載を打ち切らせて頂きます。
ルゲ郎もホントは生きています。
短い間でしたがご愛読ありがとうございました。
尾瀬治哉先生の次回作にご期待ください!
『君剣子』
ルゲ郎は激怒した。
必ずあの泥棒娘を爆殺しなければならないと覚悟した。
ルゲ郎の、ケータイ電話を持つ手は震えていた。電話からとぼけた声が聞こえる。
《あれ?そうだったっけ?ルゲ郎にちゃんと返さなかった?》
「言った風な事、聞くなぁーっ!!」
投げつけられたケータイが、〈バシャッ!〉と音を立て部屋の壁にぶつかった。
イライラしたルゲ郎は、頭を抱えベッドにうずくまった。大きな物音を聞きつけ、すぐに母がやって来た。
「どうしたの!?ルー!」
「何でもござらん!出て行く事を願う!!」ルゲ郎は思わず声を荒げた。
(お、恐ろしい子……あまりにも大人び過ぎている)母は内心思った。無惨にも床でバラバラになっているケータイを発見すると、母は言った。
「理由を話してくれたら…新しいケータイを買ってあげる」
ルゲ郎は、「チラリ」とケータイを確認すると、声を絞り出すように話し始めた。
「奴が、奴が悪いのです。母様……」
「ヤツって…誰?」
「剣子です……。剣子が私の大事なDVD『バック・トゥ・ザ・フューチャー/コンプリート・トリロジー』を、二年前に貸して以来返してくれないのです!!」
「か、借りパクされた……?」母は、剣子の行為に恐怖した。
「今、この瞬間にも奴がトボケた顔してエンドレスリピートしているのかと思うと……」
壁を拳で叩き、ルゲ郎は叫んだ。
「許す訳には、行かないのです!母様!!!」
母は、黙ってルゲ郎の部屋をあとにした……。
※
落ち着きを取り戻したルゲ郎は、ふと時計を見た。
「もう20時か……」
小学6年生、11歳で午後8時を20時と言う少年がいるだろうか?
しかし、ここにいた。彼は確実にここにいるのである。
11歳の少年にとって、1年はあまりに長い。
そんな大切な時間を……2年!実に2年も剣子はルゲ郎から奪っていた。
何の気なしにDVDを貸したのは小学4年の夏休み。
ルゲ郎は剣子に恋をしていた。そんな女の娘にDVDを奪われ、ルゲ郎は豹変した。午後8時を20時と言うようになった。
夕食の時間はとっくに過ぎていたが、母は用意して待っていてくれた。
「今夜は、ハンブルグよ」優しく微笑んで言った。
「やり申した!!」変わったと言ってもまだ男の子である。ルゲ郎は素直に喜んだ。
「で、どうするつもりなの?」母がぶしつけに聞いて来た。
「手は考えてござる」即答し、続けた。
「しかし、それには……トメの協力が必要なのです」
「トメくんの!?」と、母。
トメの家はニトログリセリン屋を営んでいた。
母は全てを了解し、それ以上聞くのをやめた。
「今宵の豆腐ハンブルグ……一生、忘れはしませぬ」
ルゲ郎は母に深々と頭を下げ、その勢いでみそ汁をこぼした。
※
連続ブログ小説『君剣子』ですが、多くの読者の皆様方から「アゲ山サゲ太郎先生の著書『恋のサントドミンゴ/あの夏の冬』の盗作ではないか?」とのご指摘があり、作者に確認致しました所、盗用を認め謝罪してきました。
つきましては、誠に残念ながら『君剣子』の連載を打ち切りとさせて頂きます。
尾瀬治哉先生の、本当の戦いはこれからだ!!
短い間でしたが、ご愛読ありがとうございました。
__なに
——なに
――なに
――全角!
――全角!!
——環境依存‼
――全角
――それ
—— ――
!!全 !!
‼環境
!!半
地球暦1121年
地球暦1121年
地球暦一一二一年
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