プロローグ2
どうする?
船の上から武装した人達を見ながら必死に考えた。
このまま船を出れば間違いなく「なにか」の戦いに巻き込まれる。
俺は、戦いが苦手だ。
優秀な兄と違い、剣を握ると震えがとまらない。
ましてや人を襲う魔物「害獣」が現れようなものなら誰よりも速く逃げ出すような奴だ。
そんな奴がこんな武装集団の中に入れられたなんて冗談じゃない。
「・・・・・・降りろ」
後ろから男の声がした。
振りむいた途端、俺は「そいつ」に船から身を投げ出された。
「え、---あっああああああああ!!!」
背中を砂浜に強打した。頭から落ちてれば死ぬかもしれなかったであろう。
「おい!!殺す気かああ!!」
「そいつ」は俺の声に反応もしなかったが、周りの武装した人達は俺の声に反応した。
俺を見るなり周りの人達はざわざわとし始めた。
「な、なんだよ・・・・・・」
無理もない、これから「なんらかの」戦いが始まろうというのに俺の恰好は寝間着そのものだったからだ。
だが、俺にとってこれはチャンスだった。
「あ、あの!この島の管理人はいますか!!俺、招待されてないんです!招待されたのは俺の双子の兄貴でなんかの間違いで船に乗せられてたまたま来ちゃったんです!ほ、ほら、ほらこんな格好で来る人いないでしょ!!だから俺を母国に返してくれよ!」
「・・・・・・無理だな」
一人の男が船から降りてきたと同時に声を放った。
真っ黒な長めの髪に紫色の瞳、服は黒一色のマントのようなものを纏った不思議な雰囲気の男だ。
俺はこの声を知っていた。
・・・・・・降りろ
「お前!さっき俺を船から突き飛ばした奴か!!」
男は俺の言葉には反応見せず近づいてきた。
「な、なんだよ」
「何も知らないようだから教えてやる。ここは願い島。文字通り願いを叶える島だ。聞こえはいいがこの島は単なる殺し合いの島だ」
「こ、殺し合い!?なんでそんな・・・・・・」
「願いを叶える為だ。周りの顔をよくみろ」
俺は周りを見渡した。最初は身に着けている武装にしか目がいかなかったが。表情をよくみるととても険しい顔をしている人がほとんどだった。
「ここに来るような奴は他人の命を踏みにじってでも叶えたい願いがあるような頭のおかしい連中だらけだもちろんこの俺も含めてな」
「な、なんだよそれ・・・・・・」
------その通りです------
どこからか声が聞こえた。
「上だ!!」
どこからか声が聞こえ、俺は空を見上げた。
金色の長い髪に女神のような美しい顔立ち、だがそんなことが頭に入ってこない異様な光景がそこにあった。
「う、浮いてる・・・・・・」
「初めましてみなさん。そしてようこそ願い島に。私がこの島の管理人「メタトロン」と申します」
美しいはずの美声がすごく不気味に聞こえた。