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ダンジョン潰しのトラップマスター  作者: 夜々里 春
【迷宮の創造者】第三章
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◆第ニ話『旧友との再会』

 こちらは名乗っていない。

 にもかかわらず名前を言い当てられた。


 どうやら間違いないようだ。


 彼女はセティス・メイエン。

 王立魔導学院時代の同期だ。


「やっぱりそうか。昔と雰囲気が違ってて、まったく気づかなかった」

「当然でしょ。だってあれから10年も経ってるのよ。っていうか、あなたいままでどこに――」


 セティスは口にしかけた言葉をいきなり止めた。

 咳払いをしたのち、引き連れた兵士たちに言う。


「少し外してもらえますか」


 ただ、なかなか兵士たちは動かなかった。

 おそらく魔導師の格好と〝ジェイク〟という名から正体に至ったのだろう。こちらに訝るような目を向けている。


「メイエン卿、まさかその男……」

「大丈夫よ。彼はみんなが思ってるような人ではないわ」


 セティスのはっきりとした物言いもあってか。

 渋々ではあるが、兵士たちは離れていった。


「ごめんなさい。彼らも悪気があったわけじゃ……」

「慣れてるから気にするな。それよりさっきの答えだが」

「そうよ! 本当になにをしてたの!? あれから連絡をとろうとしても居場所がわからないし、もうどうしたらいいのってずっと悩んで――って、いまのなし! 忘れて!」


 勢いよく詰め寄ってきたかと思うや、顔を真っ赤に染めて引っ込んでしまった。忙しいことこのうえないが、昔のセティスを思い出させてくれる姿だった。


「まさかあのセティスが俺を心配してくれるとはな」

「い、一応同期だったんだもの。気にして当然よっ」


 魔導学院に通っていた頃のセティスは、誰よりも周囲の人間に気を配る優しい人間だった。どうやらあの頃から変わっていないようだ。


「いまは冒険者っぽいことをしてる。で、最近の活動拠点がここだ」

「……ねえ、もしかしてトロールの群れを迎撃したのって」

「ん、ああ。俺がやったぜ」


 こちらの返答にセティスが目をぱちくりとさせる。

 その後、妙に納得したように微笑をこぼした。


「そう、あなただったのね」

「厳密には俺ひとりでってわけじゃないんだけどな。都市の警備兵や冒険者。なにより仲間のおかげだ」

「仲間……?」


 セティスが首を傾げた、そのとき。

 ディアナがわざとらしい咳払いをしつつ、隣に並んできた。


「盛り上がっているところ悪いが、わたしのことを忘れてないか?」

「あぁ、セティス。さっき言ってた仲間のひとりだ。名前は知ってるとは思うが――」

「ひ、姫様っ!?」


 セティスが目を見開いたまま固まってしまった。

 どうやら紹介するまでもなかったようだ。


「あ~、そうか。王宮魔導師なら顔を見る機会もあるか」

「それだけではない。彼女にはよく話し相手にもなってもらっていたのだ。歳の近い者が少なかったからな」


 ディアナが懐かしむようにそう口にした。

 当のセティスはいまだに唖然としたまま硬直している。


「どうした、ショックボルト食らったみたいな顔して」

「ど、どんな顔よそれっ!」


 打てば響く。

 昔と変わらずいい反応だ。


「だ、だって姫様がいたことも驚きだけど、まさかジェイクの仲間だなんて……」

「仲間ではない。相棒だ」

「あ、相棒!?」

「戦闘の、だ。変な意味じゃないからな」


 ディアナの〝相棒〟発言にすぐさま補足する。

 どうも相棒を恋人と勘違いする者が多くて困る。


 同志あたりに言い換えるべきではないか。


 そんなことを考えていたときだった。

 これまで静観していたエルミが前に出てきた。


「そしてわたくしはジェイク様のメイド、エルミです」

「メ、メイド!?」

「毎夜、『今回はどんな形で俺の欲望を満たしてくれるんだ、げへへ。がはは。じゅるり』と興奮するジェイク様の要望にお応えしております」

「ジェイク、あなた……」

「いいか、こいつのことは真に受けるな」


 そう弁解したものの、蔑む視線は止まらない。

 久しぶりの再会だというのに、早々に最悪の印象を与えてしまったようだ。……と、思いきや、セティスはくすりと笑みをこぼした。


「もうなにがなんだかわからないけど……でも、元気にしてるみたいでよかったわ」

「そっちも夢が叶ったみたいでよかったな。昔っからずっと言ってたもんな、王宮魔導師になるって」


 王立魔導学院の門が開かれるのは6歳。

 その頃からセティスとは、ずっと同じ学び部屋だった。


「誰かさんより4年も多くかかっちゃったけど」

「そもそも俺は入ってないけどな」

「あらごめんなさい、異端者ジェイク・オルトレームさん」

「……お前、やっぱ変わったな。昔は『むかつく!』ってすぐかみついてきてたのに」


 事実だったことを思い出したか。

 セティスは開きかけた口を閉じると、恥ずかしそうに顔をそらした。


「あ、あの頃は余裕がなかったのよ……」

「じゃあ、いまはあるってことか」

「ええ。きっと万年次席の称号から解放されたおかげね」

「じゃあ俺は意図せず最高のプレゼントをしたわけか」

「最高なわけないでしょ、ばか」


 言葉とは裏腹に、向けられたのは柔らかな笑み。

 本当に心配してくれていたことがありありと伝わってきた。


「ねえ。もしよかったらでいいんだけど、今夜――」

「これはこれはディアナ王女殿下。まさかこのような場所におられるとは思いもしませんでした」


 セティスがなにかを言いかけた、そのとき。

 1人の男が声をあげながらディアナの前に立った。



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